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2017年01月

イチローズモルト 秩父 ピーテッド 2016 54.5%

カテゴリ:

CHICHIBU
Ichiro's Malt
The Peated 2016
Distilled 2012
Bottled 2016
700ml 54.5%

グラス:サントリーテイスティング
量:30ml程度
場所:BAR飲み(GOSSE@目黒)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:スモーキーで強いアロマ、バニラやナッツを思わせる甘い樽香、ほのかにエステリー。淡いヨードとピートフレーバーの奥から乾いた木のアロマも感じる。

味:やや粘性を伴う口当たり、パワフルなアタック。香り同様にピートフレーバーとバニラを思わせる甘みと微かにドライオレンジ、柑橘のニュアンス。そして強くスモーキーな鼻抜け。
余韻はスパイシーでドライ、乾いた麦芽風味、ピーティーで強いアルコール感を喉に伴う長い余韻。

加水しても基本的な方向性は変わらない。アイラ島のピートを使ったのか、スモーキーさに淡いヨード混じるようにも感じる。香味の変化という点ではやや単調気味だが、4年少々でこの酒質なら、秩父の環境でも10年程度の熟成に耐えるのでは。


今一大ブームの中にある、秩父蒸留所のピーテッド。2016年リリースのこのボトルは、若いなりに中々よく出来た1本です。
秩父の原酒は蒸留開始初期のものだと多少バラつきがある感じですが、2010年くらいから蒸留ノウハウの蓄積か、だいぶ安定したように思います。
口当たりの若い原酒らしく荒さ、パワーはありますが、ねっとりとしたコク、変な酸味やえぐみの無さ、そこにラフロイグ系統のピートフレーバーで、秩父モルトに多く見られる癖を感じにくい仕上がりとなっています。
フレーバー全体のまとまりを考えると、これまでリリースされてきた秩父のピーテッドより良い出来なんじゃないでしょうか。

若いモルトはピーテッドだとそれなりに楽しめるものが多い、と言うのはウイスキーにおける定石の一つと言えます。 
料理で言うならカレーみたいなもので、多少脱線しても最後はスパイスのキャラクターでなんとかしてしまうあの感じ。
最近はボトラーズ側の原酒不足からカリラ、タリスカー等で短熟モルトがリリースされているだけでなく、日本では秩父以外のクラフトディスティラリーでも、ピーテッド原酒の生産が宣言されているところ。テイスティングする機会はさらに増えそうです。


なお、ピーテッドモルトウイスキーの需要増からか、仕込みに使うピーテッド麦芽の値段が上がっているそうです。(国内での流通価格は、昔はピーテッド麦芽のほうがノンピートより安かったのだとか。)
なるほど、これも時代の流れだなぁと。
そしてピーテッドをこれから仕込む蒸留所が、ピートの強い個性の中でどのように蒸留所毎のキャラクターを表現するのか。
また、ピートと一括りに言っても、内陸のものかアイラのものか、果ては日本産という選択肢に加え、その乾き具合などでもフレーバーは異なると聞きます。
楽しみな要素は尽きませんね。

ヘイグ トレンド 1980年代流通 40% 特級表記

カテゴリ:
John HAIG
Trend
Fine Old Scotch Whisky
(No Aged)
1980's
500ml 40%

グラス:グレンケアン
場所:BAR飲み(Eclipse@神田)
時期:不明
暫定評価:★★★★★(4-5)

香り:ホットケーキシロップを思わせる甘い香り立ち、コーンフレークのような乾いた穀物香、若干の植物系のアロマもあり、奥行きはあまり感じられない。

 味:グレーンの鼈甲飴など粘性のある甘い口当たり、乾いた植物、サトウキビ、舌を刺激する荒さ、軽いスパイス。ボディは軽く、余韻はドライでカルメ焼きを思わせる駄菓子っぽい甘みが残る。


