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2016年11月

グレンギリー 13年 1980年代流通 サマローリ フィノシェリー 57%

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GLEN GARIOH
Samaroli
Aged 13 years
Cask type Fino Sherry Butt
Bottled by R.W.Duthie 
Select & imported by Samaroli 
1980's
750ml 57%
  
グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:個人宅(KuMC@Nさん)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:枝つきレーズンやドライアプリコットを思わせる甘酸っぱいアロマ、麦芽香、そして古酒感の混じる妖艶なスモーキーフレーバーをしっかりと感じる。スワリングで土っぽさと使い古したレザーの香りも。

味:とろりとオイリーな口当たり、フレーバーは強くしっかりとしている。香り同様にアプリコットの酸味と麦芽風味、蜂蜜、ナッツ、どっしりとした"らしい"土っぽいピートが余韻にかけて開いていく。フィニッシュはピリッとスパイシーで刺激があり、落ち着いた甘みを伴うスモーキーフレーバーが長く続く。

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ただならぬ雰囲気を感じる、サマローリのグレンギリー。当時のボトルらしく不明点が多いですが、おそらく1980年代流通、1970年代蒸留と思しき1本です。
ラベルに書かれたBottled by R.W.Duthieの表記も愛好家として見逃せませんね。ダッシー(ケイデンヘッド)が所有していた樽を、 サマローリが買い付けてボトリングしてもらい、イタリアにインポートしたというところでしょうか。
当時のサマローリのみならず、ダッシーはファンの多いボトラーズですから、このダブルネームだけで高まってしまう愛好家も多いと思います。    

その味わいは当時のグレンギリーらしいどっしりとしたピートフレーバーに、強い旨味と樽由来のアプリコットなどのフルーティーさ。酒質由来の香味の存在感は野性味すら感じる、例えるならばジビエのような魅力を感じます。
1杯飲んですっかりやられてしまい、思わずもう1杯。うーん、ギリーいいですねーギリー。

ちなみにこのボトルをの所有者であるNさん曰く、これフィノシェリーのあざとさとギリーの強いピートが喧嘩して拷問かと思ったんだけど・・・一応飲む?と前置きがあった上で飲ませていただいたのですが。
「あれ、これめっちゃ美味しくないですか?」   
「え、あれ、美味しいぞ」
となったことから、経年が良い方向に作用した結果の産物であり、実はボトリング当時は現在のフィニッシュモノや樽感ベタベタのボトルのように、必ずしも高い評価を受ける味わいではなかったのかもしれません。

最近日本市場にボトラーズリリースが入ってくる動きを見せているグレンギリー、ノンピートになって華やかで綺麗な1997年以降のモノも良いですが、最近買えるところでは1990年でピートと樽由来のフルーツ感があるボトルにらしさが感じられて楽しい。
瓶熟次第では、今回のようなボトルに仕上がっていくモノも出てくるのでしょうか・・・。

ニッカ ピュアモルト ブラック 1980年代流通 特級表記

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PURE MALT
BLACK
Nikka Whisky
1980's
500ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:若い酸味を伴うスモーキーで磯っぽさ、ヨードの混じる香り立ち。干し藁、魚介のニュアンスに塩素、奥にはバニラの甘み。
最初はリッチでパワーのあるアロマだったが、時間経過で軽さを感じる。

味:香り同様酸味と少しエッジの立った刺激のある口当たり。中間は白かりんとうのような香ばしい甘み。奥から海苔のような若干の癖、強いピートフレーバー、余韻は焚き火を思わせるスモーキーさ、焦げたほろ苦さが長く残る。

現行品もコスパに定評があるピュアモルト黒だが、特級時代はキャラクターがアイラ寄りで、ピーティーでスモーキーな個性がいい意味で驚きに繋がる。ロックやハイボールも多少チグハグさがあるが悪くない。

