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THE AKKESHI 
”USUI” 
2nd. Season in the 24 Sekki 
Blended Whisky 
Bottled 2021 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5)

香:甘くウッディな香り立ち。カカオ多めのチョコレートのようなビターなアロマに、若い原酒のクリアな酸も伴うフレッシュさ。梅ジャム、和柑橘の皮、シリアルの香ばしさと、焦げ感を伴うスモーキーフレーバーが穏やかに香る。もう少し熟成を経ると丸みを帯びて一体感も増していくのだろう。

味:粘性のある口当たりから、熟していない果実を思わせる酸味と、ワインやシェリー樽由来と思しきウッディなフレーバー。若さは多少あるが、グレーンと加水が全体のバランスを整えて、コクのある味わい。後半に樽のエキス由来の要素から若干の椎茸っぽさ、フィニッシュはビターで土っぽいピート。青さの残るウッディさと共に、原酒由来の酸味が染み込むように残る。

バランス仕様のブレンデッド。香味とも序盤はシェリー樽やワイン樽由来と思しきフレーバーから、奥にバーボンオーク由来のバニラの甘さ、グレーンのコク、ピートフレーバーと言う流れ。約4年熟成ということもあってストレートでは樽感や酒質に若さ、粗さも残る点は否めないが、少量追加加水することで軽減され、酒質の伸びも良い。ハイボール等の割った飲み方で食中酒にも向くなど、ブレンデッドらしい特性もしっかり備わっている。個人的にはロックがオススメ。
なおこのウイスキーは作り手の想い、こだわりと言う点で、情報量は他のクラフト銘柄以上のものがある。現実と将来の可能性、どちらに重きを置くかでこのウイスキーの見え方は変わるかもしれない。

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北海道・厚岸蒸留所から2021年2月28日リリースされた、24節気シリーズ第2弾、雨水(うすい)。同蒸留所としては、2019年にリリースされたニューボーンシリーズ第4弾に次ぐ、ブレンデッドウイスキーです。

構成原酒は厚岸蒸留所で蒸留・熟成したピーテッド、ノンピートモルト原酒に加え、グレーンは海外からニューメイクとして輸入したものを、厚岸蒸留所内で3年以上熟成して使用。ニューボーンと比較して、味に厚みが出ている一方、クラフトとして現時点で可能な限り”厚岸産のウイスキー”を作ったという1本でもあり、今後さらに理想へと近づいていく、そのマイルストーンであると言えます。
今回のレビューでは、このウイスキーの味と情報それぞれの側面から、ブレンドレシピの考察と、蒸溜所の目指す理想のウイスキーについてをまとめていきます。


■雨水ブレンドレシピ考察
第一印象は、シェリー樽とワイン樽。レビューの通り「ど」が付くほどではないのですが、比較的しっかりと双方の樽感が主張してきます。
ただ、それだけではなく、2つの主張を繋ぐ樽感の存在として、バーボン樽原酒が2つの樽感を慣らし、グレーンウイスキーの働きも口当たりの質感まで感じられます。ブレンド比率としてはモルトとグレーンで半々か、モルトがちょっと多い6:4くらいのクラシックな比率※に近い構成のようです。(※補足:現在、スコッチにおいてスタンダードなブレンド比率はモルト3:グレーン7であるとされているが、古くはモルトが60~70%使われていた。一部銘柄ではこれをクラシックブレンドと呼んでいる)

また、上述3つの樽以外に和的な柑橘感、甘酸っぱさを後押ししているような樽感の存在も微かにあることから、ミズナラ樽も隠し味として使われているのでしょう。モルトの樽構成比率はシェリー4:ワイン2:バーボン3:ミズナラ1とか、そんな感じでしょうか。
一方で、厚岸モルトとして愛好家に期待されるピートフレーバーは控えめで、昨年24節気シリーズ第一弾としてリリースされた「寒露」よりも穏やかにまとめられています。

ピートは百難隠す。ピートを強くすれば若さや未熟感も隠せてそれらしくまとまる一方で、その蒸溜所のベースとなる味わいも隠されてしまいます。どこに線を引いてどのような狙いを込めるのか、特にバランス型のブレンドを造る難しさでありますが、今回のブレンドではピートを穏やかに仕上げたことで、加水やハイボール等、ブレンデッドとして普段楽しまれる飲み方をした時の酒質の伸び、変化がわかりやすかったのはポイントです。

レシピでグレーンが半分くらいと書くと、ボディが薄いのではと感じる方が居るかもしれませんが、このブレンドはそんなことはなく。ハーフロックでも水に負けず、食事とも合わせやすくてよかったですね。食中酒としては和食、意外なところで焼き魚系のアテとも合うんじゃないかと思います。

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■厚岸蒸留所が目指すウイスキー造り

一方で、このウイスキーからは、香味以外に注目すべき情報があります。
それが冒頭述べた”理想へのマイルストーン”。良く知られているに目標に、厚岸蒸留所のウイスキーが目指すのは「アイラモルト」という話がありますが、これは実は少し違っていて、実際はアイラモルトの伝統や精神を受け継いだ、「原材料のすべてを厚岸から調達して造るウイスキー(厚岸オールスター)」を目指しています。

今回のブレンドに使われているモルトは、自社で仕込み、蒸溜を行ったものですが、グレーンは未熟成の状態で輸入したグレーンスピリッツを、厚岸蒸留所で輸入して使用しています。
先日、日本洋酒酒造組合から公開された、ジャパニーズウイスキーの基準に関する記事で、「国産グレーン原酒の問題」について当ブログでも触れさせてもらいましたが、一口にグレーン原酒の設備導入といっても、容易なことではありません。

雨水の原酒構成は基準を意識したものではなく、あくまで厚岸オールスターという理想に近づけるため。まず現段階ではグレーンの熟成から自前で行おうと。ただ、厚岸3年熟成のグレーンではなく、例えば10~20年熟成の輸入バルクグレーン原酒を使えば、手間も少なく、味の点ではさらにまとまりが良くなるような、違うキャラクターになった可能性もあります。あえてそれをしなかった点に、蒸溜所としてのこだわりの強さを感じるのです。

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※北海道・厚岸で栽培したウイスキー用麦芽の収穫風景(厚岸蒸留所 Facebookから引用)

あくまでも個人的な予想と前置きしますが、厚岸蒸留所なら、近い将来グレーンウイスキーの蒸溜も自前で始めてしまうのではないかと思います。それこそ小麦やトウモロコシ等の北海道産の穀物を使ってです。
実際、モルトウイスキーでは、厚岸オールスターの実現に向けた動きとして、北海道の地ビール用大麦麦芽品種「りょうふう」を厚岸で栽培し、一部仕込みもおこなっているだけでなく。湿原で取れる地場のピートを使った仕込みのために、蒸溜所内にドラム式モルティング設備を導入する計画も進められており、それは今年2021年にも完成するとされています。

目指すのは今一時の産物か、あるいは10年、100年先を見据えた理想へのステップか。”厚岸ウイスキー”を作り手がどのように考えているのか。そうした視点で見ると、美味しさだけでは測れない、嗜好品ならではの情報を飲む楽しみが、本ウイスキーには備わっていると言えます。
そうした作り手の想い、今できるベストを尽くしたと言えるチャレンジングスピリット、そしてニューボーン第4弾からの原酒の成長と、ブレンドに関するノウハウの蓄積。雨水の節気が表すように、冬から春へ。厚岸蒸留所が目指すウイスキーの芽吹きは、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

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