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2015年06月

ロイヤルサルート 21年 1980年代流通

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今現在、ウイスキー中心のBAR等を経営している皆様は、本当に大変な時代にあると感じています。
直近では、2000年から2010年頃までの10年間、ここでストックした方は完全に勝ち組です。 しかし今からストックを増やす、あるいは新規に動き出す方は茨の道を歩むことになります。
情報網の発達でライバルは多く、現行品は値上がり続きで、このボトルがこの値段かと目を疑うこともしばしば。苦労して評価の高いオールドボトルを買っても、それが当時価格で手には入ることは少なく、1杯当たりの単価は青天井。 
買えない、高い、魅力無いの三重苦。
となると、なにかしら付加価値を付けていくか、注目されていないところから良質なウイスキーを探し出してくるか、客商売である以上常にアイディアを模索し続ける必要はあるわけですが、少なくとも他店以上に魅力を付与するような「違い」が無ければ戦えないわけです。 

この話は飲み手側にも関係があることで。当時から飲んでいた人と今から飲み始める人では、やはり同じようなハードルがあります。 私はこの10年で買わなかった組ですが、幸か不幸か飲めてはいました。最近は、何とか「注目されていないところから良質な」を実行しようと日々模索しているところ。
特に課題はシェリー系です。バーボン樽熟成のウイスキーは最近でも良いモノがありますが、シェリーだけはどうにもならない。そんなオールドシェリー大好きな方にお勧めなのが今日の1杯。 

ROYAL SALUTE
21 Years old
700ml 43%
1980’s

評価:★★★★★★(6)

香り:シェリーカスク由来の品の良いベリージャムやレーズン、カラメルの甘さ。微かにハーブを思わせる乾いた木のアロマもある。少量加水すると甘さが引き立つ。

味:バランスのいいシェリー感で甘口、ミドルボディ。滑らかな口当たりで後半ほのかなスパイシーさが口の中を刺激する。 ベリー、葡萄の皮や紅茶のタンニン、カラメル、ほのかにナッツの香味。フィニッシュはビター、染みこむようなウッディネスが蓄積していく。
少量加水するとより滑らかさが際立つが、加水しすぎるとすぐに薄くなってしまう、ごく少量で留めておきたい。


ストラスアイラ、グレンキースをキーモルトとする、シーバス社の高級ブランド。
1952年発売、クイーンエリザベス2世の戴冠を祝った…という薀蓄はぐぐって頂くとして。
一言。完全にストラスアイラです。特にGMが出していたストラスアイラの蒸留所ラベルを連想する味。現行品のゴムゴムしいシェリーでは無く、カラメルの甘みと葡萄やベリーなどの果実感があるシェリーです。
全体的に軽さ、特にフィニッシュで感じたタンニンが長く残らず、スッと消えるのはブレンデットだからということなのでしょう。しかしかなりモルト比率は高いと思います。あともう少しボディに厚みがあったら★が一つ増えてました。
ピートはほとんど無く、飲み口はスムーズで引っかかりが無く飲めてしまいます。
ハイボールにするとボディの薄さはギリギリのところで、品の良い甘さが爽やかに感じられますが、ピートの苦みやスモーキーさ、引き締めるフレーバーがないのが、逆にハイボールでは物足りなくもあります。



モルティーでシェリーの効いた、ほぼストラスアイラの味。
今回のボトルは1980年代流通ですが、以前持っていた1970年代はさらにシェリー感が濃く、一時期のドロナックとも間違えるほど。
シェリー系高騰の市場において人気の出そうな条件ですが、オークション市場ではそれほど値段が上がらず、2015年6月現在送料込み5000円しないで取引されることも多いです。
理由は、中身が見えない陶器ボトルであること、流通年代がぱっと見わかりづらいこと。以上2点。

