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関東梅雨明け、いよいよ夏本番。
夏と言えばウイスキー界隈としてはハイボールですが、季節に合わせる形で7月20日、STUDIO TAC CREATEIVE からハイボールの専門書籍となる「ウイスキーハイボール大全」が発売されます。
著者はBARとカクテルの専門ライターとして活躍されている、いしかわあさこさん。STUDIO TACさんは「スコッチウイスキー新時代の真実」、「世界のウイスキー厳選150本」など、これまでもウイスキー関連の書籍を出版してきた実績もある出版社さんです。

ウイスキー関連の書籍は数多くあり、その中でハイボールがウイスキーの飲み方として触れられることは珍しくありませんが、ハイボールに特化した専門書籍というのは前例がなく、紹介されている銘柄もトータルで150本以上。日本、あるいは世界でも初めての1冊ではないかと思います。

ウイスキーハイボール大全
WHISKY HIGHBALL DICTIONARY
定価:2200円+税
総ページ数:224P
出版:STUDIO TAC CREATEIVE
監修・著者:いしかわあさこ
amazon 販売ページ

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いしかわさんの話では、今回の書籍は、
ウイスキーというよりは、銘柄を意識せず”ハイボール”を飲んでいる方々に、ハイボールをきっかけとしてウイスキーの個性、美味しさを知ってもらい、ロックやストレートでも楽しむ、世界を広げる手引きになればとのこと。

構成はハイボールの歴史、作り方、ウイスキーの定義などの基本的な情報から、ハイボールにお薦めのウイスキー126本の紹介。グラスやソーダの紹介や、プロフェッショナルからのフードペアリングも含めたお勧め銘柄の提案など。
ボトル紹介は、香味にフォーカスした短めの内容でビジュアル多め、コアな愛好家には物足りないところはあるものの、初心者がボトルを選ぶ目安に使うには程よい情報量とも言えます。

一方、「シェリー樽熟成ウイスキーは合わないものが多い」など、ハイボールに合わせて選別は行われており、ブームに乗った雑誌特集やムック本にありがちな、基準の見えない選定、単なるボトルカタログになってないのも見どころです。
また基本的な情報といっても、ハイボールの歴史については、缶ハイボールの歴史や、氷無しハイボールで一度は名前を聞いたことがあるだろう「サンボア」の系譜までまとめられていたり。ある程度ウイスキーを飲みなれている方が読んでも新しい知識を得られる。著者の専門分野が活かされた構成も魅力のひとつです。

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加えて、もう一つの特徴と言えるのが、書籍後半にまとめられている、第一線で活躍するバーマン5名(上画像)のオススメするハイボールとフードペアリング。そして業界のプロフェッショナルと位置付けられた6名が、ハイボール、ロック、ストレートと、それぞれの飲み方にお勧めのウイスキー銘柄を紹介するコーナーです。

※「プロフェッショナルが薦めるウイスキー」選定者
・リカーズハセガワ ×倉島英昭
・ウイスキーブロガー ×くりりん
・M's Tasting Room ×吉村宗之
・スリーリバース ×大熊慎也
・BAR Leichhardt ×住吉祐一郎
・目白田中屋 ×栗林幸吉

以上6名がそれぞれ、ハイボール3銘柄、ロック、ストレートを1銘柄ずつ、合計5銘柄を紹介しています。
そして、そうなんです。恐れ多くも無謀にも、今回の企画でくりりんに声がかかり、名だたる業界著名人の中に名を連ねているのです。いやホント、このメンバーの中にくりりんって、職種、年齢、字面等もあって、個人的にはかなり違和感です(笑)。

先に触れたように、企画の趣旨は”ウイスキー入門者に薦めるハイボール”であり、ウイスキーが持つ個性の多様さ、美味しさ、楽しさを知ってもらうためのものです。
この点は6名それぞれに解釈があり、私としてはオールドブレンドのように入手に難があるものや、熟成年数がミドルエイジ以上の価格的にハードルの高いボトルを選ぶことは出来ない…。
 美味しさだけで言ったら、”神々の遊び”的銘柄が思い浮かびますが、札束が泡のごとく消えゆくそれが、果たして入門向けかと言われたら違うでしょうと。

