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2016年11月

マクファイルズ 2000年記念ボトル GM 40% 2000ml

カテゴリ:

MACPHAIL'S 2000
Gordon & Macphail
Malt Soctch Whisky
"A vatting of rare single malt whiskies the combined ages total 2000 years"
2000ml 40%

グラス:テイスティンググラス名称不明
量:30ml以上
場所:個人宅
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:モルティーで華やかな香り立ち。微かなミント、アルマニャックの古酒を思わせるまろやかな酸味とウッディネス、アプリコット、リンゴのカラメル煮、奥には腐葉土を思わせるアロマがあり、長い熟成を感じる。

味:まろやかな口当たりからドライで強い熟成感。カラメルソース、ナッツ、リンゴのカラメル煮、リッチな甘さと古酒系のヒネ。ボディの線は少々細めだが、中間から後半にかけてはウッディー、コクのある甘味を伴い長く続くフィニッシュ。


GMが2000年の到来を記念して発売したミレニアム・リミテッドリリースなブレンデッドモルトウイスキー。
容量2000mlに2000本限定と、2000年とかけた要素が特徴ですが、その中でも飛び抜けているのが、ジャグの重さまで2000gという拘りよう・・・ではなくて、ブレンドに使用された構成原酒の熟成年数の合計値。ボトルや説明紙にも書かれているように、最長60年を含む様々なモルト古酒が使用され、熟成年数の足し算が2000になるように調整されているという、ワケがわからないレシピで構成されているのです。

当時は多くの長期熟成原酒を、ボトラーズが安価でリリースしていた時代。加えて、原酒保有量が群を抜いているGMだからこそ出来たブレンドであると言えます。
ただ、あまりに現実離れした発想に、初めて素性を聞いたときは正直理解が追いつきませんでした(笑)
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このボトル、日本において比較的流通の多かったGMのリリースでありながら、 ほとんど情報が無く、話題にもなっていないのも特徴。自分が知っている限り、紹介しているのは盛岡スコッチハウス著のスコッチオデッセイくらいですが、2000年記念ボトルという簡易的な紹介しかされていません。

その中身については、海外の愛好家が検証を行っているようで、度数や出荷量などから逆算し、ほぼ1950年代から1960年代蒸留の原酒ではないかとのこと。実際に飲んでみると、その検証結果を裏付けるように40年クラスの熟成を思わせる甘味、オールドシェリーと強いウッディネスを感じます。
また、熟成の長さからか中間はやや線が細い感じで樽感主体、所謂GM味のカラメル風味。アイラ系の要素はほぼ感じず、スモーキーさも控え目であるあたりから、原酒構成はハイランドやスペイサイドが中心でしょうか。
GMの原酒保有の傾向で考えれば、マッカラン、ストラスアイラ、モートラック、リンクウッド、グレングラントあたりを連想します。特にGMからマクファイルとしてリリースされていたボトルに共通する香味を感じました。

ウイスキーは2000年熟成とかムリだけど、足し算ならイケる。どうだ、これぞ1000年に一度を祝うに相応しいだろう、というGMの心意気を感じるようです。
「さすがGM!!俺たちに出来ないことを平然とやってのけるッ! そこに痺れる!憧れr(ry」


さて、今回テイスティングしたボトルはウイスキー仲間のK兄さんが結婚された際、その場で開栓した振る舞いボトル。その残りを先日再度テイスティングさせてもらったわけですが・・・。実は我が家にも1本あります。
先に書いたように日本ではあまり有名では無いボトルであるためか、思わぬところに比較的良心的な価格で転がっていたのです。

このボトルは11月27日に開催するオールドブレンデッドテイスティング会、そこでのスペシャルアイテムとして提供しようと考えており、近日開封予定です。
最近は随分遠い存在になってしまったGMの長期熟成モルト原酒。ちょっと前はこのレベルでも結構気楽に飲めたんです。
我々が生きているうちに再度リリースされることはない、千年に一度にして究極の悪ノリ企画。参加される方はこちらも併せてお楽しみください。

バランタイン 15年 1990年代流通 43% ブラインド

カテゴリ:

BALLANTINE'S 
Very Old Scotch Whisky 
Aged 15 Years 
1990's 
43% 750ml 

グラス:木村硝子テイスティング
量:30ml以上
場所:自宅(サンプル@Jさん)
時期:不明

【ブラインド回答】
地域(種別):ブレンデッド
銘柄:バランタイン
流通時期:1990年代
年数:15-20年
度数:43%暫定評価:★★★★★(5-6)

