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2016年04月

ボウモア テンペスト バッチ6 10年 54.9%

カテゴリ:
BOWMORE
TEMPEST
Small Batch Release 6
Aged 10 Years
First Fill Bourbon
700ml 54.9%

グラス:SK2、グレンケアン
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:スモーキーでフレッシュな香り立ち。新鮮な貝殻付き牡蠣、シトラスやグレープフルーツのアロマ。徐々にオーキーで近年系のトロピカルフレーバー。少量加水するとシトラス系の爽やかなフレーバーと少し溶剤的な香味も前に出てくる。

味:コクのある口当たり、薄めた蜂蜜を思わせるオークフレーバーとグレープフルーツ、徐々にスパイシーで舌の上がピリピリしてくる。口の奥にはトロピカルフルーツを思わせるフルーティーなフレーバー、そして強くスモーキー。余韻はピーティーでスパイシー、長く力強い。

海外では一部市場で2015年冬頃にはリリースされていた、ボウモアテンペストのバッチ6。ファーストフィルのバーボン樽で10年間の熟成を経た原酒をバッティングし、毎年リリースされているボウモアファン御用達のシリーズです。

前作となるバッチ5がそれまでの2作に比べてレベルの高い仕上がりだったので、続編のバッチ6がどういう仕上がりになるのか気になっていました。
国内展開は正規のサントリー含めなんの情報もありませんでしたが、先月末、平行業者が少量国内に入れた模様です。
気になるお値段は、バッチ5が7500円程度、バッチ6は実売9000円台。この値上げは世の中の流れ的に仕方ないところなのか。。。
早速口開けをテイスティングしてみます。

一言で、2000年代としてはよく出来たボウモア。いい意味での荒々しさがテンペストという銘に相応しい構成だと思います。
バッチ5のほうがフルーティーさは強かったと思いますが、バッチ6もボウモアの個性といえるグレープフルーツを思わせる柑橘系フレーバーは備わっており、メーカーの位置付け的にも複雑さはバッチ5のやや下、バッチ3と同等となってます。
対してスモーキーさはシリーズでトップとなっており、ミドルで広がるピーティーさとスパイシーな刺激。そこから余韻にかけて戻ってくるトロピカルフレーバーがあり、この変化が一口目で「おっ、いいじゃないか」と思わせてくれる構成となっています。

原酒は2000年代が中心(というか100%2000年代か)で、90年代前半のボウモアと比べてコクは薄くなっているものの、このシリーズの共通項とも言える度数を感じさせない飲み口に、バッティングらしく多層感があり、近年のボウモアにありがちな紙っぽさはあまり感じません。テンペストらしいと感じたスパイシーさや荒々しさが、そうした香味をカバーしているのでしょう。
グラスはSK2やサントリーテイスティング形状では、磯っぽい香りと柔らかい柑橘香。グレンケアンや国際規格系ではシトラス系のフレーバーを強く感じます。美味しく飲むならSK2形状か。加水はフルティーさを引き出すような伸び方ではないので、ストレートかハイボール要員と言えそうです。

少なくとも、味の面では悲観するほどの出来ではありませんが、強いて言えば値上がりが気になるところ。まあこのへんは、同じカスクストレングス仕様のボトラーズリリースのボウモアと比較してまだアドバンテージがありますし、バッチ5が売り切れたら6に移行する、そんな感じで良いんじゃないかなと思います。

エクスカリバー ゴールド 12年 1970年代流通 ウイスキー特級

カテゴリ:
EXCALIBUR
GOLD
12 Years old
1970-1980's
43% 760ml

グラス:SK2
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後3~4ヶ月
評価: ★★★★★(5)

香り:ひねたシェリー、カラメル系の濃い甘みと苦味を感じるが、その甘みの裏に若い原酒由来と思しきえぐみを感じる。

味:甘くリッチな口当たり、ブラウンシュガーや古酒系のヒネ、みたらしのとろりとした甘みとほのかに焦げたような香ばしさ。中間から余韻にかけて口の中がヒリヒリしてスパイシー、ビターでややえぐみも感じる。

謎の銘柄エクスカリバー。 ブランド名称はRPGでお馴染みのアーサー王の聖剣エクスカリバー(エクスキャリバー)から、本ボトルには剣型のネクタイピンも付属しています。

商標登録1886年という割に他の歴史ある銘柄ほど表舞台に出てきている感はなく、1960年代流通のボトルをなんとか確認できた程度。供給力はあったようで日本では1980年代を中心にNA,10年、そして今回の12年など、それなりな量が流通しています。
ただ、親元がどこかの蒸留所を所有していたなどのキーモルトに関する情報が無いため、ブレンドレシピは不明。ネットで調べると「プロから高い評価を得ているJULEVEN(ジュレヴン) Pure Malt Whiskyをベースにした」との記述はところどころにあるのですが、そもそもこのピュアモルトウイスキーが中身不明で、確かに親元は同じですが「使われてる」としれっと書いてるけど、何だか分かって書いてるのか?と疑問を感じてしまいます。
とりあえず自分はボトルの写真こそザガッティーのコレクション本で見つけたものの、そこで手詰まりになっています。 

