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2018年02月

厚岸蒸留所 ニューボーン 2018 バーボンバレル 60% ファーストリリース

カテゴリ:
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AKKESHI
NEW BORN 2018
Single Malt Spirit
"Foundation No,1"
Non-Peated
Cask type Bourbon Barrel
200ml 60%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:-

香り:レモングラスやレモンピールを思わせる爽やかな香り立ち。少しの乳酸、ハッカ。奥から干草、乾いた籾殻のような軽い香ばしさを感じる。

味:クリアでフレッシュな味わいの中にコクと軽い香ばしさ、唾液と混じることで、ねっとりとした粘性のある甘みと酸味を感じる。
余韻はハイプルーフらしくヒリヒリとハイトーンな刺激もあるが、ほろ苦い殻付麦芽と淡いバーボンオークのウッディネス。しっかりと長く続く。

若く度数も高いため、ストレートでは多少の荒さが感じられるものの、酒質は洗練されていて綺麗な仕上がり。
味わいにはコクがあり、加水するとまろやかな口当たりが得られるが、水っぽくなりやすい印象も受けた。また、ハイボールは若いモルトらしい酸味と香ばしい麦芽風味が主体ですっきりとした味わい。
将来的には、大手蒸留所に匹敵するハイランドタイプのモルトへの成長が期待できる。

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近年、日本に数多く誕生している蒸留所の中でも、その環境や製法へのこだわり、掲げる目標などから、最も注目を集めていると言っても過言ではないのが、北海道厚岸に堅展実業株式会社が創業した厚岸蒸留所です。

同蒸留所の創業は2016年。生み出されるニューポットは将来性を強く感じさせる味わいであり、周囲の反応は上々。自分も2016年仕込みのピーテッドと2017年仕込みのノンピートをテイスティングする機会がありましたが、創業2年目の国産クラフトとは思えない仕上がりにびっくりしました。
当然、そうした機会を得た方々の評価は伝聞で広まるわけで、その要望に応える形でリリースする運びとなったのが、今回のニューボーン2018です。

"厚岸蒸留所のこだわり、創業者である樋田氏らスタッフの熱い想いは、公式ページを参照下さい。http://akkeshi-distillery.com/"

ファーストリリース、Foundation 1の構成原酒は、バーボンバレルで5ヶ月から14ヶ月熟成したノンピート原酒。これは2016年の創業から2017年のノンピートモルトの仕込み時期の最後までに生産された原酒であり、バッティングの後、若干の加水調整を加えたもの。ラベルの表記はシングルモルトスピリッツで、ウイスキーと表記しないところに、同社のこだわりを感じます。
ニューボーンシリーズとしては、今回のノンピートに加え、ピーテッドモルトやシェリー樽などのリリースを計4種類行い、3年熟成のシングルモルトウイスキーに繋げていく計画のようです。

今回のリリース、そして昨年のニューポットから考えると、厚岸蒸留所の原酒の特徴は、洗練された綺麗なコクのあるスピリッツと感じています。
勿論若さからくる雑味、荒さは多少ありますが、熟成を経ていくことで磨き上げられていくと考えられ、熟成期間としてはバーボンバレルで5年から10年くらいが飲み頃かなと。酒質の系統から、樽次第でハイランドタイプの美味しいモルトに仕上がっていくことが期待出来そうです。
また、厚岸は寒暖の差が大きいなど内地に比べ特色の濃い土地とのことで、確かに今回のボトルも最長14ヶ月熟成の原酒でありながら、既に淡い樽感とグラスの縁に残る白くくすんだ樽材由来のエキスも見られ、スコットランドとも異なる熟成の片鱗が感じられます。


しかしこの味わい、特に熟成に耐えうるボディのある酒質を作るには、相当な苦労があったと聞きます。 
蒸留所関係者から伺った話では、例えば試験蒸留時点では酒質がクリアすぎて香味に厚みが出ず、導入している蒸留設備のメーカー(フォーサイス社)から技術者を招いて技術指導を受けるなど、トライ&エラーを繰り返し、徐々に厚みが出るようになっていったのだとか。
今回のニューボーン2018にも最初期の原酒の影響があるのか、加水するとストレートで感じられたコクに対して、少し水っぽさ、口当たりの薄さが出てくるようにも感じられます。

