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2017年12月

ニッカウイスキー スーパーニッカ 1970年代流通 特級表記 43%

カテゴリ:
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NIKKA WHISKY
SUPER NIKKA
1970~1972's
180ml(760ml) 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★(4)

香り:乾いた穀物系のアロマ、ハッカのようにスーッとする香り立ち。ほのかにレモングラスやオイルのようなアクセント。あわせて若いモルトを思わせるモルティーさ、香ばしい麦芽香も感じる。

味:スムーズなお口当たり、そこから広がるソーピーなフレーバーが口内から鼻腔に抜けていく。奥には薄めた蜂蜜、徐々に香ばしい麦芽風味。余韻にかけてはソーピーさがおさまり、蜂蜜レモンや軽やかな穀物感、ピーティーなほろ苦さが染み込むように残り、心地よいフィニッシュへと繋がる。

香り立ちは芳醇とはいえないが、味わいにはしっかりとしたモルティーさが感じられ、余韻もこの時代にしては悪くない。一方、口当たりで感じられるソーピーなパフュームに衝撃を受ける。少量加水すると香りが開くが、香味とも主体はレモン石鹸のようなソーピーさに。


1962年、竹鶴政孝が亡き最愛の妻への想いを込め、ニッカウイスキーの貯蔵原酒において考えうる様々な組み合わせを試し、竹鶴威氏と共に作り上げたという「初代スーパーニッカ」のことは、ご存知の方も多いと思います。
この初代スーパーニッカは、カガミクリスタル製の手吹きボトルが使われていて、替え栓も一つ一つ異なるなど、内外ともこだわりぬいた1本だったわけですが、その後1970年にリニューアルしたスーパーニッカが、今回のテイスティングアイテムです。(年代情報はニッカウヰスキーデータベースを参照。)

スーパーニッカはブレンデッドウイスキー区分であるものの、レシピ開発が行われた当時のニッカには連続式蒸留機がなく、どの程度グレーンが使われていたのかは判りません。実際に飲んだことが無いので判定もできませんが、主体はモルトウイスキーだったのではないかと思われます。
その後、ニッカは1963年に念願の連続式蒸留機"カフェスチル"を導入するわけですが、カフェグレーンがスーパーニッカに本格的に使われるようになったのは、このラベルチェンジからという説もあります。
また、1969年に操業した宮城峡の原酒は流石に使われてないと思いますが、1973年にもスーパーニッカはリニューアルを行っているため、タイミングで考えるなら次のボトルからと整理するのが自然です。



さて、この2代目スーパーニッカの特徴は、金属的な質感を思わせるラベルもさることながら、なんといってもボトルの肩部分にある突起。女性的なデザインがウリのスーパーニッカにあって、このボトルだけ男性的な趣きがあります。
機会があれば飲んでみたいと思っていたボトルだったのですが、このスーパーニッカが生産されたのは僅か3年余り。中々オークションへの出物もなく、BARでの出会いもなく、しかもウイスキーブーム&マッサン放送で高騰・・・。すっかり高嶺の花になってあきらめていたところに、今回たまたま180mlボトルを入手することが出来ました。
正直これで充分。味も見れるし、むしろスキットル代わりにも使えて最高じゃんって。

前置きすると、この時代のジャパニーズウイスキーはまだまだ黎明期です。
香り立ちについてはあまり良くないものが多く、味も同様。まあある種のロマンみたいなものだから・・・と口に含んで噴出しそうになりました。
口の中で一気に広がるパフューム、それもソーピーなタイプ。そういえば初代スーパーニッカはパフューミーだったという話を聞いたことがありますが、これはまさにです。「言うてもこの時代のニッカでまさか・・・」と半分どころかほとんど信じていなかったのですが、これを飲まされたら信じざるを得ません。

冒頭でも触れたように、竹鶴政孝は亡き妻リタへの想いと愛を込めてこのスーパーニッカを作ったという記録が残っています。
当時の日本人はともかく、イギリス人であるリタが使っていてもおかしくないコロンの類にブレンドの方向性を見出した・・・なんてこともあるんでしょうか。
っていうかそもそもこの時代の余市はパフューミーだった?あるいは輸入していた原酒の系統なのか。冷静にブレンドそのものとしてみてみると、当時のブレンデッドにありがちなブレンドアルコールのような香味べたべたでない、モルティーさにメーカーの気合いを感じる造りではありますが、それ以上に多くの謎が残ってしまいました。



