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SUNTORY 
YAMAZAKI 
SINGLE MALT WHISKY 
No Age 
Release 2020 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:やや粗さはあるが、オーキーで複雑なウッディネスを感じる香り。その樽香は、アメリカンオーク由来のバニラと華やかさに、ミズナラ香のアクセント。微かにワイン樽由来と思しき果実香やハーブなど、複数の樽が交じり合う山崎らしさがある。

味:口当たりはマイルドで、香り同様に複数の樽由来のフレーバーが粘性の中から主張する。バニラや砂糖漬けオレンジピール、微かに杏子や干し柿。鼻孔に抜けるオークの華やかさと香木を思わせる樽香。奥行きはそれほどでもなく、余韻にかけてスパイシーさ、若さ由来の刺激も若干あるが、フレーバーティーのような甘味を伴うタンニン、ほろ苦いウッディネスと共に長く続く。

山崎12年系統のフレーバーが感じられ、バランスが良くなった山崎NAS。さながら山崎12年レプリカといったところ。多少の粗さはあるが、特筆すべきは香味のなかに感じることが出来るミズナラ香。全体の軸になるアメリカンオークの華やかさが熟成感を増し、微かに混じるワイン樽のベリー香と余韻の苦味が、香味全体にボリュームを与えている。
加水すると香りはさらにオーキーな華やかさが主体に、味わいはややビターな印象であるが、サントリーのウイスキーらしく香味のバランスは保ったまま伸びる。

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美味しくなった、という話を聞いていた山崎のノンエイジの2020年生産ロット。サントリーやニッカは毎年毎年原酒の調整からか、微妙に味を変えてくる傾向があり、それが良い方向に作用しているという話です。

以前の山崎ノンエイジは、リリース初期の頃だとワイン系の原酒が強く、それで若さを誤魔化したような印象があり。。。数年前に購入して飲んだものは、そのワイン系の味わいが穏やかになって山崎12年に共通する香味が感じられる一方、パンチョンの若い原酒がメイン?というくらいに華やかさよりも乾いた木のドライでビターな主張が目立つ、ハイボール用かと思う構成が印象に残っていました。

※2016年~2017年流通の山崎ノンエイジ。当時感じた感想と、今回のボトルとの違いは平均した熟成感とミズナラのニュアンスにある。当時からオークフレーバーはあったが、若さが目立っており、最新ロットにかけて全体が整ったであろうことが、コメントを比較することで見えてくる。

そのため、良くなったと言っても、ちょっとオーキーな華やかさが強くなったとか、そんなもんでしょ?と。侮っていたのですが、これは飲んで驚きです。
勿論、これまでのNAS山崎と比較してベクトルが大きく変わった、というわけではありません。しかし山崎に求める香味がはっきりしたというか、軸となるべき原酒の熟成感が増したというか。12年に比べたら粗さはあるものの、要所を抑えているような印象を持つシングルモルトに仕上がっているのです。

シングルモルト山崎の魅力は、複数の蒸留器で作り分けられる原酒に、バーボン、シェリー、パンチョン、ミズナラ等、多様な樽の使い分け。恐らく単一蒸留所としては世界最高峰と言える原酒の作り分けと、それを活かしたブレンド技術によって作られる、響以上に重厚なウッディネスだと思っています。
こうしたウッディさは温暖な熟成環境である日本らしさに通じる一方、熟成を経ていかなければまとまらず、昨今多くのクラフトが苦労しているように、サントリーもまた若い原酒の使い方で苦労していた印象はあります。それがここに来てハイボールブームを受けて増産していた原酒が使えるようになってきたのでしょうか。粗削りながら、より12年に通じる原酒構成に変わってきたと感じます。

それこそ、価格、入手難易度等を総合的に考えると、現在手にはいるジャパニーズシングルモルトのなかで、家飲みで楽しむならこのボトルで良いのではないかと思えるほど。
こうなると、同じグレードとなる白州ノンエイジも良い変化が出ているのではないかと気になるところ。追ってモノを調達して、レビューしたいと思います。


※6月6日追記:最新ロットを購入し、レビューを公開しました。こちらも過去のロットに比べて良い変化を感じられました。