ニッカウイスキーが1984年に発売したピュアモルトシリーズのブラック。黒、赤、そして遅れて白がリリースされ、どのボトルも若い原酒と適齢を迎えたモルティーな味わいが混在しており、ややアンバランス・・・というか荒さを感じつつも、中々面白いモルトに仕上がっています。(先日のオールドブレンデッド会にボトルを出しましたが、総じて好評だったようです。)

今回テイスティングしたブラックは、メーカーコメントでは「余市モルト」をベースにした個性を際立たせているもの。しかし飲んでみるとカリラを思わせるニュアンスが随所に感じられ、今のピュアモルトとはずいぶんキャラクターが異なるイメージです。

当時はシングルモルトでスコットランドからモルト原酒買い付けが出来た時代(現在はバッテッドモルトはまたはブレンデッドで可)。同時期のピュアモルトシリーズのホワイトは「アイラモルトをブレンド」したことを売りにしており、実際飲んでみると1980年代蒸留のボウモアにあるフローラルなフレーバーがしっかり感じられるわけですが、同じようにカリラが使われていたとしても不思議ではありません。

ちなみに、当時のニッカ(あるいは某広告代理店)は、これをハイランドモルトとして売りに出していたわけですが・・・この系統でハイランドっていうのは、同系統だとブローラあたりしかないわけで、無理があるんじゃないかと思ってしまいます。
中古市場では比較的安価で手に入るボトル。見かけたら試してみてください。

【ご報告】オールドブレンデッド テイスティング会2016を開催しました

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11月27日、池袋にてオールドブレンデッドテイスティング会を開催しました。
当日は募集人員のMAXである50名が参加、こちらからは約60本のボトルを用意させていただきました。 
そこに皆様からの持込で約20本程度プラスされ、計80本弱のオールドブレンデッド(一部シングルモルトも)が集まり、会場のキャパシティ的にも"テイスティング会"として、問題なく楽しんでいただくことが出来たと思います。 
また、ラスクやパンなどの差し入れも多数頂き、準備していた軽食の一層の充実があったことや、テラスの喫煙席では今年もシガーマスターによる熟成シガーが振る舞われた事は、紹介しておかなければなりません。 

自分はというと、会中はほとんど飲まずに進行と管理に努めました。せめてゲスト持参ボトルの後日紹介くらいはできれば良かったのですが。。。 やはり主催イベントですから裏方がっつりで、そういう余裕は無く(笑)。
そんなわけで全体の概要しかお伝えできませんが、古酒にまみれる3時間を楽しませていただきました。

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このイベントはあくまで「試飲会」、「自分のお気に入りの1本を探す」ことが目的であるため、有名な銘柄以外にBAR等ではあまり見ないマイナーどころも多く用意しました。
有名どころ、例えばジョニーウォーカーなどは飲まれたことがある方も多いと思いますが、ウイスキーの銘柄はそれだけじゃありません。
「なんだこれ」と思いもかけぬボトルが、昭和の時代には多数販売されていたのです。

ただ、そうしたマイナーどころは、掘り出しモノもあれば正直微妙なブツも多数あるため、グラスに注いでも気に入らなければ捨てよい、あくまで発見を優先というルールを採用。
飲み過ぎによる粗相もないよう注意していましたが、参加された皆様のマナーは素晴らしく、誰一人として酔いつぶれ無く、問題なく会を終えることが出来た事が出来ました。

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なお、準備したボトルは開催に当たってご好意で提供頂いた数本を除き、全て自分が酒屋巡り、オークション、リサイクルショップで調達した自宅ストックです。勿論、当初の予定通り会の終了時には一人一本お持ち帰り頂きました。
また、気軽に参加してもらうため、会費も極力低く抑えており、会場のレンタル費用や輸送費用、準備物全般を含めると黒字にはならないのですが。。。会を通じて得られる繋がりや情報はそれ以上の価値があります。今後もタイミングをみて、続けていけたらなと感じています。