ちなみに話は変りますが、この時代のスーパーニッカのラベル、何かに似てるなと思ったら、ジョニーウォーカースイングですね。
並べてみるとかな~り似てる。ボトル形状が近いというのもありますが、書体も含めてそっくりです(笑)。
今こんなのリリースしたらひと騒動起きちゃいそうですが、これもまた時代を感じる要素です。


【雑談】
クリスマスを挟んで、更新をしばらくお休みしてしまいました。
ここ1ヶ月間、虫垂炎が治ってこれで今年はもう無いだろうと思っていたところ、腸の調子が戻りきらないところで息子の胃腸風邪を貰ってしまい、またしても1週間食事すらままならぬ断酒の日々。まあネタは大量にあるので更新は問題なかったのですが、体調不良にかまけて年賀状作成と、毎年作っている1年間分の家族の写真整理&アルバム作業が滞り、それを集中的にやっていたわけです。おかげでなんとか間に合わせることができました(笑)。
とりあえずこれで年内にやるべき作業は完了。後はブログ、こちらも更新待ち記事にブラインドサンプルもたまってきた。。。ラストスパートをかけていきますよ!

インチマリン 16年 2001-2017 JIS向け 53.3% #4158

カテゴリ:
INCHMURRIN
Aged 16 Years 
Distilled 2001
Bottled 2017
Cask type Refill Bourbon Barrel #4158
Exclusive to Japan Import System 
700ml 53.3%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:BAR飲み
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:トーンの高い刺激。草っぽさと殻付きの麦芽、乾燥した紙のようなアロマ、ほのかにバニラ。スワリングするとケミカルな要素を伴う甘みも感じられる。

味:オイリーでアタックの強い口当たり。ドライジンジャー、植物感、湿った紙っぽさ。
序盤は果実味は控えめだが、余韻にかけては風邪薬シロップやレモンキャンディ、人工的なニュアンスを伴う甘さが広がり、スパイシーでヒリヒリとしたフィニッシュへと繋がる。

紙っぽさとケミカルなフルーティーさ。2つの個性が香味の前半と後半で、別々に存在しているようなボトル。ストレートでは幾つか好ましいニュアンスもあるが、癖の方が強く感じられる。少量加水すると多少果実味が開くが、加水しすぎはオイリーさが前に出すぎてしまう。


今から1年前、ウイスキー業界でちょっとした話題になったのがJIS向けのインチマリン2003。
インチマリンと言えば、濡れた段ボールや紙っぽさというハウススタイルで有名ですが、新しいラベルデザインとなった直近のインチマリン、特にこのJIS向け2003は、そうした個性よりアイリッシュ系のケミカルなフルーティーさが前面にあり、新しい魅力を備えたスタイルに生まれ変わっていました。

この時の衝撃は「ロッホローモンド蒸留所、新世紀の逆襲。南ハイランドの可能性。」として、このブログでも記事にしていたところ。
ただ、これを持って一部愛好家間では"くりりん=インチマリン大好き"、という妙な図式も語られたとか。大好きって言うか、美味しく面白いウイスキーなら特段蒸留所にこだわりがないだけで、言わばプロ野球で球団はどうでもいいけど選手個人は好き、というタイプなだけなんですよね。(勿論その時その時の球団としての戦略、ハウススタイルも楽しむ要素ですが。)

そして今年、私生活では幾度となく迎えたプロジェクトの山場に加え、高熱や虫垂炎だとバタバタしていた間にリリースされていたのが、この2001-2017。昨年の続くインチマリンとしては2本目のJIS向けボトルです。
昨年の2003は誰も予想しない出来で、その2匹目のドジョウを期待したいところでしたが、今回のビンテージはちょっと違うかも、と感じていたのが第一印象。
飲んでみてもキャッチーなフルーティーさより「所謂ロッホローモンドらしさ」の方がメインに感じられる部分が強く、美味しいより面白いタイプ。前作以上に好みが分かれる、ある意味でらしいボトルだと感じました。

この2本で何が違ったのか。前作は樽が不明で比較は出来ませんが、ファーストフィルバーボンだった可能性が一つ。
また、その他のリリースを見ても、2000年ごろとそれ以前、そして直近で香味の系統が異なる点がもう一つ。例えばオフィシャルラインナップでは12年と18年でハッキリと酒質の個性の系統に変化があって、18年の方がオイリーさや紙系の香味は強く感じられます。
ロッホローモンドでは1999年に新しいモルト用蒸留機を導入している模様。ここからロッホローモンド用とインチマリン用のラインが別れているそうで、製法の差別化等と共に、徐々に最近の香味の変化に繋がっていると考えられます。

