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2018年01月

タムデュー 25年 43% 2010年頃流通

カテゴリ:
TAMDHU
Aged 25 years
Single Malt Fine Scotch Whisky
2005-2010's
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会に持参
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)

香り:しっとりとした粥のような甘さを感じる麦芽香、蜂蜜やオレンジママレード、アーモンドクリーム、ほのかにきび糖を思わせる古酒系のニュアンスも感じられる。

味:マイルドでスウィートな口当たり。ボディはミディアム程度で、甘く香ばしい麦芽風味は、薄めたメープルシロップ、おこし系の甘みやナッツの軽い香ばしさを思わせる。
徐々にドライでウッディ、蜜っぽい甘みとピリピリとした刺激を伴うスパイシーさを感じるフィニッシュ。

甘くマイルドな麦芽風味が、如何にもタムデューらしいタムデュー。加水は必要なし、ハイボールは麦系の風味がくどく、ストレートで。


ショートエイジのリリースが多いタムデューのオフィシャルラインナップから、かつて数年間リリースされていたミドルエイジ以上のボトル。
当時はウイスキーが全般的に低価格で、ボトラーズも1960〜70年代が1万円台でバンバン出ていた頃。。。そのため、このボトルは同価格帯であまり注目されていなかったリリースでした。

ただ、それが2010年頃からの超円高を受けて並行品の価格が七千円前後となり、しかも終売になるという情報もあってスポット的な話題に。自分も家飲み用に最適、なんて当時のブログで記事を書いた懐かしいボトルでもあります。

そこから約7年、久々にこのボトルを飲んでみると、スウィートでスパイシーな風味の主要な部分は変わらないものの、余韻にかけて感じられたオーキーな華やかさがマイルドで麦芽風味、蜜っぽい樽のニュアンスに置き換わっていたのが印象的でした。
これはこれでタムデューらしく、ロット差というより、経年での変化かもしれません。

(タムデュー蒸留所全景。精麦工場が併設された同蒸留所は、古典的な蒸留所としての景観に工場的な要素が組み合わさっているのが特徴。

っていうかタムデューらしさって何やねん、という話もあるかと思います。
オールドにしても近年リリースにしても、オフィシャルはシェリー系の樽感が主体のものが多く、これという個性がないモルトと言われることもしばしば。
ただ、この2000年ごろに流通していたタムデューのオフィシャルは、樽の系統がバランス寄りだったため、逆にそうした酒質部分の要素が分かりやすくもあります。
やはり自分にとってこの蒸留所は、麦の甘みなんだなと再認識しました。

マッキンレーズ レガシー 12年 1970年代流通 43%

カテゴリ:
MACKINLAY'S
"Legacy"
12 years old
Blended scotch whisky
1970's
760ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅(サンプル@若手のNさん)
時期:開封後半年程度
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:みたらしっぽい古酒感を伴う麦芽香、ほのかにドライオレンジ、色の濃い蜂蜜、徐々に紅茶のような香り。埃っぽさも少し感じられる。

味:モルティーで粘性のある口当たり、素朴な麦芽風味、みたらし、ぬれ煎餅、オレンジママレードのほろ苦さがじわじわと支配的に。奥には土っぽいフレーバーも感じる。
余韻はほろ苦く、灰のようなピートを感じるフィニッシュ。

やや粘性が強く、モルティーな風味と熟成感がしっかりあるブレンデッドウイスキー。中間はグレーン由来と思しき甘みが顔を出すが、これを引き締めるように余韻でピートが顔を出してくる。ただそれが少し弱く、好みを言えばモルト由来の風味がもう少し開いてほしい。


南極探検隊のウイスキーとして知られる、マッキンレー社のブレンデッドラインナップで上位グレードにあたる1本。今回のボトルがリリースされた1970年代前半当時は、マッキンレーズ・オールドスコッチウイスキー5年とレガシー12年がラインナップとなります。
このレガシーは5年同様1960年代と思われるところまではリリースを確認することが出来ており、1963年にアイルオブジュラを再稼動させ、増産に舵を切ったところで、ラインナップ整理が行われたのかもしれません。 

