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2017年12月

2017年 年末のご挨拶 皆様良いお年をお迎え下さい

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2017年最後の更新となりました。
当ブログ読者の皆様、本年も趣味全開なブログを閲覧頂き誠にありがとうございます。
そしてウイスキーを通じて交流頂いた愛好家の皆様、月並みですが、今年も様々な出会い、テイスティングの機会や情報を頂き感謝です。

本来なら年末ということでお約束的な1年間の振り返りや印象に残ったボトルランキングとか、なんか企画的な記事を書きたいところではありましたが、仕事納め直後から家族で妻方の実家に帰省しているため、がっつりブログ活動ともいきません(笑)。
とは言え振り返りはやっておきたいので、それは日を改めるとして、今日は簡単な挨拶記事でご容赦頂ければと存じます。


今年は3月のブログ開設2周年時点で、テイスティングレビュー以外に考察記事など、色々なタイプの更新をしていきたいと宣言していました。
ところが、その後本業の方で重要なプロジェクトの立ち上げに関わることとなり、業務量が激増。6月あたりから深夜残業休日出勤、家には着替えに帰るだけという日も珍しくない中、ブログ更新は休みを挟んだり、記事をある程度ストック出来るテイスティング系のものが中心とならざるを得ず。結局、最後までそんな感じになってしまいました。
せめての救いは、そのプロジェクトが無事に立ち上がり、一定の成果が得られる見込みとなったこと。。。いやー本当に良かった。

ただその分2017年の更新記事数は301と、昨年の450更新から大きく減ってしまいました。
内容的にもニューリリースや業界動向などの情報を追えず、追えていても記事にできず、真新しさの少ない内容だったように感じます。
それでも1年間を通じての総アクセス数は約350万PV。前年が約300万PVだったので、更新が減りつつも非常に多くの訪問を頂きました。
日本のコアなウイスキー人口を考えると、この規模は結構な割合だと思います。

それ故、もっと色んなコンテンツを充実させたかったし、この注目度を何かに繋げてみたかったなという気持ちは残りました。
例えば7月のシビハイ紹介は、それを実際に店頭展開される飲食店も見られるなど、ただ終売やニューリリースを煽るだけではない動きに繋げられた事例。
後はまだまだ確たる情報発信にはなってませんが、レビューにしてもワインやシェリー、日本酒等他のジャンルへの橋渡しとか。
ウイスキーレビューだけでなく、選択肢を増やせるような話題提供も出来たら面白いですよね。
ここは来年の課題とさせてもらえればと思います。


さて、業界全体で様々な動きがあったこの1年でしたが、ブロガーの一人として感じたことは、ウイスキー愛好家数が増えたことから、ブログ等の情報を参考にされる方や情報発信活動をされる方が増えて来たということです。
ウスケバ時代から考えると、一時期情報発信の熱は引いていたものの、その数は過去最高数なのではないでしょうか。
それ故、発信する側は情報の精度、ソースの正しさとそれを取捨選択する目利きが、さらに求められるようになって来たとも感じます。

今まではなんとく参考にしていた情報が、いざ紐解いてみると「あれ?」と言うのは結構あります。
勿論その当時は正しかったと言う情報もあり、一概の全てが悪いという話ではありませんが、中には全くもってどこから生まれたかわからない情報が広まっていくことも起こりうると感じます。
少なくとも自分の記事はそうならないよう、情報の精査は今まで以上に心がけていきたいです。

それでは長々と書いてしまいましたが、皆様どうぞ良い年をお迎えください。
また、来年も「くりりんのウイスキー置場」を書き手ともどうぞよろしくお願いします。

ダルモア 1263 キングアレキサンダー3世 40%

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DALMORE
1263 KING ALEXANDER Ⅲ
Single Highland Malt Whisky
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:リッチで甘く落ち着きのあるアロマ。レーズンチョコレート、あるいはかりんとうの香ばしい甘さ、古酒系のウッディネス。ウェアハウスを思わせる香りも混じる複雑で優雅な香り。