つまり、従来のロッホローモンドの個性ではなくキャッチーな香味を求めていくなら、2000年前後よりそれ以降というのが持論。このロジックでいくと2003、4、5あたりは熟成期間的に面白そうなので、何処かでファーストフィルバーボンに詰めた10年熟成とかリリースしてくれれば面白いんですけど。。。

グレンファークラス105 8年表記 1980年代流通 60%

カテゴリ:
GLENFARCLAS
105 Proof
8 years old
1980-1990's
700ml 60%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:持ち寄り会
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:黒蜜を思わせるコクのある甘い香り立ち、古酒感、淡いサルファリーさ。スワリングするとアルコールのアタック、レーズンチョコレートのような甘みにコーティングされた酸味も感じられる。

味:かりんとうや黒砂糖を思わせる甘み、香ばしさを感じる。ヒネ系の古酒感、オレンジピールチョコ、ウッディでハイトーンなフレーバーの広がり。
余韻はドライでサルファリー、ヒリヒリとした度数由来の刺激とカラメルソースの甘みが残る。

シェリー感に対して度数が強く、それが樽感からくる奥行きを相殺しているような飲み心地だが、古酒らしく角の取れたアルコール感が、これはこれとしてバランスが取れているとも言える。加水はシェリー樽由来の甘みが引き立つ一方、サルファリーさも前に出てくるため一長一短な変化がある。


日本市場では珍しい、スクリューキャップ仕様のグレンファークラス105、8年表記時代のボトルです。
裏ラベルにはイギリスのバーコードがプリントされていることと、キャップにはイタリアTAXが貼られているため、流通時期は両仕様が共通する1980年代後半から1990年代初頭と考えられます。

この時代の105は日本にも輸入されていて、オフィシャルでありながら60%というハイプルーフが当時の愛好家からも注目されていたようです。シェリー系の対抗馬となるマッカランも10年カスクストレングス(こちらは55〜58%)がありましたし、この飲み比べが普通に提案されていた時代が羨ましい。。。
同時期に日本で流通していた105は、真っ黒なシール材が被せられたコルクキャップ仕様。その後1990年代に金色のシール材へと変化、歴史を感じさせる8年表記もなくなり、最終的にはトールボトルから現在のデザインのボトルへと変わっていきます。

この遍歴において、中身のシェリー感の変化についてはもうお察しのことと思いますのであえて触れません。
では今回のスクリューキャップ仕様のこれはどうかというと、ベースはオールド系の黒砂糖っぽい甘さのあるシェリー感で悪くない一方。105ってこんなサルファリーなニュアンスあったかな?、という意外なフレーバー。
元々この時期あたりから、短期熟成のファークラスは往年のそれと比較すると力を落としつつあるのですが、サルファリーな要素は樽からくるもの。ニュアンスの異なる感じはブレンドや、流通先の違いによるものかもしれません。

熟成感としてはオールド感を差し引いて長期熟成が使われてる感じでもなく、平均10〜12年くらいかなという印象。
荒さを適度に残しつつ、不必要な部分はシェリーが包み込む、若さゆえの勢いを楽しめる1本。個人的には硫黄が無ければもっと。。。という感じですが、開封後数年は持つボトルなので、長く変化を見守っていくのも良いと思います。

マイ樽 熟成報告 〜熟成3年とボトリング〜

カテゴリ:
存在を忘れていたわけでは無いのですが、今年は記事として取り上げていなかった我が家のマイ樽。
いよいよボトリングした2014年12月から追加熟成期間は3年となり、キリもいいので先週末にボトリングを行いました。



記事に取り上げるのは1年ぶりという事で、これまでのおさらいから。
使っている樽は2010年に購入した有明産業製、5リットルのアメリカンホワイトオーク樽(チャー済み)。購入当初は新樽でしたが、今回の熟成を行うまでに4年間色々なウイスキーを詰めているので、リフィル樽と言えるスペックです。
新樽状態では壊れた蛇口のように樽感(エキス)が出すぎて、何を入れても1~2週間で真っ黒になってしまった話は何度か記事で触れているところですが、今回のそれは何度も使うことで適度に樽感を灰汁抜きした状態のもの。樽感のコントロールが、ミニ樽熟成のポイントでもあります。