ただ、これはすべての蒸留所にありうる成長過程の一つ。今後はさらに、個性や特徴が強まった原酒が生産されていくのでしょうし、2017年仕込みのニューポットを飲む限りでは既に解決した課題とも感じます。それを裏付けるように、原酒の質は向上し続けているという話も伺っているところです。
様々な苦労を乗り越えて創業した、厚岸蒸留所の新しい歴史の幕開け。言わば目覚めの瞬間に向けた胎動。その原酒の発売を祝福するとともに、同蒸留所が掲げる「スコットランドの伝統的製法を受け継ぎ、かつ厚岸らしいウイスキー」の姿をイメージしながら、楽しみたいリリースです。


【以下、余談。】
厚岸蒸留所と言えばアイラモルトを意識したPRを行うなど、将来的にはピーテッドタイプのウイスキーをハウススタイルとすることを目標としています。(むしろ此方を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。)
現在、ピーテッドとともにノンピートが仕込まれている理由は、品質管理の意味合いとして、まずノンピートを仕込み、細部まで原酒の状態を確認できるようにするため。今後はピーテッドの比率を高めつつ、ノンピートも継続して一定量仕込まれていくようです。

なお、昨年テイスティングしたピーテッドモルト(ニューポット)は、ベースとなる酒質は上記のように綺麗な仕上がりである事に加え、若さからくる荒い要素がピートでマスクされたことで、ノンエイジにして既に仕上がっているような印象を受けました。
近いところとしては、キルホーマンとラガヴーリンを足して2で割ったようなイメージ。果たして熟成後の仕上がりはどうか。。。
このニューボーンシリーズで8月にリリース予定の第二作は、バーボンバレルのピーテッドとのこと。リリースが今から楽しみです。

カリラ 15年 1974-1989 GM 40%

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CAOLILA
Gordon & Macphail
Aged 15 years
Distilled 1974
Bottled 1989
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@KuMC
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかい香り立ち。強い磯っぽさやヨード、塩素、乾いた麦芽とほのかな柑橘感がアクセントに。アイラ的な要素が強い存在感を保っているが、加水が効いてバランスがいい。

味:香り同様に柔らかい麦芽風味からピリッとした塩気、適度なコクと透明感。
徐々に魚介出汁、灰っぽさも。
余韻はグレープフルーツピールのアクセント、ほろ苦くスモーキーな麦芽風味を伴い染み込むように長く続く。

40%加水でありながら、しっかりとしたアイラモルトらしいフレーバーが備わっている。樽感はリフィル系であまり強くなく、柔らかさと個性の主張を両立したしみじみと旨いボトル。まるで穏やかな日の海辺に居るよう。

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アイラ島とジュラ島の間、サウンドオブアイラことアイラ海峡に面した立地を持つカリラ蒸留所。上記写真にもあるように、スチルハウスの目の前に広がるそれが、蒸留所の特色の一つともなっています。

この近年のカリラ蒸留所の姿が作られることとなったのが、1972年から1974年の間に行われた、ポットスチル増設などの大規模拡張工事です。
導入されたポットスチルの形状などは、それまでのものと同じものという話でしたが、使い込まれたそれと異なり新しいものでは癖的な香味が出にくいのか、あるいは生産量が増えた事での影響か。1974年蒸留のカリラはクリアで雑味の少ないキャラクターのものが多く、樽次第でははっきりとした美味しさを得る一方、60年代に比べボディは軽い印象を受けます。
今回のボトルも、アイラ的な個性の存在感はしっかりあるものの、飲み口は柔らかく同様のベクトルと感じます。

そのため、人によってはいい意味での雑味やフルーティーさが強い1970年代後半から80年代前半のキャラクターを評価する声もあります。
ただ、カリラ蒸留所にとって、のちに起こる閉鎖の危機を生き抜くこととなった一つのターニングポイントがこの拡張工事であり、1974年蒸留のボトルは時代背景としても蒸留所のキャラクターとしても、飲んでおく価値のあるビンテージだと思います。

マッキンレーズ リザーブ デラックス 1980年代流通 特級表記 43%

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MACKINLAY'S
RESERVE DE LUXE
Blended Sctoch Whisky
1980's
750ml 43%

グラス:
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★(5)

