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2018年02月

深野酒造 深野ウイスキー12年 41.5% Cask No,277

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FUKANO WHISKY
FUKANO SHUZO
12 years old
Cask No,277
Number of Bottles Produced 457
750ml 41.5%
   
グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅セミナールーム
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ややえぐみを伴うチャーオーク系のウッディネス。新築家屋のようなツンとした刺激のある木香だが、スワリングすると蜜っぽい甘み、メープルシロップ、キャラメリゼのような若干の焦げ感を伴う。

味:口当たりはスパイシーでウッディ、序盤はドライというか少々刺々しいが、メープルシロップを思わせる甘みと、後半は柔らかい膨らみを感じる味わい。余韻は蜜っぽい甘さが舌に残る。

樽の影響が強くもはやバーボン。チャーした樽由来のウッディーな甘みとタンニンが主体的で、余韻に掛けて膨らみ、丸みがあり、下手なバーボンより良い仕上がりを感じる。カスクナンバーとボトリング本数から考えると、シングルカスクだろうか。

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アメリカで販売されている日本製のウイスキー・・・まさか飲めるとは思いませんでした。
正直なところ、これを「ウイスキー」でカテゴライズすることは悩ましくもあるのですが、前向きに言えば今アメリカ市場の中で芽吹きつつある新しい可能性であり、"毒にも薬にもなる"、そんな表現が当てはまるのが、今回のボトルです。 

このウイスキー、原料は米です。
一見すると、また新手のクラフトディスティラリーが創業して、米を原料にウイスキーを造ったかのようにも見えるのですが、これはライスウイスキーではなく元々米焼酎として造られたものです。
製造者は熊本県にある深野酒造。この酒造のメインは焼酎で、樫樽で熟成させた麦焼酎などをウリにしている模様。そして最も重要なことは深野酒造が「ウイスキー製造免許を取得していない」ということにあります。

ウイスキー製造免許無く、なぜウイスキーが造られて販売されているのか。
これを大雑把に説明すると、日本の酒税法下では「焼酎として作られたもの」、あるいは「焼酎として本来販売できない特定条件を満たしてしまった蒸留酒」が、アメリカの酒税法下では、米や麦などの穀物を主原料としたウイスキーに該当するため、ということになります。
(イギリスではスピリッツであるニューポットが、熟成年数の定義を定めていない日本で「ウイスキー表記」となるのと同様。)

今回の深野ウイスキー以外には、大石やkikoriなど「日本では焼酎、輸出した先のアメリカではウイスキー」、そんな法律の違いを利用したブランドが、世界的なジャパニーズウイスキーブームの影響を受けて増えているのです。



この都合のいい解釈には、なるほどよく考えたなと思う一方、いいのかそれという複雑な思いもあります。
話を聞く限り、方法を考えたのは酒造側ではなく商品企画を行う商社側のようです。
酒造側は、あくまで自分たちは焼酎を作っているだけというスタンス。ここに上述の、"毒にも薬にもなる"という話が関わってきます。

以前、有明産業さんの取り組み「樽スキー(Tarusky)」を紹介した際にも触れていますが、日本の焼酎蔵には樽による長期貯蔵によって色濃くまろやかに仕上がった焼酎が数多くあるそうです。
それらは日本の酒税法下では光量規制の関係などから焼酎として販売できないため、別なものを混ぜてリキュール区分にしたり、若い焼酎と混ぜて色を薄めたり、あるいはフィルタを強烈にかけたりして焼酎として販売できるように調整しているのだそうです。
勿論、そのほとんどが本来樽出しで持っているはずのポテンシャルから遠のく仕上がりになることは否めません。
そうした熟成焼酎が、そのままの形で陽の目を見ることができる機会。その意味では、この話は焼酎業界のとって「薬」ですし、新しい可能性だと思います。

他方で、法的には問題ないとしても、ウイスキーとして作られていないものをウイスキーとして販売する行為には疑問が残ります。
焼酎として販売できない熟成酒を販売するための手段として、あるいは現地酒税法上の整理としてウイスキー区分になることは100歩譲って仕方ないと理解しても、ろくに熟成していない普通の焼酎でもこの解釈を適用できてしまうことが、ウイスキー業界にとって「毒」にもなり得る話なのです。

今回、ウイスキー仲間Aさんのご厚意で、現地に流通する大石、深野酒造の"ウイスキー"を逆輸入し、テイスティングさせていただいたわけですが。ただの焼酎ベースでジャパニーズウイスキーの名を語るだけの閉口モノな銘柄もあれば、この深野ウイスキーのように「ブラインドで出されたらバーボンと変わらない、っていうか普通にうまい」と感じるものもあるということがわかりました。

