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2016年08月

グレンリベット サイファー NA 48% ブラインドテイスティング

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THE GLENLIVET 
CIPHER 
(No Aged) 
700ml 48% 
 
【ブラインドテイスティング】
地域:スペイサイド 
蒸留所:ベンリネス 
度数:50~55% 
熟成:15~20年程度
樽:バーボン?

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:ブラインド30ml オープン15ml
場所:BAR飲み(Ambrosia)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:ツンとした刺激と酸味のある香り立ち。若いりんご、植物系のえぐみ、梅っぽさ。徐々に乾燥した麦芽、カステラのような甘みも開いてくる。少量加水すると刺激とえぐみが緩和され、甘みが前に出てくる。

味:香り同様に乾いた植物感、麦芽や穀物のビスケットのような甘みから梅シロップ、カラメル、バーボンを思わせる樽っぽいニュアンスが鼻に抜けていく。合わせてチクチクとしたエッジの立ったスパイシーな刺激が残り、口内を刺激する。粉っぽいオーキーさとほのかにピーティーな余韻。


今話題のグレンリベットからの挑戦状、サイファーです。
テイスティングを通じて謎を解く(暗号を解読する)ことをテーマにしたリリースで、中身の見えない真っ黒なボトルに加え、樽構成や熟成年数などの詳しいスペックは公開されておらず、飲み手自身で判断していく必要があります。
ボトルを発表したレセプションパーティーでも、濃い紫色のグラスに目隠しまでしてテイスティングが行われた徹底ぶりです。

マスターディスティラーが厳選した特別な原酒を使ったという、気になるその中身は・・・一言で「荒い」ですね。
いや様々な要素を感じる複雑さに加え、近年のスペイサイドと考えれば15年くらいは熟成させてそうな印象であるものの、度数以上に感じるトゲトゲしい刺激と酸味のある樽感に、だいぶミスリードしてしまいました。
それこそ最初は口開けだったためか香味のちぐはぐさと刺激が顕著で、国産の若いバッテッドかなんか持ってきたのか?と思ってしまったほどです。

蒸留所の予想としては飲んだことがあるというか、知っている味だなと感じたのが第一印象。
地域の特徴は、かすかに感じるピートが内陸系でヨード的なニュアンスもなく、強い麦芽風味もない。それでいて、熟成しているけれども若さを連想する要素が出ているモルトは、近年のスペイサイドという感じ。
ボディはそれほど厚くないが、妙に複雑な樽感が乗っかっている。その中にはバーボンそのものか?と思えるような樽感、酸味に加えて甘みも感じられるほどで、フレーバーのちくちくした感じや草っぽいフレーバーなどから3回蒸留を一部行っているベンリネスなんてありそうだなと、蒸留所を絞りました。 

ちなみにこのブラインドテイスティングはウイスキー仲間2名と同時に行いましたが、一人がキャンベルタウンモルトを予想したり、自分はあまり感じませんでしたが、塩気があったと言う声も別なウイスキー仲間のコメントにありました。
味の善し悪しは個人の好みとして、このウイスキーそのものの複雑さは"暗号(サイファー)"と名付けるのもわかるように思います。

グレンリベットサイファー
グレンリベットサイファー 公式ページ
https://www.theglenlivet.jp/the-whisky/?rg=le&y=cpr

なお、グレンリベットサイファーは特設ページが準備されており、その中でマスターディスティラーが込めた香味のイメージをどれだけ感じ取れるかというテイスティングゲームが公開されています。
日本とは様々な環境が大きく違うので、たぶんこれのことを言っているんだろうなといくつかの用語を補正する必要はありますが(リコリスは日本ではなじみが無いですし、桃も日本の桃では無く海外の品種、ハニカムキャンディってなんやねん、とか)、試みは非常におもしろいと思います。

このゲーム、事前に行われたお披露目イベントでの世界最高得点は68%だったそうです。
自分はこの記事を書いている際に挑戦したので、リアルタイムでは使えてないのですが中々残念な結果に(汗)
グレンリベットの挑戦状"たるサイファーの謎を解き明かすのは一筋縄ではいかなさそうです。