香り:ツンとした刺激とほのかに酸味を伴う麦芽香、乾いた牧草、ミント、淡いスモーキーさもある。あまり香り立ちは強くないが、時間経過で麩菓子のような甘み。

味:スムーズな口当たりと程よいコク、ザラメ、クラッカー、軽い穀物感。中間から後半はピリッとした刺激を伴い、サトウキビのような甘みと植物感からほろ苦いピート、土っぽさを感じる味わいへと変化し長く続く。

これという特徴の少ないハイランドモルトベースのブレンデッド。グレーン感も比較的感じられ、現行寄りのスタイルに近づいている。ストレートでは中庸な仕上がりだが、ハイボールにすると余計な要素が削られ、香ばしい麦芽風味が主体的になってなかなか楽しめる。

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名門マッキンレー社のブレンデッドウイスキー。
1970年代以降はスタンダードクラスで5年表記のオールドスコッチウイスキー、上位グレードで12年表記のレガシーがラインナップにあり、このリザーブはちょうどそれらの中間に位置するグレードとしてリリースされたようです。

マッキンレー社における1980年代の状況といえば、60年代から70年代にかけて取り組んだ拡張路線の終わりの時期。そして冬の時代の影響を大きく受ける時期でもあります。
もとより所有していたグレンアルビン、グレンモールに加え、ジュラ再稼働、グレンアラヒー創業、マッキンレーズブレンデッドウイスキーブランドの増産の流れをはっきりと感じる流れですが、その後は1980年代に入って前述の2蒸留所を閉鎖、原酒の供給を切り替えると共に、1985年にはインヴァーゴードングループの傘下に入っています。

今回のボトルの流通時期は、ちょうど1980年代前半から中頃。上記の時期に該当します。
テイスティングで感じられる原酒のキャラクターは、ジュラ、グレンモール、そしてあまり個性の強くないモルトの風味はアラヒーあたりか。そこにグレーン感もそこそこあり、これがインヴァーゴードンのものとすれば、時期的に矛盾はなく。
冬の時代の中で、新しい可能性を見出そうとしたリリースだったのかもしれません。

クラウンローヤル ハンドセレクテッドバレル 51.5% ブラインド

カテゴリ:
CROWN ROYAL
HAND SELECTED BARREL
CANADIAN WHISKY
(No Aged)
750ml 51.5%

【ブラインドテイスティング(TWDルール※)】
地域:アメリカ
蒸留所:クラフト系のどこか
熟成年数:4年
度数:48%
樽:新樽
暫定評価:★★★★★(5)
※リリースから5年以内のボトルであること。それ以外はなんでもアリ。

香り:軽やかな香り立ち。生っぽいウッディネスは、若干の焦げ感とニスのようなツンとした刺激を伴う。徐々にハーブ、芳香剤、希釈したメープルシロップを思わせる淡い甘みも感じられる。

味:メローでスパイシーな口当たり。麦パフのような軽やかな穀物の香ばしさ、植物感、ボディは軽いが少しとろみも感じられる。
余韻はハイトーンでヒリヒリとした乾いたウッディネス、芳香剤のような露骨な華やかさが鼻腔に抜ける。

樽感はあまり強くなく、穀物系のグレーンウイスキーフレーバーにライ系のニュアンスも混じっている。ライトでクリーンな仕上がりで、香味は少々単調気味。ハイボールにするとバーボンに比べて適度に香味が残り、癖が少なく美味しい。


引き続き、ウイスキー仲間のT.Ishiharaさんからのブラインド。
日本では未流通、現地流通のクラウンローヤル・ハイプルーフ仕様。チャー済みの新樽で、ライ麦多めのマッシュビル(コーン64%、ライ31.5%、モルト4.5%)のスピリッツを熟成。熟成年数は不明ですが、クラウンローヤルのスタンダードグレードから察するに、6〜10年程度の熟成は経ているものと思われます。

ブラインドテイスティングでは、グレーン、ライ系の風味を感じたところまでは良かったのですが、チャー済みの新樽にしては樽感があまり出ていない熟成感や、酒質の軽さからカナディアンウイスキーに辿り着く事が出来ず、熟成年数が浅いアメリカンの加水だろいうとミスリード。
カナディアンあるかも?という選択肢はあったのですが、それを自信を持って選べなかったのは経験の浅さですね。

同じIshiharaさんからの出題で、ジョージディッケルのブラインドでも似たようなミスをしていましたが、時系列的にはこちらの方が先のテイスティングとはいえ、学んでいない事が露骨に出てしまいました(汗)。