究極的には「美味けりゃいいのだ」で、片付くのかもしれません。
実際、コーンほど軽くもなく、麦ほど主張が強くない、独特な丸みと柔らかさを持ったこの味わい。自分は焼酎をあまり好きではないのですが、新しい可能性に目からウロコです。
深野ウイスキー12年、仕込まれた時期はウイスキーブーム冬の時代、狙って作ったものではないことも事実でしょう。
だからこそ、ウイスキーをメインに語ることなく、堂々と焼酎表記もした上で味で勝負してほしくもあるわけですが、世の中良いものが必ずしも手に取られるわけではないことも事実。長々と書いてしまった今日の記事そのままに、すっきりしない心が自分の中に残りました。
この件については、後日もう少し詳しくまとめたいと思います。

サントリー 響ブレンダーズチョイスを発表 ラインナップ整理の動きも

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昨日、サントリーが響ブランドの新商品となる「響 BLENDER'S CHOICE」を発表しました。
また、これに合わせて響や白州などの既存ブランドに休売、再編の動きも伝え聞くところ。
今月末にはエッセンスオブサントリー3種も発売される中で、今年は同社の動きに注目する必要がありそうです。

(※リリースされたブレンダーズチョイスについて、既存ラインナップとの比較を含めたテイスティングを掲載しました。)

(※5/15日追記 販売休止について、メディアを通じた情報公開がありました。)


【響 BLENDER'S CHOICE】
発売予定日:2018年9月4日(火)
希望小売価格:10,000円
仕様:ブレンデッドウイスキー
容量:700ml
度数:43%

<構成>
・様々な樽や様々なエイジングの原酒を厳選し、ブレンダーの匠の技でブレンドした特別な一品。
・平均酒齢15年程度、一部30年を超える高酒齢原酒を使用。
・ワイン樽後熟原酒を使用し、甘くまろやかで深みのある味わい。


響ブレンダーズチョイスの新発売は、昨日サントリーが都内で開催した、酒販関係者向けのセミナーで発表されたようです。今後、プレスリリースなども行われると思われます。
ここ最近、サントリーウイスキー絡みではニューリリース、休売、終売、様々な情報が噂レベルで飛び交っておりましたが、まず一つ動きが明らかになったと言うことになります。

その新商品は、現在リリースされている響ジャパニーズハーモニー(JH)のリニューアル・・・というわけではなく、完全に上位グレードとしてのリリースになる模様。メーカー希望小売価格的には現行品の17年とほぼ横並びになるグレードです。
平均酒齢という表現が引っかかりますが、若い原酒から長期熟成原酒までを幅広く使い、どのような味を作り上げるのかは素直に興味があります。
サントリーのノンエイジといっても、美味いブレンドは本当に美味いですからね。

ただ、これを見て思うのは、原酒不足の中で必要な原酒をどこから持ってくるのかということ。そして2015年に響JHがリリースされた後の流れです。
当時も12年が響JHとほぼ同等くらいのグレードにありましたが、その後のラインナップ整理で12年が終売となり、響JHが残ることとなったのは記憶に新しいところ。
同セミナーで響17年が終売になるという発表がされたわけではありませんが、近年のウイスキーブームによる原酒不足から響ブランドのエイジング表記は山崎、白州同様に出荷調整が行われ、入手困難な状況が続いています。
単純な話、12年以上、17年以上という熟成年数や、◯◯樽などという縛りがない方が広く原酒を確保できるため、メーカーとしては品質確保と大量生産がしやすい状況となります。
暫くは様子を見つつ片方をフェードアウトさせる。。。この流れに既視感を感じるのは、自分だけではないはずです。


またこの他、先述の出荷調整に端を発し、一部酒販店舗やBAR等には一部ブランドの再編に関する情報が伝えられ、それが噂として愛好家間を飛び交っているようです。
しかしサントリー社内でかなりレベルの高い箝口令が敷かれているのか、そんな情報は聞いたことがないという説明があったと思えば、酒販サイドによって異なる情報が聞こえてきたりで、はっきりとしない状況が、様々な噂に繋がっているようにも感じます。

その中で、比較的確度が高そうなのが、今回ニューリリースが発表された響の17年と21年の休売、あるいは終売。そして白州エイジングシリーズの順次休売です。(リニューアルするという話もあります。)
あくまで予想ですが、現在のサントリーのブレンデッドの主軸が白州蒸留所の原酒にあり、ニューリリースのブレンダーズチョイスの原酒を確保するため、響の2銘柄と白州のエイジングシリーズを休売とするのは違和感がなく、自然な流れのようにも感じます。
なんせ原酒が仕込まれたのは2000年代初頭、あるいは1990年代後半。生産量を大きく絞っていたウイスキー冬の時代なのですから。
原酒不足が解消されるのはまだまだ先。。。ということなのでしょう。

