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GLEN MUSCLE 
No,6 "Nice Bulk!!" 
Most Muscular Edition 
Blended Islay Scotch Malt & Highland Malt Whisky 
Aged 24 to 29 years old 
Distilled 1991 & 1996 
Bottled 2020.10.30 
Selected, Blended by Team GLEN MUSCLE with Y,Yahisa 
Bottled by NAGAHAMA Distillery 
700ml 46.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:オーキーで華やか、トップノートはエステリーでパイナップルや洋梨の果肉、焼き菓子の甘さと香ばしさ。微かに人工的な黄桃シロップ、長期熟成を思わせる角のとれたウッディネス。奥には古典的な麦芽香もあり、時間と共に馴染んでくる。

味:香り同様にオーキーで、黄色系のフルーツソースとほろ苦くナッティーな麦芽風味。アタックは度数相応で柔らかいが、存在感のあるリッチな味わい。奥にはケミカルなニュアンス、若干枯れた要素の混じる古典的なモルティーさ。
余韻はフルーティーさに混じる微かなピート、土っぽさ。ビターなフィニッシュがじんわりと染み込むように続く。

華やかでほろ苦い樽香、熟した果実のフルーティーさと、オールドモルトを思わせる古典的なモルティーさの競演。熟成した原酒ならではの質感、香味の奥行きも特徴の一つ。さながらエステリー&モルティー、あるいは伝統と革新か。同じ90年代蒸留の原酒でありながら、異なる個性が混ざりあい、ボトルやグラスの中での多層的な香味の変化が長く楽しめる。
ブレンド向け輸入原酒(バルク)は質が劣るという潜在的先入観を覆す、まさに「ナイスバルク!!」という掛け声を贈りたい。

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VATTED SCOTCH GRAIN WHISKY 
With GLEN MUSCLE No,6 
Aged 38 years 
Distilled 1982 
Bottled 2020 
30ml 54.3% 

GLEN MUSCLE No,6 24年 + 1982グレーン原酒(38年) ※グレーンを5%程度ブレンド。
今回のリリースに付属する、グレーン原酒をブレンド。
主となるフレーバー構成はほぼ同じだが、2つの原酒の個性に繋がりが生まれ、全体を包み込むような甘味がバランスの良さに繋がっている。このグレーンの働きは”繋ぎ”であり、洋菓子にかけられたシロップ、あるいは寿司の醤油といったところか。香味に一体感をもたらすだけでなく、ボディの厚みが増し、キャラメルのような香味は黄色系のフルーツとマッチする。ゆったりと楽しめるウイスキーへと変化する。


長濱蒸溜所からリリースされた、グレンマッスル第6弾。ブレンデッドモルトウイスキーです。※一般販売は長濱浪漫ビールWEB SHOPで12/1 12:30~
ここまでシリーズが続くと、前置きの必要はないと思いますので多くは触れませんが。グレンマッスルは、ウイスキー愛好家が求める「美味しさだけでなく、尖った魅力や面白さのあるウイスキー」を、愛好家がウイスキーメーカーと協力(リリースを監修)して実現するシリーズです。
原酒は国内外問わず、方式もシングルカスクからブレンドを問わずであり、特にブレンドの場合は原酒の選定、レシピ作りから関わるのもこのシリーズの特徴と言えます。

今回は長濱蒸留所が保有する輸入原酒の中から、熟成年数の長いものを中心にリストアップ。実際にテイスティングし、モルト、グレーン合わせて10種類以上の原酒の中から、29年熟成のアイラモルトと、24年熟成のハイランドモルト、2蒸留所の原酒が選定されました。
アイラモルトは華やかさとナッティーなフレーバー、独特の土っぽさのある古典的な麦芽風味。魅力的な要素が強くありましたが、ボディの軽さがネック。一方で、ハイランドモルトは少し特徴的な風味がありつつも、フルーティーでボディも厚い。
どちらも一長一短な個性を持っていましたが、その場で適当に混ぜたところ、お互いの良い部分が強調されたことから、この2つで進めたいと、リリースの方向性が決まったのです。

その後、2種類の原酒における最適なブレンド比率を模索するため、長濱蒸留所でブレンダーも務める屋久さんと、複数のレシピで試作を実施。最後は直感、ブラインドで投票を行って、リリースレシピを決定しました。
なお、原酒の選定時、ある方針を巡って激しい協議(物理)もあったとかなかったとかなのですが、それはリリースの狙いにも関わってくるので、後ほど説明します。

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(ブレンドレシピの選定風景イメージ。ブレンドは原酒を混ぜてからの時間経過でフレーバーが変わるため、当初想定とは異なる結果になり、改めてブレンドの難しさを認識。)

リリースコンセプトとして、今回のグレンマッスル的な魅力、面白さは2つあります。
1つは「熟成感」。そしてもう1つが「ブレンド」、グレーンの重要性です。

近年、若い原酒のリリースが増えてきています。長熟原酒枯渇のボトラーズリリースもそうですが、蒸留所側も、ニューメイクの段階で雑味が少なく柔らかい味わいの原酒を作り、3~5年でそれなりに飲めるというリリースが、特に新興勢を中心に見られるようになりました。またアメリカでは、科学の力で熟成期間を大幅に短縮するという取り組みまで行われています。

こうしたリリースに共通するところとして、樽感は強く、わかりやすく付与されているものの、原酒そのものと馴染んでいなかったり、あるいは奥行きがなくフレーバーの幅が少ないという傾向があります。
そんなリリースはダメだと、否定するものではありません。それにはそれの良さがあります。例えば樽由来の香味を捉えやすく、フレーバーの理解に繋がるだけでなく、成長の余地があることから、その先の姿をイメージして楽しむことも出来ます。

