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2016年08月

バルブレア 30年 1978-2008 オフィシャル 46% (+信濃屋 1997)

カテゴリ:
BALBLAIR
Aged Years
Distilled 1978
Bottled 2008
700ml 46%

グラス:サントリーテイスティング
量:30ml以上
場所:個人宅(持ち寄り@Yさん)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

バルブレアは所謂ウイスキー通の間では評価は高いけれど、一般的には無名という蒸留所の一つ。
特に1960年代蒸留はオフィシャル、ボトラーズ問わず良い物が多い印象があり、オールドボトルの8年なども満足感高い良品です。
対して現行品のオフィシャルリリースはちょっと目立たないですよね。BAR等に行っていきなり「バルブレアは何がありますか」なんて質問したら、驚かれるか警戒されるかどちからではないでしょうか。

最近とんとご無沙汰でしたが、先日ウイスキー仲間のホームパーティーに持ち込まれた1本として、今回の1978ビンテージに遭遇しました。
1978年というと、特にハイランド周辺は自分の中ではスコッチウイスキーが個性的な時代から没個性的な近年の酒質に至る過渡期の印象が強く、オフィシャルボトルとはいえこの時期はなぁと、箸休め的なイメージで口にしました。
そしてその予想は、しっかりと裏切られるわけです。

香り立ちは穏やかで華やか、オーク系のアロマにドライアップル、洋梨。軽い印象のある香り立ちで、エグミなどのマイナス要素は少なく、いかにもオフィシャルバッティングらしいバランスの良さ。この時点で期待以上かというと、まあいいんじゃないレベル。
そして口に含むと加水らしくひっかかりのない口当たりに、香り同様の華やかさフルーティーさに、麦芽系のニュアンス、軽い香ばしさが盛り上がり、余韻は微かなピートと黄色いフルーツの綺麗な戻りを伴って長く続く。全体の完成度の高さで、「ああ、成る程」と納得させられるのです。
1杯飲んでこれは美味い(旨いではなく、美味い)なと、おかわりを注ぎ、オマケで小瓶も貰ってしまいました(笑)。 


さて、バルブレアについては、つい先日信濃屋から9月2日予約開始のプライベートボトル、バルブレア1997のリリース発表があったところ。 
今回はこちらも合わせて掲載します。


BALBLAIR 
Aged 18 Years
Distilled 1997
Bottled 2015
Cask type 1st Fill Barrel #909
FOR SHINANOYA
700ml 52.2%

同銘柄としては、日本初のオフィシャルプライベートボトリングだそうです。信濃屋さん、最近こうしたオリジナルボトルのリリースも多く、かなり頑張ってますね。
サンプルを飲ませて貰ったところ、18年というミドルエイジでカスクストレングスという仕様から、香り立ちや口当たりでやんちゃな部分は感じるものの、スパイシーで中間にコクのある甘さと余韻にかけてオーキーな華やかさが感じられます。
樽感は程よい程度で、酒質的には先述の1978と共通するニュアンスもありました。 

スペックが違うので一概に比較は出来ませんが、それは1978のバルブレアはこれ以上行ったら枯れてしまうピークの飲み頃なら、今回のリリースは最初の飲み頃という印象。 
ちょうどこの二本は近い時期で機会があったこともあり、個人的には色々発見のある良いテイスティングとなりました。

バランタイン ファイネスト 1960年代後期流通 43% 特級表記

カテゴリ:

BALLANTINE’S
FINEST BLENDED WHISKY
(No Aged)
1960-1970’s Japan Tax
86proof 1quart

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後1週間強
評価:★★★★★★(6) (!)