味:スムーズな口当たり。キャラメリゼやチョコブラウニー、しっかりとした甘みとふくよかさに加え、レーズンやクランベリーチョコレートのような落ち着いた甘酸っぱさ。じわじわと適度なウッディネス。多彩な香味の広がりがある。
余韻はスウィートでビター。蜜のような甘み、落ち着きのある樽香が染み込むように長く残る。

負担のない飲み口、40%加水だがボディが維持されて程よい飲みごたえ。加えて6種類の樽が使われたという香味の多彩さとオフィシャルらしいバランスの良さを感じる構成でもある。家飲み用に常時置いておきたい。加水は不要、ストレートで。


現行ダルモアのオフィシャルスタンダードは、シェリー樽100%の拘りはないもののシェリー樽をメインとした原酒構成のものが多く、12年や15年、あるいは復活したシガーモルトなど、エントリーグレードからシェリー樽の比率が高いリリースが揃っています。

そのダルモアのスタンダードラインナップの中で、サブハイエンド的位置付けに当たるのが今回のボトル。
キングアレキサンダー三世は、赤ワインのカベルネ・ソーヴィニヨン樽、酒精強化ワインであるマルサラ樽、マディラ樽、ポート樽、オロロソシェリー樽、そしてバーボン樽の6種類の樽で熟成した原酒で構成されているとされており、ともすれば香味の予想がしづらいところもありますが、このボトルも基本的な香味の方向性はシェリー系のそれとなっています。
シェリー樽原酒の比率が多いか、酒精強化ワイン樽が6種類の2/3であることが関係しているのかもしれません。

ノンエイジ表記ですが若いところはなく、熟成感は20年程度はあるであろうスムーズさ。オロロソシェリー系のチョコレートや深みのある甘み、そこに例えばワイン樽を思わせるベリー系のニュアンス、マディラ樽のウッディネスなど、それぞれの樽の得意分野が補われ、ポジティブな形で多彩な香味に繋がっています。
40%加水であるため、突き抜けた個性や高度数なモルトに飲みごたえを感じている場合は物足りなさを覚えるかも知れません。ただ個人的にはこれくらいのほうが飲み疲れず、複数杯から1本を通して楽しめる、考えられて設計されたオフィシャルらしいバランスだと感じます。
正直侮っていた部分はありましたが、これは素直に美味しいモルトウイスキーです。


ダルモアは上記シガーモルトもリリースされているように、シガーとの組み合わせが推奨されることが多い銘柄です。
このキングアレキサンダーⅢ世も、明治屋が輸入を開始する当たって「シガーの芳香とマッチするブーケとアロマ」としてPRが行われていました。
シェリー系原酒を主軸とする、奥行きある甘みとのマッチングは間違いないところ。わりと重めなシガーでも問題なく、パルタガスあたりは鉄板。紫煙を燻らせダルモアを傾けて1日を終える、なんとも贅沢な時間ですね。

ワッセンズ シングルバレル ケンタッキーバーボン 47%

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WATHEN'S
Kentucky Bourbon
Single Barrel
Barrel No,5239
Hand Bottled 2013.10.31
750ml 47%

グラス:グレンケアン
場所:自宅
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライな香り立ちだが甘みには艶がある。メープルシロップ、ビスケット、冷めたトーストのような酵母香と焦げ感、ウッディなえぐみも少し感じられる。

味:マイルドでメローな口当たり。シュガートーストやビスケット、薄めたメープルシロップ。香り同様えぐみも少々ある。余韻は甘い樽香が鼻腔に抜け、スパイシーで適度にドライ。胡桃や焦げたようなほろ苦さを伴うがすっきりとしている。

華やかな果実味、感嘆するような奥行きや複雑さはないが、ベーシックな作りの中で甘みに「艶」があるバーボン。派手さはないが、しみじみ楽しませてくれる普段飲み用。少量加水するとえぐみが軽減され、さらに親しみやすくなる。ロックも悪くない。


近年ライト化が著しく、かつてのコクや奥深さを失いつつあるバーボン全般。もちろん高価格帯のものはそれなりに美味しいものが多いのは言うまでもありませんが、しかし普段飲みに使うような5000円未満で美味しいバーボンを探そうとすると、随分ハードルが上がってしまいました。

