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SABUROMARU ZERO
”THE FOOL”
Heavily Peated (50PPM)
Aged 3 years
Distilled 2017
Bottled 2020
Cask type Bourbon barrel
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5)

香り:甘く香ばしい、焚火の後のような落ち着きのあるピートスモーク。麦芽糖、あるいはもろみを思わせる香りが若さを感じさせるが嫌味な要素は少なく、どこか素朴である。微かにオレンジピールのほろ苦さ、柑橘感が混じり、アクセントになっている。

味:オイリーでスモーキー、麦芽由来の甘みに加えて柑橘の皮や綿を思わせるほろ苦さ、穏やかな酸味。加水で整えられており口当たりはスムーズで、じわじわとスパイシーな刺激もある。余韻はピーティーでビターなフィニッシュが長く続く。

麦、内陸系のピート、そして樽と原料由来の柑橘系のニュアンス。ここに若さに通じる若干の垢ぬけなさ、オフフレーバー要素が混じっている。複雑さはあまりないが、加水と複数樽のバッティングによってバランスがとれ、三郎丸蒸溜所の個性を楽しみやすく仕上がっている1本。
例えるならば、ピートのフレーバーの系統としてはブルイックラディやアードモア、酒質のオイリーさはラガヴーリンに似て、麦芽風味と垢抜けない要素が三郎丸。これをベースに熟成が進み、加水やバッティングで整っていくとすれば、将来を期待せずにはいられない。

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若鶴酒造・三郎丸蒸溜所、2017年のリニューアル後の原酒でリリースされた、初のシングルモルトウイスキー「三郎丸0”THE FOOL”」。この三郎丸0はカスクストレングス版が200本、48%の加水版が2000本リリースされ、今回のレビューアイテムは加水版となります。
(カスクストレングス版のレビューはこちら。)

カスクストレングス版は、若鶴酒造の酒販サイ「ALC」での販売開始から数十秒で完売したことで話題になりました。一方で、同酒造敷地内にある販売ブース・令和蔵でも販売され、こちらは来場者に本数がいきわたり、比較的穏やかに(とはいえ即完売)販売が行われたとのことです。

現地では製造関係者との交流に加え、試飲提供や車での来場者向けのドリンク、おつまみの提供等もあり、地元の蒸留所に期待する愛好家を中心に販売・交流が出来たというのは、いい雰囲気だなと感じました。
また、加水版についても普段若鶴酒造と付き合いのある問屋・酒販店に卸されており、発売後に店頭を探して無事購入できたという声も、SNS等で見かけます。

ブームもあって何かと話題になりがちなジャパニーズウイスキーですが、こうしたクラフト蒸溜所のファーストリリースは、本来は地元のユーザーが、あるいはマニアックな愛好家が盛り上げていくレベルのものじゃないかなぁと思うのです。
それこそ、ブーム前のイチローズモルト・秩父蒸留所のファーストリリースはそんな感じでした。

その点で、今回の三郎丸0はネットはさておき、地元を優先した形の販売になっており、自分はこれで良いんじゃないかと感じています。

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前置きが長くなりました。
今回レビューする三郎丸0、THE FOOL は、2017年に蒸留された原酒をバーボン樽で3年熟成させ、複数樽バッティング、加水調整したものです。
三郎丸蒸留所のリニューアルにおける酒質の変化や、蒸留所に関する話はカスクストレングスのレビュー記事でまとめているので、今回は飲み比べ、両リリースの違いに触れていきたいと思います。

まず前提として、どちらも同じ樽からの原酒構成であるため、香味の要素は当然同じ傾向にあります。
そのため、カスクストレングスを飲まなければ三郎丸蒸留所の個性がわからないとか、そういう事はないです。加水版でも充分三郎丸蒸留所のキャラクターと、その可能性を感じられます。

ただ、加水の方が香味が落ち着いており、良い部分も多少勢いが弱まった反面、2017年蒸留の三郎丸原酒にある"旧世代の設備の影響"も控えめで、目立たなくなっているように思います。
カスクストレングス版は、ネガティブな要素も多少抱えているのですが、良い部分、魅力的な要素がそれ以上の勢いでカバーして、厚みのある酒質の一部にしてしまっているという感じです。
その点で、ウイスキーマニアが望むような面白さは、カスクストレングスの方が強く、加水版は普及品として広く蒸留所のキャラクターをPRすることに向いている。当たり前な構成かもしれませんが、よく考えられたリリースだなと思います。

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なお、三郎丸蒸溜所の2017年蒸留原酒としては、今後熟成を経ていくことでさらに美味いリリースが出てくることでしょう。
蒸留所によっては3年でピークかという酒質のところもありますが、樽感や時間の流れを受け止める酒質の厚みは、三郎丸蒸留所の個性のひとつであり、5年、7年、冷温環境なら10年以上熟成する中で洗練されて、ピーティーでリッチな味わいをさらに楽しめるようになると期待出来ます。
ニューボーンリリースから期待値高かったですが、今回のリリースで確信に変わりました。まさにこれは原石ですね。

また、2018年以降の原酒については設備の更新等から2017年仕込みよりも質が良く、とあるインポーターさんに2018~2020までのニューメイクを渡して感想を伺ったところ「ピートの効きは2018が一番強く、もっとも好みだった」という評価がありました。
自分も2020と2018がリニューアル後4年間の仕込みのなかでは好みであり、来年以降のリリースが今から楽しみでなりません。

三郎丸蒸留所にとって新しいスタートにして、節目の年となった2020年。新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態が世界を襲う、ままならない1年でもありましたが、リリースとしても、蒸留所のアップデートとしても、そして作り手に、それぞれ明るい話題もあり、門出の年ともなりました。
数年後、自分達はこの1年をどう振り替えるのか。成長した三郎丸蒸留の原酒を楽しみながら、出来れば笑顔で振り返りたい、そう思うのです。

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今日のオマケ:大吟醸 若鶴2020 金沢国税局酒類品評会優等賞受賞 仕込み25号
先日、ウイスキーとセットでALCから購入した若鶴の日本酒。
クラフトウイスキー蒸留所は、異なる酒類をメインにしているところも少なくないので、ウイスキー以外にも楽しみがあります。
若鶴酒造は勿論日本酒。これは吟醸香は品の良い程度で、柔らかい米の旨味とコクがメインとして楽しめるタイプ。単品で飲み飽きず、料理との相性もバッチリです。
ああ、今の時期ならぶりしゃぶとか、おでんとか、良いですよねぇ。。。