三郎丸蒸留所×長濱蒸溜所 日本初のクラフトブレンドが実現
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そのわずか10日後。三郎丸蒸留所、そして長濱蒸溜所から、早くも原酒交換によるコラボ企画「日本初のクラフトブレンデッドウイスキー」の発表がありました。
複数の蒸留所が連携して企画し、同時にプレスリリースまで行う。これまで日本の蒸留所には見られなかった動きにワクワクしてしまいます。
自分はどちらの蒸留所も、創業初期(三郎丸蒸留所はリニューアル後)から毎年見学させて貰っているだけでなく、オリジナルリリースでの関わりもあり、他の愛好家よりも近い関係にあると言えます。
後日、レビューも掲載したいと思いますが、今日はわかる範囲で今回のリリースに関する情報をまとめ、紹介していきます。

リリースは写真左から
長濱蒸溜所 INAZUMA
ブレンダー:長濱蒸溜所 屋久佑輔
・BLENDED MALT JAPANESE WHISKY "SYNERGY BLEND" 47% 700本
・WORLD BLENDED MALT WHISKY "EXTRA SELECTED" 47% 6000本
※プレスリリースはこちら
三郎丸蒸留所 FAR EAST OF PEAT
ブレンダー:三郎丸蒸留所 稲垣貴彦
・"FIRST BATCH" BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 50% 700本
・"SECOND BATCH" BLENDED MALT WHISKY 50% 5000本
※プレスリリースはこちら
※販売は3月30日から、両蒸留所が運営するオンラインショップ並びに関連酒販等で行われます。
なお、FAR EAST OF PEATのBatch1、IZUNA2本セットが3月8日から14日まで抽選受付となっています。詳細は各社の酒販またはメールマガジンなどを参照ください。
■ブレンデッドジャパニーズウイスキー2種
INAZUMAは、長濱蒸溜所のノンピートモルトと、三郎丸蒸留所のピーテッドモルトを使用(どちらもバーボン樽熟成)。
FAR EAST OF PEATは、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト(バーボン樽熟成)と、長濱蒸溜所のライトリーピーテッドモルト(アイラクオーターカスク熟成)を用いたものとなります。
使われている日本産原酒の蒸留時期は、双方とも2017年で、熟成年数は3年強と言うことになります。
つまり3年熟成のブレンドモルト?と感じるかもしれませんが、どちらも2020年にリリースされたシングルモルトは若さを感じさせない仕上がでした。また、2017年蒸留の長濱モルトは柔らかく穏やかな風味、三郎丸モルトはヘビーで広がりのある風味で、系統は異なるものの、どちらの酒質も共通してブレンドで馴染みの良さを感じる点があり、若いから…という思い込みは早計と言えます。
INAZUMAの組み合わせはノンピートとピーテッド。ノンピートでバーボン樽熟成の長濱モルトは、麦の甘さ、オーク樽由来のフルーティーさが酒質の柔らかさと合わさって穏やかに味わえるタイプであり、それがピーティーさがメインの三郎丸モルトのパワーを包み込む、足りない部分を補うような仕上がりが期待できます。
またFAR EAST OF PEATが使っている長濱のモルトは、アイラクォーターカスク熟成ということで、実物も見たことがありますが、これはラフロイグ蒸留所のもの。麦芽の甘みとスモーキーさに加わる、アイラ由来のフレーバーの一押し。。。この競演がどのようなシナジーを生むのか、実に楽しみです。

(今回のブレンドに用いられた原酒は、両蒸留所ともアップデートが施される前に仕込まれたものである。例えばポットスチルは、三郎丸は旧世代のスチルを改修したもので蒸留されている。長濱は現在より再留器が小型で、スチルの数も異なる。詳細は以下対談企画を参照。)
■ワールドブレンデッド2種について
今回の企画では、どちらのブランドにも輸入モルト原酒を使った、ワールドブレンデッド仕様がラインナップされています。
振り返ってみると、三郎丸蒸溜所はムーングロウで、長濱はアマハガンで、それぞれWorld Whisky Awardで部門受賞を経験するなど、自社モルトとバルク原酒を使ったウイスキーについても評価されているのです。
個人的に、オリジナルリリースの関係で両蒸留所の保有する原酒を飲む機会を頂いてますが、それぞれ異なる企業、蒸留所から調達されているもので、国内での追加熟成も経て全く違う素材としてブレンドに作用すると感じます。
両ブレンダーが目指す方向性の違いも含め、一体どんな味わいになっているのか。これまでのウイスキーシーンにはなかったユニークな試みであり、個人的にはこのワールドブレンド仕様の仕上がりに、密かに期待しています。

(長濱、三郎丸両蒸留所で関わらせてもらったオリジナルブレンデッド。どちらの蒸留所にも自前、輸入で様々な原酒があり、品質も一定以上が担保されている。)
■両蒸留所のウイスキーと造り手の想い
三郎丸蒸留所、長濱蒸留所については、酒育の会のLIQULにて特集対談記事が公開されています。
偶然ですが、長濱蒸留所編の公開は、まさに本日からです。
今回のリリースをきっかけとして、両蒸留所に興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事も参照いただければと思います。
創業から現在に至るまで、どのような変化があったのか、目指すハウススタイルや、造り手の想いなど、対談形式でまとめています。
【ジャパニーズクラフトウイスキーの現在】
Vol.1 三郎丸蒸留所編:https://liqul.com/entry/4581
Vol.2 長濱蒸留所編:https://liqul.com/entry/5209

