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2015年08月

ベンネヴィス18年 (1996-2015) ウィスキーエージェンシー & THE NECTAR

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昨日に引き続き、 今日もスコッチモルトの2015年リリース品です。
最近国内流通の多いベンネヴィス、 前回記事にしたアランビック向けはあまり心に響きませんでしたが 、今回は割と好みなボトルでした。アランビックも改めて飲み直したいですね。
このボトルはウイスキー仲間のYさんから頂き(強奪し)ました。 いつもありがとうございます!!

THE WHISKY AGENCY  & THE NECTAR
BEN NEVIS
Aged 18 years
Distilled 1996
Bottled 2015
Matured in a Refill hogshead
700ml 52.7%

評価:★★★★★★(6)

香り:青さを伴うケミカルなフルーティーさ。サトウキビ、パイナップル、ハーブの爽やかなアロマ。
味以上に鼻腔に刺激を感じるが、度数相応でもある。少量加水すると香りのなじみがよくなり、ケミカル系のフレーバーや刺激が和らぐ。また、蜂蜜レモン、麦芽を思わせるアロマも開く。

味:青みがあるパパイヤや、ケミカルでパイナップルのようなフルーティーさと麦芽風味。
口当たりはとろりとした粘性があり、テクスチャーは比較的丸みを帯びている。後半は微かなスパイスも伴う。
フルーティーさはピートに代わり、ミネラル、灰、乾燥した牧草を思わせるほろ苦さ。
フィニッシュはスモーキーでピーティー、序盤のケミカルフルーティーさの名残を伴う長い余韻。
加水すると青みが軽減され、代わりにケミカルなフルーティーさが前に出てくる。


ベンネヴィス蒸留所はここ数年90年代蒸留のリリースが多い蒸留所の一つ。
安定した旨さで人気があるため、インポーター経由で国内への輸入も多いですね。
不安定な稼働状況が続いた1980年代を経て1989年にニッカウヰスキーが取得。90年代のリリースが増えてきたのは、ニッカ傘下に入った後の生産が安定しており原酒買い付けに応じているからでしょう。
他方でニッカウイスキー(アサヒビール)所有蒸留所の割に、シングルモルトの定番商品は10年のみという少なさ。
2000年頃には21年もあったようですが、確かあればブレンデットだったような・・・。
オフィシャル定番品をリリースするにはある程度の原酒の量と幅が必要ですが、余市や宮城峡のラインナップが絞られた今こそ、15年や18年を限定品ではなく通常販売品として出しても良いんじゃ・・・とも思います。

ベンネヴィスのキャラクター・・・は語れるほど飲んではいません。すいません。
今まで飲んだ中でイメージとしてあるのは、60年代や70年代、そして90年代蒸留に共通するのは紙っぽさ、草っぽさ、そしてフルーティー。90年代はケミカル系のニュアンスを伴う、ともすれば作為的とも思えるほどのフルーツ感があるボトルも。このフルーティーさはハマってしまう人もいると思います。
またボトルによってピートの有無がはっきりしており、これはあるなと思うボトルもあれば、あまり気にならないボトルもあります。
今回のボトルはピーティーな部類で、中間以降に出てくるピートが良い仕事をして、分離してしまいそうなほどのフルティーさをしっかりと押さえつけています。

アイラにありがちな俺俺俺と主張してくるピートではなく、ハイランド系のじんわりと染みこむようなピートが好物な自分は、この手のピーティーなモルトは歓迎です。


グレンモーレンジ・ドーノッホ 2015年日本平行流通品

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ジャパニーズウイスキーの大きな転換点である8月末でありながら、ジャパニーズではなくグレンモーレンジです(笑)。
正直9月1日前後の話は、現時点で書けることはこれまでの更新で書きまとめたつもりですので、後は9月に入ったら怒涛の新商品テイスティングラッシュといきたいと思います。
ついては最近中途半端なオールド系の投稿が多いですから、たまには最近のスコッチ系リリースを・・・ということで、週末に参加した持ち寄りイベントでちょうど良いボトルを頂きましたので、記事に起こします。
 
GLENMORANGIE
DORNOCH
Limited Edition
43% 700ml

 暫定評価:★★★★★★(6)
 
