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2016年11月

ラフロイグ 15年 1980年代流通 アンブレンデッド表記 43%

カテゴリ:
LAPHROIG
Unblended Islay Malt Scotch Whisky
Aged 15 Years
1980's "BIG RED"
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:個人宅(KuMC@Nさん)
時期:開封直後
評価:★★★★★★★★(8)

香り:スモーキーでヨードと植物、黒土の混じった腐葉土を思わせるピート香。微かにキャラメリゼしたナッツの香ばしさが混じり、奥から厚みのあるフルーティーさ、りんごのカラメル煮、トロピカルフレーバーが開いてくる。多層的で充実したアロマ。

味:オイリーでとろりとコクのある口当たりから淡くキャラメルや熟したリンゴの甘み、フルーツパパイヤ。存在感のあるピートフレーバー、ヨード、香ばしい麦芽風味もある。コク強く旨味が濃い。
余韻はじわりと染み込むピートのほろ苦さ、鼻腔に届くお香のように雅なスモーキーフレーバー。非常に長い余韻。


久々に飲ませていただきました、ラフロイグ15年の旧ボトル、通称"ビックレッド"。アンブレンデッド表記に時代を感じます。
蒸留時期は1960年代後期から1970年代。フロアモルティングの恩恵か、それとも麦芽由来なのか。この当時のラフロイグはボウモアとは違う系統のトロピカルフレーバーを下支えに備え、ボディに厚みがあってヨードやスモーキーフレーバーが渾然となって広がる、素晴らしいモルトウイスキーに仕上がっています。

瓶熟でフレーバーの一体感が増しているのもポイントですね。
今回のボトルは口開けでのテイスティングでしたので、フルーティーさはまだ開ききっていませんでしたが、その分ヨードや土っぽいニュアンスを強く感じました。状態も良く、今後時間経過での変化も期待できそうです。

愛好家の評価も高いボトル。もちろん現行品のラフロイグも良い部分はいっぱいあって、現在オススメできる蒸留所の一つではあります。 
今は無いボトルを飲む意味があるのかと、否定的な感情を持たれる方もいるかもしれませんが、蒸留所の核となるフレーバー、現行品の根底にはこうしたボトルの存在があり、それを知ることでさらに良い部分を見つけることが出来る、温故知新の好循環に入ることが出来るのです。
オールド至上主義になれとは言いませんが、経験できる機会があれば、是非飲んでおくべきボトルの一つでは無いかと思います。

さて、以下は雑談&ローカルネタ。
ラフロイグは、昨年200周年として15年、21年、32年など、愛好家を唸らせるリリースがあっただけでなく。通常の10年もボディは軽くなりましたが、十分楽しめる美味しさを持っています。
そのラフロイグのここ数年間のリリースで、最も高い評価を受けたボトルと言えるのが、1991ビンテージの23年です。(先日リリースされた30年はまだ飲んでいないので除外。)
自分としてもこのクオリティは文句無いとしていたのですが、今回の15年をテイスティングした際、23年が持ち込まれており、飲み比べをさせてもらいました。

実はこの時、どちらが良い出来かという話題にもなっていて・・・。
方や加水のオールド、方やリリースされてそう時間の経っていない現行のカスクストレングス。
一応両方飲んだ記憶があるなかで、いやいや23年良いじゃないですかと支持していた自分でしたが、飲み比べるとカスクストレングス故の荒さが目立ってしまい、加水の良さとこれだけのフレーバーを出る当時の酒質の強さを実感する結果に。
正座するくらいいは意識を正して、再度15年をテイスティングさせてもらいました。
貴重な経験をありがとうございました!

(なお、23年はこの後天ぷら屋でめちゃくちゃハイボールした。)

ニッカウイスキー 丸壜ニッカ エキストラ 1960年代流通 2級表記

カテゴリ:
EXTRA NIKKA
NIKKA WHISKY
Finest Malt Pot Still
1960"s
640ml 37%

グラス:木村硝子
量:30ml程度
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★☆(4)

香り:微かにスモーキーで乾いた穀物を思わせる香ばしさのある香り、ほんのりと甘み。それ以外はクリアでほとんど香りが立たない。まるで甲類焼酎や刺激の少ないウオッカのよう。

味:少しピリッとした刺激と水アメを思わせる甘さ。焼き芋のような香ばしさも感じる。中間はべったりとして変化に乏しい。余韻は弱く、微かに乾いた穀物っぽさを感じた後ですっきりと消える。