今回紹介するワッセンズは5000円以内で買えるバーボンの中で、オススメしたい銘柄の一つ。知名度こそ低く、知る人ぞ知るというレベルですが、派手さのないベーシックな作りの中で、かつてのバーボンにあった甘みの艶を多少なりに備えている。現行のバーボンから失われつつある要素があるのです。
特にオールドバーボンの魅力を知っている人ほど、感じやすいのではないかなと思います。



ワッセンズはかつては独自の蒸留所で少量生産されていましたが、その後統廃合をへて現在はワッセンズ蒸留所(O.Z.TYLER Distillery)で作られているとされています。
ただこの蒸留所は2016年に新設されたもので、ボトリング時期で考えると計算が合わず。。。調べてみると現行の中身はバッファロートレース蒸留所での生産で、創業者から伝えられた酵母を用いたワッセンズオリジナル仕様の蒸留で作られているそうです。

バーボンの美味しさは酵母の歴史、良し悪しにあると言う説を聞いたことがありますが、樽で苦労する現行品にあってこの味わいがあるなら、酵母の効果は無視できないのかも知れません。
ちなみにラベルに書かれたEightは、作り手の8世代に渡る歴史を書いたもの。その歴史が生み出した酵母が結実した味わいは、バーボンに琴線のある方は新しい蒸留所に生産が切り替わる前に飲んでおくべき1本とも思います。

グレンダラン 20年 1978-1998 OMC 50%

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GLEN DULLAN
OLD MALT CASK
Aged 20 years
Distilled 1978
Bottled 1998
One of 299 Bottles
700ml 50%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:青みがかったニュアンスの伴う淡く華やかなオーク香。麦感と蜜っぽさ、王林系の林檎を思わせる果実香、ほのかにスモーキーで土っぽいアロマも混じってくる。

味:とろりとした口当たり、淡い華やかさを感じるウッディネス。青林檎や乾いた麦芽、奥にはピートの層があり、後半にかけてスモーキーフレーバーが主張してくる。
余韻はヒリヒリとしたハイトーンな刺激、軽やかな麦芽風味の香ばしさとピーティーなほろ苦さで長く続く。

使われている樽はリフィルシェリーホグスヘッドか。樽感は程よく華やか、酒質由来の味わいがしっかり主張し、奥行きも感じられる構成。ピートもいい仕事をしている。ストレートではハイトーンで勢いのある味わいだが、少量加水すると香りが開き、林檎のコンポートを思わせるやわらかくフルーティーな甘さを感じる。


今は懐かしいオールドモルトカスクの旧ボトル。リフィル系の樽感で酒質メインなスペイサイドモルトが飲みたくなり、抜栓しました。

近年のグレンダランはボディのライト化が進み、花と動物シリーズや、現在販売されている免税店向けのシングルトン・グレンダランも悪くないですが、40〜43%加水であることも手伝って穏やかすぎて個性がボケてしまっている印象。
対してハイプルーフのそれは、瓶熟向けとも言える結構やんちゃで重厚な酒質を楽しめるのが魅力です。

ただ、今回の蒸留時期は、グレンダランにあって少々特殊な歴史の中にあります。
グレンダランは1985年に蒸留所が新しい設備に切り替わっており、今回のボトルは切り替え前の蒸留。。。かと言うと、厳密には1962年に古くからあった蒸留所をリニューアル。1972年には6基のスチルを有する新蒸留所を新設。その後しばらく旧蒸留所と新蒸留所が平行して稼動し、1985年に旧蒸留所が閉鎖したという流れ。
丁度ど真ん中の時期に当たる今回のボトルは、新旧どちらで蒸留されたか、あるいは混ぜられたものかは判断つかない状況です。

