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2015年11月

グレンフィディック ピュアモルト 8年 1970年代流通 オフィシャルボトル

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GLENFIDDICH  
Pure malt  
Over 8 years  
1970-1980's  
43% 760ml  
評価:★★★★★★(6)

香り:洋梨や林檎の品の良い爽やかなフルーティーさを伴う麦芽香、乾いた藁、オーク、ほのかに粘土のような土っぽい香りもある。
意識すると奥にパフューム香があるような気もするが、基本的には気にならない。

味:スムーズな口当たり、香り同様の構成で基本的には麦芽風味主体だが、すりおろし林檎や洋梨、レモンクリーム、徐々に生姜を思わせるスパイス。
フィニッシュは麦芽風味であっさりとしている。
少量加水で華やかさが更に開く。ライトだがいい意味での雑味があり、薄い印象はない。


1970年代後半から1980年代前半にかけて流通したボトル。
これもまたいかにもグレンフィディックという味のグレンフィディック(笑)。
特にこの頃のボトルからは流通量が多く、コクやフレーバーの強さは年代で異なるものの、香味の本質的なところが変わらないまま現行品に至るのは、蒸留所のハウススタイルが大きく変わっていないという特筆すべき要素です。
派手さは無いですがしっとりした旨みと華やかさ、ハイボールにすると華やかなオーク香が際立ち、ややオーキーですがゴクゴク飲めてしまいます。
1杯目のシングルモルトとしては丁度いい味わい。オールド市場の流通量が豊富で手ごろな価格で手に入るのも魅力です。

1970年代からの同グレードのスペック遍歴としては8年→10年、8年、ノンエイジ→10年、ノンエイジ→ノンエイジ→12年という形で現在に至る。特に1980年代初頭は3種類がリリースされており、ビンテージで時代を推察するよりもラベルデザインでの判別も合わせて必要となります。
また、1970年代ごろにはボトルが足りなかったのか、ブレンデッドウイスキーのグランツ用のクリアボトルにボトリングされて出荷されたロットもたまに見られます。

ちなみにグレンフィディックの1960年代蒸留には超絶パフュームが備わっていることも有名で、時期的に8年表記のフィディックには使われている可能性が高いですが、今回のボトルはそうした要素は感じられませんでした(探せば奥の方に微かにあるかも…くらい)。
不安な方は10年を買われたほうが良いと思います。


バランタインの樽感増し? バランタイン ハードファイヤード (2016年3月リリース予定)

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日本国内ではバランタインのクリスマスエディション発売のニュースが流れていますが、来年はチャーしたアメリカンホワイトオーク樽(というかリチャードバーボン樽)でフィニッシュした、Ballantine’s Hard Firedがリリースされる予定だそうです。


Ballantine’s Hard Fired Whisky Gets Double Charred Treatment
http://thewhiskeywash.com/2015/11/24/ballantines-hard-fired-whisky/

画像がイメージでなければ(あるいはカラメル添加でないならば)、明らかに色濃く仕上げられていて、チャーオークの影響をすでに予感させます。どの程度のチャーであるかはわかりませんが、"hard firing,"と書かれているくらいなので、結構強めにリチャーするのではないでしょうか。
マスターブレンダーのヒスロップ氏いわく、スムーズでクリーミー、甘いハチミツ、柔らかい赤いりんご、および強いカンゾウ(?)の風味と微かにスモーキーなスコッチウイスキーであるとのこと。
フィニッシュの期間にもよりますが、短期間であれば焼かれた内部表面から出るエキスの影響のほうが強く、わかりやすい濃いフレーバーが付くため、好印象を受ける飲み手もいると思われます。

そもそもチャーオーク樽でのフィニッシュの影響は何ぞというと、チャーオーク樽にいろいろぶち込んできた自分の印象としては、通常の熟成がフレーバーを1から構築していく印象に対し、上からBBQソースを塗りたくったような塗りつぶしです。
ウッドスティックでフレーバーをつける感覚にも近いですね。 
今のバランタインファイネストにあるような若い原酒のえぐみ等、ネガティブな部分を塗りつぶしてくれるかもしれません。
他方で、バランタイン12年等に感じる、ハイランドモルトの華やかな、すなわち繊細な複雑さも塗りつぶしてしまう恐れがあるため、どれだけうまくまとめられているか・・・によります。

