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Vol.1に引き続き、旅行読売出版社から発売された銅印帳を片手に兵庫エリアのクラフトウイスキー蒸留所を巡り、銅印を集める旅を続けます。
今回は舞台を六甲山の山間から、瀬戸内海・明石海峡沿いの漁師町へ移し、100年以上の歴史を持つ蒸留所、江井ヶ嶋酒造株式会社ホワイトオーク蒸留所改め、江井ヶ嶋蒸留所を訪問しました。

ご参考:銅印帳 Amazon販売ページ

江井ヶ嶋酒造は直近だとBARお酒の美術館のPBや、KFWSさんのリリース等の調整で訪問していましたが、木桶発酵槽が導入された2023年以降は未訪問。最近は定番品のシングルモルトである”あかし”がリニューアルされるなど動きもあり、製法、製品ともにその進化を見るちょうどいい機会となりました。
改めて、その様子を旅行記風にまとめていきます。本記事が読者各位のウイスキーツーリズムのきっかけとなれば幸いです。

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●江井ヶ嶋蒸留所(江井ヶ嶋酒造株式会社)
淡路島と明石海峡大橋を一望する立地にある江井ヶ島は、美しい海岸線と酒造りの街としても知られ、その中枢を担ってきたのが江井ヶ嶋酒造である。
古くから地域に根ざした酒造は、その地域の産業の中心となるケースが多く、必然的に交通インフラも整備される。江井ヶ嶋蒸留所、もとい江井ヶ嶋酒造も例に漏れずアクセスの良いクラフト蒸留所の一つ。電車を乗り継ぐなら山陽明石駅から15分ほど。最短距離で移動するなら西江井ヶ島駅が最寄りとなるが、風情ある海岸沿いの景色を楽しみつつ蒸留所を目指すなら、江井ヶ島駅で下車しても良い。
道中では地元の名物の取り扱いに加え、1998年から製造を続けている地ビールメーカー「明石ビール」を併設した、ながさわ明石江井ヶ島酒館に立ち寄ることも出来る。

同酒造のルーツは1679年にまで遡り、その後日本酒を軸に焼酎、ワイン、そしてウイスキーと手を広げた。特にウイスキーについては、故竹鶴政孝氏がウイスキー製造法を学ぶために実施したスコットランド留学から帰国する1920年より1年早い、1919年に製造免許を取得。もちろん、当時のウイスキーはイミテーション。日本酒製造では閑散期に当たる夏場に、職人を遊ばせないようにするための選択であったが、1984年には現在も使われている蒸留棟(現・江井ヶ嶋蒸留所)を瀬戸内海に隣接した敷地内に竣工。
当時こうした酒造に併設されたウイスキー製造拠点としては画期的とも言える、三宅製作所設計製造のライン一式が導入され、本格的なウイスキー製造を行える準備は整った。

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(江井ヶ嶋蒸留所の蒸留棟内部。蒸留棟は麦芽粉砕、糖化、発酵、蒸留とすべてのラインが一本の線となるように配置されている。1984年時点のクラフトウイスキー(地ウイスキー)製造現場としては非常に革新的な構造であった。)

こうして見ると明るい未来が待っているように感じられる同蒸溜所であるが、その後は低迷・・・という言葉が誤解を招くのであれば、こだわりや理念のないウイスキーを生産し続ける期間が30年以上続くことになる。

関連するエピソードを紹介すると、約15年ほど前に私が蒸留所を訪問した際、使用している麦芽の素性を質問すると「商社が持ってきたものを使っているだけだからわからない」と回答があったこと。また、その際テイスティングしたその年に蒸留した原酒(ニューメイク)は、夏場に3回、同じように作っているはずなのに、全て味わいが異なっていた…。ということからも推察いただけるだろう。

転機が訪れたのは2016年、現在の工場長である中村裕司氏が責任者として着任したことに端を発する。中村氏は、スタッフの意識改革と製造ラインの徹底したメンテナンス、老朽化した設備の入れ替えと新設備の導入を推進。2017年から徐々に酒質が改善され、スタッフの意識と設備が刷新された現在の江井ヶ嶋蒸溜所にかつての負債はなく、愛好家の評価も高まりつつある。

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(2023年に導入された木桶発酵槽。三郎丸蒸留所に導入されているものと同型で、縦に長い形状。発酵時間はステンレスで3日の後、木桶で1日または2日。90〜114時間かけて行われている。)

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(江井ヶ嶋蒸留所はスタンダードラインナップの「あかし」に加え、上位ラインナップとして樽の個性を香りと共に掬い上げることをコンセプトとした、「香掬」を2025年から展開している。)

現在の江井ヶ嶋蒸留所は、程よい麦芽風味と仕込み水に由来すると思われる独特のミネラル感、微かなほろ苦さを個性として感じさせる。
先日テイスティングした5年熟成のバーボン樽原酒には、10~12年熟成程度のスペイサイドモルトを思わせる華やかさとフルーティーさが備わっており、熟成後の完成度も高まっている。

また、同蒸留所の特徴は、熟成に使われる樽の6〜7割がシェリー樽である点にもある。
シェリー樽の影響と、瀬戸内の温暖な環境で色濃くリッチに育った原酒は、オフィシャルリリースである「シングルモルトあかし」にもふんだんに使われている。ちなみに、あかしブランドからは、2026年4月に新商品が発表され、6月にはこれまでリリースされてきた「シングルモルトあかし」も刷新されたところ。
いずれも今回の訪問でテイスティングしたが、他のクラフトメーカーとは一線を画す、 “手頃な価格帯でシェリー樽原酒主体のシングルモルト”という同蒸留所の魅力は変わらず、味わいは洗練され、熟成感も増しているように感じられた。
見学当日、特別にビジターセンターを開けてもらっていたところ、銅印を求めて尋ねてこられた愛好家の方々とも偶然顔を合わせた。聞けば近年の江井ヶ嶋のウイスキーに高い評価をされており、今後にも期待しているとの声。
なお江井ヶ嶋蒸留所では一般の見学受付、ビジターセンターの営業も定期的に行われているが、毎日営業されているわけではないので、WEBやSNSで営業スケジュールをご確認の上、訪問されることを推奨したい。その上で、ぜひ新世代の江井ヶ嶋の魅力を感じていただければ幸いである。

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(江井ヶ嶋蒸留所外観。最近のクラフト蒸留所では見られなくなってきた、スコットランドのウイスキー蒸留所では伝統的な、パゴタ屋根に風見鶏というシンボルが目印。)

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(江井ヶ嶋蒸留所の熟成庫の1つ。シェリー樽が6~7割を占めるが、昨今ではワイン、ミズナラ、栗、日本酒など、様々なカスクを用いた熟成も行っている。)

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 (ながさわ明石江井ヶ島酒館にて。併設されているバルで明石ビールのクラフトビールにも舌鼓。ウイスキー以外の地の酒類を楽しむのも、ウイスキーツーリズムの楽しみと言える。)

【Vol.3海峡蒸溜所(明石酒類醸造株式会社)編に続く 】