というか一般的には、5000円以上のボトルをハイボールにすることにも抵抗があると思います。
あえてそうしたボトルを紹介して、そういう世界もあると紹介するのも一案です。が、自分のチョイスは大前提として「自分が日常的に飲んで納得できる美味しさ」に加え、
・スーパーや一般的な酒販店で入手しやすい。
・実売価格でハイボールは2000円台まで。
・ロック、ストレートは5000円程度まで。
という条件を設け、誰でも抵抗なく、ウイスキーの個性に繋がる、”原料”、”樽”、”ピート”、それぞれの違いを楽しんで貰えるような銘柄を選びしました。

ハイボール大全くりりんページ

また、3種のハイボールのうち、どれが好みだったかで、ロック、ストレートで飲んで欲しい銘柄にリンクする構成にしています。

※くりりんチョイス5銘柄
・キリン陸 ハイボール
→ フォアローゼズシングルバレル(ロック)
・サントリーリザーブ ハイボール
→ グレングラント12年(ストレート)
・ホワイトホース12年 ハイボール
→スモーキーなアイラモルト。カリラやラガを想定。

キリン陸は、原料や製法に由来するフレーバーの違い。つまるところスコッチタイプとアメリカンタイプのウイスキーの違いを知るための1本として。構成原酒については…(自主規制)…なので、リンクするのはバーボン、中でもフォアローゼズ。陸のハイボールで好みだった方は、個人的にオススメであるシングルバレル50%をロックで。更に濃厚でメロー、スパイシーな刺激の中にフルーティーさが感じられる味わいを楽しんでほしいです。

サントリーリザーブについては、スコッチタイプのウイスキーでは避けて通れない、バーボン樽の特性を知ることが出来る銘柄として、この価格帯で最も完成度が高いと感じているリザーブを。
リンクする銘柄はシングルモルト白州をストレートと行きたいところでしたが、昨今のブームで入手難易度と価格が…。だったら、無理せずスコッチで良いじゃないと。バーボン樽熟成原酒のキャラクターが良く出ているグラント12年をストレートで。

ホワイトホース12年はピートの個性を知る銘柄としてチョイス。スペースの関係でリンクする銘柄は紹介出来ていませんが、キーモルトのラガヴーリンで16年か、予算内に抑えるならカリラやキルホーマンあたりを想定しています。

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こうして選ばれたボトル30種類の中には、一部高価なボトルも含まれていますが、ほとんどはスタンダードな銘柄です。普段ストレートで飲むかと言われたら選択肢に入るかわからないけれど、ハイボールだからこそ選択肢となり、美味しさが引き出されるという基準の違いも伝わってくると思います。
例えば、長期熟成の銘柄で樽のしっかり効いたウイスキーよりも、手ごろな価格で販売されている若い熟成の銘柄が、ハイボールにするとバランスが取れ、ピートフレーバー等特徴となるフレーバーも引き立って、すっきりと美味しく楽しむことが出来る、というケースは珍しくありません。

先ほど、初心者向けだから…と前置きをしましたが、選ばれたボトルは変な妥協をしたものでもなく、選定者が日常的にお店で提供し、あるいは飲んでいる風景が連想できる。書き手の顔が見えるのも、この書籍の魅力であるように感じます。
選定者についてご存知の方は、ああこの人この銘柄好きだよなあ、このBARのハイボール美味いんだよなあ、なんて思い返しながら読んでいただくのも楽しいと思います。


ブログ読者の皆様はご存じと思いますが、当方はこれまで様々な銘柄をハイボールにしてきた、あるいはさせてもらってきた実績(前科)があります。お声がけ頂いたときは本当に嬉しく、二つ返事で了承しました。※本業側の許可を取ったうえで参加しています。また謝金、原稿料は受け取っていません。
いしかわさんとはこのコーナーをきっかけとして、本書籍の構成についても情報交換する場を設けて頂き、ただ寄稿しただけではない、全体的に思い入れのある書籍となりました。

なお、タイトルが「〜〜〜大全」で、某文化研究所の書籍を連想するものとなっていますが、編纂にあたって特に同所は関係はありません。巻末に記載されていますが、”大全”を使用する許可は頂いているそうです。
監修、著述されたいしかわさんは本当に大変だったと思いますが、ハイボールの領域はまだまだ深掘り出来るものがありますから、売れ行き次第では「完全版」とか、拡張も期待したいです(笑)。
この度は著書の完成、おめでとうございます。そしてお声がけ頂き、本当にありがとうございました。