香り:若さのあるフレッシュな麦芽風味から、オレンジピールやドライアプリコット、削った木のアロマを思わせるオーク香。微かにナッツのニュアンス、そしてスモーキーフレーバーが開いてくる。
 
味:序盤は麦芽風味主体で、レモンピールのほろ苦さやりんごの甘み、アーモンドの香ばしさが感じられるが、すぐに強いピートフレーバー開いてくる。ピートは強いが内陸系でヨードや潮気の要素はあまり感じられない。フィニッシュはピーティーで麦芽風味。鼻抜けは甘いオーク香とスモーキーさ、余韻はビターでピートが染みこむように残る。
 

北ハイランドの海辺に位置するグレンモーレンジ蒸留所。蒸留所の前に広がる湾の名前がドーノッホ(グーグルマップ表記ではドーノック)です。
今回のグレンモーレンジは、このドーノッホ湾をイメージして免税限定でリリースされた商品で、一部平行品として日本に入ったものの、既に多くの店舗で完売状態です。

海=アイラ=ピートという連想ゲームなのか、モーレンジとしては異色のピーテッド原酒で構成されており、加水でまとめられているにも関わらず、なかなか飲み応えのある構成です。最初飲んだ時はドーノッホ湾のストーリーなど一切知らず、「ヨードを抜いたカリラのような」とツイッターに呟いているあたり、開発イメージどおりのウイスキーが出来ているのかもしれません。
口開けで飲ませていただきましたが、最初はニューポットとまではいかないものの、嫌味の少ない若いフレッシュな風味があり、そこからどんどんピートフレーバーが開いてきます。

DSC03296
ドーノッホ側からの景色。中央がドーノッホ湾。白い煙突がグレンモーレンジ蒸留所、左側にはセラーも。
引用:
http://blog.ggog.com/blog/2013/07/could-royal-dornoch-host-the-open-championship/

ピート原酒を使ったモーレンジとしては、最近では1900年ごろのレシピを再現したというフィナルタがありました。ちょうど5年位前のリリースでしたでしょうか。フィナルタは穏やかというか、隠し味程度のピートフレーバーでしたが、このドーノッホはメインといっても良いくらいのピート香。
また、原酒としてはそのピーテッド原酒(公式にはライトピート原酒)を、モーレンジの王道ともいえるバーボン樽、オロロソシェリー樽で熟成させ、さらにアモンティリャードシェリー樽でフィニッシュしたものもあわせ、3種類の原酒をバッティングしてありますがバランスは悪くないです。
クラシックモルトシリーズのディスティラリーズエディションしかり、こうした複数の要素を上手くまとめてくるディアジオの樽の使い方やブレンド技術は、流石だなと感じます。

モーレンジはラフロイグと並んで近年安定していると感じる蒸留所。このリリースも一飲の価値アリです。
多少ばらつきがあるように感じるかもしれませんが、口開けからこなれてくるでしょうし、この飲み応えから考えて10年くらい瓶熟させて飲んでも面白いかもしれません。
Uさん、タイムリーなボトルをありがとうございます!

イギリスで工事現場から121年前のウイスキーが出土、日本では海底熟成のウイスキーがお目見え

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今回は久々にニュース紹介です。
 
イギリスはスコットランド、ハイランド地方。キンガスジーの近く、スペイ川にかかるラスベンロードブリッジ。
この橋の改装工事中に、シューズボックスほどの大きさの金属製の箱(タイムカプセル)が出土。
中には1894年9月の新聞と、ウイスキーのボトルが入っていたそうです。
 
121-year-old time capsule found at bridge near Kingussie(BBC 8/27)

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出土したウイスキーボトル、200~300mlくらいの容量でしょうか。
 
Ruthven_Bridge
ラスベン・ロードブリッジ。工事前の風景。
 
橋のどの部分から出土したのかはわかりませんが、ニュース本文からすると、橋脚付近の地中か、あるいは橋そのものの一部として組み込まれていたか。出土したボックスの錆、汚れ具合から見ると地中にあったと考えるのが妥当だと感じます。
1894年、約120年前のウイスキー。ブレンデットなのか、モルトなのかわかりませんが、なんともロマンを感じます。また、保存状態の良さもあってか当時のボトリング技術とガラス製造技術で100年経過しているとは思えないほど液面が高く、濁りも見られません。流石にコルク臭は免れないでしょうけど。
 