※自画自賛気味ですが、WEB公開されている記事の中では両蒸留所の情報を一番網羅している記事だと思います。
今回のリリースは、冒頭述べたようにジャパニーズウイスキーの基準制定を受け、三郎丸から原酒交換に取り組むという発表があった矢先のことでした。「いやいや、動き早すぎでしょ」と感じた方も少なくないのではないでしょうか。
実は、今回の企画の発起人と言える三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーは、それこそ蒸留所をリニューアルして再稼働させた時から原酒交換のプランを持っており、他の蒸留所の見学や情報交換を行うなど、基準が形になる前から動きを進めていました。
私もクラフトウイスキー間の連携推進や、グレンマッスルでのジャパニーズブレンド構想があり、お互いに何が出来るか話をする中で、今回の一件もそういう動きがあると伺っていました。
鶏と卵の話ではありませんが、ジャパニーズウイスキーの基準に関する話を受けて原酒交換が動いたというよりは、ブレンドづくり含めて準備を進めていたところ、今年に入って唐突に動きがあり「いつやるの?今でしょ!」と、両蒸留所がリリースにGOサインを出した。という流れであるようです。
ですがその前後関係は些末なこと。これによって原酒交換の前例が出来、ノウハウも両蒸留所にあることになります。蒸留所として今後も取り組みを進めていくことに変わりはなく、むしろ各社にとっても追い風となる実績が作れるのではないかと期待しています。