まあ素性不明でも味さえければ良いのですが、エクスカリバーの中身に関しては可もなく不可もなくという評価で、あまり買う気は無かったのですが、この黒い色を見て「ひょっとしてシェリーこってり系なんじゃないか」と覚悟を決めて購入してみました。
飲んでみるとその色に偽りなしとも言える、オールドボトルに共通するリッチなカラメル系のシェリー感はありますが、その奥には全体的に原酒が若いというか、ボトリング後30年の経験を経てなお荒い要素が感じられます。12年表記ですので、原酒のキャラクターなのかもしれません。

DRC マール ド ブルゴーニュ 1994 ロマネコンティ

カテゴリ:


Domaine de la Romanee Conti (DRC)
Marc de Bourgogne
Distilled 1994

香りは紅茶や葡萄、花を思わせる華やかな甘み。刺々しい酸味などは感じない、実に上品。グラスにおいておくとどんどん香りが変化する、最後はハーブやチョコレートのアロマもある。
口に含むと枝付きレーズンのような瑞々しい甘み、マールやグラッパにあるケミカルなニュアンス、若干の植物感から焦げたような苦味、そして余韻はフローラルでまるでブーケのような花々の香りが鼻に抜け、非常に長く続いていく。


超絶高級ワイン生産者の代表格ともいえるDRC、Domaine de la Romanee-Conti。
そのワイン、ロマネコンティを作る際に出る搾りかすを使って作られたマールが今回の1本。先日、FB繋がりでサンプル交換をさせていただきました。

一口飲んで「フーン」と思い、水を取ってこようと席を立ち、そのまま席に戻ってきて気が付くわけです。
なんだこの余韻は!?
香りの上品さもさることながら、余韻の華やかさとその長さはその辺のシングルモルトやコニャックが裸足で逃げ出すレベルです。マール系はウイスキーほど経験がないので軽々しく言いきれない部分はあるものの、これは凄いなとびっくりしました。
流石DRC・・・そうえいば先日シャトームートンのカシスリキュールにも感動しましたが、良いワイン造るところは作り手の質か土壌のよさか、こうしたその他の酒類も良いモノ出してくるんですねえ。
ネットで調べるとチーズとの相性も良いそうで、これは色々トライするのが楽しみです。

木曜は仕事で午前4時帰宅。仮眠してそのまま出社。
金曜日は午前2時帰宅。倒れこむように寝て、今日は朝から息子のプールと公園お付き合い。
自分の時間が訪れるまで実に長い時間がかかり、やっと頂いたサンプルに手をつけることが出来ました。
今回のマールのほかにも、ロマノレヴィ1978や長期熟成バーボンにブレンデッド、さらにはブラインドテイスティング2種類も頂いており、素晴らしい時間を過ごせそうです!

ニッカウイスキー プライズ 1990年代流通

カテゴリ:

NIKKA WHISKY
PRISE
1990-1997's
45% 750ml

グラス:SK2
量:30ml程度
場所:自宅
時期:不明
暫定評価:☆☆☆☆☆☆
※外的要因があるため通常評価無し

香り:蜂蜜やナッツを思わせる甘く香ばしい香り立ち、徐々にスモーキーで土っぽい香りも感じられる。

味:まろやかだが力強い口当たり。ピリッとしたスパイス、蜂蜜の甘みと麦芽風味、奥にはビターなピートフレーバー。時間とともに口当たりの甘みが強く感じられる。余韻は口の中に染み込むようなピートフレーバーと麦芽風味、まるで長期熟成スコッチのよう。


1990年、当時ニッカウイスキーのハイエンド的なブレンデッドだった鶴、それをさらに上回る最上級品として作られたのがプライズです。
ニッカウイスキーWEBページのニッカの語らいでは、当時ウェブマスターがニッカのプライズについて紹介したコメントが以下の通り残されています。

「プライズ」は1990年10月に発売(1997年4月終売)され、モルト原酒は余市と仙台の21年ものを中心に、グレーン(少量)も同じく21年ものを中心にブレンドしたモルトベースタイプの商品でした。また、ボトルも職人が一本々々手で磨き上げたクリスタル製で、当時ニッカとして最高峰(3万円、45%、750ml)のブレンデッドウイスキーでございました。

