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NAGAHAMA DISTILLERY  
AMAHAGAN ✖️ まどろみバーメイド 
2nd 伊吹騎帆 World Malt Whisky 47%
3rd 陽乃崎日代子 World Spirtis 43%


昨日に続いて、今日もAMAHAGANです。
6月にリリースされた、まどろみバーメイドとのコラボボトル2種。まどろみバーメイドについては、今の時点では読んだことがある人には説明不要でしょうし、読まれたことがない方には、カクテルメインのバーテンダー漫画(女性なのでバーメイド)とだけ、理解して次に進んでもらえれば良いかなと。
そう、このブログの主役はお酒。サンプル頂いてテイスティングしてみたら、正統派&自由奔放でなかなか面白い構成だったのです。

漫画やアニメとのコラボは賛否両論あるモノですが、大前提として確立したブレンド技術の上で、それでいてジャパニーズウイスキーとして売るようなことさえしなければ、これもまた日本だからこそ作ることが出来る新しいお酒の形なのかなと考えています。(今やどちらもCOOL JAPANですし。)
今年2月、先立って第1弾としてリリースされたまどろみバーメイドコラボウイスキー「月川雪」も味的に悪くなく、何よりこのシリーズには共通してリリースとラベル(登場人物)に関連するレシピや背景情報があり、そこが納得感にも繋がっているのです。

今日はその辺りも踏まえて各リリースを紹介しつつ、第2弾と第3弾が同時に出た意図として、原作でも度々テーマとなるアレンジ(ツイスト)にも触れていきたいと思います。

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(コラボシリーズ第1弾としてリリースされた、主人公・月川雪をラベルに採用したAMAHAGAN。ワイン樽原酒2種類を使い、ふくよかに仕上げられたブレンデッドモルト。)

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AMAHAGAN✖️まどろみバーメイド
第2弾 伊吹騎帆 World Malt Whisky
700ml 47%


冒頭、2種類のリリースを正統派&自由奔放と書きましたが、この第2弾は正統派路線のブレンデッドモルトウイスキー。
AMAHAGANらしいケミカルなフルーティーさと乾いた麦芽風味、そこにシェリー樽由来のコクが繋ぎになって、決して比率は多くないでしょうが全体のバランスを整えています。

余韻はクリアでモルティーな香ばしさと甘みが残る感じですが、従来のアマハガンのPBだと黄色系のフルーツ、パイナップルといった感じの味わいが強調されるものが多いところ、これはほのかにビターなピートのアクセントと、モルティーな感じが強調されているように思います。
ひょっとすると、いくつかの原酒はこれまでのAMAHAGANに使われているものとは違う原酒を用いているのかもしれません。

ラベルに描かれているのは、まどろみバーメイドの主要登場人物3人のうちの1人、伊吹騎帆はホテルのBARで働くしっかりキッチリタイプのバーテンダー。公式コメントでは、面倒見の良い姉御肌の性格で、包み込むような優しさとシェリー樽の個性が...と解説されていますが、個人的には第1弾の月川雪の時のようなワイン樽原酒ではなく、後述する第3弾の陽乃崎日代子のスピリッツブレンドでもなく、あえて王道的なスコッチスタイルの樽構成、原酒構成で造るところに、その雰囲気、キャラクターが現れているようにも感じています。
そして根っからのオーセンティックBAR & ウイスキー愛好家の自分にとっては、この構成こそが逆に心落ち着く味わいでもあったりします。

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AMAHAGAN✖️まどろみバーメイド
第3弾 陽乃崎日代子 World Spirits 
700ml 43%


続いて第3弾が自由奔放なブレンドスピリッツ、陽乃崎日代子です。
なぜ香味の印象が自由奔放なのかというと、表記でSpiritsとあるように、これはAMAHAGANに使われる輸入原酒を含むウイスキーに、沖縄・新里酒造の熟成泡盛ベースのリキュール(ステンレスタンク3年の後、アメリカンオーク樽で7年以上熟成した泡盛に還元水飴を添加してリキュールとしたもの)をブレンドした、ウイスキーという枠に囚われていないお酒であるためです。

