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2016年09月

ボウモア 35年 1968-2003 ジム・マッキュワン ケルティックハートランド 40.6%

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BOWMORE
Jim McEwan's 
Celtic Heartlands 
Aged 35 Years
Distilled 1968
Bottled 2003
700ml 40.6%  

グラス:サントリーテイスティング
量:15~20ml
場所:個人宅(持込ボトル@Yさん)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:トロピカルフルーツと称されるフルーティーさに、フェロモン系のアロマ。所謂南国感。パイナップル、ドライマンゴー、洋梨、土っぽいピートや干し藁のほろ苦いニュアンスも広がる。また、時間と共にドライでオーキーなウッディネスが徐々に強く感じられる。

味:ドライでオーキーな木のエッジを感じる口当たり。ボディは軽く、黄色いドライフルーツ、乾いた麦芽の香ばしさ、徐々にトロピカルなフルーティーさと香り同様のニュアンスが広がってくる。
余韻はスモーキーでドライ、フルーティーでウッディな渋みとともに長く続く。


ケルティックハートランドシリーズは、今はもうウイスキー業界の第一線から身を引かれてしまった、ブルイックラディ蒸留所復活の立役者にして、ボウモア蒸留所の所長だったジム・マッキュワン氏が、原酒を厳選してリリースしていたシリーズ。
ボウモア等のアイラモルト以外に、マッカラン、グレンリベット、ハイランドパークなどもリリースされており、リリースにあたっては一度原酒をアイラ島に移して熟成していることが、独特の深みを生み出すとしてセールスポイントとなっていたシリーズでもあります。
ただ、これはボトリング設備としてブルイックラディを使用する関係で、現地に移していたという背景もあるんでしょう。

今回のボトルはモルトウイスキーファン垂涎の1960年代蒸留ボウモアで、そのアロマはもちろん南国感しっかりのフルーティーアイラ。しかし原酒構成は度数落ちの複数樽バッティングで、酒質は枯れかけていて樽由来のウッディネスが強くドライ。ボディは軽く、フレーバーの力強さもそれなりと言う感じです。
特に序盤から中間までは樽系のフレーバーとドライなニュアンスがメイン。ここまでだと中間がすかすかで、肩透かし状態なのですが、徐々にそこから60年代のボウモアらしいフェロモン的なフルーティーさ、フレーバーが開いてきて、うんうんこの味だよとなるのです。
それはまさに全盛を極めた時代ではなく、その時代の片鱗を味わうという表現が、適切かもしれません。

このボトルのラベルは2羽の鳥が描かれたケルティック模様で、意味は友愛の鳥なのだそうです。
ボウモア以外にも複数リリースされたようですが、このボウモアについてマッキュワン氏に掛けて考えれば、2羽の鳥はボウモアとブルイックラディという感じでしょうか。
かつて蒸留所として経営が上手くいっていたボウモアに対し、ブルイックラディは迷走気味。ボウモア蒸留所で働く中で、対岸にあるブルイックラディが寂れていくのを寂しい気持ちで見ていた、というエピソードがあります。

その後同氏はボウモアを離れ、ブルイックラディ復活に尽力するわけですが、同氏のこのボトルに対するテイスティングコメント、余韻は「Thanks for the Memories」と書かれているそうです。
その一言で自身の思い入れの深さと、我々部外者には量り得ない重みが感じられますね。
というわけで絶賛沖縄滞在中な訳で、南国と掛けてトロピカルなボウモアを更新しつつ、今日もTHE SEAです。
いやー夏の空ですね。
ホテルの裏にあるビーチの隣、腰まで浸かるかどうかの遠浅で、大人のシュノーケルには物足りないですが、子連れの自分にはぴったりでした。
カラフルな熱帯魚も見れて我が子も満足です。

リンクウッド 26年 1984-2010

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LINK WOOD
Moon Import 30th Anniversary
"THE SEA"
Aged 26 Years
Distilled 1984
Bottled 2010
700ml 46%