ロイヤルサルートのような陶器ボトル、これは確かにクセモノです。良く言えば宝くじ、悪く言えば地雷。
ガラスボトルよりも劣化が進みやすいという説もあり、目視で中身の状態がわからないこともあってギャンブル要素が強いです。
さらにラベルデザインなどの変化から流通年代を推測するオールドボトルで、ロイヤルサルートは1990年代以前のラベル変化がほとんど無いことと、現行品も似たようなデザインであるため、ヘタすると現行品を買ってしまうことも。(現行品はそれはそれという味ですが、シェリー感はオールドほど強くありません。)
また、ここは確認出来ていませんが、同じような年代でもロット差(流通地域差)が結構あるような印象も受けます。ダメなボトルに当たると悲しい気持ちになれることもしばしば…。

後は考え方の問題ですが・・・。
結局、今このような状勢において、ノンリスクで旨いボトルを手頃に買えるってほぼ無いんですよね。
そこは目利きだったり、情報収集の努力だったり、今回のようにリスクだったり、何かを取る必要が出てくるワケです。
予算が出せないなら、そこに等価となる何かを差し出す。なんとも厳しい話ではありますが、そこが確実に出来るようになることが、今の時代から飲み始める人に必要なスキルなのかもしれません。(偉そうなこと書いてる私も、目下努力中の身です。

余談ですが、ロイヤルサルートの流通年代見分け方について、主なポイントを以下にまとめます。
・ネックから下がっているカードデザイン
・正面ラベルの形状(楕円系のヤツです。)
・度数、容量
・ボトルの製造メーカー

オークションではお土産持ち込み品が多く、特級表記があるものは少ないため、このあたりに注目すると、見分けていけると思います。


【噂】ボウモア・ミズナラ樽熟成の限定リリースについて 

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休肝日をとることにしました。それも珍しく2日連続で。
島地勝彦著の「バーカウンターは人生の勉強机である」を読んだところ、その中には何度か「喉頭癌で大切な友人を3名も亡くした」の記述があって、豆腐メンタルなくりりんはすっかり弱気モード。
そうだよなぁ、酒飲むってのは適量でもリスクがあるもんなぁと。
本来は飲む気満々だったわけですが、帰宅も24時を回っていて遅かったし眠気もあった。
今夜は頂いたコメントとメッセージを返したら寝てしまおうと。
そんなわけで2日続いてしまいましたが、今回もテイスティング以外の投稿になります。


さて、もったいぶるほど情報は集まってないので、さくっといきましょう。
アイラの女王ことボウモアから、ミズナラ樽熟成の1本がリリースされるという話です。
最初はウワサとして公開しておりましたが、割とガチのようなので少々トーンは変更しております。(6/26) 

BOWMORE MIZUNARA
750ml 53.9%
Only 2000 bottles

スコッチでミズナラ樽を使った商品を出したのは、シーバスリーガルが最初だったと思います。
あれは全てがミズナラではなく、しかも我々が…少なくとも自分が認識する「ミズナラ香」とはほど遠い出来でした。

そこに今回、ミズナラ樽で熟成させたボウモアです。
本数は2000本限定。ラベル表示の容量から北米向けで、メインで絡んでいるのはサントリーではなくデビルズカスクと同様の流れ。価格は抑えめ・・・なんていう話もあります。
また、ボウモア蒸留所にはサントリーが使ったミズナラ樽が運ばれてきており、実際に原酒が熟成されているという話もありました。
ラベルのデザインとか色合いとか場末のPUBの看板のようで、個人的には飲む前から戦意喪失気味なのですが、果たしてコレがどこまで本当なのか、若干疑問は残っています。知人の業者等を通して裏取りをしたところ、どうやら本当にリリースされるようです。
ただ、世界的に販売されるだけで日本国内流通はまだ未定であるため、問屋、サントリーへの問い合わせは控えたほうが良いかなと思います。私も分かり次第ここにUPしますので。


ボウモアと言えば柑橘系のフルーティーなフレーバーに、ピーティーなスモーキーさが最近のハウススタイル。
そこにミズナラ樽。ミズナラ樽はホワイトオークとは違ったクセがあり、特に使いが浅いうちは相当な量のエキスが出るとも言われていますボウモアで使われた樽がどの程度の仕上がりだったのかによっては、伽羅香バリバリの仕上がりか、あるいは比較的ライトで華やかな香味となるか・・・。
個人的に、ミズナラ原酒はブレンドで使ってこそ活きる、シェリーの底支えとピートの締めが必要というのが持論なのですが、それはサントリーの原酒である話で、ボウモア+ミズナラ、この組み合わせのフレーバーは全く予測が出来ません(笑)。
組み合わせとして、パフューム時代の原酒にフィニッシュをかけたなんて事になったら、フローラルミズナラとかもういったいどうなるのか(大汗)。
いずれにせよ今シーズン大注目の1本になりそうです。新しい情報が入り次第、また更新させていただきます。