いずれにせよこの話は、メーカー、ないし酒販店に問い合わせても確たる情報はまだ得られないものと思われます。
何より物不足感も手伝ってブームが過熱しきっているところ、冷静に対応する必要があります。
ニューリリースの響も気になりますし、引き続き自分もアンテナを張っていきたいと思います。

エヴァンウィリアムズ 12年 101Proof 50.5%

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EVAN WILLIAMS
Aged 12 years
101 Proof
750ml 50.5%

グラス:グレンケアンテイスティング
場所:自宅
時期:開封直後
評価:★★★★★(5-6)

香り:やや渋みのあるウッディネス、キャラメル、焦がした焼きプリン、ポップコーンのような香ばしい穀物香。スワリングするとセメダイン系の溶剤感やトーストの酵母。ツンとした刺激を伴う。

味:ほのかに酸味を伴うチャーオークのフレーバー、シロップのような甘み、ウッディなタンニン、チョコレートクッキー。
余韻は口当たり同様ベタつきのある樽感と、オレンジママレード、柑橘系のほろ苦さを感じる。

飲み口はメローで角が取れて適度な熟成感があるが、樽の質の関係か中間から香味にバラツキが目立つ。加水するとオレンジ、絞った柑橘の皮のようなニュアンスが強くなる。ロックも同様。


ヘブンヒル蒸留所で作られている、ケンタッキー州でのバーボンウイスキーの創始者の名を冠したブランド。もっとも、創始者の作った蒸留所は遥か昔に消滅しており、メーカーも設備も異なるもの。ブランドのみが1900年代に入って復活したという、その他のバーボンと同じような流れになります。

そのブランドはノンエイジのブラックラベル、最短熟成となる4年熟成のボンデッド、最長熟成の23年。他いくつかのグレードがあるわけですが、その中でも一番美味いと思うのが23年であることに異論の余地は無いとしても、個人的にもっともスタンダードなバーボンと感じているのが、この12年熟成です。

12年熟成品はこの10年間で2回ほど代替わりをしており、以前はラベルが艶やかな赤色で、Since 1783やKentcky 1st distillerというブランドの創業年を示す記載がありましたが、現行品の面ラベルは12年表記のみとなっています。
なんていうか上述の状況の通り、紛らわしい説明なので徐々に省いてきているのかもしれません。
当時のボトルは安価な割に味が良く、2000円くらいで美味しく飲みごたえのあるバーボンだったらエヴァン12年かターキー8年でOKというのが自分の中での評価でした。

もっとも最近は他のブランド同様にライト化が進みつつあり、特にヘブンヒル産の現行品は火災消失からの蒸留所切り替えによる影響を大きく受けているとも感じます。
どうフォローしても味の違いは。。。
また、10年以上の熟成原酒が不足気味という声は現地見学を行なったウイスキー仲間の話。12年熟成品の維持は中々苦労しているようです。(2000円台で買えていたのは日本だからという話も。最近は3000円台に値上がっていますが。)


今回も自宅樽でのバーボン熟成用にスタンダードなボトルを調達して、補充してみました。
これで4リットル弱くらいになりましたので、あと入れるとしたら1銘柄くらい。適当に現行品のみをブレンドしているのですが、いい具合にコクと複雑さが付与されてきて美味しくなってきました。
最近現行品のバーボンを飲む機会なんてなかったので、勉強にもなって一石二鳥です。

ブッシュミルズ 12年 ディスティラリーリザーブ 40% ブラインド

カテゴリ:
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BUSHMILLS
DISTILLERY RESERVE
Aged 12 years
2017's
Cask type Ex sherry & Ex bourbon
700ml 40%

【ブラインドテイスティング解答】
地域:アイリッシュ
蒸留所or銘柄:クーリー
仕様:シングルモルト
熟成年数:12年程度
蒸留時期:近年
樽構成:バーボンバレル主体
度数:43%
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:青みがかった華やかなオーク香、レモン、蜜感のある林檎、干草、うっすらとケミカルなトロピカル香も開いてくる。

味:若干の水っぽさのある口当たり、素朴な麦芽風味、クラッカー、すぐにバニラの甘みやケミカルなフレーバーが開いてきて支配的に。余韻はややべたつきがあり、ケミカルなシロップ、ネクター系の甘さ、ほのかな植物感が張り付くように残る。

アイリッシュか南ハイランドか非常に悩ましいボトル。アイリッシュにしてはモルティーさとオークが強いし、近年の南ハイランドにしてはあまり毒々しさがない。普通に考えればアイリッシュで、ブッシュミルズなど、このレンジのオフィシャルでトロピカル要素が強いところではない銘柄と予想。