香り:ブラウンシュガーや淡いカラメルを思わせる色の付いた甘い香り立ち。ヒネ系のフレーバーから徐々にこなれたピート、ハーブ、甘酸っぱいドライフルーツを思わせるアロマもある。

味:サルタナレーズンやオレンジピールを思わせる果実味に乾いた麦芽、モルティーな風味から熟したメロンのようなとろりとした甘み、厚みのある味わい。
余韻にかけては鼻抜けにスモーキーさを感じつつ、軽いスパイスにみたらし、燻した藁とオールドピートの香ばしくほろ苦いフレーバーが、じわじわと染み込み長く続く。


今回のボトルは、1960年代後期から1970年代初頭に流通していたと推測される1本。ラベル等はアメリカ向けなのにJapan Taxに特級表記付き、日本市場で販売された特殊な素性の個体でもあります。
今や低価格帯ウイスキーの代表格となってしまった感のあるファイネストですが、昔はジョニ赤などと同様に厚みのある味わいと強い個性を持っていました。
特に1960年代以前のクオリティは特筆モノ。フラグシップとなるバランタイン30年や17年の同時期流通品がそれぞれ素晴らしいブレンデッドであるのは当然ですが、当時のファイネストにはファイネストにしかない良さがあったと感じています。

その特徴は何と言っても存在感のあるスモーキーさに加え、サルタナレーズンやオレンジピールなどを思わせる甘酸っぱさを伴うモルティーさ。
バランタインはファイネストと12年で原酒構成が異なり、12年が上位グレードとして当時重宝されたハイランドモルトの比率を上げたのに対し、ファイネストは様々な原酒をアードベッグの比率を高めてまとめたという話を聞いたことがあります。
確かにこのボトル、良い意味での複雑さに加え、余韻にかけて存在感のあるピーティーさが魅力的なんです。

ハイボールとの相性も良く、青赤ラベルのバランタインファイネストは普段飲みで3~4本開けていると思います。
今回のボトルはウイスキー仲間からトレードで譲ってもらった際、ラベル状態的にどうかなーと思いましたが、多少ヒネているもの1週間程度で開いてきて、想定しているフレーバーの範囲に入ってきてくれました。
グラスの中の変化を見る限り、今後はさらに開いて、抜群の状態になっていくことでしょう。

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バランタインの年代ごとの見分け方で有名な話に、1960年代以前は赤白紋章、1970年代(1978年まで)は青赤紋章。それ以降は青黄紋章という色の推移がありますが、これは全てのグレードで統一して管理されていたのではなく、各グレード毎に若干の誤差があって変更されていたようです。
例えば先日紹介したバランタイン12年には赤白紋章がなく、1960年代流通から青赤紋章のようです。バランタイン17年や30年等の流通本数が限られていたものは比較的上記の整理で行われたようですが、ファイネストのように最も生産量が多かったボトルは、ラベル以外にボトルの色、キャップ形状等が1960年代後期から1970年代初頭にかけて頻繁に変更されていたようです。
 
今回のボトル形状(クリアボトルにプラキャップ)がファイネストの青赤紋章の中で一番古く、このほか赤青紋章&JAPAN TAX付き(1960年代後半から1974年までの流通)の範囲に、クリアボトルにメタルスクリューキャップ、ブラウンボトルにメタルスクリューキャップという、合計3種類の流通があります。
考えられる時系列は記載の順で、1978年以降は上の写真左側に写る青黄紋章に変わる、そんな流れかなと思います。

味の違いはというと、テイスティングに書いたモルティーさ、スモーキーさは近年に近づくほど薄くなって中庸な構成へと変化していくように感じます。
以下のボトルは1974〜1978年流通のファイネストですが、類似の傾向は残っているものの、大量生産というか、万人向けを目指したような印象も。
興味がある方は、是非今回紹介したファイネストを飲んでみてほしいです。流通量はそう多くないですが、赤白紋章時代よりは入手しやすく状態も安定しています。

スプリングバンク 12年 2003-2016 バーガンディーカスク 53.5%

カテゴリ:
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SPRINGBANK
BURGUNDY
Aged 12 Years
Distilled 2003
Bottled 2016
Cask type 1st fill Burgundy
700ml 53.5%

グラス:シュピゲラウ グランドテイスティング
量:30ml程度
場所:個人宅(持ち寄り@Tさん)
時期:直近開封
暫定評価:★★★★★(5)

香り:蝋っぽやゴムっぽさの混じる強い麦芽風味と、人工的なベリーシロップを思わせる甘い香り立ち。プラスチックや樹脂を思わせる癖、若干の草っぽさにえぐみも少々。
シロップの甘みは果汁の入っていないお菓子や薬に使われていそうなそれ。わざとらしくも感じる。