その繋がりの一つとして、今回の会でもまた、是非飲んでくださいとサンプルを多数頂きました。(一部は強奪したものも有りますw)
皆様、お心遣い本当にありがとうございます。
「ブログいつも見ています!」「勉強させてもらっています!」と多くの応援のお言葉も頂き、やる気も充電。準備は楽ではありませんでしたが、今は心地よい疲労感と充足感で体が満たされています。
頂きましたボトルは、目標12月中にブログに掲載できるようにテイスティングを進めます。

最後に、イベントの設営にはウイスキー仲間のJさんとAさんにお手伝い頂きました。
おかげさまで当日余裕を持っての準備完了と、会の運営をすることが出来、非常にありがたい限りです。 
また、撤収の際の片付けも多くの参加者が自発的に手伝ってくださり、順調に作業は終了。(あまりの順調さに、時間を持て余してしまったほどでw)
ご協力頂いた皆様、ありがとうございました!

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追記:Hさん、クリリンの置物ありがとうございます(笑)
今後のブログやイベント等で活用させていただきます。

追記2:イベント後、2次会、3次回会の後で最後の力を振り絞って本記事を書きましたが、あまりによくわからない文章だったので、体裁を修正しました。(11/28)

秩父 6年 2009-2016 イチローズモルト MDC BAR キッチン 62.2%

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CHICHIBU
Ichiro's Malt
Malt Dream Cask for Bar Kitchen
Aged 6 Years
Distilled 2009 Nov
Bottled 2016 Sep
Cask type Bourbon barrel
700ml 62.2%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封1週間程度
評価:★★★★★☆(6)

香り:ツンとした乾いた木材を思わせるアロマ、ドライレモンピール、クラッカー、奥にはバニラの甘さ、ナッツのニュアンスも感じる。秩父らしい酸味を伴うクリーンで爽やかな構成。時間経過でバーボンそのものを思わせるフレーバーが少し混じる。

味:とろりとした口当たり、シリアルを思わせる香ばしい味わいから、蜂蜜の甘みと微かにウッディなえぐみ、溶剤系のニュアンスを感じた後、スパイシーでオーキーなフルーツ、近年系トロピカルフレーバーも顔を出す。
余韻はややドライ、ハイトーンでヒリヒリする。ジャスミン茶を思わせる華やかさと植物感、後半に感じられたオーキーなフルーツが鼻に抜けていく。

ストレートでは1口目で感じたフルーティーさが3口目以降あたりから感じ辛く、チェイサーやクラッカーなどでリセットしていく必要がある。
加水するとバーボン樽由来のフルーティーさが開き、ぐっと親しみやすくなる。ロックも悪くない。ハイボールはこのボトルの良い部分とも言えるバランスの良いフルーティーさが薄れ、飲みやすくはあるが魅力は感じない。


博多のBAR キッチンさんが樽買いし、つい先日ボトリングしたばかりのモルトドリームカスク。
同店と言えば、カードシリーズを全種揃えてのテイスティング会を開くなど、イチローズモルトの南の聖地とも言えるBAR。
先日マスターの岡さんとお会いした際、どうですか?とお誘い頂き譲ってもらいました。

6年と10ヶ月、約7年間のバーボンバレルでの熟成。秩父は色々飲んできましたが、その中でも良くまとまっているリリースだと思います。
秩父は熟成の見極めが難しい蒸留所で、正直そこを外しているボトルも少なからずあります。
しかしこれは秩父らしいクリーンな酒質にバーボンバレルの個性、フルーティーさも感じられて、ウッディな渋みやえぐみは少ない、バランスの良い仕上がり。特に加水での味の変化が良いですね。