香り: 香り立ちはクリーンで淡くスモーキー。乾いた牧草、若干若さとえぐみが混じるが、スワリングでバニラ、リンゴ、エステリーな熟成香。甘く華やかなアロマが開いてくる。

味: 乾いた麦芽風味とグレーン由来のバニラ、シロップの甘み。口当たりでツンとした刺激も感じる。中間はやや単調だがじわじわとピートが染み込む。余韻はほろ苦くスモーキー。 突き抜けた感じはないがバランスよくよくまとまっている。

総括:熟成したハイランドモルトのフルーティーさ、エステリーさからオールドのバランタイン系の香味を感じた。このバランタインのフルーティーさは20年クラスから出ることが多く、一方で若さやグレーンの味わいも相応にあり、そうした原酒も使われているモデルと推察。
経年の変化具合や原酒構成から、90年代流通あたりのミドルグレードかなと予想。


ウイスキー仲間のJさんからの出題。いつものようにノーヒント、オールジャンルでのブラインドです。
「ま、わからないと思いますけど(ドヤ顔)」なんて言われて出題を受けましたが、多分これだろうなというボトル指定での回答。期待に添えない形で申し訳なかったなと思っております(ドヤ顔)。

バランタインは特級時代は積極的に攻めているものの、90年代以降はあまり飲んでおらず、今回のバランタイン15年も初体験でした。
そのため、もっとグレーン感強くペラペラの味わいなんだろうなと勝手に推測していたのですが、現行品にあるようなえぐみは少なく、熟成したモルティーさも感じられ、余韻にかけて染み込むようなピートフレーバーも自分好み。また、ハイボールにするとさらに引っかかりがなくスイスイ飲めて、それでいてちゃんとウイスキーの味を楽しめる。100mlほどもらったサンプルをしっかり堪能させて貰いました。

仮に自分がBARをやるとしてハイボールをお任せで出すならば、オールド好きにはジョニーやピンチなどのこってりとしたボトルからチョイスしますが、まだそこまで踏み込んでいない愛好者には、15年が良いチョイスになりそうです。
位置づけ的には現行品12年の強化版で、先に書いたように嫌味が少なく飲みやすい。オークションでは特級時代に比べて価格もお求めやすいところですし、扱いやすいボトルだなと感じます。



なお、Jさんからは今年の3月にもブラインド出題を受けていて、そのボトルが写真右側の同時期流通のバランタイン21年でした。
21年はより華やかさ、エステリーな香味を感じ、長期熟成ブレンデッドの良いところを堪能できますが、逆に飲んでいて物足りなさがあった記憶もあります。ストレートで飲むなら21年ですが、ハイボールなどにするなら15年かなと。
ちなみに、この時のブラインドでは、ブレンデッドであることの予想はできていましたが、流通時期や熟成年数など結構外してしまい悔しい思いをしました。今回はその辺もしっかり修正し、この1年間の成長を実感できたのも収穫です。

タリスカー ダークストーム 45.8% オフィシャル

カテゴリ:

TALISKER 
DARK STROM 
(No Aged) 
Matured in Charred Casks
1000ml 45.8%

グラス:テイスティンググラス(名称不明)
量:30ml
場所:BAR飲み(Tail)
時期:開封後1年程度
暫定評価:★★★★★★(5-6)

香り:チャーオークの焦げ感のあるアロマ。梅を思わせる酸味を伴うスモーキーフレーバーから乾いた麦芽、干し草の植物感へと繋がる。

味:キャラメルを思わせる甘さとスパイシーな口当たり。ドライ杏、黒土、鼻抜けはスモーキー。ボディは少し細く、加水でだいぶ慣らされている。
余韻は緩く、樽材由来と思われる粘性を感じた後、スモーキーでピートが染み込み、ゆっくりと消えていく。


スモーキーでスパイシー、タリスカーがその荒々しい個性をより強くしてリリースしたというタリスカーストーム。
スカイ島の"嵐"をイメージしたリリースが好評であったことからか、その第2作として免税店向けにリリースされたのが、ヘビーチャーしたオーク樽で後熟させ、樽の個性を強めたダークストームです。

コンセプトはタリスカーの強い個性と焦がした樽のウッディネス、スパイスが融合した、さらにパワフルなタリスカー•••ということなんですが、その樽感の強さを一般向けに抑えるためか加水での地均しがだいぶ行われた印象。結果、飲み口はまろやかでキャラメルを思わせる甘さ、ほろ苦さ、奥からスパイスとスモーキーフレーバー。酒質よりも樽が勝っている印象を受けます。
それこそ以下の写真のように暴風が突きささる「ストーム」という感じはしない、暖かい時期にドバッと降ってきたスコールのような構成なんです。
(昨年主催したフォトコンテストの特別賞作品。STROM in STROM 。)