以下雑談。
グレンモーレンジではシングルモルトウイスキーは、蒸留の重要性が全製作工程の40%で、残り60%は熟成にあるとしています。このブログでも度々引用している話です。
この比率をどう考えるか。
いやいや最近の麦の品種問題で原酒からコクが無くなってるのは事実なんだから、もっと蒸留行程部分を見直すべきだとか、樽の確保が至上命題なのだから、もっと良い樽を確保出来るように60%以上の努力をすべきだとか、見方は色々あるわけですが、確かに飲んだ瞬間に感じる味の大枠、熟成感などは、どうしても樽によるところが大きく、熟成したウイスキーを飲む以上は、やはりウイスキーにとって樽の影響は極めて重要であるわけです。

樽の探求は1970年代頃のシェリー樽の枯渇から始まったと言えます。
バーボン、ワイン、新樽・・・最近では疑似的に作られたシェリー樽が広く受け入れられていることもあり、製品用のシェリーを熟成させているわけではないことから、200リットルサイズの小型シェリー樽等、ウイスキー側の需要に合わせて様々な樽が"開発"されているそうです。
熟成中の樽の詰め替え含め、より多彩な熟成のマネジメントが起こってくる(起こっている)状況にあって、そこに日本のミズナラが新たな可能性を加えていく。
従来から使われている樽の理解が深まり、ウイスキー用の麦芽の開発、蒸留行程の見直しも進めば、ウイスキーの新時代は意外と明るいのかもしれません。

【謎】もしもしウイスキーの中身について JP.Moshi-Moshi whisky

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数年前から「もしもしウイスキー」なるものが、ひっそりと、特に海外向けに展開されていました。
いくつかのサイトでは分析、調査記事もUPされています。
当時は結構良いお値段だったんですが、それが最近になって国内に安く流通したため、再びこの「もしもしウイスキー」が話題になっていました。

怪しさたっぷりなオフィシャルサイトは以下。
JP MOSHIMOSHI
http://www.jpmoshi-moshi.com/#!japanese-home/c139i

もしもしウイスキー

もう名前からして違和感バリバリ、さらにホームページ開いてなんだこりゃと。
どこから突っ込んで良いか分からないレベルなんですが、まず設立時期が1872年? 当時の作り方を守り続けるってもうね、アホかと、バカかと。山崎の操業(1923年)よりはるか前に、どうやってウイスキーを作っていたのか問いたい、問い詰めたい。
これが事実なら竹鶴政孝が渡英する約50年前に、極東の島国日本にウイスキー蒸留の技術があったことになります。 マッサンの熱意と苦労は一体なんだったのか。
しかも写真が15代将軍・徳川 慶喜のように見えるのですが、これも違和感をいっそう引き立てています。

蒸留所関連風景と思しき写真群は、これまた後述する長野県にあるという蒸留所とは無関係で、下手なホテルのビュッフェのよう。西に東に、なんとも統一感のない。
まったく関係の無い写真、歴史を無視した資料の数々に、怪しさを通り過ごして逆に購買意欲をそそられるほどです。



商品は以下で記述するノーマルなタイプ以外に、75年もの、62年ものもごく少量存在しているようで、彼らの記載を信じれば、もしもしウイスキーは100年以上頑なに蒸留とブレンドのレシピを守り続けているメーカーってもういい加減にしろと(笑)
いやまて、確かに日本のウイスキーは1923年から山崎で始まったわけだけれど、その前からイミテーションとしては色々な動きがあったのも事実。
なるほど、このもしもしウイスキーというのは、その当時イミテーションでウイスキーを造っていた長野県のメーカーが奇跡的に残っていて、現代にその当時買い付けた原酒、あるいは仕込んだなんだかよく分からない原酒(当時の日本ではウイスキーの原料を葡萄としていた専門書まであった)を展開しようとしているのだと、無理やり納得させて次に進みます。
だってほら、まじめに対応したら、ここだけで今日の更新終わっちゃうじゃない(汗)。
国会審議同様に、残り時間(残り体力)と相談しながら、大人の対応で色々まとめていけるからこそ、人は時に優しくなれるんだと思うのです。まぁ特に優しくなりたいわけでもないんですけど。 