ハイボールにすると異常にすっきりとした飲み口で、アルコールも感じない、余韻で微かにブラウンシュガーの甘み。
ウイスキーというよりただただ飲みやすいお酒、ジャパニーズウイスキー黎明期の味。
通称"丸壜ニッキー"の名は、ニッカウイスキーファンか、あるいは竹鶴政孝関連の書籍を読まれたことがある人なら、一度は目にした事があると思います。
1950年代、日本で激化したとされる"2級ウイスキー商戦"で、当時の弥谷副社長が発売を提案したのが丸壜ニッカ(丸壜ニッキー)です。
価格を下げて容量は増やす。目先の利益ではなく数年先の利益を見込んだ商法で、販売及び収益増に繋げ、ニッカウイスキーの基盤を築いたというストーリーは、ニッカの社史を語る上では外せないエピソードの一つと言えます。

前置きが長くなりましたが、その後1962年、酒税法の改正により2級ウイスキーの原酒の混和率が0〜10%(旧税法では0〜5%)に引き上げられたことを受け、後継品としてリリースされたのが、今回のエキストラです。
ラベルにある「Finest malt pot still」や「Guarantued matured in wood」など、現在には見ない記載に加え、「NO METHYL ALCOHOL」という戦後の酒業界を伺い知ることが出来る表記に、ロマンと 時代を感じます。

当時の発売広告をみると、原酒をたっぷり入れて、さらに美味しくなったということが書かれています。
とはいえ、上限ギリギリまで入っていても残り90%は水やブレンド用アルコール。飲んでみると香味は弱く、奥行きも少ない。申し訳程度に原酒の香味が感じられると程度で、あくまでウイスキーに馴染みがなかった当時の市場のための商品であることが明確に伝わってきます。

つまり、嗜好品として香味を楽しむというより、飲みやすく、気持ちよく酔うためのアルコール的な位置付け。それを裏付けるかのようにハイボールで飲んだ時の飲みやすさはとんでもなく、まるで「まろやかな水」のように炭酸の刺激とともに口の中に入ってきます。
ボトリングから半世紀以上、経年による変化もあるとは思いますが、何もなさすぎて逆に違和感を覚えるほどでした。


余談ですが、丸壜ニッカの発売とほぼ同時期に、今年60周年を迎えたブラックニッカもリリースされています。
丸壜ニッカは2級であるのに対して、ブラックニッカは特級規格で発売され、「これぞ日本洋酒界の代表!」と、価格も内容も高級路線でした。
対する丸壜ニッカはその後のブランド編成の中で姿を消しますが、現在販売されているブラックニッカクリアブレンドに、その姿を見るように思います。

画像引用(エキストラニッカ広告):https://www59.atwiki.jp/nikka/sp/pages/305.html

ジョージ T スタッグ Jr 64.85% 2016年 バッファロートレース

カテゴリ:
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GEORGE T STAGG JR
Kentucky Straight Bourbon Whisky
2016's
750ml 64.85% 129.7Proof

グラス:サントリーテイスティング
量:30ml程度
場所:個人宅(T君@TMC)
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:リッチでパワフルな香り立ち。メープルシロップやチョコレートを思わせる甘いアロマ。徐々にスパイシーで微かな溶剤の刺激。徐々にトーストしたパン、色の濃い蜂蜜、乾燥した牧草を思わせるウッディネス。

味:スパイシーでリッチな口当たり。コクのある甘味はメープルシロップ、ほのかにドライアプリコット、チェリーの甘酸っぱさのアクセント。 ハイプルーフバーボンらしく高度数の刺激、余韻はウッディーでビター、カラメルソースを伴い長く続く。

現行のライトなタイプではなく、樽感、酒質共にリッチなバーボン。少量加水するとさらに華やかで甘い樽香も引き出せる。 加水で伸びる印象から、ロックで飲んでも真価を発揮しそう。 

ジョージTスタッグは、バッファロートレース蒸留所がリリースするプレミアムブランド。15年程度の熟成、バレルプルーフで加水無し、当然ノンチル。年間数百本程度しか出荷されず、人気の高いブランドの一つです。
そのブランドから、熟成年数は約8年と半分程度ながら、同様のレシピや製法で作られた廉価版、ジュニアがリリースされており、今回は2016年ロットをテイスティングします。

同銘柄の最大の特徴は、なんといってもそのハイプルーフ度合い。バーボンはレギュレーションで上限62.5%での樽詰めが定められている中で、2002年からリリースが始まったジョージTスタッグは、時に70%を越える度数まで"熟成中に度数が上がってしまった"稀有な原酒で構成されており、このジュニアも約2%度数が上がっています。
これは同蒸留所がある地域の特徴と、イーグルネストと呼ばれる貯蔵庫最上段の場所に影響があるとされていますが、スコッチ中心の自分は「ホントかよ」と思ってしまう、これもある種の個性といえます。

