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2016年12月

インチマリン 12年 46% ロッホローモンド アイランドコレクション

カテゴリ:
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INCHMURRIN
Aged 12 Years
2016's
Loch Lomond Island Collection
700ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでライト、乾いた紙っぽいアロマとケミカルフルーツを伴う香り立ち。熟したオレンジ、人工のパイナップルシロップなどを思わせるフルーティーさ。序盤は機械油っぽさも感じるが、時間経過でオーク系の樽感が開いてあまり気にならなくなる。

味:オイリーな口当たりから、舌先にピリッとしたスパイス。甘酸っぱいオレンジやピーチ味の薬品シロップ、あるいは駄菓子のキャンディーのようなフルーティーさ。余韻にかけては乾いた麦芽風味、鼻腔まで届くケミカル系の甘みを伴う戻り、程よくドライであっさりとしている。

温度で印象が多少異なるボトル。少し冷やしてあると香りに紙っぽさやハッカを思わせる香りが強く出る代わりに、香味共オイリーさは目立たなくなる。


オーナーが変わったロッホローモンド蒸留所が、2016年からリリースしているニューボトル。アイランドコレクションとされているのは、海に面する外洋の島ではなく、同銘柄の由来とされるローモンド湖のインチマリン島から。
先日の武蔵屋&JIS合同試飲会のラインナップで最も印象に残ったボトルであり、試飲会で注文した1本が、このインチマリン12年です。

樽の構成はバーボン樽が中心で、ファーストフィル、セカンドフィル、後はリチャーの3種類。
香味の系統としては、所謂ケミカルなフルーティータイプで、ボトラーズリリースのフルーティーなアイリッシュやリトルミルに共通する要素が感じられます。
特にロッホローモンドはリトルミルの第2工場として創業した経緯もありますから、その共通点にはなるほどという説得力も感じます。

また、余韻にかけての広がりは、一部で話題になっているインチマリン 2003 for JISと同じ系統。
口当たりではぬるりとしたオイリーさが多少感じられるのですが、これは加水かつバッティングであるためかなと。オフィシャルラインナップのキャラクターでは18年がオイリー&濡れた紙で、ノンエイジはさっぱりした味わいなので、同蒸留所のキャラクターが2000年代と1990年代で違っているのかも。。。
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というか、量産されているオフィシャル12年がこの系統で販売されているわけですから、2000年代のロッホローモンドのキャラクターとして、JIS向けのカスクは多少良し悪しはあれど、わりとスタンダードなキャラクターなのかもしれません。
そのため、今後も同様のリリースがされていくのではないか、というのが個人的な予想です。

それにしても、かつての12年から21年までのラインナップを知っている者としては、紙とかダンボールとか言われていた蒸留所が、この味わいで安定リリースされるとは誰が予想しただろうか・・・と感慨深く感じるボトルです。
もちろん多少のクセはあり、この機械油系の香味を「やり過ぎ」だと好まれない方もいますが、自分は新世代となる2000年代に明るい未来を感じる1本でした。

追記:旧ボトルの12年とは香味が異なるので、WEB等でお買い求めの際には注意が必要です。

レッドブレスト 25年 1991-2016 メゾンドウイスキー60周年記念 53%

カテゴリ:
REDBREAST
Aged 25 Years
Distilled 1991
Bottled 2016
All Sherry Single Cask
(Seasoned Spanish Oak 1st fill)
Celebrating The 60th Anniversary of La Madison du Whisky
53% 700ml

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:自宅(持ち寄り会@Yさん)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:甘く濃いシェリー系の香り立ち。ツンと鼻腔を刺激するギスギスとドライなウッディネス。カカオチョコ、焼き芋っぽい焦げ感。奥にはケミカルなシロップの甘いニュアンス。徐々に機械油っぽさも感じる。
(言われてみれば微かにブルーベリージャムの甘いアロマも漂うような。。。)

味:ウッディーで強くドライ、香り同様ギスギスしてパワフルな口当たり。シーズニングシェリーを思わせるドライプルーンやチョコレートの甘み、奥にはケミカルなフレーバーもある。
余韻はビターでドライ。ヒリヒリする刺激を伴うハイトーンなフィニッシュ。

全て1stフィルのシェリー樽だと言うだけあって、シーズニング系のシェリー感が強く、欧州の愛好家を中心に評価されそうなボトル。加水するとアイリッシュ系の要素が多少前に出てきて飲みやすくなるが、シェリー感は少しぼやけてしまい、一長一短という印象。