グラス:国際規格テイスティング
量:30ml以上
場所:持ち寄り会(@極みの会)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかいが厚みのある香り立ち。干し藁の香ばしさと乾いた植物感、ハッカを思わせる爽やかさに、微かにドライアップル、土っぽいピート香から徐々にスモーキーフレーバー。

味:スムーズだが厚みのある口当たり、蜂蜜のコクと甘さ、麦芽風味。皮付きの洋梨、内陸系のピートフレーバーが広がって、ほろ苦くスモーキーな余韻につながる。
いい意味で雑味のあるウイスキー、加水からフレーバーのまとまりも良い。


イタリアのボトラーであるムーンインポート社が開業30周年を記念してリリースしたうちの1本。
THE SEAはその名の通り海を銘打ったシリーズですが、アイラなどの島モノでリリースが構成されているわけでもなく、このリンクウッド以外にマッカランやスペイバーンなどの内陸系モルトも数多くリリースされていました。
また、このボトルは同社創業30周年記念であるにも関わらず、創業年の1980年ではなく1984年蒸留のリンクウッドというのも、なんともらしいですね。

そのラベルには海は海でも古代の海に生息する生物が書かれているものの、綺麗と言うよりは芸術的な独特なタッチのモノが多く、それが逆に目を引きます。
ムーンインポートからはこのシリーズだ以外に、人、花、動物、服、靴、車・・・同じようなトーンで様々なイラスト(もはや絵画)をプリントしたラベルでのリリースが行われていました。
値段は高かったですが、中身も良いものが多く、"飾るだけで無く飲める芸術"と言えるかもしれません。 
最近は様々なボトラーズメーカーが、中身とはあまり関係の無いイラストでシリーズを作ることも多くなりましたが、思えばムーンインポートは先駆けの一つだったんだなと感じます。

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(以前飲んだムーンインポートの2本。アードベッグとグレンキンチー。特にグレンキンチーは同蒸留所の中でのベストボトルに数えたいほど。)

そんなムーンインポート社が、創業30周年記念に詰めたうちの1本が今回のリンクウッド。
ビンテージは1984年という自分の生まれ年・・・ではなくて、とスコッチウイスキー的にはあまり良いビンテージでは無く、当たりを探すのが難しい時代。

これまでも1980年代のリンクウッドはいくつか飲んできましたが、リンクウッド蒸留所の1960年代、70年代初頭にあったスモーキーで厚みのある味わいを失っている時代・・・という先入観を覆す、かつてのリンクウッドに共通する芳醇さのあるグットボトルでした。
加水ですがコクがしっかりあり、良い意味での雑味、麦芽風味の広がりに内陸系のピーティーさ。
ムーンインポートが詰める原酒は最高品質のものだけ、なんて話も聞いたことがありましたがそれを裏付けるような構成に、びっくりしておかわりしてしまいました。
今回は口開けでこの味わいですから、今後さらに開いていくのだろうと思います。


さて、THE SEAシリーズの投稿にかけて、こちらもTHE SEAです。
ホテルからのオーシャンビュー。連休と夏季休暇を使って家族で沖縄に来ています。
直前まで台風16号と次弾装填の低気圧の動きにやきもきしていましたが、合間を縫う形で旅行期間中は天気良好のようです。
家族旅行なので釣りや酒絡みの話は難しいですが(不覚にも釣り竿すらもってこれなかった)、のんびりバカンスしてきたいと思います。

ラフロイグ ロア 48% 国内正規品 オフィシャルボトル

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LAPHROAIG 
LORE 
The Richest of The Rich 
(No Aged)
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml
場所:BAR飲み(Ambrosia)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかな香り立ち。スモーキーでナッツのようなピーティーさとヨード、グレープフルーツピールのほろ苦さに、若干のえぐみ、樽の濃さからインクやゴムっぽいニュアンスも漂う。加水すると柑橘系のアロマが強く感じられる。 

味:粘性のある口当たり、ナッツ、バニラの甘みと根菜系の苦味と植物感。鼻抜けはスモーキーで強いヨード。余韻にかけてはウッディーでドライ、そして舌の奥に感じるピリピリとしたスパイス。
加水すると香り同様に柑橘系のフレーバー、スモーキーさが開き、粘性が強く感じられる。 


