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KILCHOMAN 
Aged 7 years 
Distilled 2013.8 
Bottled 2021.4 
Cask type 1st fill Bourbon Barrel #623 
Selected by T&T with くりりん 
Exclusively for HARRY'S TAKAOKA 
700ml 57.1% 

評価:★★★★★★★(6-7)(!)

香り:ややドライな香り立ち。フレッシュで強いピートスモークと合わせてシトラスのようなシャープな柑橘感、薬品香のアクセント。奥には煙に燻された黄色系フルーツが潜んでおり、時間経過で前に出てくる。

味:香りに反して口当たりは粘性があり、燻した麦芽やナッツの香ばしさ、ほろ苦さに加え、熟したグレープフルーツやパイナップル等の黄色系の果実感。年数以上の熟成感も感じられる。
余韻は強くスモーキーでピーティー。麦芽の甘みと柑橘感、微かに根菜っぽさ。愛好家がアイラモルトに求めるフルーティーさが湧き上がり、力強く長く続く。

若さを感じさせない仕上がりで、ストレートでも充分楽しめるが、グラスに数滴加水するとフルーティーさがさらに開く。逆にロック、ハイボールは思ったより伸びない。香味にあるシャープな柑橘香、燻した麦芽、黄色系フルーティーさの組み合わせを既存銘柄に例えるなら、序盤はアードベッグで後半はラフロイグのよう。粗削りであるが良い部分が光る、将来有望な若手スポーツ選手に見る未完成故の魅力。エース候補の現在地を確かめて欲しい。

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富山県高岡のBAR HARRY'S TAKAOKA(ハリーズ高岡)向けPB。2017年にウイスキーBARとしてリニューアルした同店の、4周年記念としてボトリングされたものです。
ボトリングは昨年12月頃から調整しており、本当は8月上旬に届くはずが、コロナの混乱で1か月スライド…。同店の周年には間に合いませんでしたが、中身はバッチリ、届いて着即飲してガッツポーズしちゃいました。今回は、そんな記念ボトルの選定に関わらせてもらっただけでなく、公式コメント掲載や、ラベルに名前まで入れて頂きました。

今回のリリースの魅力は、7年半熟成と若いモルトでありながら、若さに直結するフレーバーが目立たず年数以上の熟成感があること。そしてブラインドで出されたら「ラフロイグ10年バーボン樽熟成」と答えてしまいそうな、余韻にかけてのピーティーなフルーティーさにあります。

キルホーマンは、バーボン樽で7~8年熟成させると好ましいフルーティーさが出やすくなる、というのは過去の他のリリースでも感じられており、その認識で言えば、今回のボトルの仕上がりは不思議なものではありません。
ただ、個人的な話をすると、キルホーマンは2019年に話題になった100%アイラ9thリリースで醸成された期待値や、グレンマッスル向けキルホーマンでの経験もあって、「100%アイラこそ正義」と感じてしまっていた自分がおり。。。ノーマル仕様の酒質の成長に注目していなかったため、尚更驚かされたわけです。

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本記事では、今回のボトルの魅力を語る上で、キルホ―マン100%アイラにも少し触れることとします。
100%アイラとノーマルリリースの違いは、麦芽の製麦工程にあります。
100%アイラは蒸留所周辺の農家が生産した麦芽を、キルホーマン蒸溜所でモルティング。生産量は年間全体の25%で、設備の関係かフェノール値も20PPM程度と控え目に設定されています。一方で、今回のリリースを含むノーマルなキルホーマンは、ポートエレン精麦工場産の麦芽を使用し、50PPMというヘビーピート仕様となっています。

ローカルバーレイスペックでフロアモルティングした麦芽を前面に打ち出しているためか、あるいはピートを控えめにしているためか、100%アイラは麦芽風味を意図的に強調してボディを厚くしている印象を受けます。
そうしたフレーバーは、今後の熟成を経ていく上で将来性を感じさせる大事な要素でしたが、全体の完成度、バランスで見たときに、現時点ではそれが暑苦しく過剰に感じられることもあります。

今回のボトルは100%アイラほど麦感やボディはマッシブでなく、ピートが強めでボディが適度に引き締まったスタイリッシュタイプ。昔のCMで例えるなら、ゴリマッチョと細マッチョですね。
また、キルホーマンの製造工程の特色としては発酵時間を非常に長く取っており、かつては70~80時間程度だったところが、現在は最長110時間というデータもあります。そうした造りの変化が由来してか、これまでリリースされてきた2000年代のビンテージに比べて酒質の雑味が控えめで、フルーティーさがさらに洗練されているのです。

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つまり、過剰に麦感や雑味が主張しないからこそ、樽感(オークフレーバー)を上手に着こなし、今回のようなアイラフルーティータイプに仕上がったと。
この原酒が後5年、10年熟成したらさらに素晴らしい原酒になるかと言われると、樽感が強くなりすぎてややアンバランスになってしまうのではないかという懸念もありますが、1st fillバーボン樽ではなくリフィルホグス等を使えば15年、20年という熟成を経た、一層奥行きあるフルーティーな味わいも期待できると言えます。

もはや優劣つけ難い2つの酒質と、それを生み出すキルホーマン蒸留所。
近年、アイラモルトのオフィシャルリリースが増え、安定して様々な銘柄を楽しめるようになりましたが、一方でシングルカスクorカスクストレングスの尖ったジャンルは逆に入手が難しくなりました。愛好家が求める味わいを提供していくという点で、10年後にはアイラモルトのエースとなっている可能性は大いにあります。

以上のように、ウイスキー愛好家にとって魅力ある要素が詰まったキルホーマン蒸留所は、ハリーズ高岡が目指す「ウイスキーの魅力を知り、触れ、楽しむことが出来る場所」というコンセプトにマッチする蒸留所であるとも言え、同店の節目を祝うにピッタリなチョイスだったのではとも思えます。
今後、何やら新しい発表も控えているというハリーズ高岡。北陸のウイスキーシーンを今後も支え、盛り上げていってほしいですね。

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(2017年8月、リニューアルした直後のハリーズ高岡のバックバー。オフィシャルボトルが中心で、現在と比べると実にすっきりとしている。これが数年であんなことになるなんて、この時は思いもしなかった。現在はウイスキーバーとして北陸を代表すると言っても過言ではない。)

なお、なぜ富山在住でもない自分が、ハリーズ高岡の周年記念ボトルに関わっているかと言うと…本BARが4年前にリニューアルした直後、モルトヤマの下野さんの紹介で訪店。以降、富山訪問時(三郎丸訪問時)は必ず来店させてもらい、周年記念の隠し玉を贈らせてもらったり、勝手にラベル作って遊んだりと、何かと交流があったことに由来します。あれからもう4年ですか、月日が経つのは早いですね…。

そんな節目の記念ボトルにお誘い頂き、関わらせてもらったというのは、光栄であるという以上に特別な感情も沸いてきます。関係者の皆様、改めまして4周年おめでとうございます!

Harrys takaoka


※補足:本リリースへの協力に当たり、監修料や報酬、利益の一部等は一切頂いておりません。ボトルについても必要分を自分で購入しております。