カテゴリ:
IMG_20200514_214433
GLEN ALLACHIE 
SPEYSIDE SINGEL MALT 
Aged 18 years 
Release from 2018 
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:若干ドライでツンとした刺激を感じるが、砂糖をまぶしたオレンジピール、バタークッキーや焼き洋菓子、キャラメルナッツ、乾いた麦芽。華やかでオーキーな香り立ちがメインにありつつ、仄かな近年系のシェリー感もある。バランス良くまとまっている。

味:熟成感がありつつ、しっかりとしたフレーバーの主張を感じる口当たり。とろりとした麦芽由来の甘味をベースに、オレンジピールやドライファイバーパイナップルを思わせるフルーティーさと、焼き栗を思わせる香ばしさ、微かにシェリーオーク。鼻孔に抜けるオーキーな華やかさに、ほろ苦い果実の皮とナッティーな香ばしさが、余韻にかけて染み込むように長く残る。

オフィシャルらしい複数樽構成のシングルモルト。アメリカンオーク由来の華やかな香味に、適度な熟成感と麦芽風味、そしてシェリー樽由来の甘味の隠し味。オーク系の香味で1本軸は通っているが、多彩なフレーバーを感じることが出来る。少量加水すると、より華やかさとドライフルーツを思わせるアロマ、味では麦芽由来の甘味や蜂蜜を思わせるフレーバーがあり、酒質の伸びを感じる。
これは家飲みでじっくりと楽しみたい1本。

IMG_20200515_110502

先日の25年のレビューでも触れたように、今自分が注目している蒸留所の一つがグレンアラヒーです。
注目する条件はいくつかあるのですが、大きくは「麦系の風味が強く、熟成に耐える厚みがある」こと。あとはシングルモルトリリースに積極的な、実績のある資本が入ってることもあります。

同蒸留所は、過去ブレンド向けの蒸留所として操業してきましたが、2017年にビリー・ウォーカー氏によってペルノリカールから買収された後、2018年にシングルモルトリリースに舵を切りました。それまでオフィシャルシングルモルトはオールドの一時期やリミテッドリリースくらいしかなく、少なくとも愛好家の間でグレンアラヒーの酒質やハウススタイルが注目されることはほぼ無かったと言えます。
しかし、こうして新たにリリースされたオフィシャルを飲んでいくと、なかなかどうして近年のスペイサイドモルトの中で見所のある蒸留所であることに気づかされます。


グレンアラヒーの酒質は、麦芽風味メインでプレーンなタイプです。このプレーンな味わいが、ブレンドには使いやすかったことでしょう。
また、長期熟成に耐える厚みがあり、冷涼なスペイサイド地域にあって、10年前後の熟成ではそこまで樽が強くならないため、麦芽系のフレーバーがメインに。香味の刺激も強くなりますが、熟成を経ていくことで、オーキーな華やかさとフルーティーな熟成香を纏っていく。上述の25年はその香味の最たるところですが、18年も同じベクトル上にあるボトルです。

25年と18年は、原酒構成で1970年代の長期熟成原酒を一部ブレンドしていることが、公式サイトで触れられています。(比率は25年のほうが多いと感じますが。)
樽構成はアメリカンオークのオロロソとPXシェリー樽とのことですが、当時はブレンド向け原酒の位置付けから、熟成にはリフィル、サードフィルといった樽が多かったのでしょう。結果、色濃い熟成ではなく角のとれたオークフレーバーが両ボトルの共通点であり、大きなサイズの樽でじっくり熟成されたことが、この個性を生んでいるように感じます。

一方、18年のほうはシェリー系のニュアンスを見つけやすく、それが香味の幅に繋がっています。オフィシャルラインナップにはシェリー感の強く出た15年がありますが、その系統の原酒も使われているイメージです。
10年に感じられた麦芽風味、12年の正常進化といえる熟成感とまとまり、25年に感じられるリッチなオークフレーバー。。。まさにグレンアラヒーのコアラインナップの良いとこ取りですね。
ただ、自分はこうして様々な香味が1つの軸を中心に展開する複雑さを好みますが、人によってはバラツキがあると感じるかもしれません。

他社オフィシャル製品を見ても、18年前後のミドルエイジはウイスキーとして面白いリリースが多いと思います。グレンアラヒーも例に漏れず、なかなか味わい深いモルトに仕上がっているのは上述のとおり。
万人向けのオフィシャルリリースということで、突き抜けた味わいにはなっていませんが、安心して飲めるウイスキーです。
こういうボトルが家にあると良いなと25年を飲んで思い、18年を我が家に取り寄せてみましたが、その役割を十分果たしてくれそうです。
現在は気軽に飲みにいくことも出来ない状況にありますが、こんな状況であるからこそ、家でちょっと良いウイスキーをのんびり楽しんで、心に余裕を持ちたいですね。