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ASAKA DISTILLERY 
YAMAZAKURA 
Aged 4 years 
Distilled 2017
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel #17203 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:アメリカンオーク由来のバニラ香。パイン飴に柑橘のワタ。合わせて東京沢庵を思わせる酸や、ウッディさには檜のような乾いた木材のアロマが混じる、膨らみのある香り立ち。しっかりとした個性を感じさせる。

味:口に含むととろりとした質感から蜂蜜、金柑、じわじわとほろ苦く柑橘のワタ。奥行きはそこまでないが、好ましい要素があり、余韻はオーキーなフルーティーさと缶詰シロップのような黄色い甘みを感じつつ、若干の粉っぽさが舌に残る。嫌な若さはなく、含み香に微かに日本酒のようなフレーバーが面白い。 

安積蒸留所のノンピート&バーボン樽熟成。50%に加水調整されているが、ボディは崩れておらず、蒸留所のスタンダードと言える個性を感じることができる。
少量加水するとさらにフルーティーに。トップノートにある篭ったような酸が引き伸ばされ、パイナップルやみかんの缶詰のシロップを思わせる甘酸っぱさ、そして麦芽由来の軽い香ばしさと好ましい変化がある。約4年熟成だが、最初の飲み頃と言え、今後の成長に加えて7〜8年程度で予想されるピークが楽しみ。

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福島県郡山市、笹の川酒造安積蒸留所が毎年リリースする予定となっている干支ラベルシリーズの2作目。同蒸留所は2016年に創業(再開)しており、その2年目の仕込みの原酒となります。
ラベルには今年の干支である虎と、毎年共通になっていくというウイスキーキャットが描かれている。昨年は牛、来年はウサギ、ちょっとした縁起物ですね。

これまでの安積蒸留所のノンピートモルトは、安積THE FIRST に加え、今作を含めてシングルカスクが4種類ほどリリースされています。
これらは全てバーボン樽原酒であることもあって、実は香味のベクトルは大きく変わりません。最大の特徴とも言えるのが、香味にある個性的な酸であり、樽感が淡いと麦芽風味が主体に、一方でバーボン樽由来の要素が強く混ざり合うと、フルーティーな味わいにつながってきています。

何を当たり前なことをと言われそうですが、一番プレーンだったのはTHE FIRST、逆に今回の虎ラベルは樽感が一番しっかりついているのではないかとも思います。
そのため、過去のリリースと今回のリリースを比較することで、熟成3年から4年にかけて、数ヶ月単位であっても起こっている、言わば成長期のモルトの変化を見ていただくこともできるのではないかと感じています。

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(ラダー社から2021年にリリースされた、同じ2017年蒸留のシングルカスク。こちらの方が麦芽風味がはっきりとして、樽感は控えめというかややドライ寄り。)

安積蒸留所についてはコロナ前は1年に1度、見学をさせて頂いており、当然ニューメイクの変化も現地で見てきました。1年目より2年目、2年目より3年目のほうが個性が際立っており、麦芽の甘みも出ていたのを覚えています。
2020年、2021年と訪問できていませんでしたが、先日ちょっと縁があって2021年仕込みのニューメイクをテイスティングさせてもらったところ、2019年に導入された木桶の効果か、蒸留所の個性はそのままに、麦芽風味の厚みやフルーティーさがニューメイク時点からさらに出ており、蒸留所として確実に進化を遂げていたことが印象深かったですね。

安積蒸留所は、これまで3年熟成以上のリリースだとバーボン樽原酒しかありませんが、今回の干支ラベルで熟成のピークに向けた期待値と、そのポテンシャルを充分感じ取れるのではないかと思います。
一方で、蒸留所としてはそれ以外にシェリー樽、ミズナラ樽、ワイン樽等多くの原酒も仕込んでおり、今後のリリースで個性と樽感がどのように結びついてくるかも楽しみです。中でも、ミズナラ樽との親和性は特に高いのではないかと期待しています。

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余談ですが、先日発生した最大震度6強の地震。蒸留所として人的被害はなかったとのことですが、少なからず設備への影響はあり、また事務所や居住環境についても大きな被害を受けたと聞いております。
日本にいる以上地震の発生は避けて通れませんが、東北に縁のある当方としては、東北地方にだけ集中してしまう現状に、不条理を感じざるを得ません。そうであってもなんで・・・と。

難しい状況の中ではありますが、全国のクラフト蒸留所を見ても、安積蒸留所はいい意味で個性的であり、厚みと膨らみのある若い酒質を作ることができていると感じています。
がんばれと、軽々しく言うのも気が引けるところですが、それでも頑張っていただきたい。引き続き良いウイスキーを作っていただきたい、そう強く願っています。