ファーイーストオブピート 3rd Batch 三郎丸×江井ヶ嶋 ブレンデッドモルト 50%

FAR EAST OF PEAT
THIRD BATCH
BLENDED MALT JAPANESE WHISKY
SABUROMARU × EIGASHIMA
Cask type Bourbon Barrel
700ml 50%
評価:★★★★★★(6)
香り:焦げた土と乾草、野焼きの後のような強いスモーキーさと煎餅のような香ばしさ。スワリングするとモルティーな甘み、バニラ、柑橘等のアロマ。奥には林檎を思わせる品の良い甘みもあって、微かにスパイシーな要素も感じられる。
味:香ばしい麦芽風味とピートフレーバーと柑橘感。口当たりはオイリーで厚みがある中に、乾いた麦芽の軽やかな風味が混ざり、香り同様のスモーキーさを鼻腔に感じさせつつ、柔らかい余韻へと繋がる。
三郎丸のヘビーピーテッドモルト(50PPM)と、江井ヶ嶋のライトリーピーテッド(10PPM)、共にバーボン樽熟成のバッティング。
香りでは強く存在感のあるスモーキーさが主体だが、味わいは乾煎りしたような麦芽の香ばしさ、モルティーで厚みのある味わいが第一に感じられる。全体としては三郎丸原酒のフレーバーが主体であるところ、その隙間を補うように江井ヶ嶋モルト由来の要素が感じられ、お互いの個性が共演したブレンデッドモルトである。
加水すると爽やかな柑橘感、グレープフルーツの綿のようなほろ苦さがあり、徐々にスモーキーに変化する。

三郎丸蒸留所が日本各地の蒸留所と原酒を交換し、ブレンドすることでリリースする、ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT」シリーズ。第1弾は長濱蒸溜所との原酒交換で、そして今作第2弾となる3rd Batch と 4th Batchは、兵庫県江井ヶ嶋蒸溜所との原酒交換によって実現したリリースとなります。
リリースにあたっては、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーの提案で関係者によるスペース放送を実施させて頂きました。※当日資料、アーカイブ記事はこちら。
平日の夜でしたが、250名を超える方々にご参加いただき、内容もスペース放送らしく適度なぶっちゃけがあり、そしてそれぞれの蒸留所のウイスキーに対する考え方や、リリースを紐解く内容でもあり…。
司会として関わらせてもらって光栄という以上に、一愛好家としてめちゃくちゃ勉強になる放送でした。
※三郎丸蒸留所 稲垣マネージャー、江井ヶ嶋酒造 中村蒸留所所長、T&T下野代表との対談用参考記事
今回のリリース、そして放送を通じて最も認識を改めたのは、江井ヶ嶋蒸溜所の原酒の変化でした。
三郎丸じゃないんかい、という突っ込みが聞こえてきそうですが。三郎丸についてはもう3~4年前にニューメイクの段階で認識を改めて、これは偉大な蒸溜所に届きうると、別途PBまで企画したところです。
個人的には認識を改める要素は三郎丸にはなく、むしろ今後2018年以降蒸留の原酒が、同蒸留所の評価をさらに高めていくものと確信しています。
一方、江井ヶ嶋蒸溜所については、今更取り繕う気もありませんが、今回のコラボの話を昨年初めて聞いた時は「大丈夫なのか?」くらいに思っていました。
いやだって、江井ヶ嶋蒸留所のこれまでの原酒って正直地ウイスキーそのものというか、雑味が多く厚みがない、良さを感じる要素がまるで無いわけではないものの、それを探し出すのが難しいと言うのが本音のところで・・・。

ただ、構成原酒に加え、カスクサンプルやT&Tのニューメイクもテイスティングし、あれ、江井ヶ嶋良くなったんじゃない?と。
2019年以降は設備が入れ変わってるのでその影響かと思いましたが、どうも今回のリリースに使われた2018年時点から全然違う。
放送を通じて中村所長に確認したところ、造り方の見直し、設備の清掃徹底や保守管理、老朽化した配管などの入れ替えは、中村所長が蒸留所に着任した2016年から行なっていたそうで、成る程そういうことかと、認識を改めるに至ったのです。
個人的な整理ですが
・地ウイスキー = 酒造等がありあわせの設備で造った、特にコンセプトのないもの。
・クラフトウイスキー = こういうウイスキーを造りたいという想いを持って、設備の設計調達や製法の工夫を行ったもの。
であると考えています。
その整理で見るならば、現在の三郎丸蒸留所はまごうことなきクラフトであり、江井ヶ嶋蒸溜所もまた、クラフトウイスキーへ転換したことは間違いないと言えます。

さて、今回のリリースに用いられたものを含めて、三郎丸原酒はどっしりとした厚みのある風味、スモーキーフレーバーが特徴であり、ある意味造り手の若々しさとも言うべき強い主張が個性でもあります。
リニューアル直後、一部旧時代の設備が残った2017年に比べ、マッシュタンが新しくなった2018年蒸留の原酒はネガティブな雑味要素が少なくなり、ピーティーなフレーバーが一層強く感じられるようになりました。
ただ、2019年に比べて2018年はまだ旧世代の残滓とも言うべき針葉樹やオリーブオイルのような若干のオフフレーバーを残しており、また3年熟成時点ではピートフレーバーも荒々しく、単体ではちょっと暴走気味(造り手談)であるところも否めませんでした。

一方、江井ヶ嶋蒸留所の酒質は、元々がライトで厚みがあまりなく、それでいて苦味やえぐみのような、マイナス方向での雑味が全体にかぶさってくるような傾向がありました。
ですが先に書いたように近年蒸溜の原酒やニューメイクを飲んでみると、軽やかな風味はそのままに、以前は厚みが出ず雑味があった中盤から後半にかけては品のいい麦芽風味と柔らかいコクが感じられるのです。
今回のブレンドに用いられた、三郎丸蒸留所と交換したバーボン熟成したものは蜂蜜レモンや和柑橘、そして穏やかなスモーキーフレーバーへと続いていきます。
力強く奔放な三郎丸、柔らかく穏やかな江井ヶ嶋。使われた比率は2:1程度。
凸凹が組み合わさるような、例えるなら、蕎麦打ちで粗挽き粉に更科粉をブレンドして、食感と舌触りを良くするようなイメージでしょうか。
加水することでさらに香味の広がりが生まれ、両蒸留所の個性を味わうことができます。
それは未完成だからこその面白さと将来性であり…。2人の造り手によるクラフトウイスキーの共演を、是非楽しんでほしいですね。



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