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Vol.1、Vol.2に引き続き、銅印帳片手に兵庫エリアのクラフトウイスキー蒸留所を巡る旅。今回は江井ヶ島から淡路島を横目に明石海峡大橋に向けて移動すること30分弱。こちらも瀬戸内沿いの地域にある、明石酒類醸造の海峡蒸溜所を訪問します。
※ご参考:銅印帳 Amazon販売ページ

海峡蒸溜所はウイスキーイベントなどで度々ご挨拶はしていたものの、見学するのは初めて。まだ真新しさを残す設備に、他の蒸留所とは異なるポットスチルの形状、酵母の使い方。見所の多い見学となりました。
今回もまた、これまで同様に旅行記風に記事をまとめましたので、今後訪問を予定されている方の参考になれば幸いです。

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●海峡蒸溜所(明石酒類醸造株式会社)
蒸留所の立地は一見すると、幹線道路沿いの居住地付近であるように見えるが、周囲は朝霧川の河口、明石海峡、日本の夕陽・朝日百選にも選ばれ夏季には多くの海水浴客で賑わう大蔵海岸が広がる。名は体を表すように海辺の要素が強くある蒸留所なのである。

実は朝霧という場所は、筆者が幼少の頃に住んでいた地区のすぐ近くにあたる。そうしたことから少なからず思い入れや土地勘がある一方で、ウイスキーツーリズムの醍醐味たる地元の名物を食せる場所があるかというと、居住地に隣接することもあってか蒸留所の周囲は日常的に住民が使用する飲食店が中心となる。
代表的な名物、瀬戸内の海産物という点では、明石に寄り道し、商店街で明石焼きや焼きちくわ、寿司、あるいはハズレの無い定番のお好み焼き等をお勧めしたい。

これらの知名度は全国的、解説の必要がないメニューであると思うが、代表的な名物である明石焼きについて触れておくと、瀬戸内でとれたタコを、通常のたこ焼きとは異なる卵を多く使った生地でふんわりと焼き上げ、出汁につけて食べる。噛みしめるほどに広がるタコのうま味と出汁の上品な味わいが特徴で、子供の頃はソースたっぷりの、所謂一般的なたこ焼きの方が好みであったが、大人になってから食べるとその良さがわかる。この点は特筆しておきたい。
まぁ、子供の頃に食べて以降、飲酒可能年齢に至るまでの間、明石焼きが疎遠だった自分のような人間は珍しいとは思うが・・・。

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(地域を代表する名物、明石焼き(通称卵焼き))

話を戻すと、明石酒類醸造は元々焼酎、そして日本酒を製造する伝統的な日本の酒蔵の一つであったが、2017年にウイスキー蒸留を開始すべく最低限の設備を導入し、製造免許を取得。
その後ポットスチルを2基に増設するなど調整を進め、2022年に本格的なウイスキーの製造を開始した。ガラス張りの蒸留棟には、バルジ型で背の高い細いネックと、やや上向きのラインアームが特徴的なポットスチルが並ぶ。またテイスティングスペース等を備えたビジターセンターも蒸留棟の隣にオープンした。

なお、糖化、発酵などの蒸留以外の製造工程は蒸留棟の裏側、焼酎や清酒製造を行っているスペースに併設されており、こちらの建物は古き良き日本の酒造という雰囲気を残している。

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(海峡蒸溜所のポットスチル2基。1回の仕込みは1バッチ700㎏と決して多くはない。加熱方式はスチームで、外側から温める方式がとられている。)


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(ウイスキーの糖化、発酵にかかる設備の一部。昔ながらの酒蔵という趣のある建物、内装に近代的な製造ラインが並ぶ。発酵は木桶とステンレスのハイブリッドで72~96時間。)

同社がウイスキー事業に参入するきっかけとなったのが、のちに資本提携を行うこととなるオランダのマルシアビバレッジ社にある。同社は2017年1月にスコットランド スカイ島の海岸沿いにトラベイグ蒸留所を創業しており、海峡蒸溜所にとって姉妹蒸留所と言える存在がスコットランドにある点も注目である。

トラベイグ蒸留所は伝統的な製法に基づく、ピーティーで個性的なウイスキーを生み出している蒸留所であり、同蒸留所で海峡蒸溜所関係者がウイスキー製造を学んだという話もある。よって、海峡蒸溜所も同様にさぞスモーキーな原酒が作られているのだろう…と思いきや、個性的ではあるものの現時点でスモーキーな原酒の仕込みは行われていない。

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(海峡蒸溜所で熟成中の原酒のサンプルを試飲。)

海峡蒸溜所のポットスチルは、先述の通りバルジ型。これはクリーンで軽やかな、フルーティーな原酒を生み出す特性があるとされる。
ただ非常に面白いのは、この日テイスティングさせて頂いたカスクサンプルのいくつかは、香ばしさの中に柑橘系の風味が混じる軽やかなものと、バター飴のようなクリーミーで重心の低い甘さを伴うもの、2つの系統が感じられたことにある。

これは同蒸留所が一部用いている、従来の酵母とは全く別物の黒酵母によるものと考えられる。特にシェリー樽熟成で得られるフレーバーと混ざり合うことで、クリーミーな中にダークフルーツのフレーバー等が感じられる豊かな味わいを形成していたことが非常に印象的だった。

海峡蒸溜所の面白さは、スコッチウイスキーの技術をそのまま日本に移植したところにあるのではない。
日本酒や焼酎を造ってきた酒蔵としての歴史を持ちながら、海外との技術交流によってウイスキーという新しいジャンルへ踏み込み、さらに自らが持つ発酵技術を組み合わせる。その結果として生まれる原酒には、既存のジャパニーズウイスキーとは少し違った個性が顔を出している点にあるのだ。
同社の3年熟成以上のシングルモルトウイスキーはまだこれから

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(海峡蒸溜所のビジターセンターの試飲スペース。ウイスキー以外に日本酒やジンなどもテイスティングすることができる。)

●旅の終わりに 
神戸、江井ヶ島、そして朝霧。
六甲山から瀬戸内海へと舞台を移しながら巡った兵庫県の3蒸留所は、それぞれ全く異なる背景を持っていた。
神戸蒸溜所は、ワイン・ブランデー造りの歴史を受け継ぎながら新たなウイスキーを生み出そうとしている。江井ヶ嶋蒸溜所は、100年以上に及ぶウイスキー製造の歴史を持ちながら、設備と人を刷新して新世代へと歩み始めている。そして海峡蒸溜所は、伝統的な酒蔵を母体に、海外との交流を取り込みながら新しいウイスキー造りに挑んでいる。

今回は訪問できなかったが兵庫県には、銅印スポットとして養父蒸溜所が、ウイスキー蒸留所としては黄桜 丹波蒸溜所、六甲山蒸溜所等もあり、それぞれが工夫を凝らしてウイスキーづくりを続けている。この土地が持つ豊かかつ多様な酒造りの文化を背景に、兵庫のウイスキーは今まさに次の時代へ進もうとしている。

【次回はどこを巡ろうか…Comming Soon】

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