スコッチウイスキーの新しいスタイルとしてバランタインが提案する、"ハードファイヤード"、どんな出会いをもたらしてくれるのでしょうか。

グレンファークラス ファミリーカスク 1979年蒸留 2008年ボトリング #2216 リリース3

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GLEN FARCLAS 
THE FAMILY CASKS 
Release 3 
Distilled 1979 
Bottled 2008 
Cask Plain hogshead #2216
One of 171 bottles
700ml 50.6%
評価:★★★★★★★★★(9)
 
香り:天津甘栗のような香ばしい甘さと艶のあるオーク香、熟したパイナップルや黄桃の缶詰を思わせる甘酸っぱさもある。非常に充実しており、グラスの残り香もまた強くフルーツ香を主張する。
 
味:口に含むと甘酸っぱいオーク風味と果実の皮の苦味、そして中間からはドライマンゴーやアプリコットを思わせるトロピカルフレーバーが広がり、フルーティーで華やかな香りが鼻に抜けていく。
フィニッシュは上質なほろ苦さ、過熟感はなく、舌の上には黄桃やマスカットキャンディーの甘みが長く残る。

はっきり言って、その辺の1960年代蒸留よりも断然旨いボトルです。
旨いというよりも完成度が高いというべきでしょうか。島系のピーティーなモルトでは1979年蒸留でも旨いボトルはありますが、ハイランドのフルーティータイプでこのレベルは他に経験がありません。
プレーンホグスヘッドは、シェリーカスクを何度も使い古して樽感がプレーンになった上の使用らしいですが、上質なオークフレーバーはもとより、どうやったらこんな香味が1970年代後半で出せるのか。
オークフレーバーから繋がっていくドライマンゴーや黄桃を思わせるフルーティーな味わいは、1杯2杯と杯を重ねても無理がなく(だからおかわりしたくなる)、陶酔感すら感じる素晴らしいモルトウイスキーです。


「お前が旨いって言ったから買ったんだぞ」
その一言で、先日、約5年ぶりにテイスティングの機会を頂きました。Gさん、いつもありがとうございます。
過去に自分が旨いと感じたボトルに出会うことは、別に何も珍しいことではないのですが、ブログで絶賛していたボトルに改めて出会うと、今の自分の経験値で飲んだらどういう印象を得られるのか楽しみであるとともに、本当に美味しいボトルだったのか、当時の自分の舌が甘かっただけじゃないかと不安にもなります。
 
遡ること5年前、横浜の都筑阪急で行われていたウイスキーイベント。
1本7万円、量り売り100mlでも1万円と、当時の相場ではとんでもない値段ながら、グラスに注いだその香りで衝動買い(小瓶の方ですが)。当時10段階評価で9点をつけていました。
その後、1979でプレーンホグスヘッドのファミリーカスクはいくつかリリースされたものの、飲んだ限りこのボトルとは味も系統も異なる印象。ボトルを目の前にして不安のほうが強くなってしまいました。

同席していたウイスキー仲間は
「馬鹿野郎、くりりんさんが旨いって言ったんだから不味いワケないだろ!(笑)」
「俺はくりりんさんを信じるよ!(笑)」
と煽る煽る。
(くっそwww後で覚えてろよwwww)
と心の声を押し殺し、恐る恐るテイスティングすると・・・。あぁ、やっぱり旨い。
口開けですら余韻にかけて開いていくフルーティーさが素晴らしく、その後数週間後に再度飲ませてもらった時は、さらに余韻でフレーバーが開いていました。
 
グラスはリーデルブルゴーニュソムリエの大ぶりなタイプだと、余韻が開きやすい代わりにドライなオークフレーバーが出やすく、個人的にはリーデルコニャックやSK2等の標準的な形状で飲むほうが、全体的なまとまりが良くて好みです。
評価は★8以上確定で、ここまでのポテンシャルを示されたら過去のものを曲げるわけにはいきませんね。思いで補正も多少入っていますが、★9とさせていただきます。
 

バランタイン ファイネスト 1980年代中頃流通品 ”ウイスキー特級” 明治屋正規品

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BALLANTINE’S
FINEST
1980's
43% 750ml
構成原酒:グレンバーギー、ミルトンダフ、プルトニー、バルブレア、グレンカダム、スキャパ、アードベッグ、等
評価:★★★★★(5)

香り:綿飴を思わせる甘い香り立ち、ハーブや穀物系のフレーバーも感じられるが、全体的には平坦でのっぺりとしている。 少量加水するとほのかなスモーキーさにシロップの甘さ。

味:刺激は少なくマイルドだが、香り同様に穀物様で平坦な口当たり。中間以降は若い原酒のえぐみとピーティーなほろ苦さが出てくる。
徐々にピリピリとした唐辛子の刺激、余韻はビター。長くはなく水飴の甘さとえぐみが残る。