ブラックニッカ ブレンダーズスピリット 60周年記念ボトルが11月1日発売

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ブレンダーズスピリットの先行レビュー記事はこちら。(10/27追記)

先日、ニッカウイスキーのラインナップ整理を記事にした際。
「今年はニッカからニューリリースの動き無く、寂しい限りだ」と、そんなことをボヤいたワケですが。。。
その後蒸留所限定品ではブレンデッドウイスキーの"鶴"がノンエイジ仕様で復活していたり、今回の話しかり、水面下で動いていたニューリリースの動きを全くキャッチ出来ていませんでした(汗)。

そしてタイトルの通り、既にご存知の方も多いと思いますが、ブラックニッカから同銘柄の誕生60周年を記念したリリースが行われることが、酒販店向けに案内されているようです。


ブラックニッカ ブレンダーズスピリット
BLACK NIKKA BLENDER'S SPIRIT
60th ANNIVERSARY
Bottled in 2016
43% 700ml 参考小売価格2500円(税抜き)
2016年11月1日発売予定

ブラックニッカは1956年に発売。今年でちょうど60年となります。
発売当時は余市の原酒しかありませんでしたが、1963年に導入されたコフィースチル(連続式蒸留器)で作られたカフェグレーンが1965年からブレンドされ、その後は1969年に稼動した宮城峡の原酒も使われることとなり、現在はラインナップも拡充してニッカを代表するブランドの一つに成長しています。 

今回のリリースには"60年の軌跡の全てを込めたブレンデッド"とのことで、
「ヘビーピートタイプを含む新樽熟成の余市モルト」
「シェリー樽熟成の宮城峡モルト」
さらには「1956年に蒸留された余市モルト」に「25年以上熟成させた西宮工場時代のカフェグレーン」もブレンドされているという、使われている原酒の情報だけ見れば非常に贅沢な、まさに60年間の集大成というレシピであるわけです。

他方で、それだけの原酒を使って、この値段で出せるモノなのかという疑問や、竹鶴で出すとか、鶴で出すとか、高級グレードで出しても良かったんじゃないかという印象も無くはない。
まあこういう事やっちゃうのが不器用というか、「本物のウイスキーを多くの人に飲んで欲しい」という創業者のスピリッツを感じる、ニッカらしさでもあるんですけど(笑)。 
後の評価はモノを飲んでみてからですね。


ブラックニッカは過去にもいくつか記念リリースを行ってきましたが、有名なのはブラックニッカ誕生40周年記念の12年でしょうか。 
40周年が発売したのは2005年。そこから11年しか経ってないのに、60周年のブラックニッカが発売されるという計算の合わなさがあるわけですが、これは40周年ブラックニッカが、カフェグレーンをブレンドしてリニューアルした1965年を起点にしていることにあります。
無理やり40周年にしないで、1年待って2006年に発売してれば50周年だったボトル。60周年ブレンドが情報どおりリリースされるなら、飲み比べもしてみたいです。

なお、ちょうどいいタイミングで再来週にはモダンモルトウイスキーマーケット2016が開催されます。 
まだまだ不明なところも多いこのニューリリース。当日はニッカ出展もあるようですので、詳しい話を聞いてこようと思います。 
サンプルがあったりするとうれしいなー。
新しい情報が手に入ったら、また更新させていただきます。

サントリーウイスキー 山崎 蔵出し原酒 シェリー樽貯蔵 54%

カテゴリ:
YAMAZAKI
SUNTORY PURE MALT WHISKY 
(No Aged)
Cask type Sherry
Select by Saji Keizo 
2000's
500ml 54%

グラス:グレンケアン
量:30ml以上
場所:個人宅 @K兄さん
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:甘くふくよかでリッチなシェリー香。スパニッシュオーク由来の香木、ダークフルーツの甘酸っぱさ、ハーブっぽい爽やかなアロマもある。最初は少しドライだが時間と共に黒蜜のようなコクと淡い酸味のある香りに。

