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先日、以下の記事で告知した、クラブハウスでの対談企画。
ウイスキー勢の人口ってクラブハウスではまだまだ少ないんですが、こんなマニアックな話題なのに、多くの方が聴講に来てくださったようで、この話題への関心の高さを感じます。(話すのに必死で把握していませんでしたが、100名くらい来られたとか?、本当にありがたい限りです。)

クラブハウス企画「ジャパニーズウイスキーの基準を読み解く」by TWD 3月12日22時~ : くりりんのウイスキー置場 (blog.jp)

ただ、この日は酒税法、表示基準、JW基準の解説に加え、息抜きとしてオマケ(ラベルトリビア的なもの)の話もしたので、思った以上に時間を使ってしまい、基準後の業界はどうなるのか、期待することは何か、という”その後の話”をあまりすることが出来ませんでした。

なので、唐突ですが追加枠で、今晩ひっそりと
・基準運用において、必要だと考えられること(日本洋酒酒造組合に求めること)
・そもそもジャパニーズウイスキーの魅力って何だろうか

これらについて、語ってみようと思います。
※今回話をするのは私一人です。勿論、クラブハウスなのでリスナーからの質問や、飛び入りで話に入ってもらっても問題ありません。

ジャパニーズウイスキーの基準を読み解く【延長戦】
タイトル:ジャパニーズウイスキーの今後に必要と思うこと
3月17日(水) 22時30分~23:30頃
https://www.joinclubhouse.com/event/PD4a6NLr

そして、先日話したこと、これから話すことは、まとめて記事でも公開させて頂きます。
メモ的な構成になり、オフレコ含めてすべてを書くことは出来ませんが、iphone持ってないので聴講できない、というコメントやメッセージを結構頂きましたので、これでご容赦いただければと思います。
また、3月21日は酒育の会で同様に基準を読み解く対談企画もあります。私の意見とは違うものもあると思います。他の方々の企画も参照いただければと思います。


【以下、参考資料】
追加話題①:基準運用において必要だと考えられること
(1 )基準を遵守するメリットはあるのか。
・基準によって、少数の”ジャパニーズウイスキー”の価値がさらに高まる可能性。
・海外では基準に対する誤解もある模様。※
※ジャパニーズウイスキーと表示する場合の基準、ではなく、日本のウイスキー造りの基準と読まれるケース。
・現時点で基準は法律ではない。
・作り手以外に販売側(メーカー営業、酒販店など)が遵守しないと意味がない。

(2)日本洋酒酒造組合に求めたいこと。
基準によって透明性は担保されたが、品質が担保されたわけではない。そもそも前提として、基準を守ってもらわなければ意味がなく、そのうえで業界の底上げと、正しい成長に繋げなければならない。
そのためには、透明性や情報発信の強化に加えて、品質を高めるための取り組みを求めたい。

提案1:基準マークの作成。
提案2:海外からも参照可能な、ジャパニーズウイスキーを包括的に紹介するWEBサイトの作成。(蒸溜所マップ、蒸溜所やウイスキーの紹介、著名人や組合認定者による官能評価の実施、各種情報の発信など)
提案3:ウイスキーの品質向上(仕込み、ブレンド技術)のためのセミナーや人材紹介。
提案4:ウイスキー仕込みに用いる組合酵母(日本酒の協会酵母的なもの)の提供。
提案5:グレーンウイスキー並びにモルトウイスキーの提供や交換にかかる橋渡し。

※補足:提案3~5は、大手メーカー以上にクラフトウイスキーメーカーへのサポートという位置づけが大きい。
大手や他社に依存する関係は健全とは言い難い。日本のウイスキー産業の構造では、ジョニーウォーカー等のブレンドメーカーやボトラーズブランドが不在であるため、大手以外の各社が1社1社力をつけて、独自のブランドを確立する必要がある。
そして時に手を取り合う、協力体制を作れることが望ましい。まずはそのための下支え、底上げが必要であると考える。