ハイボールにするとスッキリした味わいで、ロックも安定して楽しめます。
ただし変化には乏しく、ストレートと同様に近年のバランタインに近づいていることがうかがえる。それでも後半あたりで出てくるピーティーさは、時期的には1970年代後半蒸留のアイラモルト由来か。黄金の特級時代最後の名残のようです。 


サントリーに所有が移る前、明治屋時代としては最後のあたりのバランタイン。 
バランタインのオールドボトルは、全ラインナップにおいてザ・スコッチと呼ぶに相応しい、多様な原酒が織りなす華やかさとスモーキーさが一体となった独特のフレーバーがあるため、魅せられてしまう飲み手が多い銘柄です。自分のウイスキー仲間も何人かバランタイン沼に沈んでいます。
しかしそれも1970年代流通まで。30年に限っては1980年代流通でも充分素晴らしいですが、それ以外の大量生産路線に磨きが掛かったバランタイン普及品からは、独特な魅力に繋がっていた味わいは消えていきます。 

まあ当時はアメリカ市場がライトフレーバーを求めたので、需要に合わせる動きでもあったのでしょう。
最近では逆に個性的な味わいが求められ始めた為か、特定の原酒の風味を際立たせたり、ヘビーチャーで樽感増したり色々やってるようですが・・・。
オールドに興味がある方には、まずは1960-70年代流通であるクリアボトルの赤青紋章時代か、ブラウンボトルでもJAPANTAX付きを試して欲しいです。  

補足:このボトルは先日のオールド会の最後に頂いたモノ。気楽に飲むにはちょうど良く、晩酌用途でジャブジャブいかせて貰ってます!

コルクを折らずに抜く方法と、折れてしまった場合の対処方法(下)

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前編ではコルクを折らずに抜くためのコツをまとめさせていただきましたが、どんなに慎重に抜いても折れてしまうのがコルクです。落としてしまうのは極力避けたいですし、万が一落としてしまったら・・・?
ここではコルクが折れてしまった場合の、一般家庭にあるものを使った対処法を紹介します。

コルクを折らずに抜く方法と、折れてしまった場合の対処方法(上) は以下からどうぞ。
http://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1045490225.html 



【必要なモノ】
・ワインオープナー(簡易タイプ)
・カッターナイフ
・菜箸

【コルクが折れてしまった場合】
折れたコルクの状態が「きっちり張り付いているか」、「ゆるゆるで今にも落ちてしまいそうか」どちらのケースであるかでその後の対応は異なりますが、まず必要なのはワインオープナーです。
ここではやたらと凝ったギミックのモノは必要なく、ソムリエナイフに付属するような純粋なオープナーでOKです。シール材をカットする作業を考えると、安物でもいいのでソムリエナイフが手元にあればベストです。
以下のような2枚刃一体型オープナーを使用するのもアリですが、そもそも一般家庭にはないだろうということや、ウイスキーの場合ボトルによってコルクの直径が合わないケースもあります。っていうか高いw
持っていて損はありませんが、自分は使ったことはありません。



①コルクがきっちり張り付いている場合。
コルクが折れるケースで最も多く、実は対応しやすいケースです。
コルクが張り付いているということは、ワインオープナーを刺してもコルクが落ちにくい状況にあるということです。
まずはワインオープナーを確実に貫通させるところまでがステップ1です。
ボトルは立てて作業するより、横向きにして作業したほうが、コルクが落ちてしまうことを防ぎやすくなります。また、横にしたボトルに対して真横に力をかけていくのではなく、オープナーだけ空転させるようなイメージで、押し込まないように刺していきます。


さて、オープナーが刺さったので、後は引きぬくだけ・・・と思って乱暴に抜くと、オープナー回りの部分だけがズボっと抜けて、コルクの大部分がボトルに残り、砕けたコルク片がボトルの中に・・・正直、目も当てられません。
これはコルクが脆くなっている状況でよくあるケースですが、これを避けるために使うのがカッターナイフ。ここからがキモであり、ステップ2です。
写真のように、大きめのカッターナイフの刃先1ピースを折って使います。(手を切らないように注意してください。)
ワインオープナーが刺さった状態で、この刃先をコルクとボトルの間に刺していき、双方の接着をはがしていきます。カッターナイフの刃先を使う理由は、これが一般家庭にある中で一番鋭利でコンパクトな刃物だからです。これ以上のものがあれば(たとえばトーンナイフとか、メスとか)そちらを使っていただいても構いません。

