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KIRIN WHISKEY 
RIKU 
LANS DISCOVERY 
PURE & MELLOW 
500ml 50% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:自宅
評価:★★★★★(5)(!)

香り:ややドライでクリーン、グレーン由来のバニラの甘さを感じる香り立ち。樽由来のえぐみやネガティブな感じは少なく、オールドのカナディアンを思わせる軽い植物感、焦げたようなウッディネスのアクセント。時間経過で焼き芋を思わせる穀物系の香りとしても感じられる。

味:スムーズでメローな口当たり。とろりとしたコクのあるグレーン系の甘味、オレンジなどの樽由来のフレーバー、じわじわとビターでウッディな刺激。樽感は新樽オンリーという感じではなく、バランス良く整っている。重みのあるボディに加え、度数があるため口内での香味の広がりもある。
余韻にかけて、鼻孔にグレーンスピリッツを思わせるアルコール感が多少感じられるが、口内には張り付くような穀物感、樽由来の苦味を伴って穏やかに続く。

アメリカンウイスキー寄りのフレーバー構成で、グレーンベースのブレンドと言える味わい。香りがそこまで広がらないため、熟成は若い印象だが、口当たりはメローでマイルド、スコッチタイプのグレーンとは異なる味の広がりと起伏が魅力。少量加水するとよりスムーズに。度数があるためロックにしても持続力があり、ハイボールでもメローな飲み口を楽しめる。何より後述の通り、ブレンドや熟成など様々な使い方が出来る面白さもある、コスパ良好のグッドリリース。

※ラベルには「香りはなやか」とあるが、グラスによってはかなり香りが拾い辛く、ドライなだけというケースも。ロックやソーダ割りで味を楽しむものと割りきって、飲んでいくのが一案。

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先日、キリンが新ブランドとしてリリースした2銘柄のうちの一つ。輸入グレーン原酒と御殿場蒸留所の原酒を使った、グレーンベースのワールドブレンデッドウイスキーです。
香味から推察するに中身はほぼグレーン系の原酒で、モルトは使われていても少量。全く期待していなかったのですが、試しに飲んでみて正直びっくりしました。

香味からまず最初に連想するのは、富士御殿場のヘビータイプグレーン。ここに混じってくる主たるフレーバーが、バーボンやカナディアン系のそれ。これはWHISKEY表記やLAND DISCOVERYのサブタイトルと掛けて考えると、アメリカ”大陸”から調達した、輸入グレーン由来の風味と考えられます。
その調達元となる蒸留所の一つは・・・もう皆まで言うなという感じでもあるので、トップの写真の通りで※。聞いた話によると、キリンは同蒸留所から技術者を招いて、御殿場蒸留所の設備によるバーボンタイプウイスキーの試作をしたり、単調になりがちなグレーン原酒に新しい選択肢をつくろうと、いろいろ動いているようです。
※勿論、あくまで推測でしかありません。

バーボンウイスキーとグレーンウイスキーは、原料は広義的にはグレーン(穀物)で同じです。しかし製法や原料の比率、樽使い等の微妙な違いから、バーボンのほうが香味にパンチと起伏があり、グレーンのほうはソフトでメローだが香味の変化に乏しいという印象があります。
近年の安価なブレンデッドスコッチは、7~8割がグレーンとも言われていますが、ここまで突き抜けたタイプは逆に珍しく。序盤はグレーンらしいメローな感じが前面に、口に含んだ後の変化にバーボン的なニュアンスが混じるなど、甘みと苦み、そしてそれらの膨らみや起伏、飲んでいて飽きさせないグレーンウイスキー+αの香味の変化がポイントだと感じます。

若い原酒がメインであるためか、香味のなかにスピリッツ的なアルコール感が混じる部分はありますが、用いた原酒それぞれの良い部分が味に出ていて、これが1500円弱(750ml換算で2200円程度)というのは凄い。現在の市場において、この価格でこのレベルのグレーンやバーボンは、他社では買えません。

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(陸で冷凍ハイボール。ノーマルなハイボールより甘みが引き立つ。同ブレンデッドには、ラベルにメーカー推奨のレシピ、楽しみ方書かれている点も面白い工夫。一方、デザインがどことなく特級時代のNEWSを思わせるのは、ある意味でキリンらしさなのかもしれない。)

このブランド「陸」のリリースにあたっては、キリン側から「国産ウイスキーが原酒不足であり、新しい話題や価値を提案できていなかった。」「若い人たちにウイスキーは”こんなもんだ”と思われているのを打破すべく、新価値提案をするブランドとして立ち上げた」とする説明がされていますが、確かに今までのオフィシャルからは無かったリリースです。
かつて富士山麓樽熟50%のリリースで、ブーム前の市場に衝撃を与えたキリンウイスキーですが、今回もまた新しい可能性を打ち出してくれたと思います。

また、今回のボトルはスタンダードな飲み方だけでなく、グレーンとして他のモルトと合わせて自分でブレンデッドを作るもよし、ウッドスティックをいれて樽感を増すもよし、それこそ1リットルサイズから販売されているミニ樽にいれて使うなど・・・ベースの味わいにネガティブさも少ないので、まさに自由に使えるウイスキーであると感じます。
「陸」は、複数のウイスキー銘柄を自宅で楽しむ30~40代男性をターゲットとしているそうですが、こういう需要はニッチだけれど、周囲を見ていると確かにあります。
高品質なグレーンウイスキーとして、様々な楽しみ方が出来る面白い新商品。これが愛好家のなかでどのような広がりを見せるのか、今から楽しみです。