ザ ラストピース ブレンデッドモルトのリリースとスペース放送告知(4/1~ 抽選受付)
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ジャパニーズウイスキーボトラーズT&T TOYAMAから、世界初となる国内5箇所のクラフトウイスキー蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキー「THE LAST PIECE」がリリースされます。
THE LAST PIECE
BLENDED MALT WHISKY
Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)
Blender: TAKAHIKO INAGAKI, TADAAKI SHIMONO, KURIRIN
Bottled By T&T TOYAMA
発売時期:2022年4月19日(火)予定
※公式ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000031708.html
※リリース記念スペース放送
3月28日(月)21:00〜
配信URL:https://twitter.com/i/spaces/1lPKqmZeDanKb
スピーカー:T&T TOYAMA(稲垣貴彦、下野孔明)、くりりん
参考資料:本記事後半に記載
・江井ヶ嶋蒸溜所
・桜尾蒸溜所
・三郎丸蒸留所
・長濱蒸溜所
・非公開の国産蒸留所
世界初となる計5蒸留所の原酒を用いた、ブレンデッドモルト ジャパニーズウイスキーです。
また、これらの原酒に国内で追加熟成したスコッチモルトを加えた、ワールドブレンドも同時にリリースされます。販売は若鶴酒造のALCで、抽選販売(4月1日12:30受付開始、クイズ有り)を中心に行われる予定です。


※3月25日に行なわれた記者会見風景。ニュース動画はこちら
公式発表にもありますように、くりりんがブレンダーの一員として参加させていただきました。(これまで同様に、監修料や販売にかかる利益等報酬は受け取っておりません。)
計画自体は1年以上前からT&Tの2名を中心に動いており、それこそ交換する原酒の選定などにも関わらせて頂いたところです。
ブレンダーとしての参加は、自分のテイスティング能力とこれまでのリリース実績等を評価いただいたとのことですが、本当に凄い経験をさせて貰いました。
リリースにあたっては、タイトルにもあるようにT&T TOYAMAの2名と当方でスペース放送を実施して、改めて企画の説明や狙い、そして裏話等をさせて頂きます。
例えば、ブランド名であるTHE LAST PIECEの由来にもなっている、ブレンドのトライ&エラーです。
今回の原酒は全て光るものがあり、今後の成長も見込めるものでした。しかしそれはあくまでシングルモルト、シングルカスクとしてリリースする場合であり、今回のようにブレンドするとなると、豊かな個性は必ずしもプラスにならない場合があります。
しかもジャパニーズエディションの構成原酒は、全て3年熟成でバーボン樽原酒です。シェリー樽の濃厚な香味でバランスをとるような事も出来ません。かといって、ピートを強くしすぎると他の原酒の個性が死んでしまう。とにかくバランスをとるのが難しかったですね。

(ブレンド風景。ジャパニーズ、ワールドとも日本のクラフト蒸留所のポテンシャルを感じる事ができるレシピに仕上がった。)
THE LAST PIECEは、各蒸留所の個性をパズルのピースに例え、パズルが1枚の絵画となる瞬間、全く新しい魅力をもったウイスキーが誕生することをイメージしています。
各蒸留所の原酒の個性、混ぜ合わせたときの表情、ブレンドにおける最後の1ピースはどこにあるのか…。リリースを楽しみにしてもらえるようなエピソードを、スペースやブログ記事を通じて紹介していきたいと思います。
なお、本日3月25日はリリースに向けての記者発表が行われたわけですが。3月26日、27日のウイスキーフェスティバルでは、ブレンド直後のサンプルをT&T TOYAMAブースで同プレミアム会員のみに試飲提供するそうです。
気になる方は、ピンバッチをお忘れなく!