現存する蒸留所のモルトだとすると、このラスベンから15マイルほどのところにダルウィニーがあります。
ただダルウィニーは1897年操業なので1894年のタイムカプセルに入ることはなさそうです。
トマーティンは1807年操業で28マイルほどの場所。まぁもう少し離れるとグレンリベットもあります。
 
当時はフィロキセラによる葡萄壊滅に端を発した、スコッチウイスキーの繁栄期にあたります。その後生産過多となって多くの蒸留所が淘汰されることになりますが、今は知られていない蒸留所が稼働していたことを考えると、名前くらいしか記録にない閉鎖蒸留所のモルトである可能性もあります。
オールド好きとしてはワクワクしてしまいます。
 
 
さて、オールドボトルの魅力はこうして時にミステリアスな素性であり、または長い時を経た事で得られる独特な風味でもあります。
ウイスキーはボトリング後は熟成しないと言われていますが、ボトリング後も外的要因などの影響を受けながら、ゆっくりとした変化を続けています。瓶内熟成とも呼ばれる現象です。
しかし現在のウイスキーが瓶内で変化した味を知りたいと考えた時、タイムマシンを持たない我々は、その変化を1日1日待たなければなりません。
それを加速的に進める手段として、微細振動を機械的に当てる熟成方法、そして海に沈めて熟成させる海底熟成があります。
 
微細振動を用いた熟成方法は泡盛などでも使われており、ちょっとした装置として家庭向けに販売されています。自分は使ったことは無いですが、使って見ると確かにまろやかさが増すそうです。
そして海底熟成。沈没船からワインがサルベージされたとか、たまにニュースになるあの状況。海底の波と海流がもたらす小さく、時にゆったりとした振動が、人間の味覚で言う苦味にあたる要素を分解する手助けとなるのだとか。
実は原価BARで有名な株式会社ハイテンションが、この海底熟成に去年から挑戦しており、その第一弾が9月1日から原価BARで提供されるそうです。
 
日本初! 原価BARで「海底熟成ウイスキー」の試飲イベントを実施!(8/26産経新聞)
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今回提供されるのは、、「山崎12年」「マッカラン12年」「メーカーズマーク」の3種類。
全てキャップをメーカーズマークの蝋で封した上で、7ヶ月間南伊豆の海底に沈めて熟成。
第二弾となる海底熟成が既に始まっているようで、関係者のFacebookでは準備風景の写真も公開されています。また、今回引き上げたボトルに関しては、塩っぽさ、海の要素を感じるというコメントもありました。
なるほど、普段行かない原価BARですが飲みに行きたくなってしまいます。
 
ただ・・・始まってもいない企画に水を差すようで気乗りはしませんが、その準備風景の写真ではボトルを横置きで海に沈めてるんですよね。実際に当人にも確認しました。
7ヶ月もコルクキャップのウイスキーを横置きしたら、流石にそれはコルクが溶けて変化が出ると思うのです。コルクの風味があまり気にならないケースもありますが、熟成感の比較をするための実験で、わざわざリスクを負う必要はありません。
(ちなみにコルクを落としてしまったウイスキーを放置して実験したら、1~2ヶ月ほどでコルク臭がついていました。)
ケースのサイズの関係で縦置き出来なかったようですが、次から背の低い500mlサイズのボトルにするとか、やり方はあるように思います。
まあ研究機関での分析は行われているようですし、後は飲んで確かめるしかないですね。

え、マジかよっていうツッコミどころはいくつかありましたが、本質的には素晴らしい試みだと思う海底熟成。
こちらは出土した120年前のウイスキーと違い飲みにいけるワケですから、折角なので足を運んでみようと思います。
 

サントリー ピュアモルトウイスキー”ホワイト” 1990年代流通

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気がつけば8月も終わりが近づいてきました。それはすなわちジャパニーズウイスキー愛好家、特にニッカ好きにとってはXデーとも言える、8月31日及び9月1日まであと1週間を切ったということ。皆様最後の追い込み(買い込み)に余念が無いところと存じます。
 