3248-608592
JP.Moshi-Moshi whisky
原材料:モルト、グレーン
アルコール分:40%
内容量:700ml
販売者:㈱ウィズワン
製造者:本坊酒造㈱信州マルス蒸留所
(写真引用:ちゃがたパーク楽天ショップ)


怪しい・・・とにかく怪しい・・・新手の中華系詐欺か?とまで昨今の事情を加味すれば疑ってしまうレベル。
上述のように、これまではネタで済んでいた話でしたが、最近楽天を含むウェブショップで販売されて、あまりの怪しさに逆に購買意欲が刺激され、楽天は売り切れに。
某所ではまだ買えるようですが、そもそもこれって中身はなんなのか。
ホームページを見る限りでは、日本の中部地方、長野県、つまりは本坊酒造(マルスウイスキー)を思わせる記述があり、上述の1872年はマルスの親元本坊酒造創業の年、商品の製造者表記もマルスなのですが…。


我々の不安を察知してか、本件に関してFB上でマルス蒸留所の竹平所長からコメントがありましたので、当ブログでも紹介します。

「もしもしウイスキーは、2013年に国内商社が輸出向け商品として企画し、マルスウイスキーが製造を請け負ったOEM商品です。酒質やボトルなどの資材、商品名等、全て商社様のオリジナルです。限定商品であったため、既に製造はしておらず、商品も完納しています。ウイスキーの酒質も商社様の指定でありますので、詳細の原酒タイプなどはお答え出来ません・・・」
とのこと。

また、物議を醸すもしもしウイスキーのサイトはご覧になられていなかったようで、今回初めて確認されて、少なからずショックを受けていたご様子。まぁそらそうですよね。これは・・・衝撃ですよ。
自分が生産側の関係者だったら、訴えてるレベルだと思います。

マルスウイスキーでOEMを受けた商品は上の写真の「サーベル社のプリントボトルで黄色いカートン箱の1種類のみ。」だそうです。つまり、そのOEM商品が、今回日本に入ってきているようですね。 
まぁそれ以外、75年ものも、65年ものも、本当に商品が存在しているのかどうかも定かではないんですが。 

マルス製原酒使用、もしもしウイスキー
http://www.jpmoshi-moshi.com/#!j-signature-whisky/c17qb


気になる中身は、竹内所長の「お答え出来ない」というコメントの通り、表向きには門外不出状態。 契約とか色々ありますからね。
実際舐めてきましたがこのまま評価するのは難しいっていうか、これで日本で一番とかアレっていうか、ホントお察しくださいです。

(くりりん暫定コメント)
香り:ドライなアルコール感。ビター、微かな麦芽香、ハーブ、木のえぐみ、驚くほど香りが立たない。焼酎のよう。

味:コクが薄く若さを感じる、口の中をチリチリとアルコールが刺激する。
薄いカラメル、麦芽、余韻はグレープフルーツピール、ビターでスパイシー。単調。

…お察しください(´Д` )

まあ私は関係者じゃありませんし、前情報もこの味も、いわゆる信州はマルスでブレンデットの・・・

(コンコン)
ん? 誰だこんな時間に・・・。 
・・・
(あっ・・・んんっ!?  バッ、バカやめろなにを・・・アーッ!!)

