サントリー オールド 43% 2021年現行品

SUNTORY OLD WHISKY
A TASTE OF
The Japanese Tradition
700ml 43%
評価:★★★★★(4-5)(!)
※ストレートの評価。ロック、濃いめの水割りで食中酒として楽しむべき。その場合は+★1
香り立ちは穏やか、甘い熟成した原酒のウッディなアロマが一瞬感じられ、シリアルのような穀物香、サトウキビ、踏み込むとそれを突き破るようにツンと刺すような刺激がある。
口当たりは少々あざとくもあるとろりとした甘さの中に、若干ピリピリとした刺激、若さが感じられる。一方で、シェリーやバーボンオークの熟成した山崎原酒の甘み、ウッディさがふわりと鼻腔に届き、ブレンドの方向性を示している。余韻はビターでやや単調。少し口内に張り付くように残る。
感覚的には10年程度熟成した原酒を軸に、それを若いグレーン原酒で引き延ばしたという構成。
そのため、香味ともトップノートに山崎蒸留所の原酒を思わせる甘やかなウッディさがあって「おっ」と思わせる一方で、該当する熟成原酒を構成の1~2割とすると、8~9割が若い原酒とも感じられる構成であり、グレーン系の風味や、香味の粗さも目立つ。キーモルトの主張はプラス要素であるが、ストレートではやはり安価なウイスキーであることも認識出来てしまう。
ところがこれをロック、水割りにすると、上述の悪い部分が薄まり、熟成原酒由来のフレーバーが伸びて一気にバランスが良くなる。安心感すら感じる味わいだ。特に日常的な食中酒としての使いやすさは特筆もので、特別なシーンのための1本ではない、だからこそ長く親しめる。そんな作り手の意図が感じられるリリースである。

最近SNS、クラブハウス、いろんなところでプッシュしていますが、個人的に評価急上昇中の1本が、サントリーオールドです。
先日発表されたジャパニーズウイスキーの基準、これと合わせて日経新聞の報道※では、サントリーのブレンデッドで「ジャパニーズウイスキー」に該当するのは響、季、ローヤル、リザーブ、オールドとされており。特にオールドはジャパニーズウイスキーの中で最も長い歴史があり、最も安価なリリースとなります(1950年発売、現行価格1880円)。せっかくだからこの辺をちゃんと飲んでみるかと、購入してみたわけです。※参考記事
正直、びっくりしましたね。あれ?こんなに美味しかったかなと。(驚きついでにLiqulにもコラムを寄稿したので、近日中に掲載されると思います。)
以前飲んだものは、華やかだけど結構ペラいという印象で、ハイボールなのかロックなのか、どちらで飲んでも半端な感じでしたし、そもそも80年代以前のオールドボトルはお察しレベルでした。
原酒の多様性か、あるいは基準に合わせてレシピを変えてきたのか、間違いなく現行品が進化しており、キーモルトの良さに加え、楽しめる飲み方があるウイスキーになっているのです。
補足すると、ストレートでは粗さというか、あざとい感じが、値段相応という部分に感じられます。なので、飲み方によって評価は変わるかもしれません。美味しさの質もちょっと違いますし。
ですが、トップノートに感じられる熟成した山崎蒸留所の原酒を思わせる香味が、水や氷を加えることで、若い原酒の刺激、濃いめの甘さ、香味の粗い部分と混ざり合って平均化され、綺麗に伸びてくれる。非常によく考えられているウイスキーだと思います。