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参考:安積蒸留所で試験的に仕込まれた、日本酒酵母によるウイスキー。蒸留酒と言えど酵母の違いは仕上がりに大きく影響する。


追加話題②:ジャパニーズウイスキーの魅力とは何か
そもそも、基準を作ったうえで求められるジャパニーズウイスキーとはどんなものか。
スコッチウイスキーを主とし、一部バーボンウイスキー(アメリカンウイスキー)のDNAを持つ日本のウイスキー造り。
ウイスキーの作り方は基本的には同じ、装置もほぼ同じ、そして現時点では原材料も輸入。こうした中で、ジャパニーズウイスキーの魅力とは何か?個性とは何か?、この点を個人的見解に基づいて紐解きたい。

事例1:仕込みの違い。
A「糖化?お湯入れておけば出来るだろ。」
B「XX℃のお湯を麦芽〇〇〇kgに対して●●●リットル入れて、〇〇時間行う。」

A「ポットスチルXX機。ただし蒸留後、ニューメイクは同一のスピリッツタンクに混ぜられる。」
B「ポットスチルXX機。蒸留後はそれぞれニューメイクをタンクに入れ、樽詰めする。」

A「基本はホワイトオーク、スパニッシュやフレンチオークもシェリー樽やワイン樽として一部使う」
B「基本は同じ。他方で同じホワイトオークでも新樽や活性樽、ミズナラ、桜、その気になれば栗や杉も使う。」

安定した大量生産の考え方か、多種多様な原酒を1つの蒸留所が作る考え方か。


事例2:気候の違い。
・日本とスコットランドの違いは四季、大きな気候変化である。
・誤解してはならないのが、日本は四季があるから”勝手に”美味しくなるという話ではない。
・日本のウイスキー造りは、四季との闘い(特に夏、冬)か、如何に共存できるかと言える。
・樽のエキスは温暖な時に出る。特に20度後半、30度台になると極端に出る。
・一度出たエキスは戻ることは無い。これにより、スコットランドでは端麗で華やかな仕上がりになるものが、日本では濃厚でウッディな仕上がりとなる。
・ちなみに、台湾のように温暖すぎる環境では、熟成によって得られる香味の奥行きを出しづらい。

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画像引用:【2020年版】エディンバラの気候とオススメの服装を解説! | School With

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環境における樽感の出方の違いのイメージ図。C-①は温暖、C-②は普通、C-③は冷涼な地域をイメージ。点線は樽そのものが解け出る量を示す。

まとめ:日本のウイスキーの個性とは?
・日本は、スコットランドにはないタイプ(例:濃厚でウッディ)な原酒が存在。
・気候を克服することによって繊細かつ華やかなタイプの原酒も作ることが出来る。ただしこれは苦手。
・水質の違いから、日本の水で加水するとまろやかになりやすい。
・シングルモルトでは、10〜15年熟成で勢いのある酒質ながら樽が強く、適度な奥行きを備える。
・仕込み、気候の違いによって得られた多様な原酒をブレンドすることで、ジャパニーズウイスキーは十二単のように多くの香味の層と、重厚さを持つウイスキーとなりえる。
・ジャパニーズウイスキー表記は出来ないが、輸入原酒を活用してさらに香味の幅を広げることが出来るのも、現時点では日本で造ることが出来るウイスキーのみである。
・また、小規模なクラフトは、これ以外に地産の麦芽や樽材を使うなど、日本独自の材料の取り込みにも期待したい。世界に発信できる、更なる魅力あるウイスキーの創出に期待。

※参考:代表銘柄の個人的イメージ
バランタイン:ガラス細工、100円ショップ~職人仕事
ジョニーウォーカー:西◯の吊るし〜オーダースーツ
響:着物、街着〜十二単
竹鶴:野武士~宮仕え
富士:黒船来航

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