ニッカウイスキー 宮城峡蒸留所限定シングルカスク15年

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6月20日は竹鶴政孝の誕生日でした。すっかり忘れていました。
まぁそんなこと気にするくらいなら、父の日ギフトのひとつでも贈ったほうが良いんでしょうけど。忘れていた結果、記事を更新しないどころか、翌日はライバル会社のサントリー製品をだらだらと語る有り様。これはいちニッカファンとして少々お粗末(笑)。
1日どころか2日遅れてしまいましたが、今から氏の日本のウイスキー文化における多大な功績に、改めて感謝をいたします。

さて、そのニッカからほんのちょっとだけ明るい知らせがあったのが、先週月曜日。
休業していた宮城峡蒸留所の有料試飲コーナーが7月1日から復活するそうです。

2015年6月の蒸留所だより(宮城峡)
http://www.nikka.com/distilleries/tayori/2015.html

そういえばこの前行ったとき、休業中というのにカウンターに色々モノが置いてあったもんなぁ。
工場見学で飲ませてくれるニッカの無料試飲は、大手3社の中では一番充実していますが、やはり有料試飲もあったほうがうれしい。ニッカさんわかってるじゃないの。新しいカウンターはどんなラインナップになるのか楽しみです。
今日の1本は、その宮城峡蒸留所から。
1年ほど前に終売となってしまった、蒸留所限定品のシングルカスク。

NIKKA
MIYAGIKYO
SINGLE CASK MALT WHISKY
15 years old
60% 500ml
Cask no,54116

評価:★★★★★★(6)

薫り:ドライでハイプルーフらしくツンとしたアルコール感を感じる香り立ち。乾いたオーク香、ブラウンシュガー、ほのかに梅の酸味。加水するとアルコール感が和らぎ蜂蜜の甘さと麦芽香、微かに紙っぽさ。

味:パワフルでスパイシーな口当たり。粘性があるオーク由来のフルーティーさは、シロップ漬けの黄桃やリンゴのカラメル煮を連想させる。微かにシナモンの香味、またバニラを思わせる甘みもある。フィニッシュはエッジが鋭く、ドライでオーキーなウッディネス、ハーブを思わせる爽やかな香味が残る。
加水するとバランスは良くなるが、強みとも言える濃いオーキーさ、フレーバーが弱くなってしまい、まとまり具合は小さくなる印象。度数は高いがあえてストレートで楽しみたい。


所謂近年系トロピカル、オーク系のフレーバーが全開な1本。
2年ほど前まで宮城峡蒸留所で販売されていた、熟成年数別のシングルカスクシリーズ。
それぞれ年数毎にキャラクターが決まっていて、このシリーズを飲んでから、オフィシャルの通常ラインナップを飲むと「なるほどこの香味はこのタイプの原酒だったのか」と、深堀しやすくなる構成だったのが印象的でした。
特に15年、20年、25年は香味云々だけでなく経験値として、一飲の価値アリです。

15年シングルカスクには上述のとおり濃厚なオーク香、フルーティーさがあり、宮城峡12年や各種ブレンデットの余韻に感じるフルーティーさを紐解く上で鍵となる、まさにキーモルトだと感じます。
既に終売となり、ボトル1本購入するのは難しいかもしれませんが、終売になったのは最近ですし、まだBAR等で飲めるところもあると思います。

IMG_4174
(蒸留所帰りにちょっと寄り道。奥新川の水でシングルカスク15年を加水してみました。)

サントリーウイスキー 響 1989-1990年流通 初期ロット

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昨日は1日お休みを頂きました。
なんせ徹夜含む怒涛の1週間、直後の休日。
ふらふらで帰ってきてベットに倒れこんだ夫を、いつものように朝7時に叩き起こしてくれる妻には感謝しかありません(笑)。
そして土曜日は子供と遊ぶ日。嫌々期に入ったわが子のお世話で、とてもブログが書ける状況じゃありませんでした。

明けて日曜日、今日は本当に1ヶ月ぶりくらいにフリーな休日で、体の中の淀んだ空気を吐き出すためにチャリでも乗ろうか考えていたものの、そこには迫り来る雨雲と情け容赦の無い天気予報。本当に世の中は無常である。
あれこれ考えても仕方ないので今日は朝から飲むことにします。

SUNTORY WHISKY
HIBIKI
43% 750ml
1989-1990's
image

評価:★★★★★★(6)