また、もう一つの謎が「アメリカンホワイトオークではなく、フレンチオークで熟成した原酒」であるという事が日本のブログやショップを中心に描かれているのですが、これもホンマかいなと。
バッファロートレースのWEBサイト、ジュニアの紹介ページにはそうした記述はなく、ジョージTスタッグの公開レシピにもNEW WHITE OAK としか書かれてないんですよね。
ただ、バッファロートレースがフレンチオークなどの異なる種類の樽で原酒を熟成させる実験を開始したのは1987年からという実績もあり、ジョージTスタッグのリリースが始まった2002年での15年熟成は一応辻褄は合います。
レギュレーションとの兼ね合いもある話ですので、もう少し調べてみたいと思います。

ご参考:ジョージTスタッグ2016のレシピ

さて、素性考察が長くなってしまいましたが、このボトルは最近バーボンを意識して飲むようになってから、何気に気になっていた銘柄の一つ。特段飲ませろとか言ってないんですが訪れる機会、持つべきものはウイスキー仲間ですね。
質の良い樽での熟成を思わせる、嫌味の少ないメープルシロップを思わせる甘さにスパイシーな刺激。そこに60%を超えるバレルプルーフらしく荒さを残すウッディネスやハーブのニュアンス。「この親にしてこの子あり」とも言える出来栄えで、しっかり楽しませてもらいました。 

なお、話は全然違いますが、このジュニアのスペルが、JRと大文字2つの並びに違和感と懐かしさを覚えてしまうワタシ。
かれこれ20年近く前、ナイナイのオファーシリーズで「ジャニーズJR」と書かれた岡村の誤字ネタを思い出したのは。。。自分だけでしょうか(笑)。

フィンドレイター20年 アニバーサリーモルト 1990年代流通 43%

カテゴリ:
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FINDLATER'S
Anniversary Malt
Single Malt Scotch Whisky
Aged 20 Years
1990's
43% 750ml

グラス:木村硝子
場所:自宅
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(5-6)

香り:厚みのある香り立ち。乾燥した植物感と青みがかったフルーティーさ。微かに梅の酸味と木香。例えるなら和室のようなアロマ。ほのかにレザーや油を吸った新聞紙のようなクセも感じる。

味:スムーズでまろやかな口当たりから後半にかけて軽くスパイス。オーキーでメロンや瓜などの青みがかったフルーティーさと植物感。ボディはミディアムから少し厚めで飲みごたえがある。
余韻はビターでドライだが、べったりと蜂蜜のような甘さと植物系のえぐみが張り付くように残る。


フィンドレイターといえばこのブログでも何本か紹介している、昭和の洋酒ブーム時代を象徴するブレンデッド。今回の1本は、同社が1990年代に「なんらかの」記念でリリースしたシングルモルトウイスキーで、その中身が何かは不明とされています。
こういうミステリアスなボトルを前にすると、ワクワクしてしまうのはオールド好き一種の性。せっかくなのでテイスティングと合わせて原酒が何なのか検証してみます。

今回のボトルが流通した1990年代のフィンドレイターの構成原酒は、トミントール、タムナヴーリン、タリバーディン。また、フィンドレイター社を傘下とするインヴァーゴードングループは、ブルイックラディやベンウィヴィスに加え、1972年から1990年まではディーンストンを所有しており、フィンドレイター・マーロッジとして同蒸留所のモルトウイスキーがリリースされていました。

ラベルの説明文には「同社のストックから優れた原酒を厳選してリリースした」との記載。 普通に考えれば、上記6種類の蒸留所のどれかがボトリングされていると考えられます。
個人的な好みで言うと、あまり惹かれない選択肢が半分以上あるのですが、ひょっとしたらラディやベンウィヴィス、あるいは選択肢にないその他の蒸留所の可能性だって微粒子レベルで。。。
また、1990年代に流通したボトルの20年モノですから、今では貴重な1970年代蒸留のほぼオフィシャルというだけでも得した気分にはなれます。

あとは飲めばわかる。迷わば飲めよってことでとりあえず一口飲んで、ラディやトミントールは無いという事がよくわかりました(笑)。
この青みがかった香味、植物感に若干の紙や古い油を思わせるローランド的なクセは、おそらくディーンストン、あってもタムナヴーリンあたりでしょう。 
先に記載したマーロッジがディーンストンという話ですから、今回の20年もまた同様のチョイスという可能性もあるのかなと思います。