香りからして通常のAMAHAGANとは明らかに異なる構成。濃縮したオーキーさ、華やかさと泡盛系の個性を感じて、ウイスキーを思ってノージングすると「!?」となることは間違いないのですが、味わいはさらに奔放。
プレーンなモルティーさ。そこにのっぺりとした黄色系シロップの甘さと泡盛の癖、オーク感が混ざり、口当たりや質感はリキュールに近いというもの。
以前、新里酒造やヘリオス酒造がリリースした泡盛とウイスキー原酒のブレンドはもっと泡盛していて、これはなんか泡盛だねって素直に思えたのですが、今回のは言わばカクテルの原液であり、これをアマハガンブランドで作ってしまう自由さ、味わいからくる奔放さ、まさに自由奔放なお酒であるのです。

なお、これが原作にどう絡むかというと、同著の主要登場人物の1人、陽乃崎日代子は、パフォーマンスを行いながらカクテルを作るフレアバーテンダーを職業としており、公式コメントでは天真爛漫な性格と既存の枠に当てはまらないアイディア等からという位置付けがされています。
このレシピと登場人物の掛け合わせに違和感はないのですが、既存の枠に当てはまらないお酒のアレンジと言えば、主人公である月川雪の代名詞「ツイスト」であるところ。
陽乃崎日代子は設定上名家の出身で、そのしがらみから飛び出して自分の生き方を模索していたり。カクテルの技術は原作中でダメ出しされるところはあるものの、あざとく自分の個性をアピールするところなんかも、ああこのレシピはコイツだわと思えるポイントなのかもしれません。

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さて、最後に今回のリリースが2種類同時に出た狙いについて。
ことの発端は長濱蒸溜所社長が、新里酒造から泡盛を調達したところから始まります。コンセプトが決まって漫画著者・早川パオ氏にラベルを依頼したものの、それ以上にブレンドで苦労することになったのが「アレンジ」でした。

今回のリリース2種は、それぞれを混ぜてユーザーが「アレンジ」を楽しめるようにブレンドレシピが調整されています。
上の画像のようにラベルまたは箱を2つ合わせると、伊吹騎帆がサーブしたブレンデッドモルトに、陽乃崎日代子がワールドスピリッツを加えている構図になるわけですが、著者に長濱蒸溜所から出たお題は「単体でも成立し、混ぜても飲めることが一目でわかるもの」というざっくりしたもので。
その後、長濱蒸溜所の伊藤社長曰く「想像以上の作品が出てきて焦った。めちゃくちゃ気合い入ってた」というのが今回のラベル画像となります。で、泡盛とウイスキーです。しかも異なる2種類のレシピとのブレンドを想定するのですから、屋久さん、大変だったろうなぁ…(遠い目

ただ、この2種に感じた口当たりから余韻までの変化を形で表すと、第2弾が凸、第3弾が凹という感じで。案外喧嘩しないんじゃないかなとは思っていました。
実際ブレンドしてみると、第3弾のワールドスピリッツにあったのっぺりとした甘さが、第2弾にあるシャープな麦感とフルーティーさに合わさってくる。泡盛リキュールにあったであろう濃いめのオークフレーバーや癖もアクセント程度となって、これは確かに面白いかもしれないなと。原作を思い起こしつつ、2粒で3度美味しい、そんな味わいを素直に楽しませてもらいました。


余談:新里酒造がなぜ大量の泡盛リキュールを持っていたかというと、以前リリースした新里ウイスキー(泡盛と輸入原酒のブレンド)用に仕込んでいたものと思われます。
このリリース、コロナの影響もあったと思いますが、自分の記憶では初動以降はあまり話題にならなかったというか、店頭で見かけなかった印象があり。。。
ウイスキーは熱意があれば作ることができる。しかし問題は売ることが出来るかだ。という言葉が思い起こされました。
アレンジも大事ですが、それはやはり守破離の守。カクテル同様に基本となる技術があって、そしてそれが対外的に評価されてから、ですね。