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GLENFIDDICH 
OUR ORIGINAL TWELVE 
Aged 12 years 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)

トップノートにはやや硬質感があるが、青りんごや洋梨を思わせる華やかなオーク香、微かにレモンピールを思わせるニュアンス。時間経過で奥から麦芽由来の甘さも混じる、爽やかなフルーティーさが心地よい。
一方、味わいは香りに比べて少々広がりが乏しい。麦芽由来のほろ苦さ、柔らかい甘みが舌の上で感じられ、余韻は砂糖漬けドライレモンピールを思わせるビターなウッディネス、ほのかにオーキーな華やかさが鼻腔に抜けていく。あっさりとしたフィニッシュ。

ラベルにはオロロソシェリー樽とバーボン樽で12年熟成と記載があるが、色合い、香味から察するに熟成はほぼバーボン樽で、シェリー樽はアメリカンオークのリフィルか。香りはオークフレーバーがしっかり感じられるが、40%加水の普及品ということもあって、味わいは小さくまとまっている。やや硬さもある。しかし柔らかく甘みのある麦芽風味主体の素直な酒質と、アメリカンオーク由来のオークフレーバーという、定番の組み合わせから流行りを外さない安定感は、このボトル最大のポイント。何と言ってもハイボールがオススメ。

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先日、酒育の会のWEBマガジン「Liqul」に投稿したウイスキーコラム、”Re-オフィシャルスタンダードテイスティング”で紹介したグレンフィディック12年です。
昨年市場に出回り始めたリニューアル後の現行品ボトルで、いつかコラムで取り上げようとボトルだけは買ってあったのですが、年明けの更新に回ってしまいました(汗)。

グレンフィディック12年スペシャルリザーブ 平凡にして非凡な1本:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.10 | LIQUL - リカル -

コラムにも書いたように、グレンフィディック12年は味、価格、流通量、それらのバランスが優れた、定番品として申し分ない1本だと思っています。
勿論、万人向けオフィシャルスタンダードとして突き抜けた仕様にはなっていないため、嫌なところが少ない反面、良いところも控えめで。。。だから面白みがないし、1杯の満足感としてはそこまでと感じる方も多いと思います。

ですが、軽やかな熟成感と爽やかなフルーティーさは、近年のスペイサイドモルトのキャラクターど真ん中であるだけでなく、若さも目立たない点は好感がもてる仕上がり。
ハイボールとの相性はバッチリであるだけでなく、同ブランドにおける上位グレードにも通じる、フルーティーさが備わっているのもポイントだと思います。
ちゃんとハイエンドへのステップ、エントリーグレードとしての役割も果たしているんですよね。

どこにでもあり、目立った仕様もないため平凡すぎて軽視されがちですが、改めて飲んでみると、なんだ結構良いじゃないかと、その非凡さを感じる銘柄の代表格。年間100万ケース以上販売しながら、このクオリティが維持されているのは凄いことです。

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一方で、2015年から販売されていた(日本市場では2016年頃から)、写真の1世代前のボトルと比べると、リニューアル後の今回のボトルは、麦由来の甘みがプレーン寄りになって、その分樽由来のフレーバーに硬さが目立つようになったと感じています。

これはさらに古い世代のボトルと現行品を比べると、一層華やかに、しかし麦芽風味はプレーンに、という変化が感じられると思います。
理由はわかりませんが、やはりあれだけ量産しているので、多少なり品質や樽使いに影響があっても仕方ないのかなと。それはが今回はた、またまハイボールに合う仕上がりだったというだけなのかも。
ですがそんなことを言ったら、同じく12年のシングルモルトで売り出している某静かな谷のように、リニューアルする毎に樽感が薄く若さが目立って、いったいどうしたのかという銘柄も散見されるなか。他社スペイサイドモルトがリニューアルする度に、グレンフィディックの安定感が際立つ結果になっているようにも感じます。

我々ウイスキー飲みって、常にフルコースの満足感を求めているわけでも、波乱万丈の展開をグラスの中に求め続けているわけでもないんですよね。食中酒や風呂上りにさっぱり飲みたいという時に、このハイボールはピッタリなのです。
ノーマルなブレンデッドで、例えば角やデュワーズのように、同様にオーキーなフレーバーを備えたものとも異なる、ハイボールでのバランス、味わいの深さと満足感。適材適所、デイリーウイスキーってこういうヤツだと思います。

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余談:グレンフィディック蒸溜所の蒸留器については、写真のように異なる形状のもの、加熱方式も間接だけでなく一部直火蒸留があるなど、複数のタイプが存在します。
これらで蒸留されたニューメイクは、同じタンクに混ぜて貯められるため、スチル毎で見れば原酒の造り分けが行われているものの、全体としては均一化されている蒸留所であるのだそうです。
なるほど、香味のブレの少なさはそこにあるのかと、安定感の裏付けに加え、時代時代で味が変わってきているのは、麦芽品種の違いだけでなく、この一団を構成するスチルの形状や蒸留方式が時代で一部変化し、樽詰めされるグレンフィディックの原酒を構成するピースが変わってきているからかもと、予想しています。