さて、このアニバーサリーシングルモルトですが、そもそも何の記念なのかというところからわかりません。
主に日本向けのリリースだったのか海外サイトにも情報がなく、そして不幸なことに洋酒ブーム終焉後、この銘柄は日本ではかなりマイナーな部類なんです。

色々調べた結果から推察すると、可能性は2つ。
1つはフィンドレイター社は1990年まで独立した企業としてブレンデッドを製造していたものの、1991年にインバーゴードン社の傘下となり、その記念に同社が保有していた原酒の中からなじみの深いものが消費量の多かった日本市場でリリースされた。という仮説。
そしてもうひとつが同じく1991年、1983年から休止していたディーンストンが、インヴァーゴードン社の手を離れてバーンスチュワート社の下で再稼動したという記録が残っており、この再稼動記念に、インヴァーゴードン社がディーンストンを所有した最初の年(1972年)の原酒をストックから引っ張り出してきて、20年モノのシングルモルトをリリースした、という仮説。
現実的には前者濃厚ですが、後者のほうが美しい話やな〜とか思っています。

なお、このボトルは11月27日に開催するオールドブレンデッド会用にと、ウイスキー仲間のK兄さんから提供頂いたボトルです。
興味ございます方は、飲んでその中身を予想してみてください。
(あるいは詳しい話を知っている方、いらっしゃったら教えてください。)

サントリー 山崎 12年 ピュアモルト表記 1990年代流通

カテゴリ:
YAMAZAKI
Pure Malt Whisky
Suntory Whisky
Aged 12 Years
1989-1990's
43% 750ml

グラス:木村硝子
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1〜2ヶ月
評価:★★★★★★(6)

香り:干し草を思わせる植物感を伴うウッディネス、少しヒネているが徐々にアプリコットやピーチの甘酸っぱさ。みたらし、微かに土っぽいピート香も感じる。

味:スムーズで軽い刺激を伴う口当たり、メープルシロップ、リンゴのコンポート。じわじわとウッディーなタンニンが染み込む。余韻はドライ、キャラメリゼ、ほろ苦く染み込むように残る。

山崎名義のモルトウイスキーが発売されたのが1984年のこと。あ、俺の生まれ年じゃんってそれはどうでもいい話。
そのままリリースが続いた後、酒税法が改正された1989年4月から1990年頃に流通していたのが、今回テイスティングする山崎ピュアモルト12年(向かい獅子ロゴ、ウイスキー表記)です。

山崎や白州などのモルトウイスキーは、今でこそシングルモルト表記ですが、初期からはピュアモルト表記でリリースされており、某グルメ漫画で痛烈に皮肉られたりした過去があります。
果たしてなぜピュアモルト表記だったのか、レシピはどうだったのかは確認しようがありません 。ただし山崎がリリースされ始めた同時期は、スコットランドでも表記が乱立していた時期であり、シングルモルトウイスキーでピュアモルト表記は数多くあった事は、補足しておきます。
(その後スコットランドでは2000年頃のカーデュー事件をキッカケに規制が強化されましたが、日本では特段規制がなく、表記を見直す必要もなかったというのは自然な話です。)

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さて、せっかく旧ボトルがあるのですから、現行品の山崎12年と飲み比べてみます。
現行品の容量が少ないぞって、それは今このために1本買うのも懐に厳しいので、ここはミニボトルで許してください。
右が旧山崎、左が現行山崎で、見た目は旧ボトルのほうがほんの少し濃い感じです。    

飲み比べると現行品は香味共に軽くなっているものの、オーキーで華やかな熟成香が洗練された印象を受けます。嫌味なところは少なく、これは万人ウケする味わい、何も考えずに家でダラダラ飲みたいです。対して旧ボトルのほうがフレーバーのコシが強くウッディですが、その幾つかは野暮ったい印象もあります。当時と今では20年以上の開きがありますから、山崎で使える原酒の種類、量、年数の幅、樽の構成に違いがあるのでしょう。例えば今の山崎はパンチョンの比率が多いですし、ミズナラ原酒の傾向の違いも感じ取れます。

自分のようなヘビードリンカーはこれくらいでもアリだなと感じますが、より日本人向けのウイスキーを目指した結果なのかもしれません。飲み比べることで、旧ボトルには旧ボトルの、現行品には現行品の良さを感じる事が出来ました。
オススメの飲み方は現行品同様にストレート、加水、ロック、なんでもござれ。特にロックは旧ボトルのほうが濃さがあるので飲みごたえが長く持続します。ただ、ハイボールは現行品も旧ボトルも、白州のほうが向いてますね。

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