ダークストームは濃厚でわかりやすい味わいに加え、価格もお手頃とあって安定した人気のあるボトルです。
リリース当初は国内入荷が少なく、海外旅行の際に「買ってきてほしい」と頼まれたことも。ノンエイジですが熟成は10年前後の印象。樽感の上塗りもあって、若さはあまり感じません。

ノーマルなタリスカーは夏場のハイボール、肉料理と合わせるタリソーペッパーなど万能で使えるボトルに対し、ダークストームは秋から冬の少し寒くなってきてから本領発揮する1本。
ハイボールよりはストレートやロック向き、今の時期にちょうど良いですね。

ブローラ 24年 1982-2006 GM コニッサーズチョイス 43%

カテゴリ:

BRORA 
Gordon & Macphail 
Connoisseurs Choice 
Aged 24 Years
Distilled 1982
Bottled 2006
Cask type Rifill Sherry Butts
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml
場所:自宅(サンプル@マッスルKさん)
時期:不明

【ブラインドテイスティング】
地域:ハイランド
蒸留所:ミルトンダフ
蒸留年:1980年ごろ
熟成年数:10~15年程度
樽:リフィルシェリーバット主体
度数:43〜46%程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:昔かいだことがある香り。青みがかった植物感、ハーブ、麦芽香、ほのかにレザー。
時間経過でリンゴっぽさ、おしろい、よりエステリーなフルーツが開く。

味:ピリピリとスパイシーな口当たりから、粥を思わせる麦芽風味、青みがかった植物、蜂蜜の甘み、ほのかに塩気を思わせるコク。
余韻はビターで穀物系のほろ苦さと、土っぽいピートが染み込む。

【総評】
単一気味だが樽が複数使われたニュアンスがあり、バッティングで加水っぽいシングルモルト。どこかで飲んだことがある青みがかったアロマが判別できず悔しい。
また、保管状況の影響か若干コルク臭があり、特級時代まで遡るまで古くはないがおそらくコルクキャップ仕様のボトルではないか。

ウイスキー仲間のマッスルKさんからのブラインドテイスティング。Kさんのブラインドは前回2問とも外しており、今回は名誉挽回と行きたかったところ・・・ですが、 今回も見事に撃沈。
とはいえこのブログでは初のブローラ掲載です。貴重な機会、しっかりと記事にさせていただきます。

ブローラはご存知クライヌリッシュ蒸留所の名称で稼働していたところ、現クライヌリッシュの建設を受けてブローラ名称となり、その後暫くは2蒸留所が稼働していましたが1983年に閉鎖しています。
自分は1960年代からしか、旧クライヌリッシュ含むブローラのキャラクターは知りませんが、1960年代はアインシュリーズなどのブレンデッドにも使われていたためか、華やかでモルティー、旨味の濃い味わい。
1970年代はハイランドスタイルでありながら、荒々しく無骨、酸味を伴うピートフレーバーに、島系のモルトに通じる強い個性と魅力を感じる。通常ブローラらしい味わいは、この辺りのビンテージを指すことが多いという印象。
そして1980年代は、ウイスキー不況により様々なところに販売しやすい穏やかな原酒製造にシフトしたのか、現クライヌリッシュに近いキャラクターとなり、今回のボトルのようにガラリとキャラクターが変わるのが特徴です。
(1965年、まだ名称がブローラに変わる前の蒸留。このW&Wのクライヌリッシュ1965は、個人的にブローラの中で5指に入る。)

今回のボトルはまさに1980年代、閉鎖間際のブローラの味わいで、言われてみれば納得。実は過去に何度か飲んだボトルで、この辺のビンテージの特徴はわかっていたはずですが、ブローラなんて出ないだろうという先入観から、すっかり抜け落ちていました。

ブラインドではハイランド予想の際にクライヌリッシュも頭をよぎるも、ピートに違和感を感じて除外。
結果、1990年代あたりに流通していた、オフィシャルのミルトンダフ12年トールボトル、あれなんかこんな感じで青い麦芽風味とほのかなピートフレーバーだったし、蒸留時期もぴったり、味わいもバッティング加水っぽいからと、ボトル指定に走って熟成年数も間違える結果に。
この手の要素は独立させて考えるべきだと分かってるのですが、つい。。。

