ロングモーン 18年 ダブルカスクマチュアード 48% シークレットスペイサイド
LONGMORN
18 YEARS OLD
DOUBLE CAKS MATURED
Cask type American Oak Barrels and Hogsheads
700ml 48%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1か月程度
評価:★★★★★★(6)
香り:華やかでオーキー、ドライな香り立ち。奥にはメレンゲクッキーのような甘さ、砂糖をまぶしたオレンジやパイナップルなどのドライフルーツ。スワリングしていると洋梨を思わせる品の良いフルーティーさも感じられる。
味:口当たりはスムーズで、乾いた麦芽風味から粘性のある黄色い果実風味が広がる。まるでクラッカーの上に洋梨のジャムやリンゴのコンポートを載せて食べたよう。余韻にかけてはウッディで軽いスパイシーさ。オーキーな華やかさと黄色いフルーツがバニラ香を伴って鼻腔に抜け、ドライな質感の中にねっとりとしたオークフレーバーが舌の上に残るように長く続く。
スペックからの予想を裏切らない構成。香味ともアメリカンホワイトオーク系、オーキーな華やさが主体で、近年のロングモーンらしくボディは軽めだが、線が細いというわけではなく樽感の中に麦芽由来の甘みもほのかに感じられる。少量加水すると濃縮感のあった中盤以降のオークフレーバーが伸びて、スムーズに楽しめる。ハイボールも美味しいが、これじゃなくても良いかもしれない(汗)。
また、キーモルトとしての位置づけから、シーバスリーガル・アルティスあたりとの飲み比べも面白そう。
日本では2020年9月に、本国では7月にペルノリカールから発売されたシークレットスペイサイドシリーズ。同シリーズはシーバスブラザース社傘下の蒸留所の中でも、これまでシングルモルトのオフィシャルリリースが積極的にはされてこなかった
・キャパドニック
・ロングモーン
・グレンキース
・ブレイズオブグレンリベット
スペイサイド地域の4蒸留所から構成される、シングルモルトブランドです。
要するにシーバスリーガルのキーモルトでもあるこのシリーズ。バランタインからも同じようなシリーズが出ていますし、有名ブレンドの構成原酒やブレンデッド向けだった蒸留所からシングルモルトがリリースされるのは、最近のトレンドとなってきているようです。
※シークレットスペイサイドのラインナップ詳細は、ブランドサイトやニュースリリースを確認いただければと思います。
(シークレットスペイサイドシリーズ。ロングモーンは18年、23年、25年の3種類がリリースされている。)
しかし全て18年熟成以上という中長熟ラインナップというだけでなく、一応限定品扱いとはいえ閉鎖蒸留所であるキャパドニック蒸留所の原酒を、ピーテッドとノンピートの2パターンでリリースしてくるとは思いませんでした。
それだけ原酒のストックが潤沢で、代替の蒸留所もあるということなのでしょうか。とはいえ、世界的なウイスキーブームの中で閉鎖蒸留所の原酒というのはある日突然入手困難になるものです。BAR等をやられている方は、将来用にストックされても面白いかもしれませんね。
改めまして今日のレビューアイテムは同シリーズから、みんな大好きなロングモーン18年です。
ロングモーンは数年前に16年が終売となり、新たにリリースされたNAS仕様のディスティラーズチョイスを海外から取り寄せてテイスティングして・・・率直に言えば残念な気持ちになったという記憶のある蒸留所です。(その後16年も新たにリリースされていたようですが、こちらは未確認。)
(ロングモーン・ディスティラーズチョイス。若く、そして樽の乗りも熟成期間相応というシングルモルトだった。)
近年の同蒸留所の傾向としては、酒質がライトかつドライになっており、これは他のスペイサイドの蒸留所にも見られる変化ですが、ロングモーンの変化は特に大きかったように思います。
一方で、今回の18年はどうかと言うと、これは悪くない、むしろ良いです。
アメリカンホワイトオーク主体の、華やかでドライ、黄色系のフルーティーさがあるタイプ。樽の分析とかはする必要なく、近年のロングモーンの酒質にバーボン樽とホグスヘッド樽で熟成させたらこうなるよね、というどちらの意味でも期待を裏切らない仕上がりとなっています。
この手のフレーバーはボトラーズに多かったタイプですが、最近はオフィシャルでも増えてきました。市場で人気の味に合わせてきたというところでしょうか。また、18年にしては樽感が濃厚な部分もあり、20年以上熟成した原酒も一部使われているのではないかと推察します。幅広く原酒を使ってバランスをとれるのは、オフィシャルの強みですね。
さて、この香味の系統だと、ライバル筆頭候補は相変わらずグレンモーレンジ18年です。
中身のレベルは同格。となると気になるのは価格です。
その他、近い熟成年数かつクオリティのシングルモルトも含めて市場価格を比較してみると・・・
・ノッカンドゥ21年 43% 9000~10000円程度
・グレンモーレンジ18年 43% 10000円程度※
・ロングモーン18年 48% 11000~13000円程度※
・グレンバーギー18年 40% 12000円程度
・ベンリアック20年 43% 12000円程度
・グレングラント18年 43% 14000円程度※
※はオークフレーバーが特に強く出ているタイプ。