香り:熟成庫の空気を思わせる品の良いウッディネス。ミルクチョコレートのような濃い甘さ、微かなハーブ香と梅の酸味。コルク臭。加水すると序盤の濃さを構成するフレーバーが解け、よりはっきりとした熟成庫の薫り、蜂蜜の甘さ、レーズン、紅茶、より多彩なアロマを引き出せる。

味:しっかりとしたコクのある口当たり。お菓子のカラメリゼを思わせるビターな甘さ、微かにレーズン、干し柿、徐々に口の中に心地よい苦味が増していく。フィニッシュはビターでウッディーで長い。華やかな木香が鼻に抜けていく。


現在ジャパニーズハーモニーとして販売されている響とは違う、1989年に販売開始された初期の響。
ノンエイジですが17年相当の原酒が使われており、熟成感は現行品のジャパニーズハーモニーとは比べ物になりません。ノンエイジ同士で比較するのではなく、比較対象は現行品の17年となるボトルです。
響シリーズの共通点だと思っている、加水によって開いていくアロマは当時でも健在で、ストレートだけでなく様々な飲み方を試してほしいボトルでもあります。

ノージングすると山崎蒸留所の熟成庫で感じたような、品のいい湿った木々の香りが立ち上ります。
全体のバランスという点では、現行品17年のほうが高いレベルにあると感じますが、熟成感はこの旧ボトルのほうに軍配。かつては今ほど日本のウイスキーが評価されておらず、このボトルも中古市場では1本送料込み3000円で買えた時代が長くありました。
自分も2~3本飲みましたが、マッサンが始まる前にもっと買っておけば良かったと。突き抜けたボトルではありませんが、それこそデイリーに飲めるなら最高だと思います。


響発売当時、日本のウイスキー業界は現在同様に大変革期にありました。
1989年の級別制度の廃止を含む酒税法大改定により、新しい制度の枠の中でウイスキーを開発する必要があっただけでなく。おりからのウイスキー離れにさらに拍車がかかっていた状況を、打開する製品が各社の課題。そんな冬の時代が訪れようとしていた日本市場に、サントリーが創業90周年を記念して送り出したのが響です。
ウイスキー仲間の分析の引用になりますが、当時発売されたのがまさに写真のこのボトル。コンセプトはサントリーの技術の粋を結集したウイスキーで、インペリアルなど当時のフラグシップモデルを切り替える、文字通り新時代を担う1本でした。
当時のマスターブレンダーである佐治敬三氏を筆頭としたブレンダーチームの相当な苦労、気合が伝わってくるようです。
(幾重にも重なる甘く華やかな香味は、ブラームスの交響曲、第一番第四楽章の旋律をイメージしながら組み立てたというストーリーも残っています。)


サントリーの知多工場(グレーン)は1972年操業、白州蒸留所は1973年操業。響初期ロットを語る上ではこの2蒸留所についても無視できません。
17年相当の原酒は初期ロットにあたり、貴重であるだけでなく、ブレンドに当たって幅が出しづらい状況でした。そのため、ノンエイジとしてブレンドに幅を出そうとしたのでしょう。また、香味からは山崎の原酒が多く使われていることを推察させる、ミズナラ系の香りがしっかりと感じられます。
この当時は現在の白州蒸留所である白州東蒸留所(1981年~)が操業していないこともポイントです。稼動していた白州西蒸留所はステンレス発酵層にスチーム加熱、現在の白州とは異なる蒸留行程であり、現行品の響とはベースとなる原酒も根本から異なっています。

変革期に生まれ、日本だけでなく世界で評価されるウイスキー、響。
響ノンエイジから始まったストーリーは、その後17年、21年、30年と繋がっていきます。
日本のウイスキーは今まさに新たな変革期にあるわけですが、その中でかつての響に続く次の世代を担うブランドが誕生することも楽しみにしています。


※旧響だけでなくサントリー系のオールドボトル(ローヤルなど)は、キャップに使われたコルクの質か、はたまた洋酒は横置きという誤った知識が暗に広まっていたためか、コルク臭の付いたものが結構な割合で存在します。購入の際はそのリスクも踏まえ、購入(トライ)してください。

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