ブレンデッドウイスキーのビック5、ヘイグから日本向けに発売されたブレンデッドウイスキー。
流通時期は1980年代後期、所謂特級時代の末期頃の一時期で、当時のスタンダードのヘイグと並行して販売されていました。
サントリーが販売したこともあり、結構な量が広く出回った模様。今なおリユース市場はおろか古い酒屋の店頭で見かけますが、あまり長く流通していたボトルではないようです。

その構成は特級時代末期のブレンドにありがちな、コクの少ないタイプ。グレーンと若いモルトが中心の構成を思わせる味わいです。
ヘイグやディンプルのキーモルトは、グレンロッシーとグレンキンチー、そしてヘイグがスコッチ業界にその名を刻むキャメロンブリッジと言われていますが、これはキャメロンブリッジとキンチーがメインか。同時期流通のデラックス品のディンプル等と比べると、その違いは明らかです。

飲み方はハイボールでは使える、というか完全にハイボール要員だと言うのが自分の感想であるとともに、これだったらスタンダードのヘイグを選ぶかなあ。。。という気持ちも(汗)。
流通期間があまり長くなかった経緯が、何処となく味わいから伝わってくるようです。

リンクウッド 26年 1981-2008 レッドワインフィニッシュ 55.5%

カテゴリ:
IMG_3067
LINKWOOD
Aged 26 Years
Distilled 1981
Bottled 2008
Cask type Refill American Oak
(Matured in Red Wine Casks for 14 Years)
500ml 55.5%

グラス:木村硝子テイスティング
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後2ヶ月程度
評価:★★★★★(5)
※加水での評価は★(6)

香り:強いアルコール感とこってりとした甘いアロマ、少しハーブを思わせるニュアンス。煮込んだイチジク、ブラウンシュガー、奥から硫黄香が出て来て時間経過で支配的に。

味:リッチでパワフルなアタック。ダークフルーツのシロップから、かりんとうを思わせる香ばしさとサルファリーなニュアンス。少しギスギスとした樽感が舌を刺激する。
余韻はウッディでハイトーン、ヒリヒリとしたフィニッシュ。

加水するとコニャックを思わせる華やかなアロマ、味わいもバランスよくクリーミーさも感じられる。これは加水で飲むべきウイスキー。

リンクウッドが限定品としてリリースしたフィニッシュシリーズ3種類のうちの1つ。
12年熟成の原酒をラム、ポートワイン、赤ワインの熟成に使われた樽にそれぞれ移し替え、ベースの原種よりも長い14年間追加熟成したものです。
フィニッシュというより、ディアジオ系列で多くリリースされているダブルカスクマチュアードですね。中々意欲作なボトルだと思います。

外観は、アイスワインを思わせるスラリとしたボトルデザインが特徴的。遠目に見るとウイスキーという感じがしない。。。というか、いいバランスでフレームに入りきらないカメラ泣かせなヤツ。
その中身は、1980年代のリンクウッドらしい、穏やかで中性的な原酒をベースに、ねっとりとした口当たりでかなり赤ワイン樽の個性が強く出ている構成。硫黄燻蒸された樽だったのか、サルファリーな要素も感じられます。
2〜3年のフィニッシュとは異なり、10年以上熟成されているためかワイン樽の香味が浮ついた"あとのせ感"はあまり感じません。

ストレートではパワフルで樽感主体なボトルですが、加水すると華やかなオークフレーバー、酒質由来のクリーミーな要素が開き、ポジティブな変化が見られました。
これは少量というより、1:3くらいで加水して飲むと真価を発揮するようです。
とすると500mlで売られているのも、加水を前提としているのかなーと考えてしまいますが、たまたまかなぁ(笑)

イチローズモルト 清里フィールドバレエ 26th & 27th 記念ボトル

カテゴリ:

KIYOSATO FIELD BALLET
27th Anniversary & 26th Anniversary
Blended Whisky
Ichiro's Malt
2016's & 2015's 
700ml 48%