つまり平行稼働期間となる13年余り、新旧2つの蒸留所がグレンダラン名義でモルトを生産していたことになるわけですが、いわばクライヌリッシュとブローラのような関係であった新旧蒸留所が同一名義。これが問題とならなかったのは、「当時の基準がおおらかだったから」で片付けるには疑問が残ります。
乱暴な整理ですが、グレンダランの原酒はブレンド向けで混ぜて使われる前提であるため、シングルモルトリリースに使われない事から問題にならなかった、ということでしょうか。
(1970年代から1980年代後半にかけての際どい時期に、12年表記のシングルモルトがリリースされているのですが。。。)

そんな過去に謎を持つグレンダランですが、ブレンド主体にするには惜しい、爽やかなフルーティーさとスモーキーさを持った、スコッチらしい個性のあるモルトです。
近年シングルモルト需要の高まりから、ブレンド向け蒸留所からも様々な銘柄がリリースされており、グレンダランがラインナップに加わる日も遠くないのではと期待しています。


ロングロウ 19年 1998-2017 シングルカスク ウィスク・イー向け 56%

カテゴリ:
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LONGLOW
SINGLE CASK
Aged 19 years
Distilled 1998
Bottled 2017
Cask type Refill Sherry Butt
An Exclusive Bottled for Whisky-e
700ml 56%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:持ち寄り会
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:甘くどっしりとしたシェリー香、焦げたカラメルソースやみたらし醤油、コーヒーチョコレート。ピーティーなスモーキーさに加え、サルファリーな要素も混じっている。

味:パワフルでリッチな口当たり。キャラメルソースの甘みと焦げ感、ローストした麦芽風味。合わせてサルファリーなニュアンスも混じるが、全体的な濃さゆえすぐにかき消される。
余韻はドライでソルティ、ダシっぽさとピーティーなモルトスナックの香ばしさ、ほろ苦さを伴う複雑な余韻。

樽感が強いが、それ以上に酒質として際立った個性のあるヘビーな構成。今すぐ飲んでもロングロウとして愛好家から求められる要素はあると感じるが、10年、20年瓶熟させても面白そう。少量加水すると独特の麦系の風味に加えソルティな要素が判りやすくなるものの、硫黄要素も表面に出てくる。
それにしても、飲んでいて妙に食欲をそそられるのは自分だけだろうか。

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スプリングバンクのヘビーピーテッドタイプであり、コアな愛好者の多い銘柄でもあるロングロウ。
今回のリリースは、一言でアメリカンなグルメ。BBQのように大味でワイルドで、しっかりとしたタレ系の味付けの中に、素材由来の味わいも潜んでいる。そんな印象を持つシングルモルトです。

近年のロングロウでシェリーカスクというと、こうしたどっしりとした味付けのものが目立つようにも思います。
直近で近い熟成年数のリリースで、比較的色の薄かった18年にしてもやはりシェリー感が独特。出汁の混ざったカラメルというか、薄口醤油ダレというか。合わせて感じるサルファリーさが自分にとっては苦手な要素なので、毎日これを飲みたいとは思わないのですが、ハマる人はトコトンハマる、アイラとは違う中毒性があるのもわかります。

(スプリングバンク蒸留所はフロアモルティングを100%行う数少ない蒸留所。キルニングで使われるピートは写真奥の乾燥したタイプと手前の湿り気のあるタイプ、産地も異なる2種類が使われている。Photo by K67)

スプリングバンクとロングロウ、特にロングロウではその位置付け上ピートの個性が強く出ています。
かつてスプリングバンク蒸留所では、キャンベルタウン産の石炭やピートを用いた仕込みが行われていましたが、現在使われているピートは写真の乾燥タイプはトミントール、湿っているタイプはインヴァネス地区産という話。ただキャンベルタウンにもPeat bogはあるようなので、全く供給していないワケではないと思うのですが、需要と供給に対して他の地方のものも使わなければ生産が追いつかないということなのかもしれません。

ちなみに乾燥したピートに比べ、湿ったピートの方が強く煙が出る性質があります。つまりより強く燻すことが出来るということで、ピートを混ぜることで香味への影響を調整していると考えられます。
ロングロウは湿ったピートを多めに炊いて強く風味をつけているとか、スプリングバンクの方は乾燥タイプが多めとか、一口にピートと言っても色々あって、飲みながら考える楽しさがさらに増えますね。

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