LMDWこと、フランスに拠点を置くウイスキー商社「ラ・メゾン・ド・ウイスキー」が創業60周年を記念してリリースしたボトルの一つ。
この60周年を記念して相当な種類のボトルがリリースされており、2016年を振り返るにあたり避けては通れないと言っても過言ではありません。

中でも話題になったのが、このレッドブレスト25年。海外の某氏が「リッチフルーツ!」「これはまさにコニャックだ!ランシオあるぞ!」とレビューして高得点を出したのが震源か。FBでは「ブルーベリーの香味」なるものも話題になってましたね。
で、自分はどうかというと、ブルーベリーの香味は時間経過で「これかな?」というものが感じられたものの、流石にコニャックは某氏と世界観の違いを感じてしまいました。(それこそLMDW繋がりでフランスを意識しすぎなんじゃ?と思ってしまったほどです。)

レッドブレストはハイプルーフタイプを中心に樽感があざといというか、ギスギスしたリリースが多い印象があり、このボトルも例に漏れずその系統であると感じます。
樽はスパニッシュオークのシーズニングか、ウッディネスが強く、箱の裏を見ると感じた通りのスペックが。
今回は口開けから1ヶ月程度経過したあたりのボトルを頂いたため、多少果実味が開いていたように思いますが、それでもアタック強くエッジの立った樽感は、1杯テイスティングするのに中々時間を要しました。口開けはもっとすごかったんだろうなと推察します。
他方、シェリーの奥には甘み、ケミカルなフルーツ感もあり、加水や時間経過の変化を見る限りポテンシャルはありそう。開封後2〜3年程度かけて飲み頃を待って楽しむのが良いのかなと感じます。

余談ですが、同じメゾン60周年記念ボトルのシェリー系ボトルではドロナック、プルトニーが中々良いシェリー感でした。(聞くところではアベラワーも良かったそうです。自分はまだ試せていませんが。。。)
ドロナックはフルーツ系のシェリー。プルトニーはオーソドックスなタイプですが、そこにプルトニーらしいワクシー麦芽風味の強い味わいが印象的です。

これらのボトルは目黒のGosseで扱いがありますので、都内在住の方は2016年の振り返りにテイスティングしてみても良いかもしれません。

マディラ ヴェルデーリョ ヴィンテージ 1850 ペレイラ・ドリヴェイラ

カテゴリ:

MADEIRA WINE
Verdelho vintage 1850 
Pereira D'Oliveiras(Vinhos)
Matured over 150 years in old oak casks
Finest & Oldest
750ml 20%

約160年前に醸造されたビンテージマディラワイン。
ある日のBAR ウォッカトニック。この日はこの日で素晴らしいお酒を散々飲んでいたのですが、しれっととんでもないものが出てきて、感動と話題をかっさらっていきました。

今まで飲んだことがあるウイスキーで最も古かったのは、1910年代のデュワーズかグレングラント。
ワインだと、出産祝いで1杯頂いた1900年代のポートが最古だったと思います。
全ての酒類において、1800年代なんて未知の領域。その熟成がどのような境地に辿り着くのか、いつか飲んで見たいと思ってはいましたが。。。出会いというものはいつだって唐突です。
まして目の前でそのボトルが抜栓される瞬間に立ち会えたわけですから、これ以上ないライブ感に味への期待が高まりまくりです。

"開栓したマディラをサーブするマスター。サーブ前の状態確認テイスティングで満面の笑みが溢れ、それを微妙に引きずっている1シーン。"

ペレイラ・ドリヴェイラは1850年に創業した歴史ある製造元。つまり今回のボトルはその創業年に仕込まれたワインということになります。
1850年は立派な江戸時代、黒船が来る3年前で、あまりに古すぎて目の前にあるボトルとの時間軸がピンときません(汗)
しかし、さすがに160年以上も熟成させたワインは終わってるんじゃ無いかと身構えてしまいますが、マディラワインにおいてその品質は「ほとんど不滅」であり、1900年以前の逸品の味わいは「生涯忘れ得ぬ至福」とまで言われているそうです。