9月1日はある種の祭りです。しばらくニッカの更新が続く事になると思いますので、今日はサントリー。
先日記事にしたピュアモルト黒の兄弟分、ピュアモルト白は白州蒸留所メインのバッテッドモルトです。
 
SUNTORY
Pure Malt Whisky
"White"
1990's
500ml 43%

 
評価:★★★★★(5)
 
香り:微かなヒネ香を伴う香り立ち。バタークッキー、焦がした麦芽の香ばしさと苦味も伴うアロマ。
メンソールを思わせるアルコール感。香りの質としてはしっかりとして力強い。

味: 粘性があり度数以上に濃さを感じる。麦芽風味、ナッツ、青みのあるバナナ、後半は若さを感じる要素として粉っぽい舌触りとヒリヒリとするアルコール感。鼻抜け麦芽風味、微かなニューポット感。フィニッシュはビターでスモーキー。

加水は特筆すべき点が見つからないが、ハイボール向きでサッパリと飲める。
面白そうだったので黒と白を混ぜてみたところ、そこそこ飲める味に仕上がったのは収穫だった(笑)。


第一印象は同時期に販売されていた、1981木桶仕込を薄めてマイルドにしたような感じ。
どちらも白州蒸留所の原酒ですから当然といえば当然ですが、1981木桶仕込は今は無き白州西蒸留所。1983年に東蒸留所が稼動して現在に至っている中で、このボトルは1990年代流通のノンエイジ。
味から6-7年程度の熟成で考えると、例えば使われた白州原酒は東蒸留所のものを主体に、トップドレッシングとして10年クラスの西蒸留所のものを使ったのかもしれません。
 
同時に販売されていたブラックと比較すると、どちらも若い原酒のフレーバーがありますが、白のほうが経年による古酒感がうまく働いているのもあって、若さが目立たないと感じます。


元々サントリーのピュアモルトシリーズはニッカのピュアモルトシリーズ、赤、黒に対抗した商品だったと言う話です。
竹鶴出したら北杜12年出したり、富士山麓50%が売れたら北杜で50.5%を出したり、新規開発もしつつ、すぐにこうした新しい動きに対応して、したたかに他社競合を狙い市場を取りに来るのはさすがというか、商売人というか。

9月1日にはニッカが余市と宮城峡をリニューアルしてラインナッ プを刷新してきますが、サントリーはどう動くのでしょうか。あ、でもサントリーから知多グレーンが出るんでしたっけ。 グレーンの販売はディアジオもはじめていますし、 ご存じニッカもカフェグレーンを数年前から販売していることは今 更言うまでも無いですね。
一度に安定して大量生産出来るグレーンは、モルトに比べて市場展開しやすいウイスキー。各社これでブランドが確立出来れば・・・と考えているのではないでしょうか。ニッカはカフェグレーンを元々強みにしていましたので、一歩リードしている印象。サントリーがどう追いかけるのか・・・十中八九ハイボールでしょうけど。
まぁ個人的にグレーンは甘くて飲みやすいけど単調で飽きるというか、特に10年程度の若いヤツはどう飲んでも飲み進まないので、こっちの方はしばらくは静観しています。

スペイバーン27年 1973年蒸留 リミテッドエディション

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今飲んでおくべきウイスキーは何か。
先日いつもブログを見て頂いている方から、「これはというオススメがあれば教えてほしい」としてコメントを頂きました。
丁度良いので、オススメボトルまとめ「現行品Ver」「無差別級Ver」を作ろうと書き出していますが、少々時間がかっており、まずは前置きとして自分が「良いと考えるウイスキー」に共通する要素を味わえるようなボトルを紹介します。

SPEYBURN
Limited edition
Aged 27 years
Distilled in 1973
(Bottled 2000)
700ml 46%

暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:華やかでドライなオーク香、燻した麦芽の柔らい風味とスモーキーさ。エステリーで蜜入りリンゴ、アロエ、品の良いフルーツ感。