当時の構成原酒は、各関連書籍によるとグレンモール、グレンアルビン、そして再稼動したアイルオブジュラ。
マッキンレーを飲むたびに思うんですが、この組み合わせはコアなウイスキーラバーがグッときてしまう、反則的な組み合わせだと思います。 

ただ、ジュラは1963年に約半世紀ぶりに創業を再開したため原酒が残っていたとは考えにくく、熟成が最低限進んだ1960年代後半にはマッキンレーズ5年のブレンドに回されていたのではないかと。
そして12年以上熟成のジュラを使えるようになるまで、レガシーの構成原酒は、Legacy"伝統"と言う言葉そのまま、1892年にマッキンレーズ社が創業させたグレンモールと、1920年に買収したグレンアルビン。同社のルーツとなっている2蒸留所が中心だったのではないかと考えられます。

IMG_2281
(1970年代、ほぼ同時期流通の今は無きグレンモール10年。同様のボトルシェイプにMackinlay社表記。素朴な麦芽風味や穏やかな内陸系のピートフレーバーで、共通するニュアンスが感じられる。)

なお、今回のボトルは少しヒネ系のオフフレーバーが強めでしたが、その奥には熟成したモルティーな風味も感じられ、持ってるものはなかなか良いと感じられました。今年の秋くらいには抜けて丁度良くなっているかも。
そのため評価は少々辛口気味ですが、状態が通常以上であれば★6固定といったところで、少し幅を見ています。

サン マルツァーノ コレッツィオーネ チンクアンタ+2 14.5%

カテゴリ:
SANMARZANO
Certainly a Collezione
Cinquanta +2
750ml 14.5%

今回のワインは前回に引き続きイタリア・プーリア州から、1962年に創業したワイン製造者の協同組合カンティーネ・サン・マルツァーノが、創業50周年を記念してリリースしたブランド。価格は2000円台ですが、同社の中ではハイグレードのトップ・キュヴェに位置づけられています。
葡萄品種はプリミティーヴォとネグロアマーロ。樹齢は50年越えの古木に加え、イタリア南部で太陽をたっぷり浴びて作られるワインだけあって、しっかりと濃厚な味わいがウリ。
ファーストリリースの後は+1、+2と年数を加算する表記でリリースが行われており、2012年と2013年に醸造され、異なる熟成方法を経たワインがブレンドされているそうです。
と、WEBからの引用はこれくらいにして。。。

香りはハーブ香の混じるベリーやカシスの濃厚なアロマ、ツンとして乾いたような樽香、酸味にはまだ硬さがある。
口当たりは甘酸っぱく濃厚、フルボディ。ブルーベリー、ダークフルーツソース、どっしりとした葡萄エキス。奥には安寧芋のペーストのような蜜っぽい甘さ、そこから樽香、タンニンが尖った酸味と共に主張してくる。

濃厚は濃厚ですが、酸味を甘さと濃さで上塗りしたような味わい、樽香も浮ついていてフレーバーにバラツキがあるというか、統一感があまり感じられない。。。というのが開封直後のこのワインに対する印象。正直、買って失敗したとすら思いましたね(笑)。

   
例えば果実味に限定すると、序盤はジャムやソースのような、加工した果実の甘酸っぱさがあってこれはこれで良いのですが、後半にはまだ硬さが残る果実を食べた時のような主張の強い酸味に変わってしまう。2つ時系列の違うものがそれぞれ主張しあっていて、お互いいいものはあるのに交わっていない、そんな違和感からあまり杯が進みません。

このワインを開封したのは日曜日の夜で、半分ちょっと残してバキュバンから冷蔵庫へ。ま、平日飲めば良いか~と。しかしこういう時に限って平日の帰りが遅くなり。。。金曜深夜まで5日間丸々放置プレー。
いい加減飲まないと調理酒行きになってしまうので、18度くらいまで温度を戻して飲んでみると、「なにこれめっちゃ旨いじゃん!」というほど印象が変わっていました。


