ハイランドパーク 15年 2003-2019 For WU DRAM CLAN 58.2% #6126

HIGHLAND PARK
For WU DRAM CLAN WHISKY SOCIETY
Aged 15 years
Distilled 2003
Bottled 2019
Cask type 1st fill European OaK Sherry Butt #6162
700ml 58.2%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプル
評価:★★★★★★(6)
香り:サルファリーさと湿ったウッディネス。合わせて粘性のあるダークフルーツシロップ、焦げた樹液やみたらし、くるみのほろ苦さ。時間経過で古びたウェアハウスのような、古典的なニュアンスも漂う。
味:シェリーオーク由来の甘酸っぱいダークフルーツのフレーバーと、かりんとうや黒飴の甘さ。リッチな口当たりから、スパイシーな刺激、サルファリーさ、椎茸の出汁のようなエキスも微かにある。フィニッシュはウッディなタンニン、ドライ。硫黄香はあるが、香りほど気にならず、奥には微かにモルティーなフルーティーさも。
第一印象は、ハイランドパークのその他リリースでも度々見られる硫黄を含んだ濃厚シェリー系。”現時点”では、特筆して素晴らしいボトルとは言い難い。ただ、このモルトの本質はシェリー感よりもその奥にある。スワリングした時に混じる古典的なアロマ。口直しで水を含んだ時の口内に残るフルーティーな香味の残滓。加水の変化に加え、硫黄はグラスのなかで比較的早く抜けていく印象で、間違いなく瓶熟推奨。将来の確たる可能性に満ちた1本。
先日Kyoto Fine Wine & Spiritsの店主O氏からサンプルをいただいていたうちの1つ、Wu Dram Clan向けのハイランドパーク。
このグループは、もともとドイツの愛好家2名で構成されていたものですが、そこにO氏が後追いでジョイントし、先日の”鹿バンク”のリリースに続くという流れです。
今回のハイランドパークはというと、飲んだ印象ではまず違和感。店主の好みは古典的なモルトで、なかでもグレンモールが大好きというちょっとマニアックな趣向があったりするのですが。今回のハイランドパークのどシェリーで多少サルファリーでも許容しちゃうのは、モルトマニアックス受賞系というか、欧州の愛好家っぽいチョイスなんですよね。
この点については、選定の経緯を聞いてみて納得。カスク選定にO氏は関わっておらず、選定者はドイツの2名。リリースが決まっていたあとで、グループに加わったのだそうです。
ハイランドパークを傘下とするエドリントングループは、ここ数年15年熟成前後のシングルカスクや、ヴァイキングソウルなどを含めた樽売りを、比較的積極的にやっているような印象があります。
それも一般市場向けのオフィシャルスタンダードではなく、免税向けや、専門ショップ向け、あるいは欧州やアジアの愛好家向けなど、誤解を恐れず言えば「お金がありそうなところに特別感のあるリリースをピンポイントで投入している」ような戦略が見えるのです。
この辺りは、同グループ傘下のマッカランでも類似の動きを見ることができますね。
ただ、近年のハイランドパークのシングルカスクをいくつか飲んだ印象としては、安定感に乏しいというか、クオリティは結構ピンキリであるように感じます。
サルファリーさが目立つものが多いのは好みの問題もあるのでさておき、シェリー感を突き破るようなベース部分の荒さ、シェリー樽由来のフレーバーの濃淡、傾向の違いは現代のファークラスマジックか?というくらいにばらつくのです。
樽売りにあたり、意図的にキャラを変えているとしても、玉石混合の玉になかなか当たらない印象もあり、現代のシェリー系故の難しさなのかもしれません。
ではこのWu Dram Clan向けはどうかというと、先に触れたようにモルトマニアックスが好みそうな、スパニッシュオーク材のエキスの色濃く混じった、濃厚シェリー系・・・で終わらない。今後、時間と共に磨き抜かれた”玉”に変化する可能性を秘めた、カスクリリースであると言えます。
度数高く、熟成年数もそこまで長期ではないので、口内を酒質由来の刺激が強い部分もありますが、言い換えれば開封後年単位で経過しても、経年変化に耐えられる可能性があるということ。硫黄感の抜けは比較的早そうで、グラスの中の変化で将来の姿を感じることができる点もポイントですが、なにより特筆すべきはベース部分の味わいと言えます。
樽材由来のエキスやサルファリーさの裏に、熟成したハイランドパークが持つフルーティーで、古典的な麦芽風味に通じる要素が潜んでおり、瓶熟、開封後変化させることで、数年程度で大きく進化する可能性があります。
ハイランドパークは、過去にも「10年前は全然ダメだったけど、瓶熟で変化した」というボトルがいくつかあり(昨年末、某ストイックな人にブラインドで出されたばかり(笑))、その兆しが現段階で見えている今回のボトルには安心感すらあります。
難しいリリースが多い中でも、光るモノは集まるべきところに集まるんですかねぇ・・・。今後はレダイグ、そして他数種類のリリースも予定されているそうで、その引きの強さ故に今から楽しみです。
コメント
コメント一覧 (3)
瓶熟で良くなる傾向のボトルってどんなものがありますか?
逆に瓶熟向けでないウイスキーなどはどんなものかも教えてもらえるとありがたいです。
コメントありがとうございます。
完全に私の経験則というか、持論になりますが・・・。
良くなる、というのは経年によって該当する要素が馴染むか、そうでないかだと思います。
そして馴染む要素が多いボトルほど瓶熟で良くなり、そうでないものはどうにもならないのだと。
ウイスキーを構成する各要素は、馴染む馴染まないの1か0かではなく、樽由来のフレーバーで比較的短期間から馴染みやすいもの、若さやアルコール感のように10年くらい時間をかけないと馴染まないもの、など段階的なものなので、馴染まないものを瓶熟に向かないウイスキーとして説明すると、過熟感、枯れ感、そしてパフューム系のフレーバーです。
逆に、瓶熟で良くなるウイスキーの傾向としては、ボディがしっかりあって、変化を許容できるタイプに限られると思います。
近年の酒質では、40~43%の加水は瓶熟させると逆に抜けやヒネなどのオフフレーバーが目立ちやすく、熟成によって度数が落ちて40%近くまで下がってしまったものは、ボディが細く上述の枯れ感が出ているため、まず瓶熟で良くなることはないというのが持論です。瓶熟は通常の熟成と違って香味の要素が+されることはないので、今あるものが削られ、変化する中で好ましい形に融合できるかという考え方になります。香味やボディそのものが弱いタイプでは厳しかったり、特殊なフレーバーが出ているものは、その傾向は変わらないということになります。
なお、今回のボトルでは樽感、硫黄感に関する部分が瓶熟の変化で期待できる要素として触れていますが、硫黄はすべてが悪ではなく、樽感と結び付いてベリー系のフレーバーの一要素となるケースがあります。時間経過でそれが良い方向に変化すれば・・・というところですね。