味:香り同様の構成だが、それ以上にリッチな麦芽風味と甘酸っぱいフルーティーなフレーバーが感じられる。ナッツ、アプリコット、リンゴ、蜂蜜、中間から後半にかけて徐々にピートが盛り上がってくる。
長期熟成らしく上質なテクスチャーで口当たりはなめらか、フレーバーはしっかり感じられるがボディーの線は細い。
フィニッシュはほどよくドライでオーキー、柔らかいスモーキーフレーバーを伴い長く続く。

先日のトーモアじゃないですが、なんとも王道的かつ古典的なスペイサイドの長熟モルトという味わい。
少々線は細いですが、華やかで強めの樽感に対して酒質のバランスが取れており、フルーティーな中に柔らかいピートフレーバーもある。綺麗にまとまっている感じです。
個人的にはかなりストライクな味わいで、これで50%加水でリリースされていたら・・・もっと高い評価を受けたんじゃないかと。もちろんこの仕様でも、多くの飲み手が素直に旨いと言えるところにまとまっています。
これが今日のお題である「オススメウイスキー」にどう絡んでくるかというと、このボトルを探して飲んで頂くのも勿論アリですが、それ以上に原料由来の味わいとビンテージとの関係です。


ここ半世紀の中でスコッチモルトウイスキーの黄金期は1960年代蒸留です。この時代は末期を除けば世界的に経済が安定しており、製造現場も樽、製造方法、麦の品種として3要素が全て噛み合っていました。伝説的なボトルも数多くリリースされています。
しかし1970年代に入ると、生み出されるモルトウイスキーの酒質、コクが弱くなっていき、長期的にには樽由来のフレーバーに押しつぶされてしまう"樽負け"するボトルが目立ちはじめ。1980年代、1990年代では大半の蒸留所がキャラクターが変わった、酒質として弱くなったと言わざるを得ない状況になっています。
こうしたボトルの特徴は、口に入れた瞬間はパッと樽系のフレーバーが広がるものの、後半にかけて広がりが無く木材をしゃぶっているような味。特にスペイサイドは75年前後くらいからその変化が顕著であり、ビンテージを追う毎に味が変わっていきます。

この原因の一つに考えられるのが、麦芽品種の切り替えです。
最近各蒸留所が古代種麦芽に拘ったリリースを出しているように、効率化を求めて麦芽の品種改良を続けた結果、原酒そのものから複雑さ、コクが無くなっていったというもの。
1960年代~70年代は、ちょうどゼファー種からゴールデンプロミス種への切り替え時期にあります。スコットランド全土の農家が一度に栽培する品種を変えるとは思えませんので、ある農家は1968年から切り替え、ある農家は1970年、またある農家は1973年から切り替え、なんて形なんじゃないかと思います。
元々アバウトな気質に加えてさらにおおらかな時代です。この時期は多くの蒸留所でゼファー種とゴールデンプロミス種の混合で原酒が仕込まれることになり、徐々にゴールデンプロミス種の比率が増えていった結果が、上述の味の変化に繋がる一因となったと推測しています。

しかし逆に言えば、1970年代前半は、ギリギリ黄金期の名残を残しているとも言えます。実際旨いボトルも多いですし。
こうしたビンテージを飲んでみようにも、近年リリースで1960年代、1970年代初期が手頃な価格でリリースされることはまず無く、あっても過熟に近い状態です。とすると5~20年くらい前にリリースされたボトルをBARで飲むか、あるいは酒屋やオークションを巡るかという選択肢が現実的です。
狙い目は、1970年代前半蒸留のマイナー蒸留所や、蒸留所不定のバッテッドモルト。
今回のスペイバーンも、去年12月頃にネット店舗(河内屋)に残っていた在庫を購入したものです。
何本残っていたのかはわかりませんが、 10本以上はあったんじゃないかと思います。
写真に写るバルメナック1972も同時期に某酒屋で購入したもので、他にも最近当時価格で購入しているモルトもあります。都内でこれですから、黄金期の片鱗を味わえるボトルはまだ見つかるはずです。


こうしたボトルをチェックしているのは何も自分だけではなく、一時期のオールドボトル発掘ブームのごとく最後の一滴状態。
脚を使うか偶然の出会いか、見つけたら是非買うべき、飲んでおくべきというのは、こういうスペックのボトルが筆頭かなと感じ、日々酒屋をウォッチしています。

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