  自らの技術と経験を次の世代に伝える。「伝承」(LORE)という名前をつけられたラフロイグのニューリリース。
元々今年の3~4月頃に本国では発売されていて、現地を旅行された方や海外ショップからの個人輸入で既に国内にも入っていたボトル。当然、一部BAR等で飲むことが出来ていました。
少々今更感はありますが、このたび正規品が3000本限定で国内流通することとなりましたので、早速飲んでみることにしました。

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中身の構成はヨーロピアンオークの新樽で熟成の後、ファーストフィルのバーボン樽に移し変えて追加熟成を行った、ダブルマチュアードの原酒がメインなシングルモルト。
それぞれの熟成期間は3年以上は取られているものと思いますが、フィニッシュタイプの原酒よりも樽感のなじみは良いものの、多少のちぐはぐさが残っている事に加え、新樽を使っているためか、木材由来のヌメり、えぐみ的なモノも感じられます。

これのどの辺が「伝承」やねん、という疑問がないわけではないのですが、現在のラフロイグはカーディスなどの限定的なリリースにおいて、同蒸留所における王道であるバーボン樽熟成に加えて、ワイン樽やシェリー樽との組み合わせなど様々な樽の使い分けにも挑戦してきました。
そこで培ってきた新時代のノウハウを詰め込むという意味ならば、なるほどなと納得できます。

香味ともに樽の影響は相当出ており、口に含むとぬるりとしたオイリーな粘性や、ウッディーなえぐみ、余韻のドライさなど、香味の随所にそうした要素が感じられます。
しかしそれ以上にラフロイグらしさであるナッティーなピート、ヨードなども感じやすく、酒質の強さも備えています。
近年のライフロイグというとフルーティーなタイプのモルトが多いですが、このボトルは最初はそこまでフルーティーではないものの、じわじわとグレープフルーツ系のフルーティーさが感じられるようになり、加水するともう1歩前に近づいてきてくれるので、今後の変化ではちぐはぐさが馴染んで、よりフルーティーに変化してくれるかもしれません。

ピータードーソン スペシャル 1970年代流通 43% 特級表記

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PETER DAWSON
SPECIAL
Blended Scotch Whisky
1970's
43% 760ml

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:1ヶ月ほど前
評価:★★★★★★(6)

香り:香ばしい麦芽系のアロマ、ハッカ、土っぽいピート香、徐々に麦芽由来のおしろいのようなアロマが強く感じられるようになってくる。

味:みたらし系のとろりとした甘みやほのかな酸味のある口当たり。乾いた麦芽、色の濃い蜂蜜、オレンジピール。中間から素朴だがピリッとしたスパイスを感じるモルティーさが主体。徐々にスモーキーでオーソドックスなオールドブレンデッド風味だが、原酒の良さを感じるバランス感がある。
余韻は土っぽい内陸系のピートフレーバーにスパイス、オレンジジャム、染み込むように長く続く。


現在のウイスキー市場(少なくとも自分世代)においてはほぼ無名といっても良い、知る人ぞ知る銘柄。。。であるわけですが、数年前に1990年代流通のハーフボトルが大量に出土し、都内酒販店を中心に販売されたため、ラベルを見たことがある飲み手は多いのでは。
キーモルトはオードで、食指をそそられる人も少なからず居るのではないかという、ブレンデッドウイスキーです。

スコッチオデッセイによれば、ピータードーソンがオードをキーモルトとしていたのは1923年から1982年まで。このボトルは1970年代流通の国内正規品で、キーモルトは間違いはないようです。
味わいも原酒の良さゆえかオーソドックスなオールドブレンデッドの味わいの中に、バランスの良さ、ボディの厚さをしっかりと感じる、出来の良いブレンデッドウイスキーに仕上がっています。

(1980年代後半から1990年代初頭流通のピータードーソン。)

以前紹介した1980年代後期のピータードーソンとは、酒質からして違うなと言う印象で、1970年代で感じられたコクはかなりライトに、良くも悪くも近年のブレンデッドという違いが感じられます。
ラベルや中身以外にはボトル形状も異なっており、1970年代のものに見られる水玉の凸凹が、他のブレンデッドにはない特徴的な外観につながっています。