味:とろりとしたコクと甘みの強いシェリー感。レーズンチョコ、シロップを入れたコーヒー、徐々にほろ苦さと微かな酸味、鼻に抜ける香木を思わせるウッディネス。濃厚だがバランスが良く、香りで感じた印象のまま楽しめる。
余韻は黒砂糖を思わせる甘み、クランベリーと葡萄の皮、穏やかなタンニンが長く続く。


サントリーが1990年代後期~2000年代初頭頃にギフト向けとしてリリースしていたシェリーカスクの山崎。
このノンエイジのボトル以外に、56%や58%の度数違い、12年や15年仕様もリリースされています。
濃厚でリッチ、ともすればウッディーで渋みも強いシェリー系の多い山崎ですが、このボトルは濃厚でありながら甘みと苦みのバランスが取れており、スパニッシュオークの香木感にダークフルーツの果実感と、シェリー樽熟成の山崎の良いところをしっかりと味わうことができます。

熟成年数を10~15年程度と考えると、蒸留時期は1980年代後半~1990年代初頭くらいでしょうか。
スパニッシュオーク主体のシェリー樽であることに加え、気温の高い日本での熟成であるため原酒への影響が早く、酒質にフレッシュさが残りつつ濃厚な味わいが日本のウイスキーらしさとして感じられます。
少々不遇だったのが当時はスコッチモルトで1960年代蒸留がバリバリリリースされていた時代ですから、シェリーのクオリティ的には普通というか、愛好家がこのボトルを積極的にチョイスする理由がなかったこと。しかし今飲んでみると、この山崎が目立って劣っているとも思えません。
流石に当時の突き抜けた一部のリリースと比較すると落ちる部分はありますが、原酒の自由度も高かったのか、先述したバランスのよさに加え香味に厚みもあり、素直にうまいと言えるボトルです。

ただ、近年のジャパニーズウイスキーブームでは、このボトルも例に漏れずオークション等でだいぶ高騰していました。 
最近は多少落ち着いてきましたが、まだ少し高いなと感じます。しかしブームとはいえ内容的には今までが不遇だったとも言える話。
シェリー系ウイスキーの人気の高さにあやかって、様々なリリースが行われている昨今ですが、こういうボトルは評価されて然るべきだなと、飲んで納得の1本です。

それにしても、こんなボトルがギフトで届いたら小躍りしちゃうなあ。。。

オールドグロームス 12年 101Proof  ウイスキー特級

カテゴリ:
IMG_1189
OLD GROMMES
Very Very Rare
12 Years old
1980's
750ml 50.5%

グラス:SK2
量:30ml以上
場所:自宅
開封:1週間程度
評価:★★★★★★★(7)

オールドグロームスは、シカゴのオリジナルグロームス社が、ジムビーム蒸留所の長期熟成用原酒を買取ってリリースしていた銘柄。熟成場所はジムビームではなく、シカゴの熟成庫だったようです。
今回のボトルは1980年代後期、特級時代末期に流通した1本です。
3年くらい前の話になりますが、ウイスキー仲間のFさんと初めて会った持ち寄り会で飲ませてもらった事があり、極端に華やかとか、甘みが強いとかそういうタイプではなく、オーソドックスに美味しいバーボンという印象でした。

個人的に12年、1980年代流通、50%Overのボンデッド仕様とくればオールドバーボンの中でも外れないスペック代表格です。ジムビーム蒸留所はブッカーズなどハイプルーフでも良いもの出してますから、期待出来ますね。
それが近所の酒屋になぜか転がっていて、しかも手にとって見たら「特級表記」ときた。 これを買わないなんてありえねーなありえねーよ、ってことでめでたくお買い上げです。
ちょうど宅飲みしていたブッカーノーズが開いてしまったので、パンチのあるハイプルーフがほしかったというのもありました。           