小さいサイズのカッターならそのまま使う選択肢もあります。
しかしワインオープナーが刺さっていてコルクが落下しにくいとは言え・・・乱暴に刺すとコルクが砕けてしまう可能性があるため、慎重に作業します。
オールドボトルのコルクは先端部分が痩せていることが多いため、刃先が下まで貫通しなくても効果はあります。コルク周りの接着をはがしたら、刺さっているオープナーでゆっくりと力をかけて抜いていきます。これをやっておくとほとんどコルク片を残さずに抜くことができるはずです。
その他、付着している汚れなどは、ウェットティッシュや清潔な布巾で拭き取ってしまいましょう。



②コルクがゆるくて今にも落ちてしまいそうな場合。
前者に比べてはるかに難易度が高いケースです。正直、 このケースは前回特集した「コルクを折らないコツでちゃんとケアしていれば抜けることが多いので、 そこで無くしてしまいたいのですが、 万が一陥ってしまった場合に備えてここに対応方法を書きます。

このケースではコルクにオープナーが刺さるかどうか、 これが最大のポイントになります。
ゆるゆるになって今にも落ちそうなコルクは力をかけるとすぐに落 ちてしまいます。
ボトルを斜めにし、 液面でコルクを支えながらオープナーを刺していきます。 コルクを刺す方向もまた、 コルク面に対して垂直ではなく気持ち斜めに刺します。 これはワインなどでも使われる、古酒のコルクを抜く際のテクニック と同じです。
この時多少漏れてしまう可能性もありますが、 気になる場合はあらかじめ下にロックグラスなどの安定した大ぶり の容器を用意して回収しましょう。 
ルクに縫い針を刺したり、 ジェルタイプの瞬間接着剤や両面テープを付着させて、 そこを支える起点にするという手もあるにはあるのですが、 落ちてしまったらそれこそ目も当てられないので、 お勧めしません。まぁやっても縫い針くらいでしょうか。


いよいよオープナーが刺さらず、コルクも落ちそうだとなったら、いっそ落としてしまうのも手です。コルクが折れてしまった場合の最終手段ですが、そのまま残すわけにはいきません
また、下手にぐずぐずやってコルクがウイスキーの中で砕けてしまうよりは、そのまま落としたほうがまだマシです。

コルクを落としてしまった場合は、まず清潔な別容器にウイスキーを移し替えます。元のボトルを破棄するなら、別ボトルに移した段階で終了となりますが、ここでは元のボトルを活かす方向で作業を進めます。
一時的なモノなので、移行先は清潔で匂いがつかないものであれば何でもよく、ミネラルウォーターのペットボトルでOKです。無い場合はひとっ走りしてコンビニで1リットルのミネラルウォーターを購入してきましょう。


ウイスキーの中身を別容器に移したら、空のボトルからコルクを取り出す作業に移ります。
正直これは、砕くしかありません。
菜箸などの細長いものでいくつかのパーツに砕き、そこにミネラルウォーター(あるいは入っていたウイスキー)を入れてボトルの内部を洗浄します。入っていたウイスキーを使うほうが、ミネラルウォーターより味の変化はないと言えますが、使った分は気持ち良くは飲めません。また、
この後のステップで共洗いするため、どこまで気にするかで決めてください。
砕いたコルクを流し出したら、最終ステップとしてもとのウイスキーそのものをボトルに入れて共洗いをします。700mlに対して30〜60mlあれば充分。共洗いに使ったウイスキーはグラスに注いで飲んでしまいましょう 。悲しいですが最小限の犠牲というやつです。
綺麗になったボトルにウイスキーを戻し、作業は終了です。


①に対して②は完璧に最終手段であり、目新しいものでもないと思いますが、前編でのコツと合わせて使うことで、最終的にはほとんどのコルクを落とさずに抜けるものと思います。
また、そもそもコルクの折れやすいオールドボトルを開封する場合等では、抜いたコルクが使えるケースは少なく、替え栓の用意は必須となります。つまり、最悪落とさず抜ければOKという考え方になります。
なお、オールドボトルの場合は、現行品のコルクよりも少しだけ直径が広いタイプが採用されていることが多く、開封に当たっては通常のウイスキーコルクのスペアはもとより、合わない場合に備えてワインコルクを準備しておくのが良いと思います。
以上、参考になりましたら幸いです。


蛇足:本当は一連の流れを撮影しておいた資料があったはずだったんですが…。画像フォルダが行方不明で諦めてワザとコルクを折って撮影しました。撮影のため少々手荒にやったところ、コルクが崩れかけてヒヤヒヤしました(笑)。
画像が見つかったら差し替え、追加をさせていただきます。

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