ふくよかで深い甘みと微かにハーブの漂うアロマ。硬さのないまろやかな舌触り、熟したぶどうやベリーを思わせる蜜っぽい甘酸っぱさ。余韻のタンニンもカドが取れ、濃厚な味わいにあって実にバランスがいい。
それぞれ主張しあっていたものが融和し、香りは熟した果実のように開いている。

ワインは2〜3日で飲みきるものという認識があり、2日目にカドが取れて美味しくなってることは何度かありましたが、大概は酸化が進んだり香味がぼやけたりする傾向がある中、5日経ってこうも美味しくなるとは衝撃的です。
そしてアテに買っていたパストラミビーフとの相性が激ヤバ。とろんとした甘みに黒胡椒のスパイシーさとビーフの旨味がマッチして、飲む食うの永久運動、一気に飲みきってしまいました。
(そして締めのコニャックを飲みながら、ソファーで寝落ち(笑))

この味で2500円程度なら、素晴らしいコストパフォーマンスです。
つまりそれだけポテンシャルがあるワインであり、現時点で美味しくするには今回のように時間をかけるか、あるいはデキャンタか、一手間必要と言えますが、単純に飲み頃はまだ先ということなのかもしれません。
今回はたまたまこういう形になりましたが、次は狙って開かせたものを飲んでみたいです。 

ワイルドターキー レアブリード バレルプルーフ 58.4% 2017年リリース

カテゴリ:
WILD TURKEY
RARE BREED
Barrel Proof
2017's
700ml 58.4%

グラス:グレンケアンテイスティング
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★(5-6)

香り:メープルシロップとナッツを思わせる甘いアロマ、焦がした穀物、ジンジンと鼻腔を刺激するチャーオーク香。奥からほのかにハーブや青みがかった植物、生木っぽい香りも感じられる。

味:パワフルなアタック、口内をビリビリと刺激するスパイシーさ。キャラメリゼ、少し焦げたワッフル、口の中でジワジワとコクが出てくるよう。
余韻はハイトーンな刺激と少しべたつきがある。キャラメルの甘み、ウッディなえぐみがタンニンとともに残る。

パンチはかなり強いものの、熟成感、樽由来の甘みとも最低限必要な範囲で備わっている。少量加水するとマイルドな飲み口やメープルシロップのような甘みを引き出せる一方、ロックも悪くないが、氷に負けるのが早い気がする。


ワイルドターキーの樽出し原酒を、加水せずバッティングして仕上げるレアブリード。
昨年ひっそりとパッケージリニューアルが行われ、ビッカビカの金色の外箱が白地のデザインに、1990年代のレアブリード及び1855リザーブ発売から続いていたボトルシェイプも、少し角ばったようなデザインに変更されています。
(1月1日から輸入元が明治屋にも変わってますね。)

では中身はというと、値段なりではありますが、上位グレートとなるラッセルズリザーブ10年に通じるコクと甘みがあり、樽感に嫌な要素が少ない、意外と楽しめる刺激強めなオーソドックスバーボンという感じ。
刺激の強さはワイルドという単語がしっくりくる構成で、ここは旧ボトルより強くなっているような。。。また、ドライだった樽感も少し濃くなった印象です。

まあ初期ボトルと比べると、樽感はともかくコクが足りないので、下手に樽感を強くするのではなく、酒質を厚くして欲しいというのはレアブリードに限らずターキー全般に思うところでもあります。
3月には新商品の「ケンタッキースピリッツ」が発売されるようですが、これはどう仕上がってくるでしょうか。


今回なぜレアブリードの現行品を買っているかというと、それは先日から始めた自宅樽でのバーボン追熟、その度数調整に使うため。経験上ですが、50%を超えていないと樽に負けやすいので。

