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MIYAGIKYO 
NIKKA WHISKY 
SINGLE CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2006.06.10 
Bottled 2016.11.08 
Cask type Remade Hogshead #115323 
700ml 56% 

グラス:リーデル
場所:BAR Fingal 
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディでややエッジの立った香り立ち。使い込まれた木製家具、微かに溶剤的な刺激。カステラの茶色い部分、アーモンドやブランビスケットの甘みと、奥にはエステリーなニュアンスも伴う。

味:ほろ苦くウッディな口当たり。序盤はビターでざらつくようなウッディさ、アタックも強めだが、余韻にかけてオーキーなフルーティーさ。ファイバーパイナップルや洋梨を思わせるフルーティーさが混じる。

宮城峡の柔らかくも一本芯の通った素性の良い酒質に、新樽部分由来のウッディさと、多少溶剤的なニュアンスが混じり、フルーティーさを上書きしているやや個性的な仕上がり。一言で粗削りな木材感のある香味構成。余韻の戻り、少量加水したときの変化のなかで、オーキーなフルーティーさの片鱗を感じることができる。


宮城峡蒸留所で2002年から毎年開催されている、マイウイスキー塾で2006年に仕込まれたシングルカスク。BARフィンガルのマスター谷嶋さんが参加され、10年後に払いだされたものだそうです。

宮城峡の酒質はソフトで素直、微かなピーティーさの混じるハイランドタイプ(ニッカはローランドと言ってますが)。故にバーボンバレル系の樽との相性が良く、12~15年でフルーティーな美味しいモルトに仕上がる傾向があります。
一方、今回熟成に使われているリメード樽は、新樽と古樽(バーボン樽)を組み合わせるためか味のブレ幅が大きい傾向があり。
新樽部分の影響が強めに出ているのか、色合いはやや濃いめで、味わいもウッディ。ただ、甘味や香りはそこまで強くないが、日本的な木材感が目立つ構成なのです。

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異なる2つの木材を合わせるためか、その個性がどう作用したかで、仕上がりが変化しているようです。
例えば、今回のボトルの対極にあるような宮城峡マイウイスキーカスクが、以前レビューした2005年蒸留の#300250(上写真)。
こちらは新樽系統のウッディさがそこまで主張せず、スコッチモルトのバーボンバレル、あるいはバーボンホグスヘッドで長期熟成したような、綺麗に黄色い系統のフルーティーさが付与された仕上がりです。

先日、谷嶋さんも参加されているブラインドテイスティンググループの定例会で、極悪にもこのボトルを出題したところ。。。今回の宮城峡10年の話題が出ていました。
曰く、うちのカスクはこんな感じにはならなかったなあと。

マイウイスキーは10年と熟成期間が決まっているため、樽の状態、置かれた環境等で仕上がりは必ずしもピークのものとは限りませんし、フレーバーも一定にはなりません。
ですが、この誤差こそがマイウイスキーの魅力。今回のボトルのような粗さというか、余分なウッディさの残る方が手作り感があってマイウイスキーらしくも感じます。
それこそ、仮に自分のマイウイスキーが今回のような仕上がりでも、それは10年間の苦楽を思い返し、思いでと共に笑顔で楽しむことができる1本だと思います。

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今日のオマケ:トルブレック バロッサバレー ファクター2004
パーカーポイントで最高点の100点を始め、90点台後半を連発しているオーストラリアのシラーズ。2004年は97点という高得点を獲得したヴィンテージだそうです。(写真左のボトル。右側は以前オマケで書いたウッドカッターズ)

新しいヴィンテージのものは濃厚で、強すぎるため熟成前提のボトルですが、確かに美味しい。
新世界シラーズでありがちな、豊満で露骨なベリー系というタイプではなく、カカオ多めのチョコレートにブルーベリー等の黒系果実感。湿ったウッディネスにスパイス、微かにリコリスのようなニュアンス。全体的に落ち着きがあり、タンニンも熟成を経てしなやか。また、時間経過でじわじわと開く果実感に上質さもあります。

この日はスタンダードグレードのウッドカッターズとも飲み比べましたが、比較するとウッドカッターズの味わいがなんともあざとく、雑に感じられてしまう。。。熟成期間の違いもあるとはいえ、罪なワインです。
なおここに合わせるのは肉、こういうワインにはシンプルに赤身の肉に限ります。写真だけでもう雄弁に間違いないことが語られる説得力。
申し訳ないがウイスキーでは得られない至福のひととき、たしかな満足。。。

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