香りは150年以上の時を経ているとは思えないほどフレッシュさがあり、同時に奥深いコク、黒蜜を思わせる甘みと凝縮感。熟成を経ることで逆に洗練されている印象すらあります。
一呼吸置いて立ち上がってくるブルーベリージャム、葡萄、ほのかに黒酢のようなアクセント。スワリングすると土っぽいウッディネスとローストアーモンドを思わせるスモーキーな燻香、時間経過でさらに酸味と甘みが開く。 
口に含むとコクのある甘みを下支えに、しっかりと酸味、梅干し、木苺、黒蜜。余韻にかけて金属味が舌先に残り、柔らかい渋みとタンニンが甘酸っぱい風味と合わせて長く感じられます。

いやぁ、とんでもないですね。
ボトリングは比較的近年で、流石に全期間樽熟成ではなく、味に感じる金属味などからタンクでの貯蔵(あるいは、昔の樽には釘が使われていたという話もあるので、それ由来か)もあったと思いますが、中辛口のマディラであることもあって、時間経過でぐんぐん果実味あふれる酸味が開いてきて、その奥にある深みのある甘みと合わさって世界を作り出しています。
これが生涯忘れ得ぬ至福の一つ・・・思わず終電を逃すほどにトリップしてしまいました。

ちなみに、このマディラワインの前にサーブ頂いたのが、写真のシャトー・ディケム1981です。
ウットリするような深い甘み、上品な果実香に溢れており、その余韻がしみじみと身体に染み渡ったところで、満を辞してビンテージマディラで締める。極上の甘みから酸味へ、一つのコースのようなこの組み合わせが、後に続く味わいをより高めてくれていたように思います。

ウォッカで飲むとこういう経験が普通にあるのが、これこそ家飲みでは味わえないBARで飲む楽しさ、喜びの一つと感じます。
素晴らしい体験をありがとうございます!

本坊酒造 シングルモルト駒ケ岳 津貫エイジング 3年 59%

カテゴリ:
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KOMAGATAKE "Tsunuki Aging"
HONBO SHUZO
Single Malt Whisky
Distilled at Shinshy Distillery in 2013
Aged at the Tsunuki Aging Cellar for 3 years
700ml 59%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:自宅
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★(5)

香り:最初はニューポッティーで地ウイスキーを思わせる癖、樽由来のえぐみを感じるが、徐々にバニラ、ナッツ、スモーキーなアロマが開き、若いピーテッドとしてバランスが取れてくる。

味:若くフレッシュな口当たり、砂糖漬けレモンピールや乾いた植物っぽさから、ほろ苦くピーティーなフレーバーが開く。アタックは強いものの、度数ほどではなく中間から後半にとろみも感じる。余韻はピーティーでスモーキー。オーク由来の淡いウッディネスと甘みが残る。

3年の熟成でありながら、樽由来の甘みが程よく感じられ、素直で飲みやすく仕上がっているシングルモルト。香りには地ウイスキー的なえぐみ、若干のクセはあるが時間経過でこなれてくるだけなく、味わいは最初から若いピーテッドモルトとしてまとまりがある。加水すると酸味、若さが目立つため、チェイサー片手にストレートで楽しみたい。
今回レビューするウイスキーは、つい先日オープンした、本坊酒造、鹿児島県は津貫蒸留所の貯蔵庫で試験的に3年間熟成されていた信州蒸留所の原酒。樽はバーボンバレルで、10樽程度をバッティングしています。
津貫工場は元々本坊酒造の焼酎工場として稼働していた設備の一つであり、3年前というと信州蒸留所の再稼働(2011年)から2年後ということですが、既にその時点で将来を見据えてこうした試みを始めていたということになります。

しかし熟成場所が温暖で特徴的と言っても、3年モノのジャパニーズウイスキーですから、やや警戒して口に含むと・・・先述のように思いの外飲めるのです。
それこそ樽感もあるため、熟成場所の違いが感じられる1本でもあります。
既に店頭は売り切れで、ジャパニーズウイスキーブームの名残を感じはしますが、慌てず騒がず、信州蒸留&熟成のピーテッドモルトとをBAR飲みで1杯飲見比べ、熟成場所が与える影響の違いを勉強してみるのも良いかもしれません。
"津貫蒸留蒸留外観(上)、津貫エイジングも貯蔵された石蔵内部(下)Photo by T.Ishihara"

このブログでは何度か書いてきた話ですが、ウイスキーにおける樽由来のエキスは、暖かい時期の方が強く出る傾向があります。
鹿児島県という本土最南端の場所で作られ、貯蔵されるわけですから、当然熟成場所は温暖な傾向となり、樽由来の要素は強く出ます。