樽詰めしたのは、以下シングルカスクの短期熟成モルトウイスキー。
秩父モルトドリーム2012(2年)62%ノンピート 600ml
ハイランドパーク1995(5年)62% 2100ml
ハイランドパーク1996(10年)60% 400ml
マッカラン1995(5年)60% 1400ml ・・・など
どれも樽感が淡く、適度に荒さが取れてきたモルトで、写真にあるプロヴェナンスのハイランドパークとマッカランが大半を占めるブレンド構成となっています。 



先に触れたように、ミニ樽での本格的な熟成は、樽の小ささゆえに過度な樽感が付きやすいことが最大のネックとなる訳ですが、もう一つのネックはエンジェルズシェア、揮発の多さも注意が必要です。 

熟成期間を通して記録した樽の重量が以下の通り。
2014年12月 9.4kg(樽詰め時)
2015年6月 9.3kg
2015年11月 8.5kg
2016年5月 8.1kg
2016年12月 7.4kg
2017年6月 7.1kg
2017年12月 6.6kg



熟成期間3年間で9.4kg→6.6kg、エンジェルズシェア2.8kg。
アルコールは水と比重が異なるため、度数を60%、液体温度20度とし1ml=0.891とすると、約3200ml、ボトル4本半が天使の分け前として飲まれてしまった計算となります。 (実際は家主のシェア、状態確認を兼ねて飲んだ分が200〜300mlほど含まれます。)
ウイスキーの一般的な知識として知られているエンジェルズシェアは、原酒の総量に対し年間2%前後ですが、こちらは3年間で71%、年間平均で約23%、10倍以上とちょっと比較になりません。

エンジェルズシェアは熟成環境によって変化するため、例えば地下室のワインセラーのように気温が低く湿度が適度に保たれた場所の場合、今回ほどの揮発は無いと思いますが、一般的な生活環境下に置かれた樽の場合は大差ない結果になると考えられます。 
加えて、樽の組み合わせの正確さもエンジェルズシェアや仕上がり(主に度数)に違いが出る要素であり、今回使っている有明産業の樽は非常に組み合わせがしっかりしている反面、今市場に多く出回っている某社のミニ樽は漏れが生じることもあるなど、あまり良くないという話も聞きます。 

では継ぎ目のないような加工をした樽や樽材で作ったボトルのようなモノはどうかというと、もはやそれはボトルの中に木片を沈めているのと同様で、樽を通じた呼吸がない以上熟成とは言えません。
熟成は、単に樽感が出るだけではなく、樽の呼吸によってゆっくりとアルコールや過剰な香味が外に出ていくこと、樽材が不純物を吸収することで成り立つものです。


その上で、忘れてはいけないのが樽感です。以下の写真、右側が熟成開始時のもの、左側が今回払い出した3年間追加熟成時、2枚目の写真は約1年5ヶ月、折り返し時点付近の状況です。
色合いは赤みがかった透明感のあるなかなか良い外観。香りはチャーオーク樽由来のキャラメルのような甘み、ウッディな木香、熟成開始時にあったレモングラスや乳酸などの若い要素はなく、イメージ的にはかつて余市蒸留所で販売していた「シングルカスク10年新樽熟成」を思わせる要素が備わっています。香りと色合いは、想定の範囲に収まりました。


しかし問題は味。香り同様に新樽系のフレーバーが広がり、パンチのある味わいは良いとして、そうしたフレーバーに対して過剰にドライでシブいのです。
樽から滲み出るエキス由来と思しきタンニンと比例して感じる苦味ではなく、水分を持っていかれる感覚と、渋柿やアク抜きが十分でなかった筍を食べた時のような口の中をシワシワにするあの感覚。加水すると多少マシになりますが、これはとてつもない(笑)。

以前、ミニ樽で5年間熟成させたという幻の蒸留所「ロッホユー」の原酒を飲ませてもらいましたが、やはり同様の仕上がりとなっていました。
これは樽のエキスというより、樽材がアルコールによって溶けた結果付与されるフレーバーと考えられ、ウイスキーの総量に対して接触面積が大きいミニ樽による長期熟成の難しさが、この要素に集約されていると言えます。

まあ当然ですね。このやり方で美味しくなるなら、大手メーカーの熟成庫はミニ樽で溢れているはずです。
あくまでベースの整ったウイスキーに対する香りづけ程度。間違ってもニューポットからがっちり熟成させるような事は避けた方が賢明であり、直感的な話ですが、日本の環境下において数年単位での熟成を行うなら、最低でも50リットル、理想的には100リットル以上の樽で無ければ自然と飲める仕上がりにはならないだろうと思います。