山梨県の"萌木の村"で開催されている、日本で唯一連続上演され続けているバレエの野外公演、清里フィールドバレエ。
その開催25周年を記念して2014年にボトリングされた第1弾から始まり、第2弾(26周年)、第3弾(27周年)で2016年まで計3種類、記念ウイスキーのリリースが続いています。

昨年末、同施設の村長である舩木さんから、手紙と共にこの記念ボトルのサンプルを頂きました。
本ブログをご覧になってくださっているだけでなく、こうしたお気遣いはただただブロガー冥利に尽きる話です。
折角なので、子育て中で外飲み出来ない妻と一緒に楽しませて頂きました。 

清里フィールドバレエ記念ボトルはそれぞれ生産者が異なり、25周年はサントリー。26周年、27周年はイチローズモルトが所有する原酒を使って限定生産しています。
25周年ボトルについては以前記事にしており、今回改めてテイスティングしたわけですが、やはり素晴らしいピュアモルト。グレーンを使っていない中であれだけの一体感に加え、熟成した原酒が織りなす美しいフレーバーを妻も絶賛していました。

そして今回の記事では、イチローズモルトがブレンド、ボトリングした26周年と27周年記念のブレンデッドウイスキー2本にスポットを当てて、レビューをまとめます。
こちらは双方とも羽生蒸留所の原酒をベースに、川崎蒸留所のグレーンをブレンドしたロストディスティラリーの共演。ブレンダーは勿論、肥土伊知郎氏です。
なんとも贅沢な飲み比べですが、そうする事で見える共通のキャラクターや、ブレンドの違いもありました。

26周年記念ボトルは、1990年蒸留25年熟成の羽生モルト原酒に、1982年蒸留33年熟成の川崎グレーンがベース。
27周年記念ボトルは、同じく1990年蒸留の羽生モルト原酒に、グレーンは約40年熟成の川崎グレーンをブレンド。
樽構成はどちらもバーボンの古樽やシェリー樽が中心のようで、イチローズモルトの原酒保有状況を考えると、同メーカーで考えうる最長熟、気合の入った組み合わせである事が伺えます。
(実際、ブレンドにあたり肥土氏はサントリー響30年を越えるウイスキーを作る事を目標としていたそうです。)

まずどちらにも共通するのが、羽生原酒らしい強めの樽香。熟成環境や樽構成からくる、ウッディーで酸味を伴う香味がいかにもらしさとして感じられます。
そこにグレーンの存在感は26周年ボトルの方が強く出ており、バニラや蒸した穀類を思わせる甘みが強く。対して27周年はモルトが強いのか樽感メイン、シェリー樽原酒由来の甘みと燻したようなアロマ、ハーブのような爽やかなニュアンスも感じられました。

こればかりは原酒の質や選択肢にも限りがあったと思うので一概には比較できませんが、サントリーのそれとはそもそもの育ち、ベースが異なる感じですね。
都会的で洗練された味わいに対し、イチローズモルトのブレンドは田舎の古民家を思わせる、荒削りでありながらどこか懐かしい。。。そんな気持ちにさせてくれるウイスキーでした。
観劇の構成で言う序盤は美しく華やか、中間から後半は様々な動きと伏線が絡まる重々しい内容。今年は起承転結で言うフィニッシュに当たるわけですが、何かしらリリースの動きがあるとは聞いており、今から楽しみです。
舩木さん、貴重な体験をありがとうございました!


【テイスティングノート】
◆イチローズモルト 清里フィールドバレエ 26周年記念 48%
香り:濃い甘さと酸味を伴う木香。一瞬華やかな熟成香を感じるが、すぐに古民家を思わせる香り。徐々に焦げた木のニュアンス、微かにハーブの爽やかさが開いてくる。
少量加水すると蒸した栗のような甘みや、その渋皮を思わせる渋みが前に出てくる

味:ウッディーでえぐみも伴うドライな口当たり。焼き芋、カラメルソースがかかったバニラ、古い梅酒を思わせる落ち着いた酸味と古酒感。余韻は一瞬刺激を感じるがまったりとした甘みとほのかなえぐみが長く続く。
少量加水すると余韻にかけてスパイシーな刺激を強く感じる。