味:口当たりはべったりとしており、濃く入れた紅茶を思わせる渋みと苦味、そこに安い苺ジャムを入れたよう。微かに溶剤っぽさ、乾燥した植物、硫黄のニュアンスも僅かながら感じられる。
ハイプルーフらしくアタックは強く、ボディも厚みが感じられるが香り同様人工的なベリー系の甘さに違和感が残る。
余韻は蝋っぽさのある麦芽風味と焦げたピートのスモーキーさ。徐々にドライでビターなフィニッシュ。


イギリスでは7月3初頭、日本では8月中旬に正規品が発売された、スプリングバンクのニューリリース。
昨年は15年シェリーカスクが似たようなラベルでリリースされたところ。今年のリリースはシェリー樽ではなく、熟成に使われたというバーガンディーカスクは、そのままの意味でとればフランス、ブルゴーニュ地方でワイン樽ということになります。
サイズや仕様の詳しいことは公式発表にも記載されておらず、香味や色から考えると赤ワイン樽だとは思いますが、どこの生産者であるかは不明。ただワイン側から調べて見ると、ブルゴーニュで一般的に使われる樽のサイズは228リットル程度であるようで、カスクストレングスでアウトターン10260本は、少なくとも30樽以上が使われている計算となります。

WEB上の情報では、先行してリリースされた本国では好評だったとのことですが、口開けは樽感と酒質の部分に分離感というか荒い要素があり、これらが慣れてくる時間が必要であるように感じます。
特に樽由来と思しき苺系の風味にまとわり付く人工的なニュアンス、溶剤や樹脂系の癖、そうした香味があるコトで、バンクらしい個性的な麦芽系のフレーバーと馴染めていない印象を受けるのです。

まあわかりやすいといえばわかりやすい香味なので、どっかん系が好みな海外の方だと案外高評価になるのかも・・・。
なお、先日のローカルバーレイ16年のように、スプリングバンク蒸留所のブレンド、ボトリング能力では大量に生産した際の撹拌誤差が生じることもしばしばあるようです。
このボトルもまた本国向けと違いが出ているのか否か、そこは気になるところです。

今回のボトルは、ウイスキー仲間が開催したホームパーティーにご招待頂いた際、いつもお世話になっているTさんが持参されました。
Tさん自身違和感を感じられていたようで、ばっさりお願いしますと、そんな前置きと共に頂いたわけです。
確かにこれまで記載の通り、判り易さの反面違和感を感じるところもあります。
スプリングバンクは近年ワイン樽などの異文化交流をスモールバッチなどで展開してきましたが、今回のボトルは気難しいヤツでしたね。
後の変化に期待したいと思います。

追記:先日自宅セミナールームにてイギリス向けのボトルと、国内正規品を同時開封の上、飲み比べてみました。
何度か確認しましたが、そもそも濃い香りなので違いがわかりにくいものの、UK向けの方が甘い香りが強い気がします。
このボトルは我が家の押入れの中で同環境で数ヶ月保管した上で、開いた後の違いを再度比較してみます。

ハイランドパーク 35年 1967-2002 マーレイマクダビット 40.1%

カテゴリ:

HIGHLAND PARK 
MURRAY MCDAVID 
Aged 35 Years
Distilled 1967
Bottled 2002
Cask type Bourbon
Bottle No, 103/500
700ml 40.1%

グラス:サントリーテイスティング
量:30ml程度
場所:持ち寄り会(極みの会@Kさん)
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで華やかなフルーティーさ、乾いた木のようなオーキーなニュアンスが強く感じられる。薄めた蜂蜜に青い白桃、白ぶどう。徐々に乾いた麦芽風味、かすかな酸味が混じる。

味:スムーズな口当たりからほろ苦い麦芽風味、オーク系のフルーティーさ主体、ボディーは軽く、ピートが序盤から強く盛り上がってくる。
余韻はピーティーで土っぽさ、長く染み込むようなドライな余韻。