一方で、熟成した原酒の良さとは何か。口当たりの質感もさることながら、フレーバーの幅、奥行きと言いますか。一つの要素からどんどんテイスティングワードが広がるような、軸のある複雑さだと、自分は考えています。若い原酒でも複数の樽感を足し合わせることで後付けの複雑さを出すことも出来ますが、ともすると化粧の厚塗りをしているようになり、熟成によって得られた複雑さとは違うものになってしまうのです。

今回のリリースに使われている樽はアメリカンオーク、ホグスヘッドタイプです。
同系統の樽構成でありながら、香味で連想するフレーバーの種類が多く、ただウッディなだけではない、柔らかくも存在感のある”熟成感”を備えた香味の広がりを、感じていただけるのではないかと思います。


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(マッスル6にグレーンを後追いで追加。しっかりと樽感、香味のあるグレーンなので、追いグレーンの場合はハーフショットなら1ml程度で十分。スポイトがない場合は、ストローや小振りのスプーンで代用できる。)

そしてもう一つのコンセプトが、先に述べたように”ブレンド”です。
今回のリリースには、1982年蒸留、38年熟成のグレーン原酒が付属しています。
販売ページでは特に説明していないので(非売品扱いなので)、手元に届いて「なにこれ」となるかもしれませんが、このグレーンには、グレンマッスルNo,6に加えて頂くことで、ブレンドにおけるグレーンの重要性、違いを体験できるという狙いがあります。

実は原酒選定の際、このグレーンも候補にあり、グレンマッスルNo,6をモルト100%にするか、ブレンデッドウイスキーにするか、メンバー間で意見が別れました。
ブレンデッドモルトには原酒由来のフレーバーの分かり易さや、リリースとしての特別感があり、一方でグレーンをブレンドした際の全体としてのバランスの良さ、完成度の高さも捨てがたいものでした。

近年のブレンドに使われるグレーンは、ともするとモルトの香味を引き算してバランスを取るものですが、このグレーンは足し算、全体を底上げするような働きがあります。
激しい協議の結果、リリースはブレンデッドモルトで行われることとなりましたが、長濱蒸留所のご厚意で、購入者がブレンドできる”追いグレーン”を付属して貰えることとなりました。
これが、小瓶としてついてくる、1982グレーン原酒です。

飲んでいる途中で味変に使用する。あるいは小瓶を用意して、事前にグレーンを混ぜて馴染ませて、比較テイスティングして楽しむ。。。これまでのリリースにはなかった楽しみ方じゃないかと思います。
また、ウイスキーを注文して、加水用の水が出てくるBARは多くありますが、グレーンが出てくるってのも斬新ではないでしょうか(笑)。
なお、このグレーンはかなり香味のしっかりしたグレーンなので、加えるのはハーフショットに1ml程度で充分です。
馴染ませる場合はもう少し加えても大丈夫ですが、入れすぎるとグレーンが勝ち過ぎてしまうので注意が必要。。。そうした変化も飲み手の遊び心として、楽しんで貰えたらと思います。

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長濱蒸溜所とは、今年2月にリリースされた第2弾”Shiagatteruyo!!”に続くタイアップ、リリース監修となりました。そして2020年に予定されている、最後のリリースとなります。
新型コロナウイルスの感染拡大という難しい状況かつ、蒸留所としてはシングルモルトリリースに向けても多忙を極めるなか、我々メンバーの要求への柔軟な対応に加え、上述の追いグレーンをはじめ多くのご厚意を頂きました。

ですが、そのおかげで愛好家から見てワクワクするような、美味しいだけではない要素に富んだリリースに仕上がりました。
今回のリリースは決して安価ではありません。原酒価格の高騰から、マッスルシリーズで初の20000円OVERとなってしまいました。故に、手にとって頂いた皆様にも感謝であり、それに見合う価値、美味しさや楽しさを感じて頂けたら幸いです。

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2020年にリリースされたグレンマッスルシリーズは、構成原酒含めて計6本。まさかここまで続くとは思いませんでした。
メーカー、ユーザー問わず本当に多くの愛好家によって支えられたシリーズだと思います。
そして来年も、我々の旅は続きます。。。

Thanks to Glenmuscle officicals and lovers.
See you Next Muscle.




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余談1。
今回のラベル、どこかで見たことがあるという方も居ると思います。
1つは過去の偉大なリリースで、もう一つはスコットランドのどこかで・・・です。
前者についてはお察し頂くとして、後者はウイスキー愛好者でスコットランド・スペイサイド地方を旅行した人にとっては、一度は目にしているのではないかという、有名な(?)標識がベースになっています。
写真は、先日カレンダーの紹介もさせていただいた、K67さんから頂きました。
どこにあるか、現物をGoogleMAP等で探してみてください。


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余談2。
このシリーズから、Eclipseの藤井さんがシードル醸造所設立、創業のためチーム活動を休止されています。
以前から計画は聞いていて、でもシードルって言っても、ガレージみたいなとこで少量から作るんでしょ?、ビール的な感じで。。。と思ってましたごめんなさい、先日公開された外観写真を見て震える規模でした。
日本にはまだ馴染みの少ないシードルですが、リンゴそのものは日本の食文化に根付いており、生産量も多くあります。ジャパニーズウイスキーならぬジャパニーズシードル、良いですね。是非理想とするシードルを造られ、お店で飲める日を楽しみにしています!!


補足:グレンマッスルのリリースにあたって。
少しでも手に取りやすい価格でコンセプトに合致したリリースを実現するため、我々チームメンバーは監修料、及び販売に伴う金銭的な利益の一切を得ておりません。またメンバー個人が必要とする本数についても、販売元から通常価格で購入しております。