◆イチローズモルト 清里フィールドバレエ 27周年記念 48%
香り:香り立ちは甘い樽香、燻したような焦げたアロマ。梅のような酸味、ツンとハイトーンなエッジとハーブの爽やかさ。加水すると古い樽由来のえぐみを伴う。

味:スパイシーな口当たり、ブルーベリーやサルタナレーズンの甘み、じわじわと古樽由来のえぐみが開いてくる。
余韻はスパイシーでウッディ、梅ジャムの酸味、微かにハーブ、濃く出した紅茶の渋みを伴い長く続く。
加水するとくるみを思わせるナッティさ、モルティーな旨味がある。

ブナハーブン キャビノック 46.3% リミテッドエディション Batch No,2

カテゴリ:
BUNNAHABHAIN
CEOBANACH
(No Aged)
Batch No,2
700ml 46.3%

グラス:和吉工房テイスティンググラス
量:30ml
場所:BAR飲み(アイラ島@銀座)
時期:開封後一ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:焦げたようなピートフレーバー、酸味を伴う乾いた植物感、少し根菜系のニュアンス。時間経過でバニラ、華やかな甘いアロマも開く。 

味:クリアな口当たり、ややトゲトゲしたアタックだが、徐々にバニラの甘みと塩水のコク、そして香り同様焦げたような強いスモーキーフレーバーが鼻腔に抜けてくる。
余韻の広がりはスモーキーで乾いたウッディネス。酒質由来の部分は弱く、少しいも焼酎っぽい癖も感じる。


ブナハーブンが限定的にリリースしている、ピーテッドモルト。ブランド名はそのまま読んだらセオバナックと読めそうですが、キャビノックなのだそうです。
同蒸留所はアイラ島にありながらノンピートモルトが代名詞であるわけですが、ピートフリークが増えた時代の流れには逆らえないのか・・・ちょくちょくこうしたリリースが見られるようになりました。
オフィシャルラインナップでは、既にトチェックやクラックモナがリリースされており、それぞれ国内でも並行品が流通しています。

今回紹介するキャビノックの樽構成はバーボン樽、熟成期間は10年以上とのこと。樽由来の風味とアイラ島のピートという組み合わせからか、ブラインドで出されたら"ちょっと荒めなラフロイグ"を連想しそうな出来栄えです。
ただし酒質由来の部分で軽さというか、ピートが浮ついている印象を受ける部分があって、味の中間から余韻にかけてバラつきがあり、何か違うと感じます。
また、メーカーコメントでは塩味についても触れられているものの、意識しないとわかりにくいのではないかという印象。この辺は開封後の時間経過でこなれ、変化があるかもしれません。

(アイラ島のピート湿原。代表的な景観と言えるピート採掘後の風景。大地を削るように掘り起こされたピートは、野積みで乾燥させた後、一般家庭からウイスキー製造まで広く利用される。 Photo by k67)

キャビノックの意味はゲール語でSmoky mistという意味があるのだそうです。
そこでふと思いついたのが、スコッチウイスキーの飲み方である、クラッシュアイスで作るミストスタイル。
このキャビノックはノンチル仕様なので、氷が溶けて濁りに繋がれば、まるで煙がグラスの中に充満するように見えて、口に含めばスモーキーフレーバーが広がる。まさにスモーキー・ミスト。
ちょっと洒落た感じですね。今は時期じゃないですが、暖かくなったら試してみようかな。

このボトルはハイドアウトクラブの投稿者企画で、ウイスキー仲間のMさん提供のボトルをテイスティングさせていただきました。
ブナハーブンと言うとシェリーカスクの印象があるのですが、ピーテッドモルトは若くても仕上がりが良く、バーボン樽の組み合わせは鉄板です。
ブナハーブンの新しい可能性を感じるボトルとして、楽しませていただきました!

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