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ICHIRO'S 
MALT & GRAIN 
Japanese Blended Whisky 
LIMITED EDITION 2019 
700ml 48% 

グラス:テイスティンググラス
場所:BAR Eclipse first 
時期:開封後半年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ナッツや松の樹皮を思わせる武骨なウッディさ。キャラメル、オレンジピールのほろ苦く甘いアロマと微かにハーブ、ドライな刺激も感じられる。全体的に重みのある樽香が強いが、適度に整っている。

味:ウッディだがスムーズな舌当たり。胡桃やブラウンシュガー、徐々に栗の渋皮煮、ほのかに柑橘系のドライフルーツ。色の濃い甘味とほろ苦さが広がり、後半にかけてライムシロップを思わせる酸味とざらつくようなウッディネス。微かにハッカのアクセントを伴いつつビターなフィニッシュが長く続く。

羽生蒸留所原酒を思わせるキャラクターが主体。シェリー樽とは異なるウッディさに、それを引き算する軽いモルティーさと酸味がアクセント。また熟成感のあるメローなグレーンが繋ぎとなっているが、あくまでメインはモルト。バランサーに撤していて、樽感は強いが思いの外スムーズに飲める。

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WWA2019でワールドベストブレンデッドを受賞した、イチローズモルトのリミテッドエディション。同2018でも同じくワールドベストを受賞しており、2年連続の偉業を達成した限定ブレンドです。

イチローズモルト&グレーンのリミテッドエディションは、秩父などの日本原酒のみならず、輸入原酒を用いるワールドブレンドと、秩父蒸留所が保有する日本産の原酒(羽生、秩父、川崎)のみを使って構成されるジャパニーズブレンドの2種類があり、今回のリリースは後者に該当します。
似たようなラベルで紛らわしいですが、価格も生産量も雲泥の差。ワールドブレンドの方は定期的にリリースされているためまだ市場にボトルがありますが、ジャパニーズブレンドは2018、2019の2年間。2020ロットは生産されていないようで、また本数もそれぞれ500本程度となっています。

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(イチローズモルト&グレーンのワールドブレンド、リミテッドエディション。秩父原酒に内陸系熟成原酒という構成。ロット差がそこそこある印象で、写真のバッチ5はシェリー系の内陸原酒のキャラクターが厚みを与えている。)

さて、ジャパニーズブレンドも2018年のものと、今回レビューする2019年のものはレシピが異なっている模様。2018年のほうがリッチでウッディ、レシピは27年熟成の羽生モルトに35年の川崎グレーン、そして5年熟成の秩父とのことですが、羽生、川崎の比率が高くウッディな香味が強く。まさにウェアハウス(あるいは材木屋)のなかにいるような、包み込まれるように豊かな木香と甘いアロマが特徴的なブレンドでした。
これは過去にリリースされてきたカードシリーズの一部や、清里フィールドバレエシリーズ等とも共通する要素です。

2019はそうしたニュアンスもあるのですが、該当する羽生らしい武骨なウッディさが、バランス寄りの範囲にまとめられている印象を受けました。
イメージとしては、2018の羽生・川崎原酒の味わいを秩父原酒で引き算したような構成。独特な癖故に混ざりきらないモノも多い秩父モルトにあって、このブレンドは強いウッディさで上手く抑えていると思います。
2019のレシピはわかりませんが、同じ原酒で秩父が増えているか、あるいは羽生の熟成年数が15~20年くらいの、2000年代あたりの原酒も使っているのではないかと推察します。

イチローズモルトの代表的エピソードといえる、東亜酒造から引き取られた羽生原酒ですが、近年はいよいよ在庫が少なくなってきたとのこと。昨年聞いた噂では30樽あるかどうかという話(裏はとれていません)。いずれにせよ、通常のリリースに回す量はもうないようです。(リーフシリーズのダブルディスティラリーとか、どうなっているんだろう。。。)
まさにジャパニーズという樽香、ウッディな味わい。自分は2018のほうが好みでしたが、失われ行く味わいを堪能させてもらいました。