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GLEN MUSCLE 
"No,5 First Growth" 
Age: Over 3 Years Old 
Type: Japan Made Whisky 
Cask type: 1st fill Bourbon Barrel (Single Cask Blended Whisky)
700ml 56%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後2週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:焦げたオーク、焚き木やタール、土っぽさを伴うスモーキーな香り立ち。無骨なウッディネスの奥から、エステリーなニュアンスと、グレープフルーツやオレンジなどの柑橘香がシャープに鼻腔を刺激する。またほのかにBBQソースを思わせる甘さも香ってくる。

味:コクがあってオイリーな口当たり。チャーオークのキャラメルを思わせる甘みと、酒質由来の酸味。ボディは厚く、焙煎した麦芽を思わせる香ばしい甘さが下支えに。余韻はブラックペッパーのスパイシーさ、しっかりとピーティーでスモーキー。カカオを思わせるほろ苦さと、樽由来の焦げたウッディネスが染み込むように残る。

ピーティーで厚みのある三郎丸モルトの個性と、チャーオーク系の樽香を主とした香味構成。樽感は決して圧殺的な効き方ではなく、原酒の魅力を邪魔せず、若さを軽減して全体をまとめるような仕上がりとなっている。時間経過でバニラ香や、使われたスコッチモルト由来の華やかさ。少量加水するとさらにまとまりが良くなり、若いなりに整ったスモーキーな味わいが楽しめる。厚みがしっかりあるのでロックにしても悪くない。
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11月2日、私を含めた愛好家メンバーでリリースに関わらせてもらっているオリジナルブランド、グレンマッスルの第5弾が、若鶴酒造(三郎丸蒸留所)から発売されました。
※本リリースは既に完売となっております。ご購入いただきました皆様、本当にありがとうございました。入荷BARリストについてはとりまとめ完了次第、後日追記いたします。

モノは今年の3月に同蒸留所から発売されたグレンマッスル No,3 New Born Little Giantを、バッファロートレース蒸留所の樽で追加熟成した、シングルカスクブレンデッドです。
構成の約半分を占める三郎丸蒸留所のモルト原酒(2017年蒸留、バーボン樽熟成#274)がNo,3時点では2.5年熟成であったため、ニューボーンブレンドという位置づけでしたが、それが計3年熟成となり、スコッチの基準ではNew Born からWhiskyへと至ったことから、成長と品質を表す意味を込めて”First Growth”と名付けました。

グレンマッスルとは何か、あるいは本リリースのエピソードや我々メンバーの立ち位置については、過去の関連記事やNo,3のレビュー記事でがっつり語っているので省略します。(No,3の紹介記事はこちら
ブレンドの比率はモルト95%、グレーン5%で、キーモルトは前述の通り三郎丸モルト。残り半分の原酒は三郎丸蒸留所が保有していた熟成10年以上の輸入スコッチモルトとグレーンですが、一口にバルクといっても樽の違いやピートの濃淡等で多くの種類があり、これらの原酒を用いたオリジナルブレンドレシピの構築に、我々愛好家メンバーで関わらせてもらったわけです。

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(ラベルにも使用した、熟成庫内での原酒確認風景。ラベルを見た海外の方から「ビューティフルだ、是非ほしい」と蒸留所に直電まであったとのことで、何だか嬉しい。)

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(同じレシピのブレンデッドの熟成前後。グレンマッスルNo,3(右)に比べ、追加熟成を経たNo,5のほうが見た目も香味も色濃い仕上がりとなっている。その変化は、たった半年と侮ることなかれ。)

No,3時点では、三郎丸モルトの若さに加えて、モルト95%と攻めたブレンド構成から、それぞれの原酒のフレーバーがはつらつと主張するような、若さに由来する勢いも見え隠れする味わいでした。これはあえてそう仕上げており、追加熟成でバランスが取れてくることを狙っていましたが、結果は概ね予想通りとなったと思います。

各原酒のフレーバーは丸みを帯び、追加熟成に使った樽からエキス(あるいはバーボン)が染み出たのか、全体的にまろやかでキャラメルのような甘みが備わっている。そのため擬似的ですが、熟成感も3年が半分とは思えないくらいに感じます。
それでいて三郎丸モルトらしいピーティーさは健在。余韻にかけてはウッディな渋みが少々口に残ることから、これ以上熟成させた場合はバランスが崩れてしまったかもしれませんが、現時点では樽由来の要素として余市の新樽熟成や、あるいは焦げた木材のエキスやタール系の要素がピートフレーバーと合わさって、どこかラガヴーリン16年にも共通するニュアンスが感じられる・・・。
ちょうどいいところに落ち着いてくれて安心するとともに、改めて熟成のピークを見極める難しさを感じました。



(三郎丸蒸留所の最近の状況については、蒸留所責任者の稲垣さんにも協力頂き、Liqul誌の対談企画が詳しい。2017年のリニューアル前後の変化は前編、2018年以降やThe Foolの情報については後編を参照。)

Liqulでの対談企画や、No,3のレビュー記事でも触れていますが、三郎丸蒸留所は2017年にかけて行われた大規模リニューアルにより、巨人と称される偉大な蒸留所にも届きうる、素晴らしい個性を身に着けました。
酷評されていた酒質は過去となり、愛好家が、世界が驚くウイスキーが北陸の小さな蒸留所で育とうとしています。その蒸留所の個性を後押しするような、将来の姿と成長をイメージしてブレンドしたのが、No,3 New Born Little GiantとNo,5 First Growthです。


11月12日には、三郎丸蒸留所から初のシングルモルトリリースとなる、三郎丸0 ”THE FOOL”がリリースされる予定です。いよいよ、新生・三郎丸蒸留所の旅が始まります。
グレンマッスルNo,3やNo,5に関心を持たれている方は、三郎丸蒸留所の魅力についても既にご存じとは思いますが、構成原酒は同じ2017年蒸留のバーボン樽熟成原酒です。我々がイメージした将来の姿と、その蒸留所の現在地を、合わせて楽しんでいただけたら嬉しいですね。

最後になりますが、今回は結果的にラベルから中身まで、やってみたかったことが全て実現したリリースとなりました。
新型コロナウイルス感染拡大で様々な混乱もあるなか、蒸留所責任者の稲垣さんには我々のプランにご理解とご協力を頂きました。もう富山県に足を向けて寝られません。最大級の感謝を込めて本記事の結びとします。
また是非面白いこと、ワクワクするようなことを一緒に考えていけたら良いなと思います。

それでは今日はこの辺で。
See you Next GLEN MUSCLE・・・
mascle6_coming soon