本坊酒造が津貫で目指すのは、さらに温暖な台湾で作られるカヴァランのスタイル。短期間でフルーティーな味わいに仕上がるウイスキーは、市場投入までの期間が短くて済みますし、信州蒸留所のキャラクターとの差別化も出来て一石二鳥です。
今回の津貫エイジングの味わい、結果だけ見ればまずは思惑通りの段階にあると言ったところでしょうか。
ではニューポットはというと・・・実は先日ウイスキー繋がりで2種類ほどテイスティングさせて頂いており、その辺はまた追ってまとめていきたいと思います。

マッカラン エディション No,2 2016's 48.2%

カテゴリ:
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The MACALLAN
Single Highland Malt
Edition No,2
C4 V372 T21 2016-02
48.2% 700ml

グラス:リーデルテイスティンググラス
量:ハーフショット
場所:BAR飲み
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディーでビターだが、こってりとしたドライプルーンやオレンジママレードを思わせる甘い香り立ち。少し生木のような湿ったニュアンスと、ゴムっぽいアロマもある。

味:甘くリッチな口当たり、香り同様ドライプルーン、薄めた黒蜜、シーズニングシェリーの甘さの後で中間からスパイシーな刺激とウッディな樽感。
余韻はドライでタンニンが染み込む。湿った樽材の香りが鼻に抜け、ブラウンシュガーを思わせる甘みが長く残る。


マッカランが1年に1度リリースするようになった、リミテッドエディションの第2弾。
サントリーのプレスリリースでは、数種類のアメリカンホワイトーク、スパニッシュオークのシェリー樽を372樽バッティングしたとのこと。ラベルに書かれたコードが前回と同じ意味なら、C4は爆弾・・・ではなく、4種類の樽を使ったという意味で、ファーストフィルとセカンドフィル、あるいはサイズの違いあたりで4種類が使用されている事になります。

エディションNo,1が非常に厳しい出来だったことから、No,2もまったく期待していなかったものの、これが現行品の18年と同じくらいのシェリー感で、ウッディな中にシーズニングシェリーのこってりとした甘みが感じられる。中間から後半にかけて開く近年のマッカランらしいスパイシーな刺激とあわせ、それなりに飲めるクオリティに仕上がっているのです。
熟成年数は、前作は使用原酒が10~25年と公開されていたものの、今作は非公開のNAながら、味わいから平均15年くらいの熟成はされているように感じます。
国内市場価格から1本手軽に・・・とはいきませんが、BAR等で機会があれば飲んでみても良いかもしれません。


(マッカラン蒸留所にある麦畑。収穫を間近に控えた8月頃の景色。 Photo by T.Ishihara)

さて、マッカラン蒸留所といえば「シェリー樽」へのこだわり(拘っているというほどのクオリティが保たれているかはさておき)が広く知られているところですが、今回はもう一つ拘っているとされる、麦芽にフォーカスします。
グーグルマップで見ていただければわかるように、マッカラン蒸留所の周囲は牧場や農地(38ヘクタール=約94エーカー)が広がっており、そこでは同蒸留所に供給する麦芽が栽培されるなどしています。
こうした環境をワイン作りと照らし合わせる形で、マッカランの製造現場は「シャトー・モルト」との呼び名もあるそうです。

マッカランと言えば、かつて麦芽はゴールデンプロミス品種に拘って、蒸留所内の農地で独自栽培もしているという話がありました。
しかしそれは既に過去の話。ゴールデンプロミス自体がそもそも。。。という話もさておき、マッカランでの使用品種は更なる近代品種であるミンストレル種にシフトしています。
また、この農地1エーカーあたりの収穫量から作ることが出来るマッカランは、約1800本分である事が公式サイトで語られているものの、単純計算94エーカーでは約17万本分という事になり、同蒸留所の1年間の出荷分で考えるとまったく足りません。
加えて、マッカランにはモルティング設備がありませんので、収穫した麦芽は一度外注業者となるモルティング設備のある場所に移され、外部から買い付けた大麦と共にマッカランへ戻されるというワケです。

もちろんこれを持ってマッカランのウイスキー造りを否定するものでは無く、大量生産すれば、樽も麦も確保がむずかしくなる。「シャトー・モルト」の理想と現実という話です。
エディションNo,1の時と同様、外箱の蓋の裏にはNo,3のリリース予告があり、来年もリミテッドリリースは続くようです。
エディションNo,1から比べて味は良くなったと感じるNo,2。次はどんなキャラクター(現実か、はたまた希望か)を見せてくれるのでしょうか。

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