その他の要素としては、今回の仕様はGMやシグナトリー等でたまに見られるRifill Sherry Butts表記。同一種類で同一ビンテージでありつつも、複数の樽が使われているバッティング加水であり、そのあたりの印象、樽の種類、蒸留時期などは印象通りでした。
色気を出して間違ってしまいましたが、自分の感覚が思い切り外れていたわけではないテイスティングだったのは収穫だったと思います。

【再掲】若鶴酒造 三郎丸蒸留所の原酒とクラウドファンディング事業

カテゴリ:
※再掲のお知らせ※
売り切れていた樽オーナー募集が再開されたとのことで、10月14日に更新した本記事の記載を変更、再掲します。
同クラウドファンディングの募集期間は残り21日、現時点で1750万円を集め、目標金額2500万円まであと30%というところまで来ています。
ここまできたら、達成に向けてラストスパートで頑張って欲しいですね!

ー以下、紹介記事ー

先日、富山県は若鶴酒造のウイスキー事業として、三郎丸1960の紹介をさせていただきました。
発売されたオフィシャルボトルとしては日本最長熟成となる55年原酒に、ウイスキーファンなら少なからず興味をもたれたのではないかと思います。
そしてその三郎丸蒸留所が、蒸留所の改修事業の一環としてクラウドファンディングで資金の募集を開始しています。
(クラウドファンディングって何?って方は、説明すると長くなるのでぐぐってくだせぇ。)

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北陸唯一の蒸留所を改修し、ウイスキー好きが集まる見学施設へ(11/30まで)
https://readyfor.jp/projects/saburomaru

若鶴酒造のウイスキー蒸留設備は、築90年以上という建屋で行われており、ウイスキー量産はもちろん、大人数の見学受け入れも難しい状況にあります。
蒸留行程にはポットスチルが1基しかなく、全行程をほぼ手作業で行うという、近代ウイスキーのルーツである密造時代を彷彿とさせるような製造行程で極少量のみ生産されています。
その全行程はクラウドファンディングのサイトに掲載されていますが、通常の大手蒸留所では自動化されているところは全て手作業、麦芽の計量やミルへの投入風景、麦芽カスの掃除、一つしかない蒸留器を使っての2回蒸留など、ウイスキー作りの大変さが伝わってくるようです。
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詳細はこちらから:https://readyfor.jp/projects/saburomaru/announcements/43738

今回のクラウドファンディングは、蒸留所の改修、並びに設備の新設等にかかる費用の一部を募るもので、目標額は2500万円(改修にかかる総額は6500万円)という大規模な募集となっています。

仮にファンディングが成立しない場合でも、同社はウイスキー事業から撤退することはなく、手元に準備できている資金をベースに、可能な範囲で蒸留所の修繕を行う計画とのことです。しかしあくまで老朽化した蒸留所全体の建て直しがメインとなり、見学設備の充実や、蒸留器の新規購入などはしばらく困難になりそうとのこと。

私はこれまで富山の地とは縁も所縁もありませんでしたが、友人であるモルトヤマのイケメンが富山から世界にウイスキーを広めようと活動していることや、プロジェクトリーダーの稲垣さんが同世代とあって、他人事とは思えないんですよね。
そんなわけで今回の企画、私はお小遣いで可能な範囲で参加しますが、地元富山や北陸地方の皆様をはじめ、日本のウイスキー愛好家による支援で、地元で愛されるウイスキーだけでなく、それを世界に発信する流れが出来ればと思います。

クラウドファンディングリスト
(若鶴酒造クラウドファンディングのリターンラインナップ)

さて、ファンディングに参加することで得られるのが上記のリターン。中でも、最も目を引くのは150万円コースの樽買いでしょう。
購入出来るのは新設される銅製蒸留器で生産されるニューポットで、樽はバーボンバレル、容量は200リットル程度。
熟成は5年間無料で、その後は延長費用を収めることで追加の熟成が可能となります。
ボトリング費用は150万円の中に含まれており、ラベルも自由にデザインできるそうです。
また、通常はカスクストレングスですが、オプションとして40%以上であれば加水調整して度数を下げたボトリングをすることも受け付けるそうです。

このリターンは10月末まで売り切れの状態でしたが、試験蒸留の結果、良好な成果が得られたとのことで、5樽分の追加販売が決定しました。
ご参考:来年増産に目処、樽オーナーの募集を再開します。