ただ約7年の熟成ではどうしても原酒の未熟部分、アルコールの角は充分に取れないため、これまでリリースされてきている秩父全般に共通する"らしさ"も残っています。
このまま熟成を続ければどうなるかというと、フルーティーさだけが強くなって、熟成感が増していくような熟成が続くことはなく、実際は樽感も合わせて増えてしまうためウッディーでドライな構成になりがち。
もちろん、それはそれでウイスキーとしては面白いですし、加水調整などすれば美味しく飲める可能性もあります。
ただ、なるべく自分の樽をカスクストレングスで美味しく、バランス良く出すならば・・・このタイミングが秩父蒸留所の飲み頃の一つ、なのかもしれません。 

BARキッチンさん、貴重なボトルをありがとうございます。
ああ、早く博多に行く機会を作らないと(´Д` )

東亜酒造がウイスキー事業再開 ゴールデンホース 武蔵 武州 を発表

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かつて、秩父蒸留所の前身とも言える羽生蒸留所を操業していた東亜酒造。
イチローズモルトのファンであればその名を知らない人は少なく、地ウイスキーメーカーとしてはゴールデンホースが有名であった酒造メーカーです。
11月11日、この東亜酒造からウイスキー事業に再度参入する旨の宣言が行われ、休売していたゴールデンホース2銘柄の販売が開始されました。


・ゴールデンホース ピュアモルト武蔵 700ml 43% 
・ゴールデンホース ブレンデッド武州 700ml 43% 
※引用及び参考:
http://www.toashuzo.com/lineup/whisky/

販売を開始するのは上記2銘柄。ピュアモルト仕様の武蔵、ブレンデッド仕様の武州。どちらもかつて販売されていた、ゴールデンホースのブランドです。

ファンも多かった銘柄が復活するのは喜ばしいことですが、原酒を供給していた羽生蒸留所は、2000年の休止後に取り壊されてしまっているため、既にこの世に存在しません。
また、貯蔵していた原酒も破棄されることとなり、それが肥土伊知郎氏と笹の川酒造によって買い取られ、後のカードシリーズ等に繋がったことは、もはや説明するまでも無いかもしれません。
東亜酒造が今回のゴールデンホースの発売に合わせて発表した"ご挨拶"でも、多少トーンは違いますが、そのことが触れられています。

既に同社は蒸留所を保有しておらず、ストックも無いため、あくまで原酒はスコットランドから買い付けてブレンド、販売を行うこととしています。
商品説明にもそのことが書かれており、特にブレンデッドの武州は、「3年以上熟成したブレンデッドウイスキーと、モルトウイスキーをブレンド」とあります。
これはグレーンを単体で購入したのではなく、バルクウイスキーとしてブレンデッドとバッテッドモルトを買い付けてブレンドしていることを意味していると考えられます。

ブレンド技術を磨きつつ、ゆくゆくは原酒の製造も再開していきたいと、それをもってクラフトウイスキーの1社に加えて頂きたいとする同社のご挨拶。
日本で作ったとは一言も書かない潔さ、慎重に言葉を選んだような文章。。。
確かに軌道に乗れば蒸留所建設に動く可能性もあるのでしょう。
ただ、私自身このことでやや疑心暗鬼の念に駆られているのは、きっと他の要因によるところで、少なくともこうしたPRとなったのは、例の一件や基準を作るという動きがあったからなのだろうなと感じました。
まあ、良い傾向と言えるのかもしれませんね。


さて、先述のとおり、歴史あるゴールデンホースの2銘柄が復活することは、歓迎すべきことと感じます。
他方で、こうして今現在日本に存在するメーカーが増えるということは、ますます競争が過熱し、少ないニーズを食いあって結果自滅という事に繋がりかねない危険もあります。

実際、輸入原酒を使ってブレンドを作ると企業は増えつつあり、どうしても味が似通ってきます。
例えば、これだけ国内に蒸留所が増えてきたのですから、スコットランドのように別なクラフトディスティラリーと提携するなど、ブレンデッドメーカーとして活路を見出す方法も選択肢に出てくるのではないかと思います。
同社が今後どのように動いて独自色を出していくのか、注目していきたいです。

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