先日、クラウンローヤルのオールドを記事にした際、特徴をもっとはっきりさせたカナディアンを飲んでみたいと思っていたところ、今回のブラインドはまさにそのゾーンに入ってくるようなチョイス。
っていうかカナディアンのハイプルーフなんて日本市場にないですから、貴重なモノを飲ませて頂きました。

ストレートではちょっとうーんという感じですが、ロックやハイボールで活きるのが、度数の高さ故でしょうか。
なお、クラウンローヤルの歴史については、1970年代流通の記事にまとめているので、興味あります方はそちらも合わせて参照ください。

ブッシュミルズ スチームシップコレクション ポートカスク 40% ブラインド

カテゴリ:
BUSHMILLS
STEAM SHIP COLLECTION
Limited Edition
Port Cask
700ml 40%

【ブラインドテイスティング回答】
地域:アイリッシュ
蒸留所or銘柄:特定できず
仕様:ブレンデッド
熟成年数:10年程度
蒸留時期:近年
樽構成:バーボン及び複数樽
度数:45%程度
暫定評価:★★★★★(5)

香り:紙っぽさとツンとした刺激、牧草や薬のような苦味を伴うアロマ。奥から穀物系の甘み、柑橘、バニラの要素も感じる。

味:ほろ苦く穀物的な味わいから、蜂蜜のような甘み、舌先にピリピリとした刺激とほのかにライムのような柑橘系のアロマが鼻腔に抜ける。
口当たりはオイリーだがボディ感はあまりない。余韻はべたつきのあるケミカル系の甘さとほのかな薬香を伴って長く続く。

オーク系のウッディさにべったりとした甘さやほのかな薬っぽさ。蒸留方法に特徴がある原酒が使われている印象。
ハイブリッドスチルを使っている新興国系かアイリッシュで迷う。ただそれにしては熟成年数をそこそこ感じるので、ただ単にアイリッシュなのかもしれない。

ウイスキー仲間で当ブログに写真も提供頂いているT.Ishiharaさんからの出題。
今から1世紀以上前。ブッシュミルズがアメリカへの輸出を開始した際に使われた蒸気船、その処女航海125周年を記念し、2016年に免税店向けに販売されたのが蒸気船シリーズ"STEAM SHIP COLLECTION"です。

ラインナップ構成は樽違いで3種類、シェリーカスク、バーボンカスク、そして今回のポートカスクの3種類がリリースされています。
今回のテイスティングアイテムは、その3種類のうち、ルビーポートを3年間シーズニングさせた、ポートカスクで熟成した1本。熟成期間は不明ながら、10年から14年程度の原酒が使われているという話もあります。
加水が効いていることもあると思いますが、シーズニングに使われたポートがそこまで強くないのか、あまりリッチなポート感ではありませんが、らしいケミカルなフルーティーさも奥に感じられるバランスタイプのウイスキーです。

ブッシュミルズ 蒸気船シリーズ ラインナップ。

ブラインドテイスティングの回答と比較してみると、ポートカスクの印象をどう捉えたかが「カギ」になったように感じます。
余計な雑念が入り新興国系もあるかも、なんて考えたりもしていますが、地域や蒸留方法による特徴、熟成感は概ね感じた通り。
他方で、ポートカスクやワインカスク熟成のウイスキーに見られるべたつきのある感じ、そこに加水が加わって奥行きのあまりないのっぺりとした質感を樽由来ではなくグレーンっぽいなと感じてしまったのが失着でした。
ワイン系、ポート系は普段あまり飲まない飲まないので、またしても意識の弱いところからミスリードしてしまったようです。

銘柄の絞り込みについても、これという確証を持てませんでしたし、アイリッシュやアメリカンはまだまだ経験が足りませんね。
この辺の理解、整理を進めることが今年の課題かなと思います。


余談ですが、この蒸気船シリーズは一部日本にも並行輸入されており、国内での購入も可能です。
ただ、日本の酒販サイトの一部では「ブッシュミルズ蒸留の125周年を記念したボトル」としての記載が見られ、それをそのまま引用するサイトも・・・。
ブッシュミルズの創業年については諸説ありますが、少なくとも200年以上は経過していますので、間違いのないようご注意ください。

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