マーレイマクダビットのミッションシリーズ。今回のハイランドパークはシングルカスクではなく、長期熟成で度数落ちとなった樽を複数樽バッティングしたシングルモルトウイスキーです。
表記はBOURBON CASKSとなっており、香味から感じる限り、中には40%を下回ってしまったものもあったのではないかと思います。

二択で言えばハイランドパークはボディのしっかりした部類に入るモルトではありますが、ここまで度数が落ちていると酒質的には相当削られている状況です。しかし中間が削られた分、樽由来のフルーティーさにピーティーなフレーバーがなんとも"らしい"味わいとして感じられます。
また、複数樽バッティングであるためか、多少複雑さと厚みが補われており、まさに最後の輝きという印象を受けます。
ヘタれるのも早そうなので、あまり時間をかけずに飲みきってしまったほうがいいかもしれません。 
(実際、グラスの中でも時間経過での抜けが早かったですね。)

最近は若いビンテージでガンガンリリースされるので、こうしたスペックのリリースは少なくなりましたが。自分くらいの時期に飲み始めていた人だと、度数落ちで、それもリフィル系の樽やバーボン樽という組み合わせはダンカンテイラーのロナック、ハートブラザーズなどでお馴染みだったことと思います。
比較的手頃な値段で買える代わりに、酒質のピークは過ぎていて、軽いボディにドライな余韻、木をしゃぶっているような味のモルトに出会うこともしばしば、、、それでも長熟の良さは楽しめた。
これもまた古き良き時代になっていくんですね。

ロングモーン 39年 1969-2008 GM メゾン向け 50%

カテゴリ:
 
LONGMORN
Gordon & Macphail
Aged 39 Years
Distilled 1969
Bottled 2008
Cask type Sherry #5295
700ml 50%

グラス:木村硝子古酒
量:30ml程度
場所:個人宅(Whisky linkイベント@タケモトさん)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:華やかなシェリー香とドライフルーツを思わせるオーキーな華やかさ。ナッツ、ライチ、レーズン、徐々に土っぽい香り。時間経過でチョコレートのようなアロマもある。 

味:ねっとりとした口当たり、カラメル、熟したフルーツを思わせる味わい、ライチ、レーズン、黒ぶどう、煮出した紅茶のタンニン。充実したフレーバーにうっとりする。
余韻はドライでタンニンの渋みを口奥に感じつつ、序盤のフルーティーさとカラメルソース、オーク香が非常に長く口内に留まる。
 

先日ヨーロピアン全開なGMロングモーンを紹介したところで、今回はメゾン向けのフルーティーさしっかりなロングモーンの記事もUPします。
メゾン・ド・ウイスキー向けのボトリングで、味の傾向はGMからリリースされることの多かった典型的なシェリー系ロングモーン。おそらく樽材はアメリカンホワイトオークに、GM味の決め手であったカラメル添加でしょう。
テイスティングはWhisky linkのいわき会にて。ロングモーンは麦芽品種の関係か、1970年代に入るとドライでライトな傾向にシフトしていきますが、60年代は多少そういう傾向はあってもモノが良すぎて気になりません。

このボトルもまた、ここ5〜10年前後ガチ飲みしている飲み手が「ロングモーンに求めてるフレーバー」となる所謂「トロピカルなフルーティーさ」がしっかり備わっており、ハイプルーフでありながら加水で整えられたバランスの良さと相まって、充実の1杯として感じられます。

ただ、確かに素晴らしい1杯なのですが、当時のGMはこの系統のロングモーン長熟をガンガンリリースしていたため、我々飲み手の感覚が麻痺してしまったのは、もはや"罪"といっても良いくらいかもしれません。
あまりにリリースされすぎていて、売れ残っていたくらいです。これをリアルタイムで経験出来ていたのは良かったことなのか、それとも・・・。

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ちなみに天下のGM、一応リリースしようと思えばまだ樽もあるようですが、この数年間で値段がとんでもないことになってしまいました。マジで0が一つ多いんじゃないっすかねー(汗)。
写真の1964はそんな最近リリースの50年熟成。
半世紀にわたる熟成により、樽感は強くタンニンもかなり出ているものの、求めているフレーバーはしっかり感じられました。

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