と、ここまで書くと「ミニ樽は扱いが難しくて商品としてオススメ出来ないぜ」って読めてしまうかもしれませんが、これはあくまで数年単位の熟成を行なった場合の話です。
数週間から数カ月単位であれば、巷にあるシングルカスクのカスクストレングスウイスキーでも失われている樽出し直後の香りの広がり、樽の繊細なニュアンスを楽しめるグッズです。
また、ウイスキーの熟成を間近に感じられることは得難いもの。フレーバーの変化、樽感の出方、ウイスキーを理解をする上で、同じ金額だけボトルを飲む以上に経験値を与えてくれるもので、そうした意味では試す価値があります。

以上の経験から、今後ミニ樽で本格的な熟成を行う方にアドバイスをさせて頂くなら、
①事前の樽のアク抜きをホワイトリカーなどで行なっておくこと。
②樽詰めするウイスキーはニューポットは避け、樽のサイズに応じた熟成のものを選ぶ事。
③周囲の気温環境に注意すること。
特に③に関しては、上記エンジェルズシェアや樽感の発生時期が気温の高い夏場に集中しているため、夏場は一度払いだしてボトルで保管し、気温が下がってきた頃に再度熟成を開始すると言うスキームを組んで、熟成をコントロールしても良いかもしれません。 
こうして、我が家のミニ樽熟成の旅は3年の区切りを迎えた訳ですが、樽というものは困ったもので、中身を空にしておくことが出来ず、何かを入れておかなければ乾燥して使えなくなってしまいます。(中身を入れてもいずれ揮発して空になる。なんと金食い虫でしょうw)

そこで次なる旅は、普段飲み用のバーボン。
自分はアウトドアの際にバーボンを持ち歩くことが多く、今回の熟成で得られたメープルやキャラメル系の甘味、樽香が半年から1年くらいで付与されるなら、普段使いの選択肢が増えてバーボン樽(経歴的には違いますが)も作れて、一石二鳥じゃない?と。
ベースに選んだのはワイルドターキー8年。後はハイプルーフなものをボチボチ追加して、50%以上が維持出来るように調整。

近年、"マイルド"ターキーとも言われ、パンチやコクがないと酷評も目立つバーボンはどう変化するのか。
この経過も適宜記事にしていきたいと思います。

ロングモーン 28年 1973-2001 キングスバリー 57.7% #3968

カテゴリ:
LONGMORN
KINGSBURY
Aged 28 years
Distilled 1973
Bottled 2001
Cask type Sherry #3968
700ml 57.7%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@借り物
時期:開封後2〜3年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:非常に濃厚。煮詰めたシロップのような甘み、プルーン、淡いサルファリーさ。鼻腔を刺激するタンニンやビターなウッディネス。

味:ウッディでスパイシー、パワフルで濃厚な口当たり。蜜っぽい甘みからローストアーモンド、カカオチョコレートで中間以降は苦味が強いゴムゴム系。
余韻は長いがサルファリーな要素を伴い、ビターでドライなタンニン、渋みが舌の上の水分を奪う。

見るからに圧殺系であり、開封時は激渋タンニン丸硫黄添加だったボトル。開封後の変化で多少マシになったが、本質的な要素は変わっていない。40%を切る程度まで加水すると若干バランスが改善し、果実味も感じやすくなるが。。。


先日、当ブログに頂いたコメントがきっかけで、再テイスティングすることになったボトル。
なんでか1973ロングモーンにはあまり良い思い出がなく、その思い出の一つを構成しているのがこのボトルでした。
(コメント頂いたウイスキー太郎さん、ボトルを持ってきてくださったGさんありがとうございます。)

恐らく海外評価が高い(特にモルトマニアックスあたり)のは間違い無いものの、ちょっと自分の口に合わないこの圧殺系シェリーな味わい。
圧殺系もモノによっては嫌いじゃ無いのですが、なんというか果実味乏しくゴムっぽいのや、改めていうまでもなく硫黄が出ているボトルは苦手で、このボトルもまたそのジャンルをかすめてしまっていました。
いやほんと、ウイスキー用の樽に硫黄を焚くことを考案した人間を締め上げたい。。。

なんとか香味を開かせる良い方向を探すと、加水の先にフルーティーさがあったり、口の中で長い時間転がしていると、ウェアハウスの中にいるような落ち着いた香味も感じられ、瓶内熟成の先に違う姿があったのか、あるいはこのボトルだけ何かの間違いでひねくれてしまった、イレギュラーなのかも。。。と。
何れにせよ、数年の歳月経てなお当時の印象に大きな変化なく、このビンテージの印象はやはり難しいです。

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