※以下、スペース放送用参考資料※
THE LAST PIECE の紹介と、構成原酒を提供頂いた蒸留所に関する所感を以下の通りまとめます。
共通しているのが、若い原酒ながら熟成年数以上にまとまりがあり、どれもレベルが高いということです。
「またまた、忖度してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、厳しめに見たとしても、どの蒸溜所の原酒もスコッチウイスキーで言うところの10~15年熟成程度のクオリティはあるものと感じています。
放送では、それぞれの原酒に感じた印象、ブレンドに使ってみた際の変化等も伺ってみたいと思います。そのため、原酒調達にあたって各蒸留所を回られたT&T TOYAMAの2人に私が色々質問をして、話を聞いていくような流れをイメージしています。
■THE LAST PIECEについて
ブランドネーミングの由来は上記の通りですが、少し異なる視点の話を記載します。
2021年にジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を始めたT&T TOYAMAは、日本のウイスキー産業においてハブとなる存在を目指すという目標を持っています。
ジャパニーズウイスキー約100年の歴史(山崎の創業を起点とした場合)のなかで、日本には作り手がおり、蒸留所があり、それをリリースする酒販店も充実しています。しかし、スコットランドのように各蒸留所と繋がりのあるブレンドメーカー、ボトラーズメーカーが存在せず、また法律的な制限もあって、それらは非常に縦割り的で、組織を越えた横の繋がりは殆どありません。
これまでの時代であれば大手3社を中心に様々なウイスキーがリリースされ、少数のクラフトメーカーが尖ったリリースで愛好家を賑わす、そんなビジネスモデルが成立したところ。しかし今やそのウイスキーメーカーの数は創業予定のものを含めると60社を超える状況です。
如何に複雑な香味を持つウイスキーと言えど、そこまで多様性のあるものは出来ませんし、商品の製造だけでなく販売、広報にかかるコストは馬鹿になりません。
共存共栄を図って日本のウイスキー産業を更に大きなものとしていくためには、各社の間を繋ぎ、リリースを通じたPRも行う”ハブとなるメーカー”、つまりブレンドメーカーやボトラーズメーカーが業界におけるラストピースとなっています。
T&T TOYAMAには4月上旬完成予定の熟成庫があり、ここで原酒の熟成は行われていきます。
そして各クラフト蒸留所と連携し、交換、調達した熟成原酒を用いたリリースの第一歩が、「THE LAST PIECE」。彼らが目指す日本のウイスキー産業に込められた想いが結実した、ブレンデッドウイスキーであると言えるのです。

Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
各クラフト蒸留所、3年以上熟成原酒をバッティング。

World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)
各クラフト蒸留所の原酒を構成比率で半分以上使用。スコッチモルトは日本国内で追熟したものをブレンド。
■ラベルデザインについて

ラベルデザインは、各蒸留所の個性がつながり、調和することをイメージして、日本の伝統工芸の一つである組子(くみこ)をモチーフに使用しています。
また、その組子の配置は細胞やDNAをイメージさせるようでもあり、これもまた繋がりと、そしてその繋がりが増えていくことで、新しい日本のウイスキーを形成することも意味として込められているそうです。
最初はパズルのピースでラベル案を作ったんですが、気がついたらめちゃくちゃスタイリッシュでカッコ良くなってました。やはりプロの技術は凄いですね。
組子は様々なデザインがあるので、今後リリースが続く場合はラベルは色違いだけでなく、異なる組子のデザインを用いていくそうです。
■構成原酒と蒸留所について

①江井ヶ嶋蒸溜所
蒸留時期:2018年6月
度数:62.8%
系統:ライトリーピーテッド
樽:バーボンバレル
軽やかな麦芽風味にピリッとした舌への刺激、柑橘系のフルーティーさ、オークフレーバー、そしてじわじわと土っぽくピーティーな余韻。
同蒸留所の特徴として、ヘビーでフレーバーの力強い原酒とは対極にある、ライトで柔らかく、それでいて適度なコクのある原酒という印象。かつてはコシのないペラくて雑味の強い蒸留所という印象が、こうして単品で飲んでみるとその変化に改めて驚かされました。
先日リリースされた、三郎丸蒸留所とのコラボリリースFAR EAST OF PEATでも同様の役回りでしたが、今回のブレンドにおいても全体の繋ぎ、底支えとしていい仕事をしていると思います。
②桜尾蒸溜所
蒸留時期:2018年8月
度数:60.8%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル
ブレンドに向けてテイスティングをした際、いい意味で一番驚きがあったのがこの原酒でした。
個人的に桜尾蒸留所の原酒は、例えるならスコットランドのグレンマレイのように、プレーンで軽やか、しかし樽感を受け止めてフルーティーに仕上がる近年のスペイサイドモルトのようだと感じています。正直、もっと評価されていい蒸留所ですね。
今回の原酒はしっかりとオーキーなアロマ。軽やかでフルーティーかつナッティーな広がり。余韻がウッディでドライ寄りでもあったので、使う量には注意しなければなりませんでしたが、ジャパニーズ、ワールドともフルーティーな香味を形成する役割を担っています。
③三郎丸蒸留所
蒸留時期:2018年7月、8月
度数:63.1%、62.3%
系統:ヘビーピーテッド
樽:バーボンバレル
今回、三郎丸からは2種類の原酒が用意されていました。
どちらも三郎丸らしくどっしりとした重みのあるフレーバー構成は共通で、
63.1%のほうはモルティーで香ばしく、そして焦げたような強いスモーキーさ。
62.3%のほうはオイリーで微かにハーバル、スモーキーさの中に癖を残したような構成。
ピートフレーバーは前者のほうが素直で、一層際立っているのですが、今回のブレンドでは、後者62.3%の原酒をどう使いこなすかがポイントだったように思います。
三郎丸の原酒はとにかく強いので、使いすぎると全てのフレーバーを圧殺してしまいます。しかし、大黒柱となる存在が無いとブレンドは成り立たず、それぞれの個性が分解してしまいます。
いかにしてバランスをとっていくか…造り手に似てじゃじゃ馬です(笑)。

