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ASAKA DISTILLERY 
YAMAZAKURA 
Single Malt Japanese Whisky 
2022 Edition 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかにピーティーでビター、ほのかに焦げ感を伴う麦芽香。シトラスやグレープフルーツを思わせるシャープな柑橘香に、杏酒のような角の取れた酸も混じるモルティーなアロマ。時間経過で土壁のような、古典的スコッチに近い香りも開いてくる。

味:麦芽の甘みから香り同様にピーティーなほろ苦さ、ドライアプリコットや柑橘に、少しこもったような特徴的な酸味のある柔らかい口当たり。
徐々にスモーキーで、乾いた印象のあるウッディネス。余韻はややドライだが、ピートフレーバーと樽由来のウッディさがしっかりと長く続くリッチなフィニッシュ。

開封直後は樽感とピート、麦芽風味にちぐはぐなところがあり、若さが目立っていた印象もあったが、開封後数日単位の瓶内変化で上述のフレーバーがまとまってきた。何より飲んでいるとまた飲んでみようと思える後ひく要素、開いてくる個性があり、構成するノンピートとピーテッド原酒に将来性、伸び代が感じられる。少なくとも、この個性は国内では安積蒸留所にしかない。
さながら今年の夏の大会に出てきた2年生、来年のドラフト候補となる注目選手。

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安積蒸溜所(あづみじゃないよ、あさかだよ)がリリースする、複数樽バッティング、加水調整によるシングルモルト。
これまで、同蒸溜所からのリリースは、安積ファースト(ノンピート)、安積ファースト・ピーテッドという形で、ノンピートか、ピーテッドかという1か0かのリリース形態でした。

今年1月、新年のご挨拶を兼ねて笹の川酒造の社長以下と情報交換を行った際「今年は安積として初めて自社原酒のノンピートとピーテッドタイプをバッティングした、バランス寄りのシングルモルトをリリースしようと思う」と計画を話されており、それがまさに今回の1本ということだったわけです。
詳細なレシピは聞いていませんが、飲んだ印象ではバーボン樽100%で、原酒はピート4割前後、ノンピート6割前後といったところでしょうか。比較的ピーティーでありながら、麦芽の甘みや後述する個性といった、安積らしさも感じられる、良い塩梅のレシピだと思います。

ただ、開封直後は香味がまとまりきれてない印象があり、レビュー時期を1ヶ月ほどずらしました。(さぼってたわけじゃないんだからね!)
本作のリリースは5月下旬。年始の段階で構想でしたから、そこから選定、ブレンド、マリッジ、流通となると、マリッジ期間が充分取れてなかったのかもしれません。あるいは今回使われたのは熟成4年前後の若い原酒ですから、原酒同士の主張が強く、まとまるまでに時間がかかっている可能性はあります。
何れにせよ、このリリースは開封後、日に日に安積らしさ、良いところが感じられるようになり、その変化を見るのも楽しい。レビューの通りリリースとしても蒸留所としても、将来性を感じられる1本となっています。

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(2019年にリリースされた安積ファースト・右から、ピーテッド・中央、そして今回の2022Edition・左。)

さて、このブログを読まれている皆様には「またか」という記載になりますが、安積蒸留所の特徴は、なんといっても酸味です。

酸味と言っても、レモンのようにフレッシュな酸味ではなく、熟した柑橘のような、梅酒や杏酒のような、あるいはお漬物にあるような、角が取れてこもったような酸味と言いますか、他の日本のクラフト蒸留所にはない香味が個性となっています。
これがノンピートの場合は全面にあって、どこか純米酒を思わせるような要素に繋がり、ピーテッドの場合は、まるでヨード感を抜いたラフロイグのような、そんなフレーバーを形成するのです。

なぜ独特の個性が出てくるのか、正直なところそれはわかりません。
ただ、同蒸留所は2019年に以下の写真の通り発酵層をステンレスから木桶に交換しており、木桶発酵層で仕込まれた原酒飲んでみると、今ある個性は失われておらず。むしろそれらを補うような麦芽の甘みといくつかのフレーバー、そして乳酸系の酸が加わって、より複雑で厚みのある味わいへと進化しているように感じられました。
つまり発酵槽が要因ではなかった訳ですが、設備のアップデートやノウハウの蓄積による原酒の進化も楽しみな要素です。

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安積蒸留所は、現在数多くあるクラフト再稼働・新興蒸留所の中ではリリースが話題になることがそこまで多くありません。それこそ、2016〜2017年稼働組の中では地味な方と言えます。
まあ広報が弱いのは、この手のローカルメーカーあるあるの一つ。ですが、実力は本物です。個人的に、現時点での評価として日本のクラフト蒸留所で5指に入ると感じています。

実際、先日WWA2021でのワールドベスト受賞という評価に加えて、愛好家の間でも安積のモルトって美味しいよねという声を聞くことが増えてきました。昨日夜のスペース放送でも、1万円以内で買いなウイスキーを話ていた時、安積の名前が出たのは嬉しい驚きでした。
そうなんです、特に5年以下のモルトで、ここまで飲ませる蒸留所ってなかなかありません。
同蒸留所の創業1〜2年以内の原酒のピークは7〜8年熟成くらいかなと予想するところで、木桶導入後の原酒の成長も考えるとあと5年は評価を待ちたいところですが。その中間地点、マイルストーンとして今回のリリースを含む、これからのリリースを時間をかけて楽しんでもらいたい。
「あさかはいいぞ」と改めて推して、記事の結びとします。

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今日のオマケ:蒸留棟内にあるフリーWi-Fiの張り紙。山崎や余市と言った蒸留所なら見学導線にあっても違和感はないが、安積に張られていることの違和感は、きっと現地に行ったことがある人ならわかるはず(笑)。いや、良いことなんですよ、間違いなく。