ちなみにオードはデュワーズ社の傘下の蒸留所で、アバフェルディと共に同ブレンドの中核を成す重要な原酒ですが、ピータードーソン社も提供を受けていたのだそうです。
同じ原酒を軸にしているという意味で、親戚的なブレンドと言える位置付けになりますが、デュワーズに比べて手を伸ばしやすい市場価格も魅力です。

ベンリアック 40年 1975-2016 ピーテッド 53% #7028

カテゴリ:
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BENRIACH
Limited 1975 Release
Peated
Aged 40 Years
Distilled 1975/12 
Bottled 2016/06 
Cask type Sherry Butt #7028 
700ml 53%

グラス:テイスティンググラス(名称不明)
量:30ml以上
場所:BAR飲み(個人持参ボトル)
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(7ー8)

ベンリアックのピーテッドモルトのシェリーカスク。今年5月に突如起こったブラウンフォーマン社によるグループ買収劇の後、時期的には新しい体制のベンリアックからリリースされた1975ビンテージです。
近年の60-70年代蒸留ベンリアックの高騰からすれば、470ポンドという価格は良心的にも思えてしまう値付け。気になっていたボトルでもありました。

この頃のベンリアックは桃やトロピカルフルーツにも例えられるフルーティーさが特徴で、それが当時のシェリー樽との組み合わせとあっては、期待せざるを得ません。
ただ、いかにシェリーバットと言っても40年の熟成でカスクストレングス511本のボトリングはエンジェルズシェアが130リットルしか発生していないことになり(ドロナックの700本よりはマシですが)、これは原酒の継ぎ足しというか、カスクマネジメント、所謂ビリーの遺産なのかなあとも。

そんなボトルを、持ち主S兄さんのご好意で口開けだけでなく、開封後1週間強経過した時点の2度、テイスティングの機会を頂きました。
その変化の大きさは驚きの一言。最初は内陸系のピーティーさが強く、無骨とも言えるようなビターな樽感もあって、フルーティーさは奥の方に潜んでしまっている状況で、初見はブラインドで出されたのですが、ジャパニーズかと思ってしまったほどです。
それがグラスの中で徐々に開いていき、30分〜1時間くらいでフルーティーさが明確に拾えるくらいになってきました。

そして1週間後の再会、もう待つまでもなく注ぎ立てからまるで濃く入れたピーチティーを思わせるフレーバーが全開で、口開けに主張していたピートがもはや隠し味レベル。
シェリー感はやや作為的な感じはあるものの、煮込んだダークフルーツ、イチジクやリンゴのカラメル煮を思わせるフルーティーかつ濃厚な甘さは、近年のそれとは全く違う系統で、口の中でとろりととろけるような美味しさ。
そこに1975ビンテージのベンリアックらしい桃や少しケミカルなフルーティーさが広がり、最後はほどよくタンニンが渋みと苦味で口の中をキュッと引き締めています。

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さて、不快に思う方も居るかもしれませんが・・・今回はこのボトルで狂気の挑戦、ブレンデッドモルト作りをしました。
以前スパニッシュオークバリバリの特濃ロングモーンを記事にした際、これはブレンデッドのベースにすると輝くとは確かに書きましたが、それらの持ち主だったS兄さんが「だったらクイーンアン作ろうゼ」と、ベンリアック1975、そして信濃屋さんがリリースした1976を持って宣言。(クイーンアンはベンリアックとロングモーンをキーモルトとしたブレンデッドウイスキー。)

やってみると長熟原酒だけでは案外まとまらず、バランスをとるには個性の強い若い原酒も必要だということなど、勉強になることも多々ありました。
っていうかベンリアックの個性が強すぎて、入れすぎると最後はただのベンリアック味になるし、一番まとまりが良かったのはオード28年を加えた時だったという。

この経験、何処で生きるかはわかりませんが、ブレンドは作ってみて初めてわかることもあるので、貴重な経験に感謝です。
このレシピはクイーンアンピュアモルト改め、クリリンアンとしたいと思います(笑)

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