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GLEN MORAY 
SINGLE HIGHLAND PURE MALT WHISKY 
1980’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(5ー6)

香り:乾いた麦芽や干藁、収穫の終わった田んぼと秋の空を連想させるようなプレーンでモルティーな香り立ち。ほんのりと柑橘感もあるが、全体的にシャープでよく言えばイキイキとしており、若さに通じる要素も残っている。

味:軽やかな口当たり、香り同様に乾いた麦芽と品の良い甘みと仄かな土っぽさを伴うプレーンなモルティーさ。奥行きは控えめ、多少ピリピリとした刺激があり、すっきりとドライな余韻に繋がる。

やや単調な構成だが、ラベルの雰囲気そのままに、オールドスコッチモルトに共通する牧歌的雰囲気を感じさせる味わい。現行のスコッチモルトに比べて遥かに地味な構成だが、それが良い。
なお右上に映る同時期流通の12年とは同系統の味わいだが、12年に比べ樽感が淡く、コクやフルーティーさも控えめであることから、5〜8年程度の若い原酒が主体と思われる。


グレンマレイのオフィシャルで、あまり見かけない(たまにオークションで見かける程度)珍しいトールボトル。同ブランドは1970年代〜1980年代あたりで5年、8年、10年表記と、若いエイジングのトールボトルがリリースされており、その中でも5年表記が80年代後半あたりには見かけなくなるので、後継ボトルではないかと思われます。

スコッチウイスキーのトレンドは、デラックス表記から12年以上の熟成年数表記で高級感を出す、現代に通じるブランド戦略へとシフトしていた時期。5年表記は1970年代以前こそスタンダードでしたが、足枷にしかならない表記なら外してNAS仕様にしてしまえと。実際、現在リリースされいているグレンマレイもNASのクラシック、12年、18年という感じで、その意味ではクラシックの先祖と言えるボトルであり。
また、流通量の多い同時期の12年表記に比べて樽感が控えめ、プレーンで若さのある当時の麦芽風を味わえるため、テイスティングする価値のあるボトルだと感じています。

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(1970年代流通のグレンマレイ5年。グレンリベット表記がなんともソソる。)

個人的にこうしたオールドボトルの良さは、味もさることながらラベルにあると考えています。
現行品のスコッチモルト、特にスペイサイドモルトの系統は、雑味を減らし、軽やかな仕上がりのものが多くなっています。そこに最近のトレンドであるバーボン樽と組み合わせて、華やかでフルーティーな構成にする、洗練されたというか、都会的と言えるような仕上がりが多く見られます。

その過程で、今回のモルトに感じられたような麦芽風味、土っぽさ、どこか田舎くさく郷愁を感じる要素も削ぎ落とされ、現行品のモルトでは多くの蒸留所で失われた要素となっているわけですが。
ラベルについても、古くは今回のボトルにあるような蒸留所やスコットランドの風景画を用いるなど、蒸留所ごとの個性を現地と結びつけるのがトレンドの一つだったところ。最近は視認性を重視してスタイリッシュに、それこそカジュアルで都会的なデザインのものが多くなっており、香味同様にいい意味での田舎臭さ、言わば風情が失われているようにも感じられるのです。

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画像引用:https://www.thespiritsbusiness.com/2022/07/glenmorangie-unveils-playful-redesign/

銘柄は違いますが、先日発表されたグレンモーレンジのラベルチェンジは、その代表的な例でした。これはこれでさまざまな場所でウイスキーが飲まれるようになった現代では、イベント会場やクラブ、レストランなど明るい雰囲気のお店にもマッチするでしょうし、グレンモーレンジを知らない人でもまず目を引くデザインだと言えます。

こういうのもアリではあるのですが、オーセンティックBARの雰囲気にこのデザインのモーレンジはどうなんだろうとか、スコッチモルトのラベルはもっと風情あるじゃ…なんて、原理主義的な考えが沸々と湧いてきてしまうのです。