状態は口開けから十分良かったですが、開封1週間でバッチリ開きました。
艶のあるカラメルソースを思わせる濃く甘い香味。セメダイン系の刺激やえぐみ、渋みの少ない上品さ。
ハイプルーフらしくコクと力強さを感じる飲み口に、果実を思わせる微かな酸味。それを追いかけてくるウッディーな苦味と鼻に抜けていくチャーオーク、穀物の甘いアロマ。それらのまとまりが良く、余韻はメローで程よくスパイシー。ほのかに焦げたような苦味が口の奥に蓄積していく。
全体的に引っかかりは少なく、余韻の残り方がそれまでの強さとは比例せずにあっさりしているようにも感じますが、その辺がらしさなのかもしれません。
味の濃さに対してウッディーな渋み、苦味の蓄積が少ないため、杯を重ねても余韻を心地よく楽しむことが出来ます。

このバーボンが真価を発揮するのは少量の加水。植物系のアロマにチェリーのシロップ漬けや瑞々しい葡萄のような香味が開き、複雑さが増してきます。
ストレートでの評価は★6後半くらいですが、加水で後一押しを加えてくれるイメージです。
ロックも悪くないですね。元々スムーズな味わいがさらに引っかかりなく飲めるだけでなく、口の中で温度が上がることで開くフレーバーが、コイツは良いバーボンだと感じさせてくれます。 

ファンの間では知られているものの、一般にはあまり認識のないこのボトル。ネット履歴を見ると5000円前後で買えた時期があったとか、なんて贅沢なんでしょう。
対して最近のバーボンの低価格帯は目を覆う惨状になりつつありますが、だからこそ眠っている良質バーボンは現行品に無いのか、そんな特集を組んでみても良いかもしれませんね。

IMG_1971
(オールドグロームスの1980年代(左)と1990年代(右)流通品。ラベルデザインが微妙に異なるが、最も異なるのはネック部分。味は1990年代のほうがライトでドライである。)

※8/27、蒸留所を勘違いして覚えており、記載もそのまま書いていましたので修正致しました。大変失礼いたしました。

松井酒造からのメッセージ ”国産ウイスキー”足りてますか?

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話題の松井酒造合名会社(以下、松井酒造)が発出したDMを、昨晩ウイスキー仲間経由で頂きました。 
「ニンニクか」
というタイトルへのツッコミはさておき、これはまたすごいですね。
日本のウイスキーの定義が曖昧なのは先に特集した通りですが、迫り来る嵐の予感に、さすがに言葉を失ってしまいました。
っていうかこの気持ちを表現するのに、言葉は無い方が良いのかもしれません。

このブログをご覧の皆様は、おそらくご存知と思いますが、ここでいう"国産ウイスキー"は何を指しているのか非常に曖昧です。
同社の製造行程で考えれば"国内でブレンドをしたウイスキー"までを含む広義的な意味なんでしょう。

上記はDMの裏面です。
文面を読む限りでは同社の熱い想いがまとめられています。
しかし前評判を考えれば、こんなビラを作っても火に油になるだけなんじゃないでしょうか。
普通に売れば良いのに、何かすごく急いでいるかのような印象すら受けます。

加えて、そこには同社WEBページに「スコットランドへの恩返し」「良いものは関係なく使う」とまで記載されていた、スコットランドの原酒を使用していることに関する記述が一切ありません。
同社にとってはそれが誇りでも、拘りでもあるかのような書きぶりで「本音で語る」とまで姿勢を表明していましたが、どこに行ってしまったのでしょう。
良い原酒なら、先の投稿でUPしたピュアモルトホワイトのようにその個性をPRすれば良いと思うのですが。これでは購入される酒販店等が、国内(倉吉)で蒸留したものと誤解されてしまう可能性も否定できません。

※関連する記述、倉吉モルトウイスキーの素性は以下にまとめてあります。
文末には 、同社Facebookのアドレスと共に「嬉しいご意見、厳しいご指摘などを頂き、日々勉強させてもらっている」とする記述に加え、「これで満足すること無く、もっとおいしい、もっとうまい商品を追い求めて努力し、より多くの人々を幸せにしていきます。本当に心からそう思います。」
と、同社の決意らしきものが述べられています。

色々言いたいことはありますが、ここではただ本当に、そうあってほしいと願うばかりです。


繰り返しになりますが、本当に、そうあってほしいです。


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