となって、後はネームバリューや、蒸留所が持つ話題性等も考えたら、これは良いところにまとめてきたとも思います。
No,1候補グレンモーレンジ18年は健在ですが、度数を考えたら5%高いロングモーンも充分選択肢に入る。昨年、アラン18年がシェリー系にシフトして、ライバル不在になったジャンルでしたが、これは強力な対抗馬の登場です。
また、ロングモーンで18~20年熟成、同じようなフレーバー構成でボトラーズからリリースされたら・・・今この価格じゃ買えないです。
1990年代以前、ブレンデッド優先の時代に芽吹き、2000年代にかけてコアユーザーのニーズを満たし、地位を築いたボトラーズリリースですが、昨今はオフィシャルが強力ライバルとなりつつあります。
いやだって、こんなオフィシャル出されたら、これでいいやって思っちゃうじゃないですか。
行列に並んで食べられるかもわからない、人気料理店のこだわりの1品料理より、毎日食べられるチェーンレストランの上位メニューと言う選択肢。自分のような探求側の人間がその思考で良いのかと思いつつも、流石ペルノさん、いい仕事してますねぇ、としみじみ思わされた1本でした。
コメント
コメント一覧 (8)
バランタインもそうですが、こういう背景には、
・各社がブレンド用以外のシングルモルト向きを製造。
・長熟のグレーンの量が不足。
の背景があるのでは?と思っています。
(モルトは長期熟成も付加価値狙って一定量あるが、グレーンはますますボリュームゾーンのブレンデッドを支えていかねばならない。ブレンデッドのNAS化、ヴァッテッドモルトの販売、バランタイン、シーバスのみならずジョニーウォーカーも然り。)
大手メーカーの動きを見ると、例えばディアジオは1990年代からレアモルトシリーズを、2000年初頭あたりからリミテッドリリースを始めたり、シングルモルトのブランド力向上に向けて色々と動いていましたので、他社含めてそうしたシングルモルト向けに原酒製造がスタートしていてもおかしくないですね。
グレーンについては意識したことはありませんでしたが、シングルモルトをブランド化するという動きの背景にあるのかもしれませんね。グレーンが足りない?じゃあシングルモルトで売ってしまおう、みたいな。
いずれにせよ今回のシリーズや、オフィシャル回帰に繋がる一連の動きは、今後ますます続いていくのでしょうね。
くりりんが再開して嬉しいです。
コメントありがとうございます。
そう言って頂けて嬉しいです!
仕事が忙さを増し、家庭面での時間を大切にしたい、見直したい、といったことをコメントされてるのを見ていました。
その後更新が途絶え…もう新しい記事は読めないのかもしれないと覚悟していました。
しかし、過去記事を読み返し、膨大な情報量から、新たにヒントを得ることも多くありました。
このブログが、ウイスキーを知るうえで、本当に貴重で大きな存在だったのだと、改めて実感していました。
更新再開されただけでも、なんだか感動的ですらあります…
どうか、くりりんさんの無理の無い頻度で、記事を生み出していってください!
例のウイルス騒動が始まり、一年近くたちそうです。
子どもがいない私が言うのも気が引けるのですが…最近、考えずにはいられません。周りの大人や友だちがマスクをしており、子どもながら対策を強いられている状況は、子どもたちの心や潜在意識にとっては、かつてない体験なのではないか?と…その子どもたちが、なんとか家庭の中では、今まで通り、大好きなお父さんお母さんの表情を見ながら成長していってほしいな、とも…
話がそれました、すみません💦
ウイスキーに関しては、相変わらず、自分の購入できる範囲で(くりりんさんの6点あたりを目安に)試してます。
ウーガダールの記事に影響を受け購入しましたが本当に美味しくて…相手の誕生日にかこつけて2本目買いました。
また、狙ったわけではないのですが、くりりんさんの記事にあった
グレンギリー 1997~2012 のバッチ No.12 を偶然購入でき、これから楽しみです。
長文乱文すみません。
更新されてるか、たまにブログのぞいてみたいと思います。
古い在庫も多いのでくりりんさんの投稿を参考にすることもあります。
復活嬉しいですね、妻と一緒に楽しく読ませてもらっています。
これからも頑張って下さいね。
コメントありがとうございます。
ここまで深く読み込んでいただいて、本当に嬉しいです。
ブログは自分にとって趣味の一つですから、途切れさせたくはないですね。毎日でなくても空いた時間で長文的な記事だけでなく、あるいはツイート的な内容も増やしていっていいのかなと思っています。
コロナの影響は色々と考えざるを得ませんでした。飲み歩きも以前のようにできないので、情報発信もどうしていくか、色々考えた4か月間でありました。
ままならない状況が続きますが、ワクチンの臨床結果など明るいニュースが無いわけではありませんし、きっと来年以降状況が好転することを願っています。
今後ともよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
なんともうらやましい限りです。そしてその手助けに自分のブログが一役買っているというのは、なんだか誇らしい気持ちになります。
オールドのほうはなかなか増やしていけませんが、何とか情報を拡充していければ良いなと思っています。例えば、ボトルのレビューだけでなく、銘柄の解説記事なんかもあっていいかなと。
今後ともよろしくお願いします。