アイルオブラッセイ ライトリーピーテッド Batch R-01.1 46.4%

ISLE OF RAASAY
LIGHT PEATED
Batch R-01.1
700ml 46.4%
評価:★★★★★★(6)
香り:酸のある柔らかい麦芽香とスモーキーさ、燃え尽きた後の焚き火、淡い柑橘香がベース。その上に樽由来のアロマが複数あり、フレンチオークのバニラ香やオークフレーバーに、ワインオークを思わせる酸が混じる。
味:柔らかいコクのある口当たり。潮汁のようなダシっぽさとほろ苦いピート、麦芽風味に角の取れたミネラルを感じる。
余韻は穏やかなスパイスの刺激とビターなピート、序盤の柔らかさに反して強めのタンニンが口内を引き締める。
ライウイスキーカスク、チンカピンオークカスク、ワインカスク。3種類のカスクで熟成された6種類の原酒の組み合わせ。樽の使い方は賛否あるかもしれないが、このスタンダードリリースはそこまで煩く主張しない。一方で、この蒸留所で注目すべきは酒質。麦の厚みとピート、樽香の奥にある地味深さ。出汁っぽさと角の取れたミネラルは、仕込み水に由来していると思われ、それが厚みと地味深さに通じている。
ちょっと田舎っぽい感じが地酒っぽさ、現行品ならスプリングバンクにも共通するようなイメージ。 ハイボールは樽感が軽減され、酒質は伸びて、穏やかにスモーキー。

アイルオブラッセイは、スコットランド、タリスカーで知られるスカイ島に隣接する、ヘプリディーズ諸島の一つ、ラッセイ島に2014年に設立された新興蒸留所です。
ただし 2014年は蒸留開始ではなく、会社の立ち上げであり、着工は2016年、蒸留の開始は2017年9月、樽詰めが行われたのはその翌月、2017年10月からというスケジュール感となっています。
今回のボトルは、そのラッセイ蒸留所のコアレンジとして初めてリリースされたR-01(Release-01)の2ndバッチ。2021年に初めてリリースされたR-01シングルモルトも麦芽風味と独特の複雑さがあって良かったですが、2ndも中々です。
今回のリリースを含むスタンダード品の原酒としては、4年熟成前後のものが構成原酒となっていますが、ラッセイ蒸留所の魅力は、若くても高品質な原酒を作り出すという3種6パターンの原酒作り。
そして発酵から加水まで、すべての行程に使用される、敷地内で組み上げられるミネラル分豊富な伏流水にあると感じています。
まずは使い方では良くも悪くもなる、樽使いから紹介していきます。
ラッセイ蒸留所の原酒はノンピートとピーテッドがあり、これをブレンドすることで、今回のテイスティングアイテムにある適度なピートフレーバーを持ったライトリーピーテッドウイスキーが出来上がります。
この2種の原酒の熟成に使われる樽は、ボルドー赤ワインカスク、ライカスク、そしてチンカピンオークカスク、それぞれ3種類であり、故に3種6パターンの原酒を使い分けると言うことになります。
そしてここで使われる樽にこだわりがあり、若くしてもそれなりな味わいに仕上がるのは、樽由来の要素も大きいのではないかと感じています。

何がどう違うのか。赤ワイン樽は、ウイスキーでよくある名もなきバーガンディカスクではなく、ワインを知らない人でも知っている程の超有名ワイナリーを含む、3社の樽が使われています。 ライカスクはアメリカのウッドウォードリザーブ蒸留所から。そして、日本でいうミズナラと同種とされる、北米産のチンカピンオーク。
過去のイベントで個別の原酒をテイスティングしたこともありますが、ワインはまだ若くこれからと言う印象があったものの、ライのピートは適度なオーク香とスモーキーさ、チンカピンオークはウッディだが複雑な香味があり、限定のシングルカスクなど、リリースによっては若さが目立ち、樽感がうるさいものもしばしばありますが…。
スタンダード品はそれぞれを適度に組み合わせることで、香味に複雑さを与えています。樽の質の良さが原酒の魅力を引き上げ、中でも今回のような複数樽バッティングの加水品からは、充分味わい深いウイスキーがリリースされているのです。




そして注目すべきポイントがもう一つ。それは仕込み水です。
昨今、味わい深いオールドボトルに対して、現行品は味が軽い、という話はよく聞きます。その要因としては、麦芽品種の違い、製法の違い、樽の違いなどが考えられるわけですが。もう一つ、仕込み水も確実に変わっていると思われます。
例えばアイラ島などは、上下水道の整備が明らかに進んでいませんでした。結果、蛇口をひねれば地層を通った茶色い水が出る、なんて話も普通にあるわけですが、その水で仕込み、加水したモルトと、今の技術でフィルタリングした浄水で仕込んだモルトは、同じものになるでしょうか。
間違いなく仕上がりは異なるとともに、前者のほうが香味が複雑になることは容易に想像できます。
ラッセイ蒸留所では、上述の通り、敷地内で汲み上げられた、伏流水をウイスキーの発酵から蒸留、加水まで、製造行程ほぼ全てで使用しています。
ボトルデザインに、化石を含む地層が採用されているのは、まさにこの仕込み水を意識してのこと。だからでしょうか。アイルオブラッセイ R-01.1は、他の現行品のモルトにはない地味深さ、味わい深さがあり、それを複数の樽感でさらに複雑な仕上がりとしている。
実は樽や製造技術だけでもなく、今となっては特別な仕込み水が、縁の下の力持ちとなっているのではないかと感じます。

※アイルオブラッセイ R-01.1を飲んでいてイメージしたグレンイラ5年。1980年代にカリラ蒸留所を所有していたバロックレイド社リリースのバッテッドモルトであり、カリラを軸にブレンドされている。今回のリリースを飲んだ時に真っ先に思い浮かんだボトル。内陸っぽさと島っぽさ、若いが地味深い味わいに共通点を感じる。
なおこの蒸留所、蒸留設備だけでなく、レストラン、そして宿泊施設が整備されており、公式サイトでも美しい設備を見ることが出来ますが、実はつい先日まで日本側の代理店となっている株式会社都光が訪問されていて、その関係者筆頭の伊藤氏(@likaman_ito)が現地の写真をSNS で公開されています。
まったく、羨ましい限りです。けしからんし羨ましいので、マジで1回連れて行ってください、社長(笑)!!


コメント
コメント一覧 (2)
コメントありがとうございます。
ワイナリーの情報は、蒸留所マネージャーを招いて実施されたセミナーで説明があったものです。実は…という前置きで説明されていて、公式サイトでも公開されていないため省略しましたが、一つはボルドー左岸のシャトー・マルゴーになります。