④長濱蒸溜所
蒸溜時期:2018年7月
度数:59.9%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル
長濱蒸溜所の個性がしっかり出ていると言える原酒です。
香りはモルティーで微かにモロミの香り、穏やかな酸味とオーク香。味わいも柔らかくコクがある麦芽風味を主体として、余韻はほろ苦く軽い香ばしさが混じる。
バーボンバレル特有の華やかさはまだそれほど強くないため、5蒸留所の原酒の中では最も中立的なキャラクターと言えるかもしれません。まさに各蒸留所の繋ぎ役ですね。
今回はバーボン樽原酒ですが、くりりんは個人的に別リリース関連でワイン樽やシェリー樽原酒を使ったところ、どれも非常にいい仕事をしていました。
⑤非公開の国産蒸留所X
蒸留時期:2018年
度数:非公開
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル
蒸留所側の希望により、完全非公開となります。私も一切コメントできません。
ただ、この蒸留所の原酒なくして、今回のブレンドレシピは成り立ちませんでした。
蒸留所の個性としてはジャパニーズ、ワールド、どちらのブレンドからでも感じることが出来ると思います。テイスティングに当たっては、各蒸留所の個性を紐解きつつ、どこの蒸留所かを予想しながら楽しんで貰えたらと思います。
⑥スコッチモルト各種
熟成年数:非公開
系統:ノンピート、ピーテッド
樽:シェリー樽、バーボン樽、ウイスキー樽
ワールド仕様のレシピに使われた、輸入スコッチ原酒です。(同仕様では、構成比率51%以上がジャパニーズ原酒です。)
国内で追加熟成された原酒が用いられ、かなりこなれているもの、日本的な個性・樽感が付与されているものがあり、ジャパニーズという枠を超えて可能性を感じるものでした。
今回のリリースでは、各蒸留所の個性と将来性を感じられるリリースがジャパニーズだとすれば、ワールドは日本だからこそ作ることが出来るウイスキーとしての可能性を感じられると思います。

最後に、本リリースに関わったブレンダーの一人としての感想を。
日本のウイスキーはスコットランドをルーツにしていますが、現代においてはそれを完全に再現するのではなく、蒸留所毎に発酵や蒸留、そして熟成等で工夫し、各地の環境にアジャストして独自の個性を生み出しています。
例えば、温暖な日本においては樽感が強く出るため、基本的には熟成期間を短く設定しなければなりませんが、その分、長期熟成では失われてしまう原酒の個性が強く残ります。
結果、シングルモルトではそうした個性が強みとなり、現在進行形で評価を高めているわけですが。規模の限られるクラフト蒸留所単体で作る事が出来る原酒の種類、香味の幅には限界があります。
T&T TOYAMAが進めている各種プロジェクトは、まさに日本のウイスキー産業の将来を見据えたものと言えるわけです。
ただ…記事中にも書いたとおり、個性豊かなクラフト原酒のブレンドは、想像以上に難しかったですね(笑)。
これはリリースコンセプトというより、自分個人の想いとなりますが、今回のブレンドで表現したかったジャパニーズウイスキー観は「十二単」です。熟成を経たことで得られる重厚なウッディさと個性、これらが重なり合うことで生まれるウイスキーを、雅で艶やかな日本の着物独特の雰囲気に重ねています。
結果、十二単というよりは、単に着物の重ね着のような感じかもしれませんが、それぞれの原酒の個性が色彩となり、重なりあうことでこれまでにない味わいに仕上がったと思います。
最初の1杯は、是非テイスティンググラスでじっくりと、各蒸留所に思いを馳せながら楽しんでいただけたら幸いです。
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