当時宮城峡の21年ものというと、1969年蒸留開始の同蒸留所の最長熟成モルト原酒にあたります。
2種類以上の蒸留所原酒を掛け合わせ、さらに本格的なグレーンを用いるのが竹鶴政孝のウイスキーづくりにおける理想だったわけですが、まさにその理想を最大限追求したウイスキーだったと言って良いでしょう。

その味はさぞニッカの個性的な香味が強く出ていると思いきや、確かにそれらしい部分はあるものの、それ以上に長熟スコッチを思わせる香味なのは意外でした。
45%と少し強めの度数らしくパンチがあり、上述の説明文の通りモルティーで気合の入ったブレンデッドです。当時飲まれることが多かったであろうロックや水割りで飲むことを考えれば、マイルドで飲みやすい高級ブレンデッドだったと言えそうです。

ネット上の情報では、この年はイギリスの新聞がニッカの製品に関する脅威(品質の評価)を報じたとかで、それだけメーカー側も気合が入った造りをしたようです。
クリスタルデキャンタボトルに長期熟成原酒、値段はバブルが弾けた1990年にあっても3万円。時同じくして発売された響やプレステージと比較しても強気の設定であったことが伺えます。


このボトルは、宮城のウイスキー仲間Sさんから先に公開したブラインドサンプル2種類とともに頂いた本命の1本。Sさんいつもありがとうございます。
開封時に落ちてしまったコルクケアのためフィルタに通されているようで、評価はせず参考掲載に止めています。
フィルターの効果か香り立ちが弱かった気がしますが、美味いブレンドであることはアタリをつけることが出来ました。

台湾 ナントウ蒸留所のニューポット

カテゴリ:

ウイスキー業界に着々と勢力を広げつつある台湾ウイスキー。
今回は2010年に操業を開始した、ナントウ蒸留所のニューポットを飲む機会をいただきました。
ニューポットというとえぐみが強い、乳酸系の酸味が強い、いわゆる未熟感に分類されるクセの強い味わいを連想するところですが、このナントウのニューポットはそうした要素が少なく、程よい厚みと麦芽風味主体の味わいでそのまま飲めるような香味でした。


台湾ウイスキーというと、衝撃的だったのがその仕上がり具合。
代表格とも言えるカヴァランの創業は2006年、当時から3年ものがコンペで評価されるなど、「台湾侮りがたし」というニュースはあったのですが、多くの飲み手は「どうせリップサービスでしょ」と真剣に取り合っていなかったと思います。私もその一人です。
それがその数年後、まだ国内未入荷だったカヴァランソリストのシェリーカスクとバーボンカスクのサンプルを飲んだ際。最長熟成でも6〜7年程度ですが、しっかりとした樽感があり、舌触りの荒さなど総合的にはまだまだと思う部分もありますが、「こりゃすごいものが出てくるぞ」と、本当に驚かされたのを覚えています。
新興勢には評価が甘いなんて言われてしまったりもしましたが、今ではそんなことを言う人はいないでしょう。

その後カヴァランは急速に評価を高めていき、2010年には今回ニューポットを飲んだ台湾第2の蒸留所であるナントウ蒸留所も操業を開始。カヴァランほど洗練された印象はないですが、バーボンカスクもシェリーカスクも似た傾向の仕上がりで、海外での評価は上々です。

台湾ウイスキーの特徴はズバリ樽感だと思っています。
樽のエキスは暖かいほうが強く出ます。これは日本とスコットランドのウイスキーを比較しても感じることができる特性で、さらに温暖な台湾のウイスキーとでは明確に感じられるポイントです。
では暖かいところに樽を置けば短期間で熟成されるかというとそうではなく、単に樽のエキスが早く出るだけです。酒質そのものが未熟香や雑味、アルコールのトゲトゲしさは、現在の技術では時間をかけて熟成させていかなければ整っていきません。

そこで冒頭に戻るわけですが、ナントウ蒸留所の酒質、そしておそらくカヴァランも、スタートの時点でクセの少ないニューポットを製造し、気候ゆえに得られる強い樽感で全体をカバー。結果、樽感だけは長期熟成ウイスキーのそれでわかりやすい香味がありながら、フレーバーの奥行きや複雑さはそれほどでもなく、どこか若い刺激が残っている、現在の台湾ウイスキーに仕上がるわけです。
今回、ニューポットを飲んで「あ、やっぱり」と、この辺だろうなと考えていた通りの構成でした。

なんだかディスっているように聞こえてしまうかもしれませんが、立派な工夫であり素晴らしい研究成果だと考えています。
ウイスキーが5年程度の短期間で仕上がるということは、貯蔵のリスクがスコッチやジャパニーズに比べて少ないわけですし、短期間で製品化できることから事業計画のたてやすさにも繋がります。
さらに一口に若い風味の少ない酒質と言っても、設備の形状、麦芽、酵母の種類などそう簡単に再現できる話でもなく、本当によく考えられていると思います。

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