とはいえ、若鶴酒造(三郎丸蒸留所)のシングルモルトは過去少量しかリリースされておらず、ブレンデッドも地ウイスキー規格と言える構成。蒸留所の実力もわからない中で、樽買いというのは困難な決断と言えます。
そこで今回は、若鶴酒造で作られているウイスキーの仕様と、その味わいについていくつかのサンプルから紹介させていただきます。

熟成庫

若鶴酒造のシングルモルトは
麦芽:スコットランド産
ピート:50PPM
酵母:エール酵母
樽詰め:63-65%
使用樽:バーボン樽、古樽中心
という、日本のクラフトウイスキーには珍しい全てピーテッドタイプで生産されています。正確な時期は不明ですが、操業当初からピーテッド麦芽を使用していたという話もあります。

現在、ピート麦芽はノーマルなものよりコストがかかるようですが、蒸留所の伝統に加え、富山のウイスキーとしてキャラクターを確立させるためにも、こだわっていきたいポイントなのだとか。
ピートの強さを表すフェノール値50PPMは、アードベッグ(55PPM)とほぼ同等。ただし仕込みで使われているのが内陸系のピートのようで、ヨードや磯臭さに繋がる香味はなく、ハイランドのほろ苦くスモーキーなタイプです。

また、同蒸留所では熟成中の樽の保管を温度管理された倉庫で行っており、熟成が穏やかに、長期的に続く傾向があります。
これまでテイスティングした熟成20年以上の原酒はスコットランド的な樽感となっていて、面白い仕上がりだと感じました。
今後の保管方法は検討事項とのことですが、ストックされている原酒にそうしたものがあるというのは、原酒が限られるクラフト系の蒸留所にとってアドバンテージに繋がります。
それでは前置きが長くなりましたが、原酒のテイスティングに移ります。


・ニューポット 2016年蒸留 仕込み第一号。
まるでおせんべいや餅を焼いたような香ばしさ。発酵した植物のような酸味と微かに温泉卵を思わせる香り。
口当たりはとろみがあるが舌を刺激するスパイシーさ、香ばしい麦芽風味、ゴムのようなニュアンスも。余韻は最初からのスパイシーさの名残を残し、焦げた麦芽のほろ苦さが染み込むように残る。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルA バーボンバレル 57%
蜂蜜の甘さと薬草のような香り、ウッディーな木のアロマと微かにゴム臭。
とろりとしているがスパイシーな口当たり、麦芽の香ばしさ、シリアル、薬のシロップのような甘み。徐々に土っぽくほろ苦いピートフレーバー。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルB バーボンバレル 57%
バーボンオークの華やかなアロマ、洋梨やバニラの甘みとハーブのニュアンス。少し溶剤っぽさ。
スムーズでじわじわとスパイスの刺激と香味が広がる。モルトスナック、バーボンオークの甘みからほろ苦いピートフレーバー、薬草のシロップ。

・22年熟成 1994年蒸留 サンプルC バーボンバレル 57%
梅のような酸味と乾いた木を思わせるアロマ。徐々にマシュマロ、薬っぽいニュアンス。
とろりとした口当たり、ドライアップル、イチゴ味の薬のシロップの甘さ。 余韻でじわりとピート。少し舌を刺激する要素はあるが、度数から考えればまろやか。 

・26年熟成 1990年蒸留 バーボンバレル 59%
きれいなバーボンオーク、地ウイスキーを思わせる酸味、ハーブ、スモーキー。個性と樽感のバランスの良い香味で、最も期待できる。

原酒の傾向は内陸系のピートに加え、薬草や薬っぽい個性。某S社が作るような、綺麗に旨いウイスキーではないです。
特にニューポットは蒸留器の関係もあってか、かなり個性的というか灰汁の強い味わい。しかしこれが20年を越える熟成を経た原酒となると、樽次第で中々面白い仕上がりとなっています。 

また、銅製の新しいスチルが導入されればニューポットの質も相当改善されるであろう点に加え。つい先日、イチローズモルトの肥土伊知郎氏が訪問され、技術指導をされたところ、それ以降の原酒はネガティブな要素に改善が見られました。つまり、まだまだ伸びしろはあるということだと感じます。

しかしそうは言ってもなおのこと、実際に飲んでみないと。。。というのは至極まっとうな意見。
若鶴酒造は今年11月20日に開催されるウイスキーフェスにブース出展されるそうです。
20日というとファンディング締め切りまで1週間強で、樽買いを含めた支援の決定には最後の確認的なスケジュール感にはなってしまいますが、そうした目的の有無に関わらず、是非ブースで富山発のウイスキーを体験してみてください。

ご参考:https://readyfor.jp/projects/saburomaru/announcements/43685

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