カテゴリ:
IMG_3721

THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky 
Bottled 2025 
7th. Season in the 24 Sekki 
700ml 55%  

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:焦げたようなビターなニュアンスを伴う、ウッディーでスモーキーなトップノート。香り立ちはシャープでシトラスやスパイシーな要素が主体だが、少量加水すると穏やかになり、柑橘や甘いオーク香も感じられる。

味:香りに反して味わいは柔らかく、ピートが溶け込んだよう。樽由来のキャラメルや焼き栗を思わせる香ばしい甘さ、微かな焦げ感と柑橘の綿を思わせるほろ苦いニュアンス。余韻にかけては塩味と、穏やかなピートフレーバーと共に、アーモンドナッツと杏子や柑橘を思わせる甘酸っぱいフルーティーさを伴い長く続く。

19作目となる二十四節気シリーズ。ここに来て今までの厚岸にはなかった、熟成由来のフルーティーなオークフレーバーが感じられるのが本作最大の特徴。 主にアメリカンオーク樽熟成の原酒に見られるフレーバーだが、熟成を経たミズナラ樽にも共通要素が出るため、構成原酒の平均熟成年数が上がったと予想(直近4-5年だったのが5-6年になった可能性)。
厚岸の柔らかい北海道産麦芽風味に穏やかなピートが柑橘系のニュアンスに通じ、それらと合わさった熟成樽由来の香味が杏やナッツなどの香味要素を形成している、また一段と成長した姿を見たリリース。どこかボウモアに通じる要素が感じられるのも興味深い。

IMG_3672

しばらくブログをさぼっていたら、二十四節気シリーズが折り返しどころか、3/4を終えていた件について。い、いや、ちゃんと飲んでるんですよ(汗)。

本作のキーモルトは北海道産の麦芽と北海道産ミズナラ樽を用いた原酒とのことですが、特徴的なのがテイスティングでも記載したフルーティーな香味、熟成感ですね。個人的にこのフルーティーさは近年のトレンド、バーボン樽由来の香味に通じる要素。そこにウッディな要素が重なってくるので、構成はノンピートのバーボン樽原酒を主体として、次点でミズナラ樽、シェリー樽、後は微かにワイン樽熟成原酒といったところでしょうか。

比率としては、5:3:1:1あたりと予想。あまりウッディな渋みはないので、ワイン樽はもっと控えめ、ごく少量かも。一方で比率とは別に全体の一体感を作り、まとめ上げているのが麦芽の柔らかく膨らみのある味わい、柑橘感を伴う風味とミズナラ樽のウッディネスというイメージで、その意味で本作のキーモルトがオール北海道産モルト原酒というのは味わいからも得心がいくところ。
ただ、裏ラベルを見ると麦芽の構成は、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、北海道産とあるので、左に行くほど量が多いと整理するなら、ミズナラ樽原酒がすべて北海道産ミズナラ樽と北海道産麦芽によるもの…というわけではないのかもしれませんが。

IMG_3652

と、そんな細かい…いや、ロマンのない話はさておき。
厚岸の二十四節気シリーズで、シングルモルトのリリースは
・立春(2024年2月)
・小暑(2024年8月)
・立夏(2025年5月)
と、約10ヵ月ぶりでした。また、前作が意欲作ともいえる厚岸蒸留所のポットスチルで仕込んだグレーン原酒を使ったシングルブレンデッド冬至のリリースで、今までとは異なる方向性だったこともあり今作はなおのことモルト原酒の熟成感の変化が際立っていると感じます。

昨年、展示会等で立崎さんから伺ったところでは、2024年の時点では平均熟成年数が4~5年程度であったところ、おそらくそこから熟成年数が伸びた原酒を今作は用いているのではないかと。それこそ平均で5~6年、こと上述のバーボン樽原酒についてはさらに長い6~7年のものも含まれているのではないかと予想。スコットランドの熟成環境では2年程度は微々たる期間かもしれませんが、日本や台湾などの温暖な気候のアジア圏においては大きな変化に繋がるには十分すぎる期間です。

今回のリリースではテイスティングで述べたように、原酒の一体感が増しただけでなく、これまでの厚岸には見られなかった熟成による風味、フルーティーさが感じられ、新しい魅力を感じさせてくれました。ちょっとボウモアっぽい感じが出ているのも面白いですね。厚岸蒸留所の代表である樋田さんはアイラ島のウイスキーに惚れ込み、特に60年代のボウモアに思い入れがあることで知られていますが、その方向に近づいたのが興味深い点でもあります。
3か月ごとに1作リリースされていく二十四節気シリーズ、つまり完結まであと1年と3か月。ここから1年でどんな姿を見せてくれるのか、立夏を飲んで一層楽しみになりました。