長濱蒸留所の屋久ブレンダーと、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャー(兼ブレンダー)は、両蒸留所の距離が他の蒸留所に比べて離れていないこと、長濱蒸留所は規模が日本最小、三郎丸蒸留所は生産量が日本最小で、お互いに小さな蒸留所であることなど、何かと繋がりを感じるところがあり、意見交換をしてきたそうです。
例えば長濱蒸留所の原酒で、ある仕様が2018年頃から変わったのですが、それは稲垣さんのアドバイスからだったという話も聞いたことがあります。
詳しくは、ボトル購入特典となっている両ブレンダー対談動画で語られると思いますのでここでは伏せますが、こうして造り手同士が繋がって、お互いに品質を高めていく。
日本のウイスキーのルーツたるスコッチウイスキーは、大手メーカーと中小メーカーの共存共栄から発達してきた歴史があります。日本ではこれからクラフトを中心にそうした動きが出て来ればと、今回のリリースを第一歩とした動きに期待してなりません。
先の基準は、海外市場で既に反響を呼んでおり、ひょっとすると業界が想定していた以上の影響が今後出てくるとも考えられます。
そうして考えると、日本のウイスキー業界は、新しい時代に突入したと言えるのではないでしょうか。
新時代におけるクラフトウイスキーの魅力とは何か、そして市場を取るための計画は如何に。単に作れば良いだけではなく、大手との違いは何か、強みはどこにあるのか。必ずしも原酒交換だけが選択肢ではありません。
例えば蒸溜所がある地域のシェアだけは絶対に抑えると、地域限定ボトルのリリースというのもあるでしょう。厚岸蒸留所のような●●オールスターを作るというのも1手です。
基準に加え、今回のコラボレーションリリースが呼び水となって、クラフトウイスキー(自社ウイスキー)のさらなる魅力を、各社が考えていくようになるのではないかと思います。
規制下での創意工夫から、新たな付加価値が生まれるのは、産業界で数多起こってきた出来事の一つです。まずは今回のリリースを楽しみにしたいところですが、ここからのジャパニーズクラフトウイスキー業界の動きにも注目していきたいですね。
※関連記事:
・三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明
・「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」に潜む明暗
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(日本洋酒酒造組合)
コメント
コメント一覧 (8)
自分としてもクリリンさんを通じて三郎丸蒸留所と長濵蒸留所のタッグだと思っていたので予想通りというか、その速さは予想以上です。
しかし抽選ですか、ここの所くじ運がほとんどない自分にとってはハードルが高いですね。本坊酒造の抽選はほぼ玉砕(汗)
いつものバーで「ニンフの新ボトルでますか?出るなら、予算確保しておかないといけないんで。」と聞いたら、妙な感じで「今のところ予定はないです。」という回答だったものだから、これは4月に出ると言っていたグレンマッスルのとことかと思い込んでいました。
ところでそのグレンマッスルのスケジュールは予定通りですか?4月1日とかだと明らかに月の予算オーバー。って当たることを前提とした皮算用ですが・・・(汗)
また、新情報ありましら、よろしくお願いします。
>荻窪彰さん
いつもコメントありがとうございます。
すいません、先日は発表前でしたので私からは何も言えませんでした(汗)。
抽選の販売方法は、最近はウイスキーに限らず転売が話題になりますから、ヨーイドンより良いのかなと思っています、特に三郎丸のほうは簡単なクイズがあるのも面白いですね。
一方で、グレンマッスルの次は、早くて今年の後半くらいになると思います。
今まさにいろいろ調整していますが、昨年コロナで満足に動けなかった分が響いてますん(汗)。
リリースする際は告知もさせて頂きますので、今後ともよろしくお願いします!
山崎のJapaneseWhisky表記に始まった頃には条文の基本骨格が固まって、クラフトメーカーにも情報が入って1年前くらいから企画スタートしたといったところでしょうか?
稲垣専務の呼びかけは長濵蒸留所とやっているよ。他のクラフトメーカーへの呼びかけとすれば納得です。今後も楽しみな展開になることを期待です。
当然のことながら今回こそ、休暇を取って油田へお出かけ予定です。(汗) 仕事を一本蹴っ飛ばし…(大汗)
ps.グレンマッスル情報、助かります。今月の抽選申し込み7本、全部当たれば総額13万円超えですが既に1本外れ。(笑) まあ、一つ位当たれば御の字でしょうか?ただ、最後の6万5千円が当たっていも予算オーバー。(外れることを前提に申し込み(笑))
クイズは一瞬焦りました。長濵は自分が行ったときは既に3基だったのものでリカルで再確認してからの回答でした。(汗)
当選2、落選5、保留1(発表は4月下旬だった)と予想を超える結果でした。当選したのは長濵蒸留所のイナズマ2本セット(^O^)/ラッキー!
もう一つはあれ?同じくイナズマWBMW単品。単純に応募者全員当選の可能性もあります?・・・。、
三郎丸は落選なるものの30日のチャレンジで追加の繰り上げ当選相当で2本となり、グレンマッスルNo.5も併せて5本並べて・・・壮観です。(^.^;
本当はこれに三郎丸ゼロがあれば完璧なんですが高望みですよね。(-_-;)※(ダブりの1本は到着待ち。)
ついでにサガ30thは予定通り落選なんですがヤクオフでバラ30年(グリーンボトル)を冷やかし半分でポチリしたら、そのまま落札の自爆モード!f(^^;;
その他にもポチポチと。結局、予算オーバーでさあ、困ったぞと。
さて次はグレンマッスルなんですが抽選?先着順?どっちですか?くりりんさん。
余談:販売開始はいつもの12時半と思って出かけたのですが既に販売中でしかもイナズマも一緒に並べられていました。つまり、全部落選でも問題なかったというオチ。(笑)してやられました。こちらであれば2万2千円以上は送料無料。当選したがゆえに送料660円×2だけ余分に出費でした。トホホ。
>荻窪彰さん
長浜蒸溜所のセット当選、おめでとうございます。そろそろお手元に届いたころでしょうか。私も後日レビューを掲載したいと思っています。(三郎丸のほうもゲットされたんでしょか?)
さて、グレンマッスルについては今年中にリリースされるかどうか微妙なところですが、自分の関わったボトルは他にもリリースされると思います。販売方法までは関われませんが、買えてよかったと思えるようなリリースに仕上がるように努力したつもりですし、今後も継続していきたいですね!
送料がちょっと高くついたりすると、ショックですよね(笑)
最後はヤマ勘で回答しました。たぶん抽選外れるんだろうな。f(^^;
ということで今回もお出かけでゲットしたいと思います。
おまけ:ハンドフィル…令和蔵に置いてあるあの樽かな?自分で瓶に注ぐのは楽しいんですよね。(長濵で経験済み)
では。
当然のことながら、どちらも当選メールが来ないので落選だったようです。白州ピーテッドは美味しかったので当てたかったのですが・・・。
一方、ハンドフィルは26日ごろ発送予定となっていたので発売日の確認に見学も兼ねて週末に蒸留所へ行ってきました。そしたら、見学者限定ですでに販売中!ヽ(^o^)丿運良くゲットすることが出来ました。
抽選にはめっぽう弱いが散財の女神が付いているせいか、出会い頭的な購入は結構多かったりします。(^_^;)
なお、自分は本数185本中56番だったのでGW前には売り切れとなっているかもしれません。
因みに三郎丸蒸留所では稼働しているところを初めて見学しました。停止中とはまた違ったワクワク感がありますね。樽の方も色々種類が増えているようで今後が楽しみです。
おまけ:超難問は和名:米松だから当然アメリカ産だろうとカナダ産はひっかけだよねと思っていたのが逆だったとは…。
>荻窪彰さん
現地からの定期連絡ありがとうございます(笑)。
白州ピーテッドは、定価で買えるなら・・・って感じですが、そこまで慌てるクオリティでもないですし、散財の女神は荻窪さんが目指すべき方向を見ているのではないでしょうかw
稼働中の蒸留所はライブ感というか、あの独特の空気、匂いも合わせて特別ですよね。三郎丸は今後も色々企画があるようなので、更なる発表、活動に期待していてください!
>余談(MUSLCLEについて)
三郎丸のほうではないですが、今年は未定と言っていた話が一気に色々動きまして、7月以降に定期的に複数本リリースされることとなりそうです。
既に内定している状態ですが、正式に決まりましたらまた告知させて頂きます。