そんな中、ふと気づいたのがコルクキャップの変化。
以前は写真右側のように差込口の角を削って丸くしてあったのですが、その工程が省かれてダイレクトな切り口になっています。
これ、差し込みづらいだけじゃなく、折れたり欠けたりしやすいんですよね。自分で削れって話かもしれませんが、中身の構成は好みや作り手の解釈と割り切っても、こういうところはユーザー視点に立って欲しいなーと思います。

クライヌリッシュ 44年 1972-2016 GM レアオールド 42.2%

カテゴリ:
CLYNELISH
Gordon & Macphail
Aged 44 years 
Distilled 1972
Bottled 2016
700ml 42.2%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅セミナールーム@TWD
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★★(7-8)

香り:キャラメルや濃いはちみつを思わせる甘い香り立ち。麦芽香は樽香と混じってシフォンケーキのようで、スワリングでスモーキーなピート香が開く。時間経過でアプリコット、リンゴのカラメル煮、ドライでやや枯れたようなニュアンス。

味:マイルドでとろりとした口当たり。やわらかい麦感、熟したバナナ、キャラメル、そこからスモーキーフレーバーが鼻腔まで広がる。コクはあるがボディは細くなりつつあり、後半にかけてドライな要素が強くなっていく。
余韻はドライで角の取れたウッディネス、トロピカルフルーツの戻りが時間差で広がる。

度数が落ちて枯れ気味なニュアンスが感じられるモルトだが、元々のボディの厚さと個性の強さで、樽由来の要素や熟成による変化を受け止めてギリギリ踏みとどまっている。柔らかくマイルドな飲み口、粥のようならしい麦感と存在感のあるスモーキーさ、そしてリフィルと思われるがGMらしさのあるシェリー感。まさに最後の飲み頃、ストレートでじっくりと頂きたい。


GMのハイエンド(最近色々出過ぎてよくわからない)のレアオールドシリーズからリリースされた、クライヌリッシュの当たり年と言われる1972年蒸留にして、同ビンテージ最長熟と思われる1本。
なのですが、半世紀近い熟成年数に対して度数がレッドゾーンが近づいた42.2%は、ちょっと危険な匂いも感じる仕様でもあります。

言わば、枯れきったモルトの味わいとも言える、個性やボディがスカスカで樽感だけ華やか、どの蒸留所とも言えないようなモルトなのではないか。。。と。
ただそんな心配は杞憂でした。確かに枯れたような香味も多少あるものの、それ以上にクライヌリッシュらしい個性や、意外にも存在感のあるピート、戻りの果実味に感じるオークの恩恵。全てのウイスキーがたどり着けるわけではない、熟成後の姿があるのです。


クライヌリッシュで1972年と言えば、かつて同じGMのケルティックシリーズなどで多数リリースされており、いちごの白い部分のような果実味と華やかな樽香から、当時の愛好家にとって長熟クライヌリッシュのベンチマーク的存在となったビンテージだと思います。

そのクライヌリッシュと比較すると、今回のそれは少々傾向が異なる仕上がり。時代を感じるピート香を除けば、オフィシャル14年で感じられる要素の延長にある香味が主体的で、あれがこうなるとは思えない、ではなく、親子の写真を見比べて確かにこれは同じDNAがあると感じるような仕上がり。
昔の原酒の良さをと共に、今の良さも感じる。それらの共通点が香味にある枯れ感で、さながら次の世代にバトンを渡すような構成とも感じられました。


今回のボトルは昨年末に開催した、仲間内のテイスティング会で頂いたものです。
いろんな意味でレアなボトルが集まった会で、価格的に突き抜けていたのがこのクライヌリッシュ。そんな男気溢れる持ち込みを頂いたYakuさんも、自身のブログでこのクライヌリッシュのレビューを公開されています。


自分と異なる視点での評価は、また違った考察となっているだけでなく、持ち主だからこその時間をかけた深堀りが非常に参考になります。
当ブログと合わせて読んで見てください。
サンキューヤック!!

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