価格帯で前後のラインナップと比較すると、この山崎の熟成原酒由来と思える甘やかなウッディネスは角やトリスには感じられず、リザーブともキーモルトのキャラクターが異なります。これらは白州のバーボン樽原酒のキャラクターである華やかさ、爽やかなオーク香を感じるんですよね。
構成の違いは、サントリーが各銘柄をどのように飲んで欲しいと考えているかで変わっていると推察します。
上述の通りオールドは水割りで甘み、熟成した原酒の香味が伸びて、ゆったりと楽しめる。柔らかく甘い含み香がまさに和食に合うような、落ち着きのある味わいです。
一方、角やリザーブはハイボールでさっぱりと、オーク香と炭酸の刺激で爽やかに楽しめる。それこそ揚げ物などの居酒屋メニューに合いそうなのがこちらの飲み方です。オールドのハイボールは、悪くないけどそこまでという感じで、線引きされているようにも感じます。
歴史を振り返ると、オールドは和食に合うウイスキーという位置付けでリリースされた系譜があります。
想定された飲み方はまさに水割りやロックといった、日本の酒文化に根付いた飲み方。ラベルにThe Japanese Traditionと書かれているように、狙いの違いが感じられるだけでなく、これをジャパニーズウイスキーの基準に合致させてきた点にも驚かされました。
それこそ、このクオリティのものを2000円未満という価格で大量生産しているのですから、改めてサントリーの凄さを感じます。
それは原酒の質、種類もそうですが、ブレンド技術ですね。理想的な状況で美味しいモノを作れるのは当たり前で、限られた状況で如何に優れたものを作れるかがプロの技。例えば響21年ならハイボールも水割りもロックも、すべからく美味しくなるでしょう。ローヤル、リザーブも原酒のレベルがオールドより上なので、ストレートでもそこそこ飲めます。
一方このオールドは、原酒に加え、コスト面も制限が強くある中で、シーンを限定することでおいしさを発揮する点にそれを見ます。また、味わいに感じる熟成した原酒の香味から、コスト面はギリギリ、可能な限りを尽くした薄利なリリースではないでしょうか。
オールドは、昭和の一時期、世界トップクラスのセールスを記録した銘柄でしたが、その反動からか色々言われた銘柄でした。光が強ければ影も強くなる。ただ、当時のものを飲むと、その主張にもなんとなく納得してしまう味でもありました。
ジャパニーズウイスキーの基準に照らすと、冒頭述べたように最古にして最安値のジャパニーズウイスキーと位置付けられるのがオールドであり、ここまで紹介したように品質も文句のないレベルです。
それこそ同じ市場を狙うクラフトウイスキーメーカーはリリースの方向性、打ち込み方を考えないと真正面からでは太刀打ちできないとも思ってしまうクオリティ。
迫るジャパニーズウイスキー新時代。約30年の時を経て、昭和の大エースに改めて光が当たる時がきたのかもしれません。
コメント
コメント一覧 (11)
「角瓶」以下はそう名乗れんことになるんですねえ。
「オールド」希望小売価格は1880円とあったので、税込では私が小学生だった半世紀前と変わってませんが・・当時は50円玉でワンコインランチが食べられたですからね。
300円の「トリス」500円「レッド」1000円「ホワイト」と成りあがって特級の「角瓶」「オールド」へ・・高度経済成長期の「国産ウイスキー」の夢は歴史上の出来事になりました。
「マッサン」が受けたんですから、渋沢栄一より鳥井信治郎で大河を・・さすがに無理?
>海老沢さん
コメントありがとうございます
大河ドラマは、ひょっとしたらあるかもしれませんよね。有力候補の一人だと思います。でもそうしたらさらにウイスキー消費量が上がってしまうし20年後くらいで(笑)
サントリーオールド、私も発表があってから暫くして改めて購入しました。他のサントリーウイスキーが休売するなか御三家のブレンデッドウイスキー(オールド、リザーブ、ローヤル)を残し販売し続けたのは、企業としてのプライドを感じました。じっくり味わっていこうと思います。
>ハウルさん
どうやら角もその気になればジャパニーズ表記に出来たそうなんです。ただそれは結構危ない橋というか、今後変わってしまう可能性があるので、オールド以上にしたとのことですが、それだけの準備をしていたというのが凄いですよね。サントリーのウイスキーに対する姿勢というか、それを軸にビジネスを考えている点が、他のビール会社との違いとして感じられました。
>新潟男さん
コメントありがとうございます!
本当に山崎味ですよね。進めて飲んで貰うと、本当にそういう味がするとコメントが返ってきます。お値段以上味を感じることが出来るお酒で、素晴らしいリリースですよね。
個人的には白州のモルトが加わった特級末期のボトルが一番気に入ってます。
また、ホワイトも改めて飲むと香りが結構複雑で、ストレートでも飲めるなぁと感じてます。
>RERAさん
コメントありがとうございます。
オールドの古い時代のものは、私も60年代から現行まで10年区切りくらいで飲んでみたことがあります。
現代においてこれらは状態に左右される部分が大きく、特に特級時代のジャパニーズは甲類焼酎のようなグレーン感が、経年劣化から目立ってしまうボトルが多いように感じています。
RERAさんは昔からウイスキーを飲まれていて、私が状態のいいボトルに当たったことがないだけかもしれませんが、そのべったりとしたアルコール感に違和感を感じてしまうため、現行品を飲むと逆にほっとしてしまいます。出来れば当時の、劣化してしまう前のオールドを飲んでみたかったですね。
これと各商品のレベル付けから、サントリーらしいシェリー系のウイスキーらしさが備わってくる最下限がオールドなのでは。(下限というのは申し訳ない位ですが。)
今では飲食店は角瓶にかぎらずスコッチも含めハイボール一辺倒で、なかなかオールドやリザーブがスタンダードで出るお店がないのが残念な位に感じます。
>ローヤル好きさん
ありがとうございます。おっしゃる通りですね。オールドやリザーブ、そしてローヤルはハイボールを前面に出していないので、どうしても消費量が稼げるチェーン居酒屋などのそういう飲食シーンにないことから知名度が上がりませんが、でもまあそれでいいのかなとも思ってます。
別に角が悪いウイスキーと言うわけではなく、キャラクターの違いでしかないので。角は角の楽しみ方があり、メーカーを支えているし、オールド~もそれに応じた楽しみ方があって、愛好家の夜のお供として存在している。これでオールド~の消費量が増えて、原酒足りなくなっちゃっても困りますからね(笑)
ハイボールなら角瓶で、、オールドでやるとあまり美味くない。
水割りにしても、数百円だせばリザーブが買えるわけです。
リザーブなんて、ハイボールにしても、水割りにしても美味いです。
オールドの水割りは甘すぎて好きではないです。