先日に引き続き、ウイスキー仲間のIさんからのブラインド出題。Iさんが昨年現地を訪問した際、購入されたものだそう。

素直に考えればアイリッシュなのですが、どうにも南ハイランドがちらついて、最後まで地域で悩んでいたことが伺えるテイスティングの流れ。
その結果、ブッシュミルズも候補としておきながら、アイリッシュとスコッチの中間点的なモルトなのではないかと、キャラクターを明確にイメージ出来ないクーリーを諸情報から予想するという、自分の舌と鼻を信じられなかったテイスティングをしてしまいました。
こういう予想をすると、大概外れますw

アイリッシュは主要な銘柄以外それほど意識して飲んでいないので、ブラインドで地域がわかっても、どうしても不安が残ってしまいます。
他方、それ以外の要素は、ほぼほぼ感じたとおりでしたので、全体的には及第点かなと。アメリカンとアイリッシュの蒸留所毎のキャラクターの理解が、今後の課題でもありますね。


(ブッシュミルズ蒸留所外観。スコッチのそれを思わせるキルン塔の反対側、高層階の熟成庫がスコットランドとは異なる独特の雰囲気を醸し出している。Photo by T.Ishihara)

さて、このブッシュミルズ12年ディスティラリー・リザーブは、蒸留所限定で販売されているリリースの一つ(一部海外酒販では購入可能な模様)。以前は白いラベルのデザインでしたが、昨年からリニューアルし、この水色のデザインとなったようです。

蒸留所限定というと特別な印象を受けますが、 個人的にはオフィシャルスタンダードのベクトルから大きくそれないと感じる構成。 加水でバランスよく、樽感は基本リフィルとバーボンバレル主体か、シェリー系のこってり感は控えめ。
アイリッシュらしさの適度にある、万人向けのリリースだと思います。

シングルモルト 笛吹峡 25年 1983年蒸留 カスクストレングス 64% ブラインド

カテゴリ:
SINGLE MALT USUIKYO
MONDE SHUZO
CASK STRENGTH
Aged 25 years
Distilled 1983
700ml 64%

【ブラインドテイスティング回答】
地域:ジャパニーズ(クラフト系)
蒸留所or銘柄:笛吹峡
熟成年数:20年程度
樽:リチャードシェリー
度数:60%程度
暫定評価:★★★(3)

香り:焦げたゴムや木材、焚火の煙、タールのような強いクセのあるアロマ。スワリングしているとほのかにエステリー、カラメルソースのような甘みも感じるが総じて癖が強い。

味:ピリピリとスパイシー、強く燻した樽材、タール、輪ゴムを口の中に入れているよう。樽のアクが強い。
余韻はビターでハイトーン。口内の水分が揮発し、焦げた木材とゴムっぽさ、鰹節のような味わいが強く残る。

非常に個性的。ゴム系の風味が強く、正直真っ当な作り方や貯蔵環境で熟成されていないのではないかと感じる。例えばモンデ酒造の笛吹郷。あるいはモンデから売り出されて店頭で量り売りされた出所不明ウイスキー。


ウイスキー仲間のYさんからのブラインド出題。
ネットを調べるだけで、賛否両論において否のほうが圧倒的に多く見られるボトルで、焦げたゴムのような味がするという個性で知られる謎のシングルモルト。

このボトルそのものを私は飲んだことがなかったのですが、モンデ酒造は笛吹峡ブランド以外に、量り売りのリカーショップに樽で原酒を卸していたため、名称不明のシングルモルトとして過去2回ほど飲んだことがありました。
それは日本的な強い樽要素に、荒さの残る酒質。まさに焦げたゴムという表現がしっくりくる極めて個性的な味わいなのです。

そんなわけで、今回のブラインドは感じられた全ての要素が、モンデ酒造がリリースしていたシングルモルトウイスキーのそれを指していました。
というか、量り売りされていたものより、問題の個性がさらにパワーアップしていて、30ml飲みきった後しばらく口の中に残り続ける持続力・・・。写真のタグに書いてある"コメント"を書いた方も好みはあろうと思うのですが、ちょっとこれは。

飲んでいて感じたのは、おそらくこの原酒は銅のスチルで蒸留されていないのではないかということと、樽の処理が悪いということ、そして気温の高い環境で熟成されているということ。
樽に関しては、例えばシェリーやワインの空き樽をリチャーし、灰汁抜きをしないまま原酒を詰めたのではないか。
モンデ酒造のシングルモルトは、輸入原酒バージョンもあって、それにも同様の樽感が出ていた記憶があります。
なんていうか、熟成させれば良いってわけじゃないんだぞと言う感想を強く持ちました。

とりあえず飲めてよかったです。
そしてこの味わいは、良くも悪くも一生忘れないことでしょう(笑)。

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