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CLONAKILTY 
SINGEL POT STILL 
IRISH WHISKEY 
100% IRISH BARLEY 
700ml 46% 

評価:★★★★★(5)

香り:やや酸の混じる黒パンのような素朴な麦芽香。合わせて薄めたキャラメルと柑橘、干し草のような甘い植物感を伴う。

味:柔らかく甘酸っぱい口当たり。柑橘のクリームのようなソフトな甘さのケミカルなニュアンス、徐々に軽やかなスパイス。余韻は麦茶のようにほろ苦い麦芽風味を残してじんわりと長く続く。

自家栽培含む100%地元産の麦芽を用いた、クロナキルティ蒸留所のファーストリリース。まだ4年程度の熟成とあって複雑さには欠けるが、煌びやかでも華やかでもない、どこか素朴な味わいに懐かしさを感じる。また、口当たりはソフトでアイリッシュのシングルポットスチルらしい柔らかさがあり、親しみやすい。ストレート以外にハイボールやロックでも。

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アイルランドの新星、クロナキルティ蒸留所で蒸留されたシングルポットスチルウイスキー。クロナキルティ蒸留所については過去記事にて紹介しているので説明を省きますが、現地で農業を営む一族がオーナーとなって創業した蒸留所で、海沿いの高台に建てられた熟成庫や、蒸留には自ら育てた麦芽を用いるなど、ユニークな特徴があります。

同ウイスキーのニューメイクはWWA2020でベストアイリッシュニューメイクを受賞(WWAの評価は賛否ありますが、一定以上の品質があるのは間違いなく)した実績があるだけでなく、調達した原酒を後熟&ブレンドして作られてきたこれまでのリリースは、愛好家からも一般のユーザーからも評価されているところ。

特にフルーティーさのわかりやすいクロナキルティ・ギャレーヘッドが人気であり、ユーザーが求めている味わいを作り出すブレンドセンスの高い蒸留所だと注目していました。
外部調達した原酒をアレンジしてリリースを作るメーカーは、アイルランドではイーガンズなど複数社ありますが、日本に流通しているものを一通り飲んだ限り、クロナキルティの味作りが1番好みだったのです。そのため、上述のローカルバーレイの取り組みなどと合わせて自前の原酒を使ったリリースを楽しみにしていました。

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※注目ついでに自分が関わるリリースまで調整してしまいました(笑)。イラストは昨年11月にリリースを発表した駐日アイルランド大使公邸にてオーナー夫妻とメンバーで撮影した写真を加工。多分今年の夏頃にリリースされます。

そんなクロナキルティから、準備期間を経て満をじしてリリースされたのが、今回のシングルポットスチルです。
自前の畑で栽培された麦芽に、足りない分は周囲の契約農家から麦芽を調達したローカルバーレイ仕様。ラベルにはクロナキルティの象徴たる鯨の尾、外箱には蒸留所、大麦畑、熟成庫、それぞれの場所が描かれています。

蒸留回数は伝統の3回蒸留、熟成年数は現時点では4年程度で、原酒はバーボン樽、オロロソシェリー樽、アモンティリャードシェリー樽で熟成したものをブレンド。バーボン樽のオーキーでドライな感じにならない、麦芽風味と酸味、特に香りで感じた黒パンのような、どこか素朴な味わいとなっているのは、シェリー樽から甘味と酸味が加わった味作りからでしょうか。
過去のリリースの傾向から、ライトでソフトで、そしてフルーティーな感じに仕上げてくるかなと予想していたので、個人的にこの路線は意外でしたね。

ただフルーティー路線のアイリッシュはいっぱいあるし、なんならギャレーヘッドなどの自社の過去リリースと同じ路線にのせるよりも、違う方向に調整したのはアリだなと。またローカルバーレイを掲げている中で、こうした素朴な味わいが雰囲気的にもマッチしてると思います。
蒸留所の熟成庫周辺の風景を知っていると、今回のリリースの味わいから牧歌的な風景が連想できる。。。ような気がするのは自分だけでしょうか(笑)

なお、クロナキルティの熟成庫は、上述の通り海沿いの高台にあり、大西洋から吹き付ける潮風が原酒に影響を与える…とのことなのですが、香味から潮気が目立って感じられるわけではありません。今後熟成が進むと、ソフトな酒質に合わさって塩スイーツみたいな感じが期待できるのかもしれませんが。
現在、シングルモルトの仕込みにも着手しているとのことで、今後のリリースや展開にも期待しています。

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