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MACALLAN 
18 YEARS OLD 
SHERRY OAK CASK 
ANNUAL 2019 RELEASE 
700ml 43%

グラス:シュピゲラウ
時期:開封直後
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★(5)

香り:シーズニングのプルーンや黒砂糖を思わせる甘いアロマがうっすらとあり、同時にゴム、焦げた木材や井草を思わせる樽香。奥には青い果実系の要素。これらが全体的に柔らかく広がる。

味:水っぽい口当たりでボディが薄く、そこからふわりとブラウンシュガー、焦げたゴム、デーツやドライプルーンを思わせる甘い含み香。余韻に香り同様の焦げ感のあるほろ苦いウッディさ、出涸らしのお茶のような渋味から、スッと消えていく軽い余韻。

スペインヘレス産シーズニングシェリー100%伝統のマッカランシェリーオーク。
であるが、シェリー樽由来の香味は辛うじて拾えるダークフルーツ系の要素と同時に、焦げた樽由来の若干ネガティブな要素もある。それ以上に、もはや加水に耐えられないのか、ボディは軽く水っぽい。飲めるは飲めるし、最低限のバランスは整っているが、実に物足りない。コクがなく、ただ、後付けしたシーズニングシェリー樽の香味があるだけ。。。

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2018年にボトルデザインチェンジが行われ、以前の肩張りボトル(以下写真参照)から、キャップからネック部分が持ち手で、先端部分が刺さった”古代の剣”みたいなデザインになったマッカランの現行ボトル。
愛好家を中心にあまり良い評判を聞かないマッカランですが、自分が意識してウイスキーを飲むようになった10年ほどでも”現代のマッカランは酷い”という声は定期的に届いてくるため、現在のロットについて同じような感想が聞こえても、さして気にも止めていませんでした。「昔は良かったという声は、いつの時代も一定数あるものさ・・・」なんて。

実際、マッカラン・シェリーカスクに限定するのであれば、1990年代流通あたりの丸瓶に比べて年々シェリー感が変化し、薄くなって荒くなったと言いますか。酒質も奥行きが乏しくなっていたのは否めず、これをもって味が落ちたとする意見には同意です。
ただ、これはマッカランに限らずどのブランドにおいても大なり小なり見られた傾向であり。むしろシェリー感の傾向としては、自前で樽工場を持ち(すべては賄えていないが、相当な投資をしていると言う話)、樽の仕様の発注、管理等を行っている関係か、新旧比較して香味のベクトルが全く別物になった訳ではないというのが自分の感想でした。

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(2000年代後半から流通していたマッカラン旧ボトルの18年。元々単一蒸留年の原酒で仕込まれていたボトルだったが、2015年流通(写真右)を最後に2016年からは今回のレビューアイテム同様にリリース年が記載されるようになった。それだけ原酒が苦しいのか、シェリー樽由来の甘味、コクが薄くなり、樽で苦労しているのを感じる味わいとなっていた。)

さて、今回「現行品も飲んでおかないとな」と、新ロットを見かけてテイスティングしてみたわけですが・・・。流石にここまでとは思いませんでした。前言撤回します。これはもう別物です。
樽の構成は伝統のスパニッシュとアメリカンのシーズニングで、上記写真の時代からシーズニング期間(1~2年程度)含めてそこまで変わっていないように思えます。ただし特に酒質の薄さ、水っぽさが目立っており、以前は旧時代の残滓くらいはあったそれが、越えてはならない一線をついに越えてしまったように感じてしまいます。

ベースとなる麦の違いか、よりスムーズで飲みやすい酒を目指した結果なのか・・・。かつてカスクストレングスではパワフルでフルボディといわれた酒質の片鱗は、一体どこにいってしまったのか。香りはするが、コクがほとんど感じられません。
それでも18年熟成かつ、大手ブランドの作りというのもあり、箸にも棒にもではなく。むしろ今ある条件のなかでバランスは整えられていて、普段ウイスキーを意識して飲まない無関心層相手のブランド商売なら、これくらいのほうが"マイルド"であるとか"飲みやすい"のかもしれません。

そして高い市場価格故、よくわからないけど良い酒飲んだ・・・という感じになって決着すると。まあ商売としてはアリなのか、コア勢は限定品を飲んでくださいという整理なのか。
近年蒸留所を大改修し、いまやミュージアムとも思えるような新しい蒸留設備を備えた大規模蒸留所マッカラン。旧ボトルを有り難がるつもりはないですが、これから先どこにいくのか。。。樽、製造設備の次は酒質の原点回帰を少しくらい進めても良いのではと真剣に感じてしまいました。