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THE JAPANESE TRAIL No,2 
AMAHAGAN 
WORLD BLENDED 
BLENDED WHISKY 
For The Whisky Crew 
700ml 58% 

評価:★★★★★★(6)

香り:エステリーで華やかなトップノート。しっかりと強い香り立ちで、乾いた麦芽や砂糖菓子、パイナップルキャンディ。スワリングすると林檎の蜜を思わせる甘み、かすかにペパーミントを思わせる清涼感も感じられる。

味:香り同様にモルティーで厚みのある強い口当たり。熟した林檎やパイナップルを思わせる蜜っぽい甘味にシリアルのような香ばしさ、ほろ苦さが混じる。
余韻は微かなピートの苦味を感じた後で、黄桃のシロップ漬けを思わせる黄色系の甘みや、ケミカルなフルーティーさが戻り香に感じられ、複雑で芳醇、長く続く。

若い原酒に由来する力強い麦芽風味、熟成した原酒の蜜のような甘みとコク、艶やかなフルーティーさと微かなピート。従来のアマハガンに感じられるフレーバーをさらに上質にしたような構成。
加水しても傾向は変わらず、香りはオーキーな華やかさと微かにケミカルなアロマが開く。味わいは口当たりがマイルドになる一方で各フレーバーは薄まらず、それぞれが“伸び”て混ざりあい、甘く、複雑で、フルーティーで、一層豊かな味わいとなる。まさに“ブレンドの妙”を楽しめる。

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Whisk-eが運営する準会員制酒販サイト、The Whisky Crew 向けにリリースされたアマハガン。このシリーズは、昨今創業ラッシュであるクラフトジャパニーズウイスキーの成長と現在、その軌跡を知ってもらうべく、同社が蒸溜所を訪問し、その個性や蒸溜所の顔とも言えるリリースを行うものです。

第一弾は鹿児島の嘉之助蒸溜所から、同蒸溜所のハウススタイルを形成する重要な1ピースである、メローコヅル樽で熟成したシングルモルトをリリース。その完成度と個性豊かな味わいから愛好家の話題にもなったところ。
続く第二弾は滋賀県の長濱蒸溜所から、今回の紹介するアマハガン。モルトではなくブレンデッドウイスキーのリリースです。

なぜ第二弾がモルトではなくブレンデッドなのかというと、ウィスクイー側に確認したところ、このAMHAGANブランドが長濱蒸溜所の代表的ブランドだからとのこと。
確かに、長濱蒸溜所は今回のリリースが行われた2022年9月時点で普及品のシングルモルト(限定のシングルカスクを除く)をリリースしておらず、そのリリースに向けたスキルを磨くべく、2018年から輸入原酒と長濱蒸溜所のモルト原酒をバッティングした、AMAHAGANをリリースしてきました。
これが市場で評価され、スティルマンだった屋久さんが専従ブレンダーとなるなど嬉しい計算外もあり、その後はWWAなどの国際コンペでの受賞はもとより愛好家からの需要も受けて様々なリリースが行われた結果、長濱蒸溜所のもう一つの顔ともなっていたのです。

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今回のリリースは、その長濱蒸溜所においてThe Whisky Crew 担当者がブレンドを監修。
AMAHAGANらしさとも言える個性的なフルーティーさを、共通する5〜10年熟成の輸入原酒で構成しつつ、20年熟成オーバーのグレーンや1993年蒸留の長期熟成スコッチモルトウイスキーで複雑さ、さらに好ましいフルーティーさを付与した豪華なブレンドとなっています。

また、写真に映る構成原酒のうち、非常に色の濃いのが長濱蒸溜所のシェリーオクタブ樽の3年熟成原酒。その隣が、同蒸溜所ピーテッドモルトをアイラクオーターカスクで熟した3年熟成原酒。
この濃厚なシェリー感がブレンド全体に厚みと甘み、比率は少なそうですがピーテッド原酒が全体のフレーバーの中にほのかなスモーキーさをアクセントとして加えており、これが全体の高身のベクトルに対して逆の位置付けとなることで、さながら香水のレシピにおける臭い匂いの役割の如く、さらなる複雑さを形成していると感じられます。

以上のように甘みと複雑さを足し算しつつ、逆方向のフレーバーも少量使い、樽感の濃淡、さらに3年から28年という幅広い熟成年数の原酒も使うことで、フレッシュなフレーバーと熟成感ある質感も加える。ワールドブレンデッドでNAS仕様という縛りのない条件であるからこその構成が、今回のウイスキーの最大の特徴であるわけですが、それだけブレンダーに求められるものは多くなります。
THE WHISKY CREWはブランドアドバイザーに元サントリーのマスターブレンダー輿水精一氏を迎えており、今回のブレンドに関しても何らか関わってるとしたら…真実は不明ですが、非常に面白いウイスキーであると言えそうです。

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しかしそれだけ原酒や香味の幅が広いウイスキーということもある一方で、バランスがピーキーというか、飲む時のコンディションの影響が大きいと感じるのも、このウイスキーの難しさと言えます。
例えばグラスチョイス。小さめのグラスを使うと熟成原酒由来の甘味とフルーティーさが開き切らず、若い原酒由来の乾いた麦芽やスパイシーな香味が強くなる。ワイングラスのように大きなグラスを使うと、アルコール感が強くなるだけでなく、それぞれの香味がばらけるようにも。。。
いや、テイスティングが難しく、あれこれ試してるうちにほとんど飲み切って、リリースからは1ヶ月以上経過しちゃいました(汗)。

なお、いろいろ試して一番マッチしていると感じたのは、国際規格テイスティンググラスでした。このサイズのものが一番バランスよく原酒の良い部分を引き出しつつ、アルコール感は程々で、香味もばらけず複雑で奥行きある味わいを感じることができました。使ってるお店も多いですし、入手しやすいグラスというのもありがたいですね。
誰がどうやっても、ある程度美味しいものが提供されるのがオフィシャルスタンダードであると言える一方で、飲み手側でこうした調整をする余地が残されているのも、TWCという愛好家の会員組織向けリリースらしさなのかなと思うところ。

ジャパニーズトレイルシリーズは先日第三弾に桜尾蒸溜所から2種類の個性的なシングルカスクがリリースされ、さらに話題となりました。
今後のリリースも楽しみにしています。

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