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KOCKANDO 
AGED 18 YEARS 
Slow matured 
Distilled in 1996 
Cask tyep Sherry 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:オーキーな華やかさと微かにおがくずのような乾いたウッディネス。メープルシロップのかかったホットケーキを思わせる甘やかさ、穏やかな香り立ち。奥にはフルーティーな要素も見え隠れするが、ストレートだと特徴を掴みにくい。

味:スムーズで柔らかい口当たり。麦芽風味にアーモンドナッツを思わせる軽い香ばしさと、ドライでピリッとしたオークフレーバー、華やかさが緩やかに広がる。余韻はウッディでビターな中に華やかなオークフレーバーが残り、ゆったりと消えていく。

スペック上はシェリー樽での熟成とされているが、色濃い仕上がりやダークフルーツ系の香味はなく、樽材由来の華やかさ、ナッツのような香ばしさが主体となる1本。セカンドフィル以降のアメリカンオーク・シェリー樽で熟成された原酒を中心に使っているのだろう。ストレートだと香味とも少し籠ったように感じるものの、少量加水することで華やかなオークフレーバーが開き、林檎のコンポートを思わせるフルーティーさと微かにジャスミン茶を思わせるアクセント、樽由来の良い部分を感じることが出来る。近年増えた短熟樽感増し増しなリリースにはない、落ち着いた緩やかな味わいが魅力的。癒しの1杯。

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ふとノッカンドゥが飲みたくなり、個人的に最推しである21年を購入しようとしたところ、輸入が途絶えたのか国内市場から在庫が消えていました。終売というわけではないようで、海外だと在庫があるのですが、わざわざ海外から取り寄せるほどのモノでもなく・・・まあ正規代理店がない銘柄ではたまにあることです。それなら15年や18年も中々良い出来なので、ちょうどいい機会だから現行品を飲もうと、最近リリースと思われる18年を購入してみました。
※本記事を執筆中の2021年4月時点では一部酒販で21年の在庫が復活しています。

しかし手元に届いて、1996年蒸留という数字が目に留まる。しまった、これ現行品じゃないやつだ。
ノッカンドゥ18年は、1990年代蒸留のロットまではシェリー樽100%なのですが、2000年代のロットから一部バーボン樽熟成の原酒が使われるようになって、原酒構成が変化しているのです。
特に気にもせずデザインだけ見て買っていたのですが、まさか6年前のモノがくるとは。。。
調べてみると、酒販によっては蒸溜年が1994年~2001年と在庫にばらつきもあるようで、わかってましたが、人気の無さというよりは知名度の無さが伺えます(笑)

人気が無いリリースは、値段が高いとか、味が悪いとか、マイナスな要因があります。しかしノッカンドゥは値段も手ごろで味も悪くない、純粋に一般的な知名度、認知度の問題だと感じています。まあ我々愛好家としてはそれが良いんですけどね。
昨今ボトラーズリリースで1990年代蒸留の原酒が高騰し、2000年代の原酒が主流となっている中では、加水であっても1990年代単一蒸留年で18年熟成というのは、ちょっと得したような感じもしますし。また、数年前までシグナトリー社が43%加水で20年前後熟成の内陸モルトを、6000~7000円と同価格帯でリリースしていましたが、フレーバーの傾向としても代替品になる1本だと言えます。

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さて、上述のとおり、今回の蒸留時期のノッカンドゥ・スローマチュアードはシェリー樽でのみ熟成された原酒で構成されています。
オフィシャルリリースでは21年がバーボン樽とシェリー樽のバッティング、25年がシェリー樽オンリーであることを考えると、スペック的な繋がりは25年にあるように感じられますが、色合い、香味としては21年の系統であり、熟成に使われた樽はリフィル、サードフィルのアメリカンオークやヨーロピアンオークのシェリーバットであると考えられます。

ストレートではおがくずや乾いた牧草のような、でがらしのシェリー樽にありがちな、人によっては好ましくないフレーバーを感じ取ってしまうかもしれません。しかし蒸留所の個性とも言える軽いナッティさに加え、アメリカンオーク樽に由来するオーキーな華やかさと、加水によって開くフルーティーさが魅力的であり、開かせた後の香味は21年よりも好ましい部分がわかりやすいとも感じています。
まさに熟成させた内陸系スコッチモルトに求める味わいってヤツですね。

一方で、最新ロットとの香味の違いも気になるところでありますが、21年は少し前から同じような原酒の組み合わせですから、実はそんなに大きく変わらないんじゃないかとも予想しています。ノッカンドゥは古いボトル程麦感の厚みは感じやすいものの、リリースの傾向は大きく変わっていないため、バーボン樽に由来してフルーティーさ、華やかさがより強く感じられるようになったら儲けものくらいです。

ノッカンドゥ18年のように、穏やかな味わいの1本はBAR飲み用というよりは、家でゆったり楽しむのに向いているタイプと言えます。昨今何かと外出、BAR飲みしづらい状況が続いていますが、自宅での息抜きにはバッチバチの若いカスクより、ちょっと熟成年数の長いシングルモルトが向いている。中でも手頃な価格で購入できるノッカンドゥは、今改めてオススメしたい1本です。