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2026年4月1日、旅行読売出版社から「Japanese Whisky Passport 銅印帳」が発売されました。
全国のクラフト蒸留所を巡り、各蒸留所が発行する「銅印」を集めて楽しむもので、類似するものとして「御朱印帳」や「鉄印帳」があり、銅印帳はいわばそのウイスキー蒸留所版にあたるものです。

日本には銅印帳発売時点で100か所を超える蒸留所があり、銅印帳には北海道、東北、関東……と各エリアに点在する全国の蒸留所をまとめたマップに加え、初版となる今回の企画に参加する全28か所の蒸留所が掲載されています。
※銅印帳 Amazon販売ページ

また、銅印帳はただ蒸留所を紹介するだけではなく、その地を訪れ、歴史や文化、名物や名所までも楽しむ「ウイスキーツーリズム」の推進を目的としています。今回は掲載されているエリアの中から、兵庫県にスポットライトを当て、いくつかの蒸留所を旅行記風に紹介していきます。
夏の名残が秋へと繋がる長月の頃、旅に出るにはいい時期となってきました。本記事が読者各位のウイスキーツーリズムのきっかけとなれば幸いです。

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1.神戸蒸溜所(株式会社グロースターズ)

南の海からは光が差し込み、港に並ぶ船や倉庫の屋根を白く照らす。一方、街のすぐ北側には広大な山脈が広がり、海から山へ向かう道を歩けば、港町の賑わい、あるいは子供の声が響く住宅街は、いつの間にか急な坂道に差し掛かる。

近畿・中国地方の瀬戸内の海岸沿いの都市に見られる、日常的な景色。その玄関口とも言えるのが神戸市。最寄りたる新神戸駅に降り立てば、眼下には1000万ドルの夜景を生み出す街並みと瀬戸内の海、すぐ背後には緑あふれる六甲の山。東京からの旅路の先に待つのは、海に向かって開かれ、山に抱かれる、日本有数の港湾都市である。
そうした豊かな自然と港町という地の利、つまり全国への販路を活かし、周辺都市を含むこの地域では、古くから酒造りが盛んに行われてきた。酒造りというと日本酒や焼酎が想起されるだろうが、ハイカラでモダンな街である神戸では違った一面も見せてくれる。

新神戸駅から車を走らせること30分ほど。港町の喧騒を離れ、裏六甲と言われる神戸市北部地域の田園地帯に、道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢の看板が見えてくる。
古くは1993年に開業したテーマパークを2017年に道の駅としてリニューアルしたもの。中世ヨーロッパ風の美しいホテルや教会、各種レストラン、BBQ施設、小規模な遊園地まで備える広大な敷地内では、神戸ワイナリーが地元で栽培された葡萄を使ったワイン作り、さらに5000リットルのアランビック蒸留器を導入して、ブランデーの蒸留まで行われていたのだから驚かされる。

もっとも、1995年に発生した阪神・淡路大震災の影響を受け、その製造はわずか2年で休止してしまったわけだが…。
その後、フルーツ・フラワーパークは道の駅としてリニューアルし、人気を博す中で、神戸の貿易会社であるグロースターズが神戸蒸溜所を立ち上げ、休止状態にあった神戸ワイナリーのブランデー蒸留設備を再整備。ポットスチルやウイスキー製造に必要な設備を導入して、2022年にウイスキー蒸留所として稼働して現在に至っている。

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(神戸蒸溜所が操業している道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢の外観と内観。おおよそウイスキーの蒸留所があるとは思えない。)

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(2026年にオープンした神戸蒸溜所ビジターセンター)

神戸蒸溜所は今年、2026年にビジターセンターもフルーツ・フラワーパーク内にオープンした。物販以外に試飲コーナーも備えており、同蒸留所で製造するウイスキー原酒だけでなく、地元産の果実などをボタニカルに使ったジン、そして神戸ワイナリー時代に蒸留された希少な長期熟成ブランデーを楽しむことが出来る。
1993年から2年間だけ操業した、幻の神戸ワイナリーのブランデーは、シェリー樽で追加熟成された21年熟成品。華やかでありながら重厚な奥行きのある甘さ、丸みを帯びたウッディネス。コニャックほど軽やかで洗練された味わいではないが、それがけっして雑に作られていたものではないことがうかがえる。

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(1993年、1994年にかつての神戸ワイナリーで蒸留された希少なブランデーを試飲。シェリー樽由来の奥深い香味とブランデーのフルーティーさ、甘さが馴染んだ素晴らしい味わい。)

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(神戸蒸溜所のポットスチル。ストレートヘッド型の形状だが、酒質は決して重いわけではなく、すっきりとしている。奥には1993年に導入されたアランビックも見える。)

そしてそのバトンを受け継いだともいえるウイスキーのニューメイクは、やや酸の強さに個性があるものの、麦芽風味には透明感があって樽によく馴染む。また3年熟成のバーボン樽熟成原酒は軽やかなオークフレーバーが心地よく、熟成の伸びしろも感じさせる。そのほか、栗、ミズナラ、シェリーなど、多くの樽で熟成が進められており、3年熟成以上のシングルモルトのリリースに向けた準備が着々と進んでいることも伝わってくる。

ウイスキーの製造工程において、現在使用している麦芽はノンピート(クリスプ社)のものが中心。酵母はディスティラリー酵母とエール酵母を別々に用いている。仕込みの1batchは麦芽800㎏、ポットスチルは初留4000ℓ、再留2500ℓ。発酵時間、酵母の種類、使い方などは現在模索しているところであり、公開されている情報がすべてではなく、作り手の意欲もうかがえた訪問となった。

園内は家族連れやカップルで賑わい、観光地だけでなく地元神戸市民の憩いの場としても活用されている。環境はこれ以上ないほど整っており、神戸の新しい名産品を作るという目標を目指して、神戸蒸溜所の挑戦は続く。

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(ビジターセンターで神戸蒸溜所のウイスキー原酒3種を飲み比べ。いずれも3年前後の熟成ながら伸びしろを感じさせる味わい。)

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(同道の駅内のレストラン Days Kitchen Pizza&Vegetable にて。淡路島産しらすとアンチョビのピザ。地元の食材を使った美食との出会いもウイスキーツーリズムの醍醐味。)

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(道の駅内に併設されている遊園地、神戸おとぎの国。家族連れで来たウイスキー愛好家がちょっと抜け出して蒸留所を訪問することも許されるだろうか…)

【Vol.2 江井ヶ島蒸留所編に続く】