ウシュクベ リザーブ 1980年代流通 43%

USQUAEBACH
Reserve
Blended Scotch Whisky
1980-1990's
750ml 43%
グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)
香り:ビターで香ばしい麦芽香がメイン。オールブランや焦げた揚げ餅、仄かにザラメやオレンジピール。奥にはどっしりとしたスモーキーさがあり、スワリングすると麦芽香と混じって開く。
味:スムーズでほろ苦い口当たり。最初は少しドライだが、香り同様の香ばしいモルティーさとビターなフレーバーが、色の濃いはちみつのような甘味を繋ぎに広がる。余韻にかけてしっかりとピーティー。香ばしいモルト風味が染み込むように長く続く。
適度な熟成感があり、華やかさやフルーティーさはほぼないが、飾りのないモルトや穀物フレーバーに加えて内陸ピートのしっかりとした存在感を感じる地酒的ブレンデッド。通好みの美味しさを備えた、いぶし銀な1本である。
ロバートバーンズの詩である、「タム・オ・シャンター」の一説がブランドエピソードとなっているウシュクベ。また、ウイスキーの語源としても知られており、古くは1877年にブランドが商標登録されたそうです。しかしその後はブランドの買収やらなんやらあったようで、現在販売されているウシュクベは1974年にアメリカで再設立したものがルーツとなっています。
この時、ブランドを所有していたスタンレー社(販売がトウェルブ ストーン フラゴン社)は、OMCで知られるダグラスレイン社にブレンドを委託。
ダグラスレイン社は元々アメリカにルーツのある企業であると共に、当時はボトラーズモルトではなく、キングオブスコッツやハウスオブピアーズ等の自社ブランドのリリースに加え、他社銘柄の製造を請け負うなどブレンドメーカーとして活動していました。
当時のウシュクベは裏ラベル下部にその記載があり、これが時代判定の大きな材料となります。
1990年代、需要増に対応するため、スタンレー社はウシュクベの製造委託先をダグラスレインから業界大手のホワイト&マッカイに変更。実際、アメリカでは1989年の大統領就任祝賀会で振る舞われるなど、実績のある銘柄だったようです。つまり、ダグラスレイン表記があるのは、90年代かそれよりも前のものと整理出来る訳です。

(ダグラスレイン社がブレンドしていた時代のボトル(左)と、ホワイト&マッカイ社に移行した後のボトル(右)。表ラベルのデザインも微妙に異なる。フレーバーの系統は大きくは変わらないが、時代的な要因からかモルティーさやスモーキーさは後者のほうが弱め。その一方で、少し甘いフレーバーを伴う。)
ウシュクベは自社で確保、熟成している原酒をベースにブレンドされており、原酒を含めてレシピも提供し、文字通りブレンドとボトリングの製造行程のみを外注しているそうです。
実際、ダグラスレイン社からホワイト&マッカイ社に製造が移るという、大きな変更があったにも関わらず、ベースとなる味わいがそこまで変わらなかった理由はこの点にあると考えられます。
そのレシピはモルト比率の高い古典的なブレンドであり、リザーブのブレンド比率はモルトは60%、グレーンは40%。使われている原酒の熟成年数は10~18年ですが、16~18年熟成のモルト原酒が全体の50%ともされており、つまり残りは10年程度の比較的若い原酒であると考えられます。
樽はリフィルのプレーンなタイプのアメリカンオーク樽と予想。オーキーな華やかさほぼないものの、ハイランド系の香ばしく、それでいて存在感のあるスモーキーなモルティーさがメインに感じられます。
他方で、現行品はシェリー樽による6ヶ月の後熟成が行われているそうで、この辺はホワイト&マッカイのダブルマリッジに関連してのことなのかも。実際、ダグラスレイン社時代のもののほうがビターで、ホワイト&マッカイ社時代移行は甘味が(特徴的なヒネ感